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一章
第4話 成人の儀
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翌日から、私は腕輪づくりに取り掛かった。
この里の長から1本の太い木の枝をもらい、そこから触媒を嵌めるための土台や腕輪部分を削りだす。
この木は、神聖な木らしい。里の奥には聖地と呼ばれる場所がある。そこには1本の木が生えており、その周りを囲む神聖な泉がある。これはその神木の枝だという話だ。
その聖地に、私はまだ行ったことがない。これが完成して清める時にその聖地に行くことになるんだそうだ。
15年も住んでいてそんな場所があったことを今まで知らなかった。何もないように見えて意外と奥が深い場所のようだ。
木を彫りだすために、私は大小さまざまな形のナイフを父から借りた。
俗にいう彫刻刀。小学校でこんなのを使った気がする。
やはり異世界でも元の世界と同じようなものは存在する。どういう世界であっても、それが一番理にかなった形なんだろう。
しかし、こちらの世界には元の世界では当たり前にあったものがなくて不便に思うことがたくさんある。
そのNo.1が時計だ。
こちらの世界では、というか私はまだこの里のことしか知らないが、この里では朝が来たら1日の始まりなのである。
朝が来た基準が、元の世界で言うニワトリ的な鳥が鳴くとき。
その鳥の名はマニ。うちでは飼っていないが、いくつかマニを飼っている家があり、どの家のマニも一斉に鳴く。
マニが鳴いたらこの里の人たちは動き出して、狩りなり何なりを始める。
それが何時を指しているのかもわからないし、この世界の1日が何時間で構成されているのかもわからない。
でもこの世界も元の世界と同じように、ひと月を30日~31日とし、365日を数えて1年としている。歴は3界が融合した日を紀元としたルーク歴というものが用いられている。
月の数え方も日本語で言うなら1月、2月って感じだ。ただ、こちらの世界には曜日という概念はない。
今日はルーク歴2053年5月8日。この世界での誕生日はルーク歴2038年5月15日。あと一週間で成人を迎える。そしてその誕生日が成人の儀の日だ。
元の世界ではちょうど春の暖かいいい季節と言ったところだが、こちらの世界には四季がないように思う。
暑い、寒いは当然あるが、それが季節によるものではなく場所や天候に左右される部分が大きい。
ここは森の中だからそうなのか、それともこの世界的にそうなのかはわからない。
真夏日のように暑くて暑くてたまらない日はないし、真冬の日に雪が降って寒いなんてこともない。
この森の中は一年中過ごしやすくて穏やかだ。
「シエル、ご飯食べたら?」
後ろから声をかけられてビクッとなった。母が背面から私を覗き込んでいた。
ご飯?もう昼時だというのか。どうやら相当集中して掘っていたらしい。
ちなみに昼を判断する基準は明確にはない。みんな何となくで適当に昼としている。しいて言えばお腹が空いたら、と言ったところかな。
「まぁ、すごいいいじゃない!」
私が掘ったものを見て、母が目を輝かせた。
頭の中でイメージしたものを必死で掘っていたのだけれど、私も今客観的に見て中々いい出来だと思う。
先生のようなアラベスク模様が掘れたならかっこよくなりそうなのだけど、私にはそんなデザイン力もないし、それを形にできるだけの器用さもないので、深く掘った四角と掘らない四角を交互に並べたような模様にした。この模様の名前はなんて言うんだろう?チェック柄とはまた違う気がする。
まぁ、とにかくこれなら単純作業だし、私にもできる。
昼ご飯を食べてからまた作業を始め、一日で腕輪と土台部分を作り上げた。
我ながら大した集中力だと思う。帰ってきた父にも褒められたので、割と様にはなっているようだ。
一週間後、ついに成人の日を迎えた。
成人の儀だということで、里の中心にある広場に里の人間ほぼすべてが集まっていた。何か集会が開かれるときは大体ここで行われる。公会堂もあるが、そこはあまり広くないので、少人数で会議するときによく使われているらしい。
この里の総人口はざっと200人ほど。この世界においてエルフはそんなに少ないのかと思うかもしれないが、ここだけが全てではなく、色々な地域に里を構えているらしい。
成人の儀が始まり、この里の長であるアルフレッドという名の白髪のエルフが祝詞を述べ始めた。
アルフレッド、見た目は他のエルフと同様に20代後半に見えるが、この里では一番の長生きらしい。どの世界でも白髪がラスボスっぽい感じなのは共通なのだろうか。
祝詞が終わると、私と両親、アルフレッドを入れた計4人だけで聖地と呼ばれる場所に向かった。
今まで15年ここで暮らしてきて、なぜここに来たことがないのかと思うほどそこは近くにあった。
エルフの里はエルフじゃない人間が森に入っても、決して里にはたどり着けないように幻術が施されているらしいのだけれど、この聖地も普段は同じように何か巧妙な手段で隠されているのだろうか。
聖地は話に聞いていた通り、中心に大木があり、その島の周りを囲むように透き通った泉があった。大木の周りには色とりどりの花が咲き、小鳥や蝶が舞っている。森が続いていたはずなのに突然現れたその光景は、想像よりも遥かに幻想的で目を奪われた。
「すごい…」
思わず感嘆の声が漏れる。
「あの泉にお前が作った触媒を浸すのだ。そして神木に祈りを捧げろ」
アルフレッドが言う。
私はそれに従い、泉の側まで歩き、水に触媒を嵌めた腕輪を沈めた。
立ち上がり、神木に向かって手を合わせる。祈りを捧げるための文言は教わっていた。
「聖なるご神木に祈りを捧げん。我が道を照らし給え、魂を導き給え、命を守り給え…」
文言を唱える。が、特に何も起きない。それで一体この後はどうすればいいのだろうか。
「それで終わりだ。泉から触媒を出していいぞ」
そんな私の心中を察してくれたのか、アルフレッドが後ろから声をかけてきた。
なるほど、これでいいのか。何のためにやったのか全く分からないが、まぁ、いいや。
泉から触媒を引き上げると、心なしか温かい気がした。
「これを身に付けている限り、ご神木がお前を導くであろう」
アルフレッドが私の隣まで来て言う。
私は腕輪を右手首に嵌めた。自分の腕のサイズに調節したので、嵌める時にちょっと大変ではあるけど、動いても取れないくらいにはぴったりだ。
「はい、ありがとうございます」
この場所についていろいろと聞きたいとは思ったが、神聖な雰囲気に飲まれ、今ここでそれを聞くことは憚られた。
来た道をまたみんなで戻る。
もうみんないないだろうと思っていた広場では、多くの人が慌ただしく何かを準備していた。
何かを、というか、これはおそらく宴の準備だ。
中央に火が焚かれ、何かの料理が煮込まれている。その周りには皆がそれぞれ持ってきたのであろうテーブルとイスが並べられていた。
皆楽しそうに話に花を咲かせており、まるでお花見でも始めるかのようだ。
こんな風に里の人間が全員で一人の成人を祝ってくれるのか。元の世界ではちょっと考えられない。嬉しいような、恥ずかしいような。
その後はみんなで準備をし、夜に宴が開かれた。
里の人間が次々私の元へきて祝辞を述べる。
一人一人と会話しなければならないので、正直料理を食べるどころではない。この里では子供が久しぶりと言うこともあってか、みな親戚の家の子みたいな感じに接してくる。でもまぁ、悪い気はしないのでこの雰囲気を楽しむことにした。
成人、と言うことだけあって、お酒も許された。
元の世界では興味がなくお酒を飲むことはなかったけれど、初めて飲むお酒は特においしくなかった。が、祝辞を述べにくる人たちはみんなお酌をしてくるので飲まざるを得ない。
初めてお酒を飲むのに、祝辞に来た人間に付き合ってずっと飲んでたらそりゃどう考えても酔う。
話をしているうちにクラクラしてきて、気分も悪くなってきた。大丈夫か?と父が声をかけて来た時には返す気力もなく、ただグルグル回る景色の中、深い眠りに落ちて行った。
私は、深い森の中にいた。
エルフの里の森ではない。もっと暗く、もっと深く、もっと陰湿な森。
見渡す限り同じ景色が続き、一瞬で方向を見失う。
どこから来たのかも、どこへ行けばいいのかも分からない。
なぜここにいるのかも、分からない。
これは夢だ。私はさっきまで宴でお酒を浴びるほど飲まされて寝てしまったはず。
夢の中だからなのか、酔いによる気分の悪さも、体のだるさもなく、意識もはっきりしている。
森の中を歩く。進んでいるはずなのに景色が変わらないせいでちゃんと進めているのかも分からない。というか、進む意味があるのかも分からない、進んでいると思いきや後退している可能性もある。そもそも、"入口"と"出口"が存在するかも分からない。
どれくらいの時間を歩いただろう。
夢のはずなのになかなか覚めない。相変わらず景色も変わらない。
どうすれば目を覚ますことができるのだろう。頬を抓ってみる。痛い。現実と同じ痛みを感じる。
夢じゃないのかな?なぜ私はここに?しかしその問いに答えてくれる人もいない。
ここでどうすればいいのか分からない。ただこの深い森を歩き続けるしかやりようがない。それとも動かないのが正解なのかな?分からなすぎて形容しがたい不安が付きまとって消えない。何でもいい、出たい。ここから。この息が詰まりそうな深い森から。
「はっ」
それは唐突な目覚めだった。
一瞬で視界が切り替わり、家の天井が目に映っている。
あまりにも現実的だった夢のせいで、何がどうなったのかすぐに思考が追いつかない。
『なん…だったの…』
ハッとして周りを見渡してみたが、誰もいなかった。
思わず日本語で声に出して呟いてしまった。やはりこちらでそれなりに長く過ごしていても不意に出てくる言葉は日本語になってしまうものなんだろう。
体を起こす。宴会の場で眠った後に、父がここまで運んだのだろうか。いつの間にか部屋着に着替えている。
窓から外を見ると、もうすっかり夜も更けていた。辺りは静まり返り、音もない。
私は再びベッドに横たわった。
眠れそうにない。でも、起きる気にもなれない。
一体なんだったんだろう。夢だったのか、そうではなかったのか。
そのまま答えの出ない考察を繰り返して時間をやりすごした。
朝になった。
昨日のことを父から聞くと、やはり途中で倒れてしまったので家に運んだらしい。その後は母がずっと家におり、私は朝まで部屋から出てこなかった。ということなので、あれはやはり夢だったということだ。
今これ以上考えたところで答えもでない。考えるのはもうやめることにした。
昨日は私が倒れた後も宴は続き、相当盛り上がっていたようだった。
今朝はみんな後片付けに追われている。
当事者である私も当然片づけに加わらなければならない。それとなく手伝っていると、周りの人間が「つぶれるまで飲ませるのが成人の儀の洗礼」だとか「みんな成人の儀の時にはああやって飲まされたもんだ」とか言ってくる。
全く、アル中になったらどうしてくれるというのか。
次に考えるべきことは、いつ旅に出るかということだ。
さすがに成人の儀を迎えて、数日で出発と言う訳にもいかない。今まで里から一歩も出なかった私がいきなり外の世界でやって行けるとも思えない。何が必要で何を気を付けるのか、いろいろと学ばなければならない。
そのためには両親とちゃんと話をしなければ。
そう思って私はさっそく夜に切り出した。
「お二人はもうわかっているのだと思いますが、成人を迎えたので旅に出ようと思っています」
母が前に言っていたように、私が旅に出るつもりでいることは2人とも把握しているからだろうか、私が切り出してもさして驚くこともなく頷いた。
「まぁ、この里で成人を迎えた子供は大体みんなそうする。もうお前は子供じゃない。これから先はお前の自由にするといい」
あれだけ今まで過保護だったのが嘘のような言葉だ。
動物の世界では子供が1人で生きていけるようになったら巣立ちを迎えるのと同じように、逆に元の世界での親との関わりの方が珍しいことなのかもしれない。
「だがシエル。お前はまだこの里から出たことがない。外の世界をある程度知るまでは、俺が一緒についていてやる」
「え?」
さすがに予想外の言葉だった。
前言撤回。十分に過保護だ。
でもまぁ、確かに私は何も知らない。それを知るまではそうするのが一番理想的なんだろう。
それに父がついてくるというのであれば、予定より早く旅立てるかもしれない。
里で人からの話を聞いて学ぶより、実際に見て学んだほうがいいことは間違いない。それが父なら気を遣う必要もないし。
願ったり叶ったりだ。
「父さん、ありがとうございます。ぜひお願いします」
素直に頭を下げると、父は満足そうに頷いた。
「ふふ、実はリンクスが子離れできないだけなのよ」
母がいたずらっぽく笑う。
「ちょっ、違う!違うから!」
それを聞いて慌てる父が微笑ましい。家族ってこういうもんなんだろうな。
私は元の世界での記憶を持ったままだから、素直にこの2人の子供という感覚になれない。どこか他人という感じがどうしても拭えないのだ。何も知らずにこの2人の子供として生まれたのなら、彼らともっと心を通じ合わせられたのにな。
2人が私を大事な子供として扱ってくれる気持ちが、申し訳なくなる。
翌日からさっそく旅の準備に取り掛かった。
ゲームの世界のキャラたちは荷物を抱えていることもなく、定められた重量まで異空間にでもしまいこんでいるかのようだったけど、実際にはそうはいかない。
最低限のものを持ちつつ、いかに減らせるかが重要になる。
まず着替え。これをどれくらい持って行くのかは人それぞれで違うらしい。移動用とそれを洗う時用の服しか持たない人もいるし、何枚か替えを用意する人もいる。どうするのが最適なのかはちょっとわからなかったので、旅の経験者である父と相談し、決める。
父は旅をしていた時、移動用の服を2着、そうじゃない時の普段着、あとは下着の替えを何枚かだけ持って行っていたらしいので、私もそうすることにした。それ以外に必要になれば、その都度購入すればいい。
次に石鹸。これは衛生状態を保つためには欠かせない。基本的にこの世界は髪を洗うのも体を洗うのも服を洗うのも同じ石鹸を使う。が、別段同じだからと言って不具合があるわけではない。ちゃんと髪もサラサラになるし、服の汚れもちゃんと落ちる。元の世界の石鹸よりも案外優秀なのかもしれない。
次に救急セット。綺麗な布、ガーゼ、包帯、消毒液など。治癒術が使える人なら不要なんだろうけど、エルフはそうではない。怪我をした時には自分で手当てをする必要がある。
次にタオル。これは何枚か持って行って汚れたらその場で洗う。
そしてナイフとロープ。RPGにおいてとりあえず持っておこう的なアイテムだけど、リアルでもそうらしい。
後は食料とお金。
食料については、飲み水は自分で水を作れるので問題ない。食べ物は基本的には干し肉系だ。次の目的地までのおおよその日数分に加えて予備を入れる。それ以上必要になることがあれば、その時は動物やモンスターを狩る。
で、お金。
この世界の通貨はすべて硬貨である。
一番最少単位が銅貨。銅貨が10枚で銀貨1枚。銀貨10枚で金貨1枚。金貨10枚で白金貨1枚と言った具合。
この里ではお金が必要になることはほとんどない。なのでその価値が日本円でどの程度のものなのかも具体的に把握はできていないけど、現在の予想としておおよそ、金貨1枚=1万円くらいだと思う。
銅貨よりも最少単位はないので、何をするにも100円以下のものはないということになる。実際にそうなのかは街に出てみないとわからないところではある。
今回旅に出るにあたって、リンクスとルイーナから白金貨1枚をもらった。日本円にして10万円である。
この世界の物価がよくわかっていないので、多いのか少ないのかいまいちわからないけど、しばらくやっていけるだけはあるということだろう。
この里の長から1本の太い木の枝をもらい、そこから触媒を嵌めるための土台や腕輪部分を削りだす。
この木は、神聖な木らしい。里の奥には聖地と呼ばれる場所がある。そこには1本の木が生えており、その周りを囲む神聖な泉がある。これはその神木の枝だという話だ。
その聖地に、私はまだ行ったことがない。これが完成して清める時にその聖地に行くことになるんだそうだ。
15年も住んでいてそんな場所があったことを今まで知らなかった。何もないように見えて意外と奥が深い場所のようだ。
木を彫りだすために、私は大小さまざまな形のナイフを父から借りた。
俗にいう彫刻刀。小学校でこんなのを使った気がする。
やはり異世界でも元の世界と同じようなものは存在する。どういう世界であっても、それが一番理にかなった形なんだろう。
しかし、こちらの世界には元の世界では当たり前にあったものがなくて不便に思うことがたくさんある。
そのNo.1が時計だ。
こちらの世界では、というか私はまだこの里のことしか知らないが、この里では朝が来たら1日の始まりなのである。
朝が来た基準が、元の世界で言うニワトリ的な鳥が鳴くとき。
その鳥の名はマニ。うちでは飼っていないが、いくつかマニを飼っている家があり、どの家のマニも一斉に鳴く。
マニが鳴いたらこの里の人たちは動き出して、狩りなり何なりを始める。
それが何時を指しているのかもわからないし、この世界の1日が何時間で構成されているのかもわからない。
でもこの世界も元の世界と同じように、ひと月を30日~31日とし、365日を数えて1年としている。歴は3界が融合した日を紀元としたルーク歴というものが用いられている。
月の数え方も日本語で言うなら1月、2月って感じだ。ただ、こちらの世界には曜日という概念はない。
今日はルーク歴2053年5月8日。この世界での誕生日はルーク歴2038年5月15日。あと一週間で成人を迎える。そしてその誕生日が成人の儀の日だ。
元の世界ではちょうど春の暖かいいい季節と言ったところだが、こちらの世界には四季がないように思う。
暑い、寒いは当然あるが、それが季節によるものではなく場所や天候に左右される部分が大きい。
ここは森の中だからそうなのか、それともこの世界的にそうなのかはわからない。
真夏日のように暑くて暑くてたまらない日はないし、真冬の日に雪が降って寒いなんてこともない。
この森の中は一年中過ごしやすくて穏やかだ。
「シエル、ご飯食べたら?」
後ろから声をかけられてビクッとなった。母が背面から私を覗き込んでいた。
ご飯?もう昼時だというのか。どうやら相当集中して掘っていたらしい。
ちなみに昼を判断する基準は明確にはない。みんな何となくで適当に昼としている。しいて言えばお腹が空いたら、と言ったところかな。
「まぁ、すごいいいじゃない!」
私が掘ったものを見て、母が目を輝かせた。
頭の中でイメージしたものを必死で掘っていたのだけれど、私も今客観的に見て中々いい出来だと思う。
先生のようなアラベスク模様が掘れたならかっこよくなりそうなのだけど、私にはそんなデザイン力もないし、それを形にできるだけの器用さもないので、深く掘った四角と掘らない四角を交互に並べたような模様にした。この模様の名前はなんて言うんだろう?チェック柄とはまた違う気がする。
まぁ、とにかくこれなら単純作業だし、私にもできる。
昼ご飯を食べてからまた作業を始め、一日で腕輪と土台部分を作り上げた。
我ながら大した集中力だと思う。帰ってきた父にも褒められたので、割と様にはなっているようだ。
一週間後、ついに成人の日を迎えた。
成人の儀だということで、里の中心にある広場に里の人間ほぼすべてが集まっていた。何か集会が開かれるときは大体ここで行われる。公会堂もあるが、そこはあまり広くないので、少人数で会議するときによく使われているらしい。
この里の総人口はざっと200人ほど。この世界においてエルフはそんなに少ないのかと思うかもしれないが、ここだけが全てではなく、色々な地域に里を構えているらしい。
成人の儀が始まり、この里の長であるアルフレッドという名の白髪のエルフが祝詞を述べ始めた。
アルフレッド、見た目は他のエルフと同様に20代後半に見えるが、この里では一番の長生きらしい。どの世界でも白髪がラスボスっぽい感じなのは共通なのだろうか。
祝詞が終わると、私と両親、アルフレッドを入れた計4人だけで聖地と呼ばれる場所に向かった。
今まで15年ここで暮らしてきて、なぜここに来たことがないのかと思うほどそこは近くにあった。
エルフの里はエルフじゃない人間が森に入っても、決して里にはたどり着けないように幻術が施されているらしいのだけれど、この聖地も普段は同じように何か巧妙な手段で隠されているのだろうか。
聖地は話に聞いていた通り、中心に大木があり、その島の周りを囲むように透き通った泉があった。大木の周りには色とりどりの花が咲き、小鳥や蝶が舞っている。森が続いていたはずなのに突然現れたその光景は、想像よりも遥かに幻想的で目を奪われた。
「すごい…」
思わず感嘆の声が漏れる。
「あの泉にお前が作った触媒を浸すのだ。そして神木に祈りを捧げろ」
アルフレッドが言う。
私はそれに従い、泉の側まで歩き、水に触媒を嵌めた腕輪を沈めた。
立ち上がり、神木に向かって手を合わせる。祈りを捧げるための文言は教わっていた。
「聖なるご神木に祈りを捧げん。我が道を照らし給え、魂を導き給え、命を守り給え…」
文言を唱える。が、特に何も起きない。それで一体この後はどうすればいいのだろうか。
「それで終わりだ。泉から触媒を出していいぞ」
そんな私の心中を察してくれたのか、アルフレッドが後ろから声をかけてきた。
なるほど、これでいいのか。何のためにやったのか全く分からないが、まぁ、いいや。
泉から触媒を引き上げると、心なしか温かい気がした。
「これを身に付けている限り、ご神木がお前を導くであろう」
アルフレッドが私の隣まで来て言う。
私は腕輪を右手首に嵌めた。自分の腕のサイズに調節したので、嵌める時にちょっと大変ではあるけど、動いても取れないくらいにはぴったりだ。
「はい、ありがとうございます」
この場所についていろいろと聞きたいとは思ったが、神聖な雰囲気に飲まれ、今ここでそれを聞くことは憚られた。
来た道をまたみんなで戻る。
もうみんないないだろうと思っていた広場では、多くの人が慌ただしく何かを準備していた。
何かを、というか、これはおそらく宴の準備だ。
中央に火が焚かれ、何かの料理が煮込まれている。その周りには皆がそれぞれ持ってきたのであろうテーブルとイスが並べられていた。
皆楽しそうに話に花を咲かせており、まるでお花見でも始めるかのようだ。
こんな風に里の人間が全員で一人の成人を祝ってくれるのか。元の世界ではちょっと考えられない。嬉しいような、恥ずかしいような。
その後はみんなで準備をし、夜に宴が開かれた。
里の人間が次々私の元へきて祝辞を述べる。
一人一人と会話しなければならないので、正直料理を食べるどころではない。この里では子供が久しぶりと言うこともあってか、みな親戚の家の子みたいな感じに接してくる。でもまぁ、悪い気はしないのでこの雰囲気を楽しむことにした。
成人、と言うことだけあって、お酒も許された。
元の世界では興味がなくお酒を飲むことはなかったけれど、初めて飲むお酒は特においしくなかった。が、祝辞を述べにくる人たちはみんなお酌をしてくるので飲まざるを得ない。
初めてお酒を飲むのに、祝辞に来た人間に付き合ってずっと飲んでたらそりゃどう考えても酔う。
話をしているうちにクラクラしてきて、気分も悪くなってきた。大丈夫か?と父が声をかけて来た時には返す気力もなく、ただグルグル回る景色の中、深い眠りに落ちて行った。
私は、深い森の中にいた。
エルフの里の森ではない。もっと暗く、もっと深く、もっと陰湿な森。
見渡す限り同じ景色が続き、一瞬で方向を見失う。
どこから来たのかも、どこへ行けばいいのかも分からない。
なぜここにいるのかも、分からない。
これは夢だ。私はさっきまで宴でお酒を浴びるほど飲まされて寝てしまったはず。
夢の中だからなのか、酔いによる気分の悪さも、体のだるさもなく、意識もはっきりしている。
森の中を歩く。進んでいるはずなのに景色が変わらないせいでちゃんと進めているのかも分からない。というか、進む意味があるのかも分からない、進んでいると思いきや後退している可能性もある。そもそも、"入口"と"出口"が存在するかも分からない。
どれくらいの時間を歩いただろう。
夢のはずなのになかなか覚めない。相変わらず景色も変わらない。
どうすれば目を覚ますことができるのだろう。頬を抓ってみる。痛い。現実と同じ痛みを感じる。
夢じゃないのかな?なぜ私はここに?しかしその問いに答えてくれる人もいない。
ここでどうすればいいのか分からない。ただこの深い森を歩き続けるしかやりようがない。それとも動かないのが正解なのかな?分からなすぎて形容しがたい不安が付きまとって消えない。何でもいい、出たい。ここから。この息が詰まりそうな深い森から。
「はっ」
それは唐突な目覚めだった。
一瞬で視界が切り替わり、家の天井が目に映っている。
あまりにも現実的だった夢のせいで、何がどうなったのかすぐに思考が追いつかない。
『なん…だったの…』
ハッとして周りを見渡してみたが、誰もいなかった。
思わず日本語で声に出して呟いてしまった。やはりこちらでそれなりに長く過ごしていても不意に出てくる言葉は日本語になってしまうものなんだろう。
体を起こす。宴会の場で眠った後に、父がここまで運んだのだろうか。いつの間にか部屋着に着替えている。
窓から外を見ると、もうすっかり夜も更けていた。辺りは静まり返り、音もない。
私は再びベッドに横たわった。
眠れそうにない。でも、起きる気にもなれない。
一体なんだったんだろう。夢だったのか、そうではなかったのか。
そのまま答えの出ない考察を繰り返して時間をやりすごした。
朝になった。
昨日のことを父から聞くと、やはり途中で倒れてしまったので家に運んだらしい。その後は母がずっと家におり、私は朝まで部屋から出てこなかった。ということなので、あれはやはり夢だったということだ。
今これ以上考えたところで答えもでない。考えるのはもうやめることにした。
昨日は私が倒れた後も宴は続き、相当盛り上がっていたようだった。
今朝はみんな後片付けに追われている。
当事者である私も当然片づけに加わらなければならない。それとなく手伝っていると、周りの人間が「つぶれるまで飲ませるのが成人の儀の洗礼」だとか「みんな成人の儀の時にはああやって飲まされたもんだ」とか言ってくる。
全く、アル中になったらどうしてくれるというのか。
次に考えるべきことは、いつ旅に出るかということだ。
さすがに成人の儀を迎えて、数日で出発と言う訳にもいかない。今まで里から一歩も出なかった私がいきなり外の世界でやって行けるとも思えない。何が必要で何を気を付けるのか、いろいろと学ばなければならない。
そのためには両親とちゃんと話をしなければ。
そう思って私はさっそく夜に切り出した。
「お二人はもうわかっているのだと思いますが、成人を迎えたので旅に出ようと思っています」
母が前に言っていたように、私が旅に出るつもりでいることは2人とも把握しているからだろうか、私が切り出してもさして驚くこともなく頷いた。
「まぁ、この里で成人を迎えた子供は大体みんなそうする。もうお前は子供じゃない。これから先はお前の自由にするといい」
あれだけ今まで過保護だったのが嘘のような言葉だ。
動物の世界では子供が1人で生きていけるようになったら巣立ちを迎えるのと同じように、逆に元の世界での親との関わりの方が珍しいことなのかもしれない。
「だがシエル。お前はまだこの里から出たことがない。外の世界をある程度知るまでは、俺が一緒についていてやる」
「え?」
さすがに予想外の言葉だった。
前言撤回。十分に過保護だ。
でもまぁ、確かに私は何も知らない。それを知るまではそうするのが一番理想的なんだろう。
それに父がついてくるというのであれば、予定より早く旅立てるかもしれない。
里で人からの話を聞いて学ぶより、実際に見て学んだほうがいいことは間違いない。それが父なら気を遣う必要もないし。
願ったり叶ったりだ。
「父さん、ありがとうございます。ぜひお願いします」
素直に頭を下げると、父は満足そうに頷いた。
「ふふ、実はリンクスが子離れできないだけなのよ」
母がいたずらっぽく笑う。
「ちょっ、違う!違うから!」
それを聞いて慌てる父が微笑ましい。家族ってこういうもんなんだろうな。
私は元の世界での記憶を持ったままだから、素直にこの2人の子供という感覚になれない。どこか他人という感じがどうしても拭えないのだ。何も知らずにこの2人の子供として生まれたのなら、彼らともっと心を通じ合わせられたのにな。
2人が私を大事な子供として扱ってくれる気持ちが、申し訳なくなる。
翌日からさっそく旅の準備に取り掛かった。
ゲームの世界のキャラたちは荷物を抱えていることもなく、定められた重量まで異空間にでもしまいこんでいるかのようだったけど、実際にはそうはいかない。
最低限のものを持ちつつ、いかに減らせるかが重要になる。
まず着替え。これをどれくらい持って行くのかは人それぞれで違うらしい。移動用とそれを洗う時用の服しか持たない人もいるし、何枚か替えを用意する人もいる。どうするのが最適なのかはちょっとわからなかったので、旅の経験者である父と相談し、決める。
父は旅をしていた時、移動用の服を2着、そうじゃない時の普段着、あとは下着の替えを何枚かだけ持って行っていたらしいので、私もそうすることにした。それ以外に必要になれば、その都度購入すればいい。
次に石鹸。これは衛生状態を保つためには欠かせない。基本的にこの世界は髪を洗うのも体を洗うのも服を洗うのも同じ石鹸を使う。が、別段同じだからと言って不具合があるわけではない。ちゃんと髪もサラサラになるし、服の汚れもちゃんと落ちる。元の世界の石鹸よりも案外優秀なのかもしれない。
次に救急セット。綺麗な布、ガーゼ、包帯、消毒液など。治癒術が使える人なら不要なんだろうけど、エルフはそうではない。怪我をした時には自分で手当てをする必要がある。
次にタオル。これは何枚か持って行って汚れたらその場で洗う。
そしてナイフとロープ。RPGにおいてとりあえず持っておこう的なアイテムだけど、リアルでもそうらしい。
後は食料とお金。
食料については、飲み水は自分で水を作れるので問題ない。食べ物は基本的には干し肉系だ。次の目的地までのおおよその日数分に加えて予備を入れる。それ以上必要になることがあれば、その時は動物やモンスターを狩る。
で、お金。
この世界の通貨はすべて硬貨である。
一番最少単位が銅貨。銅貨が10枚で銀貨1枚。銀貨10枚で金貨1枚。金貨10枚で白金貨1枚と言った具合。
この里ではお金が必要になることはほとんどない。なのでその価値が日本円でどの程度のものなのかも具体的に把握はできていないけど、現在の予想としておおよそ、金貨1枚=1万円くらいだと思う。
銅貨よりも最少単位はないので、何をするにも100円以下のものはないということになる。実際にそうなのかは街に出てみないとわからないところではある。
今回旅に出るにあたって、リンクスとルイーナから白金貨1枚をもらった。日本円にして10万円である。
この世界の物価がよくわかっていないので、多いのか少ないのかいまいちわからないけど、しばらくやっていけるだけはあるということだろう。
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