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婚約者とマシュマロ系令嬢
2.
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◆
「リリーティア・リクール?」
この春、おなじ学園に入学してきた婚約者とのどかなティータイムを楽しんでいると、マリアベルの口から飛び出した名前にぞわりとした。
――なんだ。この気持ち悪さ……。
「はい、シモン様にぜひお会いしたいのですって。わたしのところで止めておくことも出来るのですが、ちょっと、その、強引で……シモン様さえよろしければ、一度ご紹介したいのですが」
「……会う必要性は感じないな」
「承知しました。では、お断りしておきますね」
「あまり強く出るようだったら、すぐに言ってくれ。対処しよう」
「はい」
婚約者の少女が気遣わしげにシモンを見上げた。
「シモン様、大丈夫ですか?」
「え?」
いつのまにか額にびっしりと汗が浮いていた。
マリアベルがシモンのそばに寄り添い、ハンカチを当てる。
丸みを帯びた頬、シモンを心配げに見つめる榛色の瞳。
――自分はこの少女をずっと前から知っている。
とたんに頭に流れ込むのは、膨大な量の前世の知識。
頭を抱え、意識がおぼろげなシモンの身体をマリアベルがとっさに支えた。
「シモン様っ、しっかりなさって!」
シモンはすぐに学園内の治療室へ運ばれた。
その間、ふっくらとやさしい手はシモンの手を握りしめたまま、離れることはなかった。
◆
王立学園の入学式。
桃色の花弁が舞う中、男爵令嬢リリーティア・リクールと氷の貴公子と呼ばれる侯爵令息であるシモン・モンテイエは出会った。
リリーティア・リクールは黄金色の髪に深緑の瞳を持つ、妖精のように華奢で可憐な少女であった。
政略で決められたシモン・モンテイエの婚約者マリアベル・オーランシュとはまったく違う。
シモン・モンテイエが何度か会った婚約者の少女は、見た目は地味だし、のろまだし、なんでもはいはい、とうなずく様は従順と言えば聞こえはいいけれど、主体性がないだけだ。
なにより、太っているのが許せない。
すぐに太ってしまう体質なのだ、と言い訳をする前に痩せる努力をしてみたのか、と問いたかった。
シモン・モンテイエは、侯爵家を継ぐ者として周囲からの期待に、息苦しいほどの圧迫感を感じていた。努力してあたりまえと言われる環境。ましてや、モンテイエ家は代々宰相位にあったので、なおさらだった。
だからこそ、マリアベル・オーランシュの怠惰が許せなかった。
そんなときに出会ったのが、天真爛漫で明るいリリーティア・リクールだ。愛らしい笑顔に癒やされ、誰に対しても物怖じしない態度に惹きつけられた。
ある日、婚約者の少女がリリーティア・リクールに嫌がらせをしているのを偶然見かけた。
周囲の話によれば婚約者の少女は、これまでにもリリーティア・リクールに対し、幾度も嫌がらせを働いていたそうだ。
自分の見ていないところで、なんという卑劣な真似をするのか。
そんな女が将来の侯爵夫人になるなど、あってはならない、
シモン・モンテイエは婚約者の少女にその場で婚約破棄を言い渡し、初恋の少女リリーティア・リクールと結ばれた。
その後の悪役令嬢マリアベル・オーランシュの行方は不明とされた。
――ハッピーエンド――
「リリーティア・リクール?」
この春、おなじ学園に入学してきた婚約者とのどかなティータイムを楽しんでいると、マリアベルの口から飛び出した名前にぞわりとした。
――なんだ。この気持ち悪さ……。
「はい、シモン様にぜひお会いしたいのですって。わたしのところで止めておくことも出来るのですが、ちょっと、その、強引で……シモン様さえよろしければ、一度ご紹介したいのですが」
「……会う必要性は感じないな」
「承知しました。では、お断りしておきますね」
「あまり強く出るようだったら、すぐに言ってくれ。対処しよう」
「はい」
婚約者の少女が気遣わしげにシモンを見上げた。
「シモン様、大丈夫ですか?」
「え?」
いつのまにか額にびっしりと汗が浮いていた。
マリアベルがシモンのそばに寄り添い、ハンカチを当てる。
丸みを帯びた頬、シモンを心配げに見つめる榛色の瞳。
――自分はこの少女をずっと前から知っている。
とたんに頭に流れ込むのは、膨大な量の前世の知識。
頭を抱え、意識がおぼろげなシモンの身体をマリアベルがとっさに支えた。
「シモン様っ、しっかりなさって!」
シモンはすぐに学園内の治療室へ運ばれた。
その間、ふっくらとやさしい手はシモンの手を握りしめたまま、離れることはなかった。
◆
王立学園の入学式。
桃色の花弁が舞う中、男爵令嬢リリーティア・リクールと氷の貴公子と呼ばれる侯爵令息であるシモン・モンテイエは出会った。
リリーティア・リクールは黄金色の髪に深緑の瞳を持つ、妖精のように華奢で可憐な少女であった。
政略で決められたシモン・モンテイエの婚約者マリアベル・オーランシュとはまったく違う。
シモン・モンテイエが何度か会った婚約者の少女は、見た目は地味だし、のろまだし、なんでもはいはい、とうなずく様は従順と言えば聞こえはいいけれど、主体性がないだけだ。
なにより、太っているのが許せない。
すぐに太ってしまう体質なのだ、と言い訳をする前に痩せる努力をしてみたのか、と問いたかった。
シモン・モンテイエは、侯爵家を継ぐ者として周囲からの期待に、息苦しいほどの圧迫感を感じていた。努力してあたりまえと言われる環境。ましてや、モンテイエ家は代々宰相位にあったので、なおさらだった。
だからこそ、マリアベル・オーランシュの怠惰が許せなかった。
そんなときに出会ったのが、天真爛漫で明るいリリーティア・リクールだ。愛らしい笑顔に癒やされ、誰に対しても物怖じしない態度に惹きつけられた。
ある日、婚約者の少女がリリーティア・リクールに嫌がらせをしているのを偶然見かけた。
周囲の話によれば婚約者の少女は、これまでにもリリーティア・リクールに対し、幾度も嫌がらせを働いていたそうだ。
自分の見ていないところで、なんという卑劣な真似をするのか。
そんな女が将来の侯爵夫人になるなど、あってはならない、
シモン・モンテイエは婚約者の少女にその場で婚約破棄を言い渡し、初恋の少女リリーティア・リクールと結ばれた。
その後の悪役令嬢マリアベル・オーランシュの行方は不明とされた。
――ハッピーエンド――
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