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第五章『黄昏の終わり月夜と漆黒』
第54話『怪力豪腕、人間迫撃砲』
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「こりゃまた、凄いな。まるで壁が迫ってくるような迫力だ……」
「へっ! 靴底から、ズンズンと重低音が響いてきやがるぜッ!」
「呵呵、血沸胸躍」
王の軍勢は間近にまで近づいてきている。
陣形を維持し、俺達を面で押し潰そうと迫りくる。
これは、波だ。飲まれる前に、押し切らねば。
マルマロの見立てで2万を越える軍勢。
前列は巨大な盾を構える重装備の兵士。
その後ろに控える、剣を持つ兵士。
最後列には、槍兵。
「最前列の重装甲の大盾はちっと、ジャマだ。ユーリ、蹴散らせっかッ?」
「大丈夫だ。おあつらえ向きに、敵さんがプレゼントしてくれた投石機《カタパルト》の球状の巨岩が、そこらに落ちてる。俺が、ソレをプレゼントして道を作る」
「呵呵、人間投石機」
投石機《カタパルト》。恐ろしい兵器だ。
500キロを越える球状の岩を飛ばす攻城兵器。
その飛距離は300メートルを越える。
付与魔術《スペル・エンチャント》次第で飛距離は更に伸びる。
分厚い城壁も一撃で粉砕できる。そんな兵器だ。
馬鹿げた威力にも関わらずあまり使われない兵器でもある。
単純に投石機の運用が難しいからだ。
投石機《カタパルト》1機の運用に30の兵を要する。
超重量の巨岩を運搬するのに、更に20の運搬要員が必要。
50人も割り当てなければ扱えない兵器。
「――まっ、俺なら一人で十分だけどな!!」
500キロの球状の巨岩を片手で鷲掴《わしづかみ》にする。
巨岩が手のひらにピタリとフィットする。
イメージしろ、ボーリングの玉が描く軌道を。
目の前の軍勢はピンだ。
狙うは当然、――ストライク。
巨岩を片手で放る。そんなことが、――できるか?
人の体の構造は巨岩の投擲に最適化されていない。
物理的に……そんなことが、人に、――可能か?
「――んなもんなぁ、デキるにキマってんだろぉガァッ!!!!」
500キロの巨岩が――飛翔する。
直線的な軌道で。突き進む。
飛翔する巨岩が音速の壁を破る音が、聞こえた。
これは、超高速で飛翔する巨大な、ボーリング玉。
最前列の大盾を構える重装甲兵に、着弾。
瞬間、重装甲の大盾兵が破《わ》れた。
吹き飛ぶでも、砕くでもなく、破《わ》れた、パンッて。
当然だ。高速で飛翔する巨岩を、人が受けきれるはずがない。
前世にも、1メートルを越える砲弾は存在しなかった。
近い兵器は、914ミリ超重迫撃砲、リトル・デーヴィッド。
着弾地点にクレーターレベルの壊滅的な損壊をもたらす。
人でなく、陣そのものを、破壊するために造られた兵器。
テレビ世界仰天SHOWの人が、そう言ってた。
それを越える大きさの玉を、俺は歩兵相手に用いる。
大盾もフルプレートアーマーも何の意味も持たない。
付与魔術の物理耐性強化も、気休めにしかならない。
防ぐのに必要なのは、対人用の盾ではない。
城壁3枚、そのあたりが妥当なとこだろう。
「本気で投げりゃ、城壁5枚はいけるかもな」
前列の大盾兵、中列の剣士、後列の槍兵が、爆散。
赤色インクが詰まった水風船のように破裂。
敵の陣形を力ずくで、強制的に破る。
理解不能な破滅的な攻撃。
戦場に生じたわずかな硬直。陣形の乱れ。
だが、いまだ敵兵達の士気は、高い。
(今の一撃にビビって逃げてくれたら、楽だったんだがなぁ……)
相対する敵は、俺達への恐怖より、闘志が勝っている。
これだけ理不尽で圧倒的な暴力を見て、なお引かない。
時間を与えれば、即座に陣形を立て直される。
その時間を与えてはならない。
「粋だねぇッ! 漆黒の舞台に相応しい鮮血の絨毯《レッドカーペット》だぜッ!」
「我戦場駆鮮血絨毯《ユーリ、道作ってくれてサンキュ。これで突っ込めるべ》」
「オッケー。俺は、後方から石をぶん投げて、敵陣を崩して、団長とエッジが通る道を作る。玉が無くなり次第、俺も突撃する。それでいいか?」
「ユーリの案に乗るぜッ! 今こそ好機ッ! 見逃せねぇよなァッ! エッジ」
「不不不、不不不不、不不不不不殺」
「へっ! 靴底から、ズンズンと重低音が響いてきやがるぜッ!」
「呵呵、血沸胸躍」
王の軍勢は間近にまで近づいてきている。
陣形を維持し、俺達を面で押し潰そうと迫りくる。
これは、波だ。飲まれる前に、押し切らねば。
マルマロの見立てで2万を越える軍勢。
前列は巨大な盾を構える重装備の兵士。
その後ろに控える、剣を持つ兵士。
最後列には、槍兵。
「最前列の重装甲の大盾はちっと、ジャマだ。ユーリ、蹴散らせっかッ?」
「大丈夫だ。おあつらえ向きに、敵さんがプレゼントしてくれた投石機《カタパルト》の球状の巨岩が、そこらに落ちてる。俺が、ソレをプレゼントして道を作る」
「呵呵、人間投石機」
投石機《カタパルト》。恐ろしい兵器だ。
500キロを越える球状の岩を飛ばす攻城兵器。
その飛距離は300メートルを越える。
付与魔術《スペル・エンチャント》次第で飛距離は更に伸びる。
分厚い城壁も一撃で粉砕できる。そんな兵器だ。
馬鹿げた威力にも関わらずあまり使われない兵器でもある。
単純に投石機の運用が難しいからだ。
投石機《カタパルト》1機の運用に30の兵を要する。
超重量の巨岩を運搬するのに、更に20の運搬要員が必要。
50人も割り当てなければ扱えない兵器。
「――まっ、俺なら一人で十分だけどな!!」
500キロの球状の巨岩を片手で鷲掴《わしづかみ》にする。
巨岩が手のひらにピタリとフィットする。
イメージしろ、ボーリングの玉が描く軌道を。
目の前の軍勢はピンだ。
狙うは当然、――ストライク。
巨岩を片手で放る。そんなことが、――できるか?
人の体の構造は巨岩の投擲に最適化されていない。
物理的に……そんなことが、人に、――可能か?
「――んなもんなぁ、デキるにキマってんだろぉガァッ!!!!」
500キロの巨岩が――飛翔する。
直線的な軌道で。突き進む。
飛翔する巨岩が音速の壁を破る音が、聞こえた。
これは、超高速で飛翔する巨大な、ボーリング玉。
最前列の大盾を構える重装甲兵に、着弾。
瞬間、重装甲の大盾兵が破《わ》れた。
吹き飛ぶでも、砕くでもなく、破《わ》れた、パンッて。
当然だ。高速で飛翔する巨岩を、人が受けきれるはずがない。
前世にも、1メートルを越える砲弾は存在しなかった。
近い兵器は、914ミリ超重迫撃砲、リトル・デーヴィッド。
着弾地点にクレーターレベルの壊滅的な損壊をもたらす。
人でなく、陣そのものを、破壊するために造られた兵器。
テレビ世界仰天SHOWの人が、そう言ってた。
それを越える大きさの玉を、俺は歩兵相手に用いる。
大盾もフルプレートアーマーも何の意味も持たない。
付与魔術の物理耐性強化も、気休めにしかならない。
防ぐのに必要なのは、対人用の盾ではない。
城壁3枚、そのあたりが妥当なとこだろう。
「本気で投げりゃ、城壁5枚はいけるかもな」
前列の大盾兵、中列の剣士、後列の槍兵が、爆散。
赤色インクが詰まった水風船のように破裂。
敵の陣形を力ずくで、強制的に破る。
理解不能な破滅的な攻撃。
戦場に生じたわずかな硬直。陣形の乱れ。
だが、いまだ敵兵達の士気は、高い。
(今の一撃にビビって逃げてくれたら、楽だったんだがなぁ……)
相対する敵は、俺達への恐怖より、闘志が勝っている。
これだけ理不尽で圧倒的な暴力を見て、なお引かない。
時間を与えれば、即座に陣形を立て直される。
その時間を与えてはならない。
「粋だねぇッ! 漆黒の舞台に相応しい鮮血の絨毯《レッドカーペット》だぜッ!」
「我戦場駆鮮血絨毯《ユーリ、道作ってくれてサンキュ。これで突っ込めるべ》」
「オッケー。俺は、後方から石をぶん投げて、敵陣を崩して、団長とエッジが通る道を作る。玉が無くなり次第、俺も突撃する。それでいいか?」
「ユーリの案に乗るぜッ! 今こそ好機ッ! 見逃せねぇよなァッ! エッジ」
「不不不、不不不不、不不不不不殺」
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