【完結】街一番の有名人は、薬草クッキーがお好き

青空爽

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第十六話 ま、負けないわ!①

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「レノン。今日は泊まって行きなよー」

 あれから私たちは思う存分イチャイチャして過ごした。
 ふ……と窓の外を見ると、いつの間にか辺りはとっぷり日が暮れていた。
 もう帰らなければと思いソファから立ち上がったところで、ゼルバが泊まっていけと駄々をこね始めたのだ。

「ダメよ。帰って明日売るクッキーを作らなきゃ」

 私の言葉に、ゼルバはねたように唇を尖らせた。

「一日くらい仕事休んでもいいんじゃない?」
「うーん……。前もって休むことを伝えていれば問題ないと思うけど、突発的に休んだらキノルルに悪いわ」
「真面目だなぁ、レノンは」

 そう言ってゼルバは、再び私を抱き寄せた。
 
「俺、レノンと離れたくないんだけど……」
「私もよ。でも……帰らなくちゃ」

 ゼルバは更にむーっと唇を尖らせた。
 だが、私が申し訳なさそうな表情で見つめると、困ったような顔をしてからため息を吐いた。

「分かったよ。あんまりしつこくしちゃレノンに嫌われるからね」
「嫌いになんかならないわよ」

 むしろ、鬱陶うっとおしいと思うくらいしつこくされたい。
 でも、今日は本当に帰らなきゃ。あまり遅くなると今晩の仕込みが間に合わないわ。
 私はチュッとゼルバのほおにキスをしてから体を離した。

「ごめんなさいね。じゃあ、明後日また会いましょう?」

 明日ゼルバはお仕事らしいので、先程明後日会う約束をしたのだ。

「……分かったよ。じゃあ家まで送ってくよ。夜道を女の子一人で歩かせたら危ないからね」
「そんな……。悪いわ」
「送らせてよ。本音はもう少しレノンと一緒にいたいんだ」
「まぁ……」

 今日のゼルバは甘えんぼね。
 なんだか可愛いわ。
 人通りの多い道を歩くから、危険は少ないと思うんだけど、ゼルバがそう言ってくれるなら、お言葉に甘えちゃおうかしら。

「ありがとう。じゃあお願いするわ」
「よしきた。――じゃあ」

 ゼルバが手を差し出したので、私は躊躇ためらいもなくギュッと握った。
 さっきまで人前でゼルバと触れ合うことに抵抗があったけど、もう気にならないわ。
 私って単純なのね。
 ゼルバがこれでもかと愛をささやいてくれたので、自信がついてしまった。
 今の私はなにも怖くない。言いたいことがあるなら言いなさいよって気分だわ。
 そんな感じで妙に強気になってしまった私は、ゼルバと堂々と手を繋ぎながら家まで帰ったのだった。
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