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第二話 灯台でうっかり死にかかったら助けてもらった話
§12 - 午後五時四十分
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「あ、あのさ、駅に着いたけど。キミ、大丈夫?」
聞き慣れない声がして、ぼんやりと意識が戻ってくる。寝てた。すごく寝てた。爆睡した。
(なんで車の中にいるんだろ? これ、うちの車じゃないよな)
そう思いながら顔を上げる。ふわふわした毛がフードについてるコートがおれの身体に掛けられていた。こんな服、持ってたっけ? それにしても、ここはどこだろう。たしか灯台にいたはずなのに……。
「……ここは……」
「あ、えっと、スマホで調べたら一番近くにあるのがT駅だったから来たんだけど。ここで良かった?」
運転席から見知らぬ声……じゃない!! イケメンのお兄さんだっ!!
「うわっ! すみません!! すっかり寝てた!」
一気に目が覚め、がばっと起き上がる。そうだった。灯台でうっかり凍死しそうになってたのを助けてもらって……あれ、ここ、どこだ? 車の窓から外を見る。駅だ。しかも、T駅。そっか、お兄さんが送ってくれたんだ……うわあ……なんて親切な人だろう。
「なんか、色々とありがとうございました」
頭を下げてお礼を伝える。顔を上げた時、こっちを向いているお兄さんと目が合った。今度は眼鏡をかけている。うちの家族で眼鏡をかけてる人はいないから、なんか新鮮。そして、やっぱりかっこいい。
「い、いや、こちらこそ……そうだ、キミ、ちゃんと帰れる?」
「はい。スマホで……」
灯台行きのバス代で現金をほとんど使い切ったけど、スマホで電車に乗れるから大丈夫。そう思って、いつもスマホを入れているカーゴパンツのポケットを漁る。あれ? 無いぞ。おかしいな。
「あれ? スマホがない……どこで……アーッ!!」
そうだ! 思い出した!! お兄さんに助けてもらう前に落としたんだ!!
「どうしたの?」
「スマホ……灯台に落としてきちゃった……」
一気に血の気が引く。どうしよう。電車に乗れない。ゴン兄に迎えに来てもらうこともできない……。すると、お兄さんが心配そうに身を乗り出した。
「え? 灯台のどこ?」
「カギの反対側の方に……手がかじかんでポケットからうまく出せなくて……落ちた後、足にぶつかって飛んでっちゃって……」
「うわ、気付かなかった。ゴメン」
すごく申し訳なさそうに言われてしまった。いや、そんな、お兄さんが謝ることじゃないです。
「いえ、悪いのはおれなんで……でも、どうしよう……」
これ以上お兄さんに迷惑をかけることはできない。どうしたらいいんだろ。公衆電話を探す? あるのかな? 見たこと無いや。それに、使い方がよくわからない。家の固定電話と同じだよな? たしか十円玉を入れて使うんだよな。小銭はまだ残っているかな? お金が足りなくて途中で切れたらやだな……。
そんな風にあれこれ考えていると、お兄さんがまた声をかけてくれた。
「もしかして、帰りの電車代が無いとか?」
「はい。灯台までのバス代と入館料で現金使い切っちゃって。だから、スマホがないとヤバくて」
このお兄さんにスマホ貸して下さい、っていうのは厚かましいよな。あ、そうだ、交番! 交番で電話を借りられないかな。迷子ですって言えばいけるかな? でも十八歳で迷子ってのもなあ……。それにおれ、高校通っている間に自転車の駐輪場所をしょっちゅう間違えて、駅員さんとかお巡りさんに怒られてたし、T駅のブラックリストに載ってたら嫌だなあ……。
「あ、あのさ、よかったら、これ使って」
ん? 目の前にお兄さんの手が。そして一万円札。ええっつ!!
「悪いです。こんな大金」
「いや、実は今ちょっと千円札切らしてて、大きいお札しか無くてさ」
お兄さんがちょっと困ったように笑いながら、一万円をおれの手に握らせてくれた。どれだけ良い人なんだこのイケメンお兄さんは!? でも、正直なところ、すごく助かる。
「じゃあ、お言葉に甘えて……ありがとうございます」
ここは素直に受け取ろう。他人にこんなに優しくしてもらったのは初めてだ。すごい。嬉しい。
「ちゃんと家に帰るんだよ」
「はい!」
おれがお金を受け取ったら、お兄さんも安心したみたいに笑った。うわあ……かっこいい……お礼にキスしたい……って、違う違う!!
「そ、そうだ。電車の時間を調べてみようか」
おれの邪な考えが通じてしまったのか、お兄さんがくるりと前を向いてしまった。うう、なんてことを。お兄さんはスマホで電車の時刻を調べてくれている。たしかここの電車は一時間に一本くらいだったよな。いま何時だろ? もう行った後かなあ?
「えーっと……あと五分くらいで上り列車が来るみたいだけど」
「あ、それに乗ります!」
言いながら、ふと尿意を感じた。トイレに寄るヒマあるかな?
「なら急がないと。次は一時間後みたいだから」
「はい! 今日は本当にありがとうございました!!」
もう一度お礼を言ってから車を降りて一礼する。うわ、かっこいい車だ。スバルの……よく読めないや。あとでゴン兄に聞いてみよう。そうだ、あと五分くらいで電車が来るなら、急いでトイレに行かなきゃ。
T駅は改札の外にもトイレがあるので、おれは猛ダッシュで駆け込んだ。
聞き慣れない声がして、ぼんやりと意識が戻ってくる。寝てた。すごく寝てた。爆睡した。
(なんで車の中にいるんだろ? これ、うちの車じゃないよな)
そう思いながら顔を上げる。ふわふわした毛がフードについてるコートがおれの身体に掛けられていた。こんな服、持ってたっけ? それにしても、ここはどこだろう。たしか灯台にいたはずなのに……。
「……ここは……」
「あ、えっと、スマホで調べたら一番近くにあるのがT駅だったから来たんだけど。ここで良かった?」
運転席から見知らぬ声……じゃない!! イケメンのお兄さんだっ!!
「うわっ! すみません!! すっかり寝てた!」
一気に目が覚め、がばっと起き上がる。そうだった。灯台でうっかり凍死しそうになってたのを助けてもらって……あれ、ここ、どこだ? 車の窓から外を見る。駅だ。しかも、T駅。そっか、お兄さんが送ってくれたんだ……うわあ……なんて親切な人だろう。
「なんか、色々とありがとうございました」
頭を下げてお礼を伝える。顔を上げた時、こっちを向いているお兄さんと目が合った。今度は眼鏡をかけている。うちの家族で眼鏡をかけてる人はいないから、なんか新鮮。そして、やっぱりかっこいい。
「い、いや、こちらこそ……そうだ、キミ、ちゃんと帰れる?」
「はい。スマホで……」
灯台行きのバス代で現金をほとんど使い切ったけど、スマホで電車に乗れるから大丈夫。そう思って、いつもスマホを入れているカーゴパンツのポケットを漁る。あれ? 無いぞ。おかしいな。
「あれ? スマホがない……どこで……アーッ!!」
そうだ! 思い出した!! お兄さんに助けてもらう前に落としたんだ!!
「どうしたの?」
「スマホ……灯台に落としてきちゃった……」
一気に血の気が引く。どうしよう。電車に乗れない。ゴン兄に迎えに来てもらうこともできない……。すると、お兄さんが心配そうに身を乗り出した。
「え? 灯台のどこ?」
「カギの反対側の方に……手がかじかんでポケットからうまく出せなくて……落ちた後、足にぶつかって飛んでっちゃって……」
「うわ、気付かなかった。ゴメン」
すごく申し訳なさそうに言われてしまった。いや、そんな、お兄さんが謝ることじゃないです。
「いえ、悪いのはおれなんで……でも、どうしよう……」
これ以上お兄さんに迷惑をかけることはできない。どうしたらいいんだろ。公衆電話を探す? あるのかな? 見たこと無いや。それに、使い方がよくわからない。家の固定電話と同じだよな? たしか十円玉を入れて使うんだよな。小銭はまだ残っているかな? お金が足りなくて途中で切れたらやだな……。
そんな風にあれこれ考えていると、お兄さんがまた声をかけてくれた。
「もしかして、帰りの電車代が無いとか?」
「はい。灯台までのバス代と入館料で現金使い切っちゃって。だから、スマホがないとヤバくて」
このお兄さんにスマホ貸して下さい、っていうのは厚かましいよな。あ、そうだ、交番! 交番で電話を借りられないかな。迷子ですって言えばいけるかな? でも十八歳で迷子ってのもなあ……。それにおれ、高校通っている間に自転車の駐輪場所をしょっちゅう間違えて、駅員さんとかお巡りさんに怒られてたし、T駅のブラックリストに載ってたら嫌だなあ……。
「あ、あのさ、よかったら、これ使って」
ん? 目の前にお兄さんの手が。そして一万円札。ええっつ!!
「悪いです。こんな大金」
「いや、実は今ちょっと千円札切らしてて、大きいお札しか無くてさ」
お兄さんがちょっと困ったように笑いながら、一万円をおれの手に握らせてくれた。どれだけ良い人なんだこのイケメンお兄さんは!? でも、正直なところ、すごく助かる。
「じゃあ、お言葉に甘えて……ありがとうございます」
ここは素直に受け取ろう。他人にこんなに優しくしてもらったのは初めてだ。すごい。嬉しい。
「ちゃんと家に帰るんだよ」
「はい!」
おれがお金を受け取ったら、お兄さんも安心したみたいに笑った。うわあ……かっこいい……お礼にキスしたい……って、違う違う!!
「そ、そうだ。電車の時間を調べてみようか」
おれの邪な考えが通じてしまったのか、お兄さんがくるりと前を向いてしまった。うう、なんてことを。お兄さんはスマホで電車の時刻を調べてくれている。たしかここの電車は一時間に一本くらいだったよな。いま何時だろ? もう行った後かなあ?
「えーっと……あと五分くらいで上り列車が来るみたいだけど」
「あ、それに乗ります!」
言いながら、ふと尿意を感じた。トイレに寄るヒマあるかな?
「なら急がないと。次は一時間後みたいだから」
「はい! 今日は本当にありがとうございました!!」
もう一度お礼を言ってから車を降りて一礼する。うわ、かっこいい車だ。スバルの……よく読めないや。あとでゴン兄に聞いてみよう。そうだ、あと五分くらいで電車が来るなら、急いでトイレに行かなきゃ。
T駅は改札の外にもトイレがあるので、おれは猛ダッシュで駆け込んだ。
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