追放された『迷宮術士』の俺は、廃村を開拓してスローライフするつもりだったのだが?~元追放者のワケアリ領民たちと村を発展させます~

くま猫

文字の大きさ
55 / 105
第五章『黄昏の終わり月夜と漆黒』

第54話『怪力豪腕、人間迫撃砲』

しおりを挟む
「こりゃまた、凄いな。まるで壁が迫ってくるような迫力だ……」

「へっ! 靴底から、ズンズンと重低音が響いてきやがるぜッ!」

呵呵、血沸胸躍なかなかおもしれぇじゃん!



 王の軍勢は間近にまで近づいてきている。
 陣形を維持し、俺達を面で押し潰そうと迫りくる。
 これは、波だ。飲まれる前に、押し切らねば。


 マルマロの見立てで2万を越える軍勢。


 前列は巨大な盾を構える重装備の兵士。
 その後ろに控える、剣を持つ兵士。
 最後列には、槍兵。



「最前列の重装甲の大盾はちっと、ジャマだ。ユーリ、蹴散らせっかッ?」

「大丈夫だ。おあつらえ向きに、敵さんがプレゼントしてくれた投石機《カタパルト》の球状の巨岩が、そこらに落ちてる。俺が、ソレをプレゼントぶん投げ返して道を作る」

呵呵、人間投石機すげぇべ。ユーリ、人間カタパルトだべ




 投石機《カタパルト》。恐ろしい兵器だ。

 500キロを越える球状の岩を飛ばす攻城兵器。
 その飛距離は300メートルを越える。

 付与魔術《スペル・エンチャント》次第で飛距離は更に伸びる。
 分厚い城壁も一撃で粉砕できる。そんな兵器だ。


 馬鹿げた威力にも関わらずあまり使われない兵器でもある。
 単純に投石機の運用が難しいからだ。

 投石機《カタパルト》1機の運用に30の兵を要する。
 超重量の巨岩を運搬するのに、更に20の運搬要員が必要。

 50人も割り当てなければ扱えない兵器。




「――まっ、俺なら一人で十分だけどな!!」




 500キロの球状の巨岩を片手で鷲掴《わしづかみ》にする。
 巨岩が手のひらにピタリとフィットする。

 イメージしろ、ボーリングの玉が描く軌道を。
 目の前の軍勢はピンだ。



 狙うは当然、――ストライク。



 巨岩を片手で放る。そんなことが、――できるか?
 人の体の構造は巨岩の投擲に最適化されていない。
 物理的に……そんなことが、人に、――可能か? 


 

「――んなもんなぁ、デキるにキマってんだろぉガァッ!!!!」




 500キロの巨岩が――飛翔する。
 直線的な軌道で。突き進む。


 飛翔する巨岩が音速の壁を破る音が、聞こえた。


 これは、超高速で飛翔する巨大な、ボーリング玉。
 最前列の大盾を構える重装甲兵に、着弾。 


 瞬間、重装甲の大盾兵が破《わ》れた。

 
 吹き飛ぶでも、砕くでもなく、破《わ》れた、パンッて。
 当然だ。高速で飛翔する巨岩を、人が受けきれるはずがない。



 前世にも、1メートルを越える砲弾は存在しなかった。
 近い兵器は、914ミリ超重迫撃砲、リトル・デーヴィッド。

 着弾地点にクレーターレベルの壊滅的な損壊をもたらす。
 人でなく、陣そのものを、破壊するために造られた兵器。
 
 テレビ世界仰天SHOWの人が、そう言ってた。
 それを越える大きさの玉を、俺は歩兵相手に用いる。



 大盾もフルプレートアーマーも何の意味も持たない。
 付与魔術の物理耐性強化も、気休めにしかならない。

 防ぐのに必要なのは、対人用の盾ではない。
 城壁3枚、そのあたりが妥当なとこだろう。




「本気で投げりゃ、城壁5枚はいけるかもな」




 前列の大盾兵、中列の剣士、後列の槍兵が、爆散。
 赤色インクが詰まった水風船のように破裂。
 敵の陣形を力ずくで、強制的に破る。

 
 
 理解不能な破滅的な攻撃。
 戦場に生じたわずかな硬直。陣形の乱れ。
 だが、いまだ敵兵達の士気は、高い。




(今の一撃にビビって逃げてくれたら、楽だったんだがなぁ……)



 
 相対する敵は、俺達への恐怖より、闘志が勝っている。
 これだけ理不尽で圧倒的な暴力を見て、なお引かない。

 時間を与えれば、即座に陣形を立て直される。
 その時間を与えてはならない。




「粋だねぇッ! 漆黒の舞台に相応しい鮮血の絨毯《レッドカーペット》だぜッ!」

「我戦場駆鮮血絨毯《ユーリ、道作ってくれてサンキュ。これで突っ込めるべ》」




「オッケー。俺は、後方から石をぶん投げて、敵陣を崩して、団長とエッジが通る道を作る。玉が無くなり次第、俺も突撃する。それでいいか?」




「ユーリの案に乗るぜッ! 今こそ好機ッ! 見逃せねぇよなァッ! エッジ」

不不不、不不不不、不不不不不殺まず、俺が戦場に疑心暗鬼を作る。その後、団長が正面から突っ込むべや
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...