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第二部 学校編

4.

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 4時間目終了のチャイムが鳴った。
 お弁当の入ったトートバッグを手にし、ぼくは席を立つ。

「カズ? どこに行くんだ?」
「キィちゃんとこ。お昼に誘ってくる」
「俺も行く」

 小山田くんがスポーツバッグを持って立ち上がる。

「どこで食べる?」
「キィちゃん、騒がしいのが苦手だから、教室や食堂は無理かな」
「テラスでいいじゃん。暑いからだれも外に出てないぜ」
「木の陰ならわりと涼しいぞ」

 なんか、岩崎くんと甲斐くんまで付いて来た。
 目立つ3人を引き連れたぼくって、いったい何様だと思われそう。

 あ、だれも見ていませんでしたね!!

 女子の視線は、ほぼ小山田くんに向かってるし、岩崎くんは知り合いに声かけまくってるし、甲斐くんは我関せずで大欠伸だ。

 キィちゃんの教室をのぞくと、女子の集団のかたまりが出来ていた。
 小山田くんが教室内に声をかけると、女子がいっせいに振り返る。

「きゃー小山田くん! どうしてここに!?」
「久遠いる?」
「久遠くんなら、ここにいるわよ!!」

 女子のかたまりがざっと割れた。
 中心にはキィちゃんがいた。ていうか、机に突っ伏していた。あれ、どう見ても寝てるよね?

「回答のプリントを回収したいんだけど、起きてくれなくて困ってたの」

 あ、そういうこと。
 スリーピングビューティーなキィちゃんをながめて、楽しんでいたのかと思ったよ。

「キィちゃん、お昼だよ。起きてごはん食べよう?」

 耳元でささやくと、肩が動いた。
 けど、起きそうにない。

 ぼくのうしろでは小山田くんが「俺もカズに起こしてもらいたい」とか言っちゃってて、女子が「わたしが起こしてあげる!」「起こすのはわたしよ!」とか言って、ちょっとした騒ぎになっていた。

 こんなに騒がしいのに、寝ていられるキィちゃんは最強だよ。

「甲斐、運べ!」
「はあーめんどうだけど、それしかないか」

 岩崎くんの命令で、甲斐くんがキィちゃんを肩にかつぎあげた。

「あ、じゃあ、これよろしくね」

 キィちゃんのプリントを女子に手渡したぼくは、岩崎くんたちのあとを追いかけた。

「甲斐くん、大丈夫?」
「おーコイツ……久遠だったか? 見た目よりも軽いぞ?」
「そ、そうなんだ」

 キィちゃん、甲斐くんにかつがれたショックで、ふたたびひきこもりになりませんように!!
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