【完結】街一番の有名人は、薬草クッキーがお好き

青空爽

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第三話 デート

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 ゼルバさんとほんのり頬を染めながら見つめ合っていたら、お客さんの一人が口を開いた。

「カップル成立おめでとうございます。じゃあ、早速デートの約束をしちゃいましょう!」    

 その言葉にいち早くゼルバさんが反応した。

「そ、そうですね! レノンさん、いいですか!?」
「は、はい……」

 私は照れ臭くてモジモジ体を揺らしながらうなずいた。

「俺はいつでもいいです! 今日も明日も明後日も暇です!」
「おいおい! 一秒でも早くデートしたいからって、嘘こくなよ! お前みたいな優秀な男が暇な訳ねーだろ!」

 お客さんの一人にスパーンと頭をはたかれて、ゼルバさんは気まずそうにほおをかいた。
 ふふ。ゼルバさんって面白い方なのね。私はクスクス笑いながら口を開いた。

「ゼルバさん。私、午前中はここで働き、夜はクッキーを焼かなければならないので、お昼から夕方ぐらいまでならいつでも空いています。ゼルバさんに予定を合わせますので、無理なさらないでくださいね」
「お昼から夕方ですね! 分かりました!――えっと、じゃあ明後日のお昼はどうでしょう?」
「はい。大丈夫です」

 結局、ゼルバさんが明後日のお昼にこの店に迎えに来てくれることになった。
 ゼルバさんはいつまでも話し込んでいたら他のお客さんに迷惑なので、そろそろ帰りますねと言って店を出て行った。帰り際、こちらを何度も振り返りニコニコ笑いかけてくれたので、私はゼルバさんが見えなくなるまでずっと小さく手を振り続けた。

 完全にゼルバさんの姿が見えなくなると、キノルルが肘でツンツン私をつついた。

「レノン。やるじゃねーか! まさかあのSランク冒険者様のハートを射止めちまうとはな!」
揶揄からかわないでよぉ。私だってびっくりしてるんだから」
「へへ。でも俺、ゼルバさんがお前に惚れてるの、だいぶ前から気付いてたぜ!」
「うそ!?」
「ほんとほんと。だってゼルバさんこの店に入ってくると、他に目も触れず一直線にレノンのとこへ向かってきてたからな。しかも隣の俺のことなんか見えちゃいねー。真っ赤になりながらうっとりした表情でお前を見てやがる。あ、こりゃ惚れてるなってすぐ気付いたよ。いつ口説くのかと思ってたら、それから半年も経ってからなのが笑えたけどな」

 えぇ!? 半年も前からゼルバさんは私に好意を抱いてくれていたの? 全然気付かなかったわ……。
 キノルルは顎ひげを撫でながら感心したように笑う。

「半年も片想いしてるなんてすげーよ。Sランク冒険者ってのは手が早い遊び人ばっかだと思ってたけど、あの人は違うぜ。――レノン。良い男に出会えて良かったなぁ。ゼルバさんのこと、大事にしろよ」

 本当、あんな素敵な人が私の恋人になってくれるなんて夢みたい。キノルルの言う通り、大事に大事にしよう。
 私はキノルルの方へ顔を向けると、『もちろん!』と言って微笑んだのだった。

※※※※

 デート当日。
 お仕事が終わり、エプロンを脱いで店の前に立っていたら、前方からもの凄い速さで走ってくるゼルバさんが見えた。
 私の前で立ち止まると、息を切らしながら笑顔を向ける。

「お待たせしました」
「いいえ。走ってきてくれたんですね。すみません」
「いえいえ! 一秒でも早く貴方に会いたかったので」

 ゼルバさんの言葉に、私のほおはほんのり染まった。……ゼルバさんって愛情表現がハッキリした方なのね。

「では、行きましょうか」
「はい」

 私たちは隣に並ぶと、ゆっくりと歩き始めた。
 目的地は、近くの自然公園だ。
 公園をのんびり散歩して、そのあとベンチに座ってお昼を食べるのが今日のデートプランだ。
 一応サンドイッチを作って持ってきたけど、不要かしら? もし途中でなにか美味しそうなお店を見つけたら、そこに入ろう。サンドイッチは夕飯にすればいいわ。
 そんなことを考えているうちに、公園に着いてしまった。
 さぁ、たっぷり自然を楽しみましょうと思って一歩踏み出したら、突然ゼルバさんが立ち止まった。

「あの……」

 ゼルバさんはなにか言いたそうに目を左右にキョロキョロさまよわせている。
 どうしたのかと思い不思議そうに眺めていたら、ゼルバさんがゆっくりと手を差し出した。

「手……繋いでもいいですか?」
「!」
「あ! 嫌ならいいです! 俺手汗凄いし嫌ですよね! すみません!」
「い、いえ……」

 恥ずかしいわ……。で、でも恋人同士なら手ぐらい繋ぐわよね。こんなことで照れてしまうなんて、私はまだまだお子様ね。
 そんなことを思いながらそっとゼルバさんの手を握った。
 ゴツゴツしてて大きくて、男の人の手って感じだった。

「じゃ、じゃあ行きましょうか」

 私は照れているのを隠すため、早口でそんなことを言った。
 嬉しそうに満遍の笑みを浮かべたゼルバさんが、『はいっ!』と元気よく返事をした。
 私たち手を繋ぎながら、のんびりと自然公園に入っていったのだった。
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