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第2話 異世界の話をする二人
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俺が異世界帰りであることが後輩の日向さんにあっさりとバレて、日向さんからの誘いで仕事終わりに食事をすることになった。職場以外で会うのは初めてだ。
そして俺達はレストランへ到着した。高級店みたいに店内が静かというわけではないが、居酒屋みたいに騒がしくもない。スローテンポなBGMが流れており、仕事終わりの開放感がより強く感じられ落ち着いた気分にさせてくれる。
かすかに聞こえる他のお客さんの話し声ですらも心地良いBGMのように思えた。
静か過ぎず、騒がし過ぎず。ゆっくりと話をするには最適な環境だ。(俺基準)
そして個室。これは譲れない。同じ職場の人がいないかと、落ち着いて話に集中できないからだ。(俺基準)
きちんと日向さんの了承はもらった。
職場では席が隣なので横顔を見ることが多いから、日向さんが正面に座っているのは何だか不思議な感覚だ。何より職場以外で会うのが初めてだということが緊張感を生み出している。
「なんだか照れますね」
日向さんがはにかんだような表情で言ったので、俺はその言葉に照れてしまい少し急ぎ気味に話題を振った。
「仕事終わりに出かけることはよくあるの?」
「んー、時々ですね。学生の時からの友達や同期入社の子と出かけてますよ。先輩は仕事終わりは何してますか?」
「俺はまっすぐ家に帰ることが多いかな。たまに本屋に行って面白そうなラノベを探したり、時間が合えば友達と飲みに行ったりはするけどね」
日向さんには『ライトノベル』ではなく『ラノベ』で通じることは確認済みだ。
「先輩はどんなラノベを読むんですか?」
ここは正直に言うべきか迷う。読むことが多いのは異世界ファンタジー冒険譚だが、作品によってはハーレムものとして認識されていることもある。
ハーレムものが嫌いな人も割といるという。万が一にもドン引きさせてはいけないので、作品名は出さず「異世界ものが多いよ」と答えた。俺はハーレムもの好きなんだけどな。
「異世界ファンタジー、私も好きですよ!」
日向さんの表情がさらに明るくなった。感情が素直に表に出る子なのかな。
「やっぱり現実ではありえない世界だからこそ憧れるというか、小説の魅力の一つとして、文字だけだからこそ読者が自由にイメージできる部分があることだと思うんです。
それでもこの場面が見たいな、と思うこともあってラノベはそんな私にピッタリなんです」
「そうだね、俺もそう思うよ。でも異世界転生は見るだけで十分だよね。だって死んでしまったということなんだから」
「そうですよね。だからあの時は本当にびっくりしました」
「異世界召喚された時だよね。あれは本当に酷かったなぁ……」
「私、死んじゃったと思って泣いちゃいました」
「俺はちょうど家でラノベを読んでる時だったんだよ。しかも異世界召喚された普通の会社員が魔王を倒すという展開のね」
突然目の前が真っ白になったかと思うと、気が付けばレッドカーペットの上でたくさんの騎士に囲まれて異世界の王と対面していたのだ。
「実際に異世界に行って思ったんだけど、『異世界キター! ヤッター!』とはならないね」
「フフッ、私もそうでしたよ」
「だよね。でさ、異世界の王に『魔王がいる限り帰る方法は無い』なんて言われてふざけんな! と思ったんだよ」
「そうなんですよね。その後で知ったんですけど、あの王様って見境無く私たちの世界から勇者候補を召喚していたんですよね」
「しかもそれを俺達には黙ってたんだからタチが悪いよ。『職業:会社員 レベル:1』に魔王が倒せるかっての」
いかん、これでは異世界の王に対するディスり合戦になっている。別の話をしなくては。せっかく二人なんだから楽しんでもらわないと。
「俺は異世界に1ヶ月いたけど、日向さんはどれくらいいたの?」
「私は3日間ですよ」
「短っ!」
「私もですね、こうなったらやるしかないと思って修行してたんです。それで、サポートメインの魔法を勉強してまして。それにはまず魔法を察知することから始めると教わりました」
「それで魔法察知を習得したタイミングで魔王が倒されたというわけか」
「はい。でもまさかこの世界に帰っても魔法が使えるとはびっくりです! 近くで魔法が使われたことを察知して、しかもそれが先輩だったなんて!」
「それには俺も驚いたよ。テレポートなんてヤバい魔法がこっちでも使えるんだから」
俺がそう言うと、日向さんが身を乗り出すように俺に聞いてきた。
「先輩、テレポートが使えるんですか!?」
「あ、うん使えるよ」
日向さんに少し気圧されてしまい、返事が遅れてしまった。
「いいなー。私、先輩と一緒がよかったなー」
日向さんが少し口を尖らせてそう言った。
おそらく『一緒ならテレポートを使えるようになったのに』という意味合いが強いと思われる。が、「二人だけの秘密ですね!」に続いて「先輩と一緒がよかったなー」なんて日向さん、パワーワードに破壊力がありすぎる……。
そんな俺の思考を知ってか知らずか、目の前のパスタを「んー、美味しいー!」と言って満面の笑みで食べている日向さんだった。
そして俺達はレストランへ到着した。高級店みたいに店内が静かというわけではないが、居酒屋みたいに騒がしくもない。スローテンポなBGMが流れており、仕事終わりの開放感がより強く感じられ落ち着いた気分にさせてくれる。
かすかに聞こえる他のお客さんの話し声ですらも心地良いBGMのように思えた。
静か過ぎず、騒がし過ぎず。ゆっくりと話をするには最適な環境だ。(俺基準)
そして個室。これは譲れない。同じ職場の人がいないかと、落ち着いて話に集中できないからだ。(俺基準)
きちんと日向さんの了承はもらった。
職場では席が隣なので横顔を見ることが多いから、日向さんが正面に座っているのは何だか不思議な感覚だ。何より職場以外で会うのが初めてだということが緊張感を生み出している。
「なんだか照れますね」
日向さんがはにかんだような表情で言ったので、俺はその言葉に照れてしまい少し急ぎ気味に話題を振った。
「仕事終わりに出かけることはよくあるの?」
「んー、時々ですね。学生の時からの友達や同期入社の子と出かけてますよ。先輩は仕事終わりは何してますか?」
「俺はまっすぐ家に帰ることが多いかな。たまに本屋に行って面白そうなラノベを探したり、時間が合えば友達と飲みに行ったりはするけどね」
日向さんには『ライトノベル』ではなく『ラノベ』で通じることは確認済みだ。
「先輩はどんなラノベを読むんですか?」
ここは正直に言うべきか迷う。読むことが多いのは異世界ファンタジー冒険譚だが、作品によってはハーレムものとして認識されていることもある。
ハーレムものが嫌いな人も割といるという。万が一にもドン引きさせてはいけないので、作品名は出さず「異世界ものが多いよ」と答えた。俺はハーレムもの好きなんだけどな。
「異世界ファンタジー、私も好きですよ!」
日向さんの表情がさらに明るくなった。感情が素直に表に出る子なのかな。
「やっぱり現実ではありえない世界だからこそ憧れるというか、小説の魅力の一つとして、文字だけだからこそ読者が自由にイメージできる部分があることだと思うんです。
それでもこの場面が見たいな、と思うこともあってラノベはそんな私にピッタリなんです」
「そうだね、俺もそう思うよ。でも異世界転生は見るだけで十分だよね。だって死んでしまったということなんだから」
「そうですよね。だからあの時は本当にびっくりしました」
「異世界召喚された時だよね。あれは本当に酷かったなぁ……」
「私、死んじゃったと思って泣いちゃいました」
「俺はちょうど家でラノベを読んでる時だったんだよ。しかも異世界召喚された普通の会社員が魔王を倒すという展開のね」
突然目の前が真っ白になったかと思うと、気が付けばレッドカーペットの上でたくさんの騎士に囲まれて異世界の王と対面していたのだ。
「実際に異世界に行って思ったんだけど、『異世界キター! ヤッター!』とはならないね」
「フフッ、私もそうでしたよ」
「だよね。でさ、異世界の王に『魔王がいる限り帰る方法は無い』なんて言われてふざけんな! と思ったんだよ」
「そうなんですよね。その後で知ったんですけど、あの王様って見境無く私たちの世界から勇者候補を召喚していたんですよね」
「しかもそれを俺達には黙ってたんだからタチが悪いよ。『職業:会社員 レベル:1』に魔王が倒せるかっての」
いかん、これでは異世界の王に対するディスり合戦になっている。別の話をしなくては。せっかく二人なんだから楽しんでもらわないと。
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「私は3日間ですよ」
「短っ!」
「私もですね、こうなったらやるしかないと思って修行してたんです。それで、サポートメインの魔法を勉強してまして。それにはまず魔法を察知することから始めると教わりました」
「それで魔法察知を習得したタイミングで魔王が倒されたというわけか」
「はい。でもまさかこの世界に帰っても魔法が使えるとはびっくりです! 近くで魔法が使われたことを察知して、しかもそれが先輩だったなんて!」
「それには俺も驚いたよ。テレポートなんてヤバい魔法がこっちでも使えるんだから」
俺がそう言うと、日向さんが身を乗り出すように俺に聞いてきた。
「先輩、テレポートが使えるんですか!?」
「あ、うん使えるよ」
日向さんに少し気圧されてしまい、返事が遅れてしまった。
「いいなー。私、先輩と一緒がよかったなー」
日向さんが少し口を尖らせてそう言った。
おそらく『一緒ならテレポートを使えるようになったのに』という意味合いが強いと思われる。が、「二人だけの秘密ですね!」に続いて「先輩と一緒がよかったなー」なんて日向さん、パワーワードに破壊力がありすぎる……。
そんな俺の思考を知ってか知らずか、目の前のパスタを「んー、美味しいー!」と言って満面の笑みで食べている日向さんだった。
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