43 / 58
第43話 待ちに待った日
しおりを挟む
日向さんの家までお見舞いに行った日の夜、日向さんからメッセージが届いた。以下、やり取りである。
『拝啓、日に日に強くなる日差しの中にも涼しげな風に涼を感じるこの頃、先輩におかれましては健やかにお過ごしのことと存じます。本日はお見舞い、本当にありがとうございました。先輩も熱中症にはくれぐれもご注意ください。敬具』
『お手紙かな?』
『やっぱり硬すぎましたか? きちんとお礼をしなくちゃと思ったんですけど、マナーって難しいですね!』
『お礼なら帰る時に言ってくれたし、それに俺がやりたくてやったことだから、気にしないで』
『先輩って、文字でもそんな恥ずかしいことを平然と言うんですね』
『恥ずかしいことを言ったつもりはないよ』
『まったくもう! 先輩は!』
メッセージでも怒られた。メッセージでは怒っているけど、実際はどんな表情で入力しているんだろう。
またもや月曜日がやってきた。先週と同じく週末に楽しみがあるため、俺の仕事のモチベーションはすでにMAXに到達している。
そういえば先週は金曜日の午後に如月から、ずっとニヤニヤして気持ち悪かったって言われたんだっけ。それならば今週は、表情筋を引き締めて頑張ろう。
すると如月から今度は、「今週ずっと不機嫌だったけど、どうしたの?」と心配されてしまった。俺ってそんなにも顔に出るんだろうか。 そして如月はやっぱり優しい。でも金曜日の午後になってから言うのは止めてくれねえかな。
日向さんのお見舞いから帰る時に日向さんが立てた、「もし先輩が寝込んだら、次は私が看病に行きますね!」というフラグをバキバキに折るため、俺はもの凄く体調管理に気を配った。
その結果、無事に約束の日を迎えることができた。ショッピングモールで昼過ぎに待ち合わせをしている。日向さんと二人で出かけるのは、今日で三回目だ。
一回目は俺が異世界帰りだと日向さんにバレた日に、日向さんからの誘いで食事と映画に行った。二回目は俺から夏祭りに誘った。
なので、まだそこまで趣味・嗜好を知っているわけではない。どんな物に興味があるのか、どんなファッションを好むのか、どんな食べ物が好きなのか、自分の価値観とどれくらい近いのか、などまだ知らないことがたくさんある。
それに日向さんとは一度、本屋でラノベについてじっくりと語り合いをしてみたかった、ということもある。
ショッピングモールというのは、それらを知るにはピッタリの場所だ。
そして何より俺は今日、日向さんに告白をするつもりだ。
夏祭りの時と同様に、今日も今日とて約束の一時間前に到着した俺である。会社は遅刻しても、約束に遅刻するわけにはいかない。
……ちゃんと会社にも間に合うように行ってます。
俺にはWeb小説という心強い味方がいる。一時間くらいすぐだ。俺は『日向さんの作品』を読み直した。
三十分後、作者がやって来た。白いワンピースに黒いサンダルという、女の子らしい服装をしている。黒のストレートロングの髪も一段ときれいに見えており、実に映えている。
「ごめんなさい、遅れました」
「俺が早く来すぎなだけだからね。やっぱり日向さんはスーツ以外もよく似合っていて可愛いね」
「ありがとうございます! 褒められちゃった!」
俺ってこんなセリフをサラッと言えるような奴だっけ?
「先輩、早速ですけどラノベを見に行きませんか? 今なら荷物が無いので、手に取って選ぶことができますからね」
「新刊が出てるんだっけ」
「そうですよ! 電子書籍もいいですけど、紙の本は本棚に並べる楽しさがあって、私は好きなんです」
「分かるなあ。まだまだ紙の本には頑張ってほしいな」
日向さんと本屋へ入り、二人揃ってラノベコーナーへと無駄のない動きで到着した。
二人並んで棚にあるラノベのタイトルに目を通していく。日向さんは俺の右側にいる。
「先輩、見てください。ラノベがこんなにありますよ」
「いい眺めだなー」
「どれを買おうか迷っちゃいますよね!」
そうなんだよ。それが正しい反応だと思うんだ俺は。如月は「それなら全部買えばいいじゃない」なんて言ったんだから。
もしかして異世界の宝でもこっそり持ち帰って、どこかに売ってるんじゃないだろうな。
見てるだけでも楽しいが、日向さんと二人きりだということが、俺のテンションをさらに爆上げさせている。
「あれー? また会いましたねー?」
妙に間延びした声をかけられ、左を向くと見覚えのある人物がいる。
如月 結瑠璃。如月の妹で、如月と結瑠璃ちゃんの三人で遊園地に行った時、観覧車をドタキャンして、俺と如月の二人きりで乗せることを本当に実行した、行動力お化けだ。
その行動力は見習いたいが、日向さんと結瑠璃ちゃんの組み合わせなんて、全く想像できない。
(嫌な予感しかしない。少しだけ話して、さっさと切り上げよう)
『拝啓、日に日に強くなる日差しの中にも涼しげな風に涼を感じるこの頃、先輩におかれましては健やかにお過ごしのことと存じます。本日はお見舞い、本当にありがとうございました。先輩も熱中症にはくれぐれもご注意ください。敬具』
『お手紙かな?』
『やっぱり硬すぎましたか? きちんとお礼をしなくちゃと思ったんですけど、マナーって難しいですね!』
『お礼なら帰る時に言ってくれたし、それに俺がやりたくてやったことだから、気にしないで』
『先輩って、文字でもそんな恥ずかしいことを平然と言うんですね』
『恥ずかしいことを言ったつもりはないよ』
『まったくもう! 先輩は!』
メッセージでも怒られた。メッセージでは怒っているけど、実際はどんな表情で入力しているんだろう。
またもや月曜日がやってきた。先週と同じく週末に楽しみがあるため、俺の仕事のモチベーションはすでにMAXに到達している。
そういえば先週は金曜日の午後に如月から、ずっとニヤニヤして気持ち悪かったって言われたんだっけ。それならば今週は、表情筋を引き締めて頑張ろう。
すると如月から今度は、「今週ずっと不機嫌だったけど、どうしたの?」と心配されてしまった。俺ってそんなにも顔に出るんだろうか。 そして如月はやっぱり優しい。でも金曜日の午後になってから言うのは止めてくれねえかな。
日向さんのお見舞いから帰る時に日向さんが立てた、「もし先輩が寝込んだら、次は私が看病に行きますね!」というフラグをバキバキに折るため、俺はもの凄く体調管理に気を配った。
その結果、無事に約束の日を迎えることができた。ショッピングモールで昼過ぎに待ち合わせをしている。日向さんと二人で出かけるのは、今日で三回目だ。
一回目は俺が異世界帰りだと日向さんにバレた日に、日向さんからの誘いで食事と映画に行った。二回目は俺から夏祭りに誘った。
なので、まだそこまで趣味・嗜好を知っているわけではない。どんな物に興味があるのか、どんなファッションを好むのか、どんな食べ物が好きなのか、自分の価値観とどれくらい近いのか、などまだ知らないことがたくさんある。
それに日向さんとは一度、本屋でラノベについてじっくりと語り合いをしてみたかった、ということもある。
ショッピングモールというのは、それらを知るにはピッタリの場所だ。
そして何より俺は今日、日向さんに告白をするつもりだ。
夏祭りの時と同様に、今日も今日とて約束の一時間前に到着した俺である。会社は遅刻しても、約束に遅刻するわけにはいかない。
……ちゃんと会社にも間に合うように行ってます。
俺にはWeb小説という心強い味方がいる。一時間くらいすぐだ。俺は『日向さんの作品』を読み直した。
三十分後、作者がやって来た。白いワンピースに黒いサンダルという、女の子らしい服装をしている。黒のストレートロングの髪も一段ときれいに見えており、実に映えている。
「ごめんなさい、遅れました」
「俺が早く来すぎなだけだからね。やっぱり日向さんはスーツ以外もよく似合っていて可愛いね」
「ありがとうございます! 褒められちゃった!」
俺ってこんなセリフをサラッと言えるような奴だっけ?
「先輩、早速ですけどラノベを見に行きませんか? 今なら荷物が無いので、手に取って選ぶことができますからね」
「新刊が出てるんだっけ」
「そうですよ! 電子書籍もいいですけど、紙の本は本棚に並べる楽しさがあって、私は好きなんです」
「分かるなあ。まだまだ紙の本には頑張ってほしいな」
日向さんと本屋へ入り、二人揃ってラノベコーナーへと無駄のない動きで到着した。
二人並んで棚にあるラノベのタイトルに目を通していく。日向さんは俺の右側にいる。
「先輩、見てください。ラノベがこんなにありますよ」
「いい眺めだなー」
「どれを買おうか迷っちゃいますよね!」
そうなんだよ。それが正しい反応だと思うんだ俺は。如月は「それなら全部買えばいいじゃない」なんて言ったんだから。
もしかして異世界の宝でもこっそり持ち帰って、どこかに売ってるんじゃないだろうな。
見てるだけでも楽しいが、日向さんと二人きりだということが、俺のテンションをさらに爆上げさせている。
「あれー? また会いましたねー?」
妙に間延びした声をかけられ、左を向くと見覚えのある人物がいる。
如月 結瑠璃。如月の妹で、如月と結瑠璃ちゃんの三人で遊園地に行った時、観覧車をドタキャンして、俺と如月の二人きりで乗せることを本当に実行した、行動力お化けだ。
その行動力は見習いたいが、日向さんと結瑠璃ちゃんの組み合わせなんて、全く想像できない。
(嫌な予感しかしない。少しだけ話して、さっさと切り上げよう)
61
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2025.11.25)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる