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第二部 学校編

6.

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 昼食時、いつものようにテラス席に向かうと、空いている席が見当たらない。
 校舎中が文化祭仕様になっているから、いつも食べている場所を追いやられた生徒たちがこの場所に行き着いたのだろう。

 いつもよりも人が多いということは、視線も多いということで……。

 小山田くんはうちの高校のアイドルだから、まあ、女子に騒がれるのは仕方がない。

 ジャニ系の岩崎くん、寡黙な男前の甲斐くん、そこに美人系のキィちゃんが加わったら、最強ユニットの出来あがりである。
 あちこちから悲鳴やシャッター音が聞こえてくるよ。

「なにしてんのよ、平凡」

 ぼくを平凡と呼ぶのは、この世でマドカだけだ。
 振り返りもせず、最強ユニットの姿をひたすらながめるだけのかんたんなお仕事をしながら、答える。

「見ればわかるだろ。眼福してんだよ」
「なるほど理解した」

 ぼくのとなりにマドカも並んで、スマートフォンで4人の写真を撮り始めた。
 4人とは言っても、ピントは小山田くんに合わせているだろうけどさ。

「あとで画像ちょうだい。ぼくは今、4人の姿を記憶に残すのに必死だから」
「りょ」

 こんなときのマドカは、なかなか話のわかる女子だ。

 ん? なんか、男子からの刺すような視線を感じるんだけど。あ、マドカか。

 マドカって性格は最悪だけど、見た目は清純系だから、男子にモテるんだよね。そのとなりのモナミさんは身長高いし、頼れる姉貴って感じで、これまた目立つ。

 ぼくはふたりから、そそっと離れる。

「上野くん、どうしたの?」

 めざといモナミさんが、ぼくがふたりから物理的に距離を置いたことに気が付いた。

「い、いやあ、ねえ?」
「マドカのこと、意識してんの? 大丈夫よ。あんたとは絶対に、ないから!」
「ぼくだって、マドカとはごめんだよ」
「なんですってえええ!?」
「こら、マドカ!」

 モナミさんの制止も聞かず、まなじりを吊り上げたマドカに、がっちり腕をつかまれた。胸当たってんだけど、どうせ「当ててんのよ」とか言うんだろ、知ってる。

 振り払うことも出来るけど、一応相手はオンナのコだからなあ。
 どうしようかな、って思ってたら助けが来た。

「カズ、席ゆずってもらったぞ」
「はーい、ありがとう」
「……なにしてんだ?」

 うわ、声低っ!!?
 小山田くんはまだマドカのしたことを気にしてんのかな? ぼくはもう許しちゃってんだけどな。
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