魔人~気が付いたら魔人になってた~

やらお

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1.外に出よう!

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「魔人の項目……魔人の項目……」

私は今、研究施設の図書館にて魔人の本を探している。私自身が知り得る魔人の知識など雀の涙程だ。魔法にばかり目を向けてきたせいだ。

「あった!」

見つけるとすぐさま手に取り、1番近くにある椅子に座り本を開く。目次や前書きなどと言ったどうでもいいのをすっ飛ばし、目的の所を読む。

種族名:魔人

概要:どういった経緯で生まれるのか、またどこで生しているのか、何も分かっていない。謎に包まれた種族である。目撃情報の殆どが人型で、若干浅黒いという外見は共通されているようだ。

彼らの特徴としては、第一に膨大な魔力の量が挙げられる。一般的な魔術師の魔力量を10とすると彼らの魔力量はおよそ10000だと言われる。

「……」

私はそこまで読むと、まだ長々と続くこの解説書を閉じた。そしておもむろに立ち上がり大きく息を吸い込む。

「やったーーー!!!!!」

おそらく、今まで生きてきてこんなに大声をだして叫んだのは初めてだと思う。

「やったやったやったやったーー!!!!」

本当に心からの叫びだった。まるで小さな頃に戻ったかのように、腹の底から嬉しさを声に出していた。

「これでまだまだ研究できる!!!!」

これに尽きるのである。さっきの解説書通りだとすると、魔力量が1000倍になったのだ。今まで魔力不足で出来なかった実験などまたやりたい放題なのだ。

「楽しくなってきたあああああ!!!」

もはややる気に満ち溢れ、うちから湧いてくる熱い衝動を抑えられない。
よく考えてみれば魔人の兆候はあったのかも知らない。あり得ない時期の魔力量増大や、妙に身体が軽くなったりだとか……。

とにかく私は既に研究をするき満々なのだ。
図書館の扉を勢いよくあけ、閉めるのも忘れて研究室へ向かう。

「うおおおおおおお!!!!」

体が若返ったせいか、精神も若い頃に戻ったように感じる。雄叫びをあげるのは若者の特権である。

そして研究室の前にたどり着いた。
私はまたもや急いで扉を開け、そこら中に積み重ねられた資料や本を片っ端からのぞいていく。さて、どんな研究を始めてやろうか。魔力量が1番必要なのは詠唱魔法だ、こいつをさらに昇華させてやろうか……。

などと考えていたが、私はふと思い立った。

「外に出ればいいのでは……?」

そう、この部屋にある資料たちはもう随分と前のものだ。そんな所からただ魔力量が増えただけで出来る研究など、たかが知れてるだろう。

それに比べて、外はどうだ。もはやこんな資料たちでは考えもつかないような知識だらけに違いない。

そうと決まると、私はすぐさま支度を始めた。

まず、この角を隠すために大きめのフードを被った。そして浅黒い肌、魔紋を隠すためにこれまた少し大きめの、暗い色のローブを羽織る。

私の若い頃は、研究者らしく筋肉などは無いし身長も大きくなかった。そのせいか、改めて鏡で自分を見てみるとまるで子供のようだ。

特に、この大きなフードがそう見させている。

「学会で舐められないだろうか……」

若干の不安が残りつつも、私の支度をする手が止まる事は無かった。それほど、私はワクワクしていたのだ。

ある程度の荷物をリュックの中に入れた。
金貨10枚、これである程度は生活出来るはずだ。宿に半年は泊まれる額だったはず。
小さなナイフ、旅といえばナイフと相場が決まっているのだ。それにこれは母の形見だ。離す訳にはいかない。
少しの食料、魔人になってから気が付いたのだが食事が殆ど必要なくなったのだ。おそらく、人間では無いからだろう。

これだけの荷物を持ち、私はこの研究施設を後にすべく立ち上がった。

「…………おさらばか」

思い入れのある施設だ。
ただ研究をするだけでは無かった。挫折もあったし、喜びもあった。ここには心がこもっていた。

「ありがとう、帰ってくるから、待っていてくれ」

私はそう言い残し、ここに初めて入ってきて以来触れていない外への扉に手をかけた。
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