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第六話 お付き合いは順調です②
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演劇が終わったら、いつものように自然公園に向かった。ベンチに腰掛けて、演劇の感想を言い合う。
演劇の内容はこうだ。
主人公のご令嬢には婚約者がいた。だが、その婚約者が浮気をして令嬢は捨てられてしまった。失意のどん底で騎士様に出会う。二人は恋に落ち、途中障害もあるが最後はハッピーエンドで終わるという物語だ。
ご令嬢に感情移入して見ていた私は、幸せな結末に大満足で、何度も『本当に良かったわ……』とゼルバに語っていた。
ゼルバもこの結末に満足しているらしく、私の話にコクコクとうなずいてくれる。
「でもさぁ、あの婚約者最悪だよな。私の愛する者は君一人だとか言っておいて、影で女の子と浮気してるんだもんな」
「ほんとほんと! 甘い言葉を囁く男の人って危険なのよ! 誰にでも言っている可能性があるんだから!」
これは私の祖母からの受け売りだ。
祖母は私が小さい頃、『レノンや。甘い言葉を囁く男には要注意じゃ。そういう男は誰にでもいい顔するからの』と、よく言っていたのだ。
私の言葉を聞いて、ゼルバは苦笑した。
「じゃあレノンは、俺のことも危険だと思ってる?」
「え?」
「俺ってレノンのこと毎回口説いてるじゃん」
「ゼ、ゼルバは別よ!」
確かにゼルバには会うたびに口説かれている。
好きだよ。可愛い。など、甘い言葉のオンパレードだ。だけど、ゼルバは演劇で見たあの婚約者とは違う。
真面目で一途で私のことを心から愛してくれている……はず!
――なんて、自分で言うなって感じね。
私は恥ずかしくなってきて、ゼルバから視線を逸らしてうつむいてしまった。
すると、ゼルバが私の髪を一房掴み、耳にかけてくれた。
「良かった。俺の気持ち、ちゃんとレノンに伝わってるんだね」
「う、うん……」
「この際だから言っておくけど、俺が毎回必死になって口説くのは、レノンだけだからね」
「……」
「他の女の子には興味がないんだ。レノンのことしか考えられない」
ゼルバの低い声色が甘くて、私の顔はどんどん熱を持っていった。思わず太ももに載せていた両手をギュッと握りしめてしまう。
もう! ゼルバ、また私を口説いてる。嬉しいけど、恥ずかしいよ……。
私はゼルバの顔がまともに見れなくて、必死に握りしめた自分の拳を見つめていた。
「ねぇ、レノン。こっち向いて。真っ赤になった可愛い顔見せてよ」
「い、嫌よ。恥ずかしい」
「見せて」
そう言ってゼルバが私のアゴに手を伸ばした。人差し指でクイっと上を向かされて、ゼルバと目が合う。ゼルバは優しく微笑んでいて、うっとりするほどカッコよかった。
その顔が、だんだんこちらに近づいて来る。
「!?」
こ、これはもしかして、キス!?
私今、ゼルバにキスされそうになってる!
バクバクと心臓がうるさい。
目を瞑ることすら頭になくて、近付いてくるゼルバの整った顔をバカみたいに凝視していた。
――すると。
「ママー。見て見て。あの二人、チュウしようとしてるー」
「こ、こら! やめなさい!」
私たちの前を通り過ぎる親子の会話が聞こえて、ハッとした私はドンっとゼルバの体を押した。ゼルバは私に押されたくらいじゃビクともしないだろうが、とりあえず動きを止めてくれた。
「ゼ、ゼルバ! ここは外よ! みんなが見てる!」
私が真っ赤になって訴えると、ゼルバは苦笑して私から体を離した。
「ちぇっ。もう少しでキスできたのになぁー」
「だ、だって……!」
「ふふ……。じゃあ今度は俺の家で会おう。それなら誰にも見られないだろ?」
そう言ってゼルバが愛おしそうに私の頰を撫でてきた。
家!? 家か……。
確かにお家なら、もっとゼルバと触れ合える。
ゼルバに触れたい。ゼルバのことがもっと知りたい。
そう思ったので、私はリンゴみたいに真っ赤な顔をしながら、弱々しくうなずいたのだった。
演劇の内容はこうだ。
主人公のご令嬢には婚約者がいた。だが、その婚約者が浮気をして令嬢は捨てられてしまった。失意のどん底で騎士様に出会う。二人は恋に落ち、途中障害もあるが最後はハッピーエンドで終わるという物語だ。
ご令嬢に感情移入して見ていた私は、幸せな結末に大満足で、何度も『本当に良かったわ……』とゼルバに語っていた。
ゼルバもこの結末に満足しているらしく、私の話にコクコクとうなずいてくれる。
「でもさぁ、あの婚約者最悪だよな。私の愛する者は君一人だとか言っておいて、影で女の子と浮気してるんだもんな」
「ほんとほんと! 甘い言葉を囁く男の人って危険なのよ! 誰にでも言っている可能性があるんだから!」
これは私の祖母からの受け売りだ。
祖母は私が小さい頃、『レノンや。甘い言葉を囁く男には要注意じゃ。そういう男は誰にでもいい顔するからの』と、よく言っていたのだ。
私の言葉を聞いて、ゼルバは苦笑した。
「じゃあレノンは、俺のことも危険だと思ってる?」
「え?」
「俺ってレノンのこと毎回口説いてるじゃん」
「ゼ、ゼルバは別よ!」
確かにゼルバには会うたびに口説かれている。
好きだよ。可愛い。など、甘い言葉のオンパレードだ。だけど、ゼルバは演劇で見たあの婚約者とは違う。
真面目で一途で私のことを心から愛してくれている……はず!
――なんて、自分で言うなって感じね。
私は恥ずかしくなってきて、ゼルバから視線を逸らしてうつむいてしまった。
すると、ゼルバが私の髪を一房掴み、耳にかけてくれた。
「良かった。俺の気持ち、ちゃんとレノンに伝わってるんだね」
「う、うん……」
「この際だから言っておくけど、俺が毎回必死になって口説くのは、レノンだけだからね」
「……」
「他の女の子には興味がないんだ。レノンのことしか考えられない」
ゼルバの低い声色が甘くて、私の顔はどんどん熱を持っていった。思わず太ももに載せていた両手をギュッと握りしめてしまう。
もう! ゼルバ、また私を口説いてる。嬉しいけど、恥ずかしいよ……。
私はゼルバの顔がまともに見れなくて、必死に握りしめた自分の拳を見つめていた。
「ねぇ、レノン。こっち向いて。真っ赤になった可愛い顔見せてよ」
「い、嫌よ。恥ずかしい」
「見せて」
そう言ってゼルバが私のアゴに手を伸ばした。人差し指でクイっと上を向かされて、ゼルバと目が合う。ゼルバは優しく微笑んでいて、うっとりするほどカッコよかった。
その顔が、だんだんこちらに近づいて来る。
「!?」
こ、これはもしかして、キス!?
私今、ゼルバにキスされそうになってる!
バクバクと心臓がうるさい。
目を瞑ることすら頭になくて、近付いてくるゼルバの整った顔をバカみたいに凝視していた。
――すると。
「ママー。見て見て。あの二人、チュウしようとしてるー」
「こ、こら! やめなさい!」
私たちの前を通り過ぎる親子の会話が聞こえて、ハッとした私はドンっとゼルバの体を押した。ゼルバは私に押されたくらいじゃビクともしないだろうが、とりあえず動きを止めてくれた。
「ゼ、ゼルバ! ここは外よ! みんなが見てる!」
私が真っ赤になって訴えると、ゼルバは苦笑して私から体を離した。
「ちぇっ。もう少しでキスできたのになぁー」
「だ、だって……!」
「ふふ……。じゃあ今度は俺の家で会おう。それなら誰にも見られないだろ?」
そう言ってゼルバが愛おしそうに私の頰を撫でてきた。
家!? 家か……。
確かにお家なら、もっとゼルバと触れ合える。
ゼルバに触れたい。ゼルバのことがもっと知りたい。
そう思ったので、私はリンゴみたいに真っ赤な顔をしながら、弱々しくうなずいたのだった。
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