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四章
第55話 ルブラ
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女は森でいきなり仕掛けてきたのだ。私がいきなり仕掛けても文句は言えないだろう。
「あらあら、せっかちね」
慌てた様子も見せずに女は私が放ったかまいたちをヒラリとかわし、黒い獣を召喚した時と同じ赤い魔法陣を3つ地面に描いた。
魔法陣からあの時と同じ黒い獣が3匹現れる。
「……!」
と同時に3匹がこちらへ向かってきた。
「炎よ、塵も残さず焼き尽くせ!!」
ドラゴンが火を吐くようなイメージで、突き出した両手から火炎を放射する。
今まで使ってきた術よりもかなり威力も放射スピードも上げた。範囲もできる限り広範囲にしてある。
詠唱したのは明確に口に出した方が威力を上げやすいからだ。たった1文だけでも無詠唱で行うのとは変わってくる。
事実、避けられなかった2匹が炎に飲まれて一瞬で消し炭になった。
1匹は器用にそれをかわし、私に向かって今まさに飛びかからんとしている。
「地よ、槍となりて彼のものを貫け!」
私は黒い獣をギリギリまで引き付けてから、渾身の力を込めて岩の槍を放った。
「ギャッ!!」
1本にすべてを込めた槍は大きく開いた獣の口から喉へと突き刺さり、私の元に来ることはなく地面に落ちて絶命した。
「シエル、やめろ…過剰な神力を使うな…!」
セスが絞り出すようにそう叫んだ。
その言葉は、理解できる。
先程の火炎放射も今の槍もかなりの威力を出した。それに伴う神力消費は当然高い。
昔、自分のMPを10000として術を使った場合の消費MPを計算したことがあるが、あれで言えば先程の火炎放射は800くらい消費した。槍も、普段は1本辺り10くらいで打てるものだが、今の渾身の槍は100くらい消費している。どちらも、今までセスに見せたことのないほど高威力だ。何せ獣2匹を一瞬で消し炭にしたのだ。完全にオーバーキルだった。
普段であればそれでも何の問題もないだろう。だがここはルブラだ。消費したMPは回復しない。
だがそんなことより、この場を何とかするのが優先だ。高威力の術を使っても私の神力残量がセスの神力残量を下回ることはおそらくない。どこまでいっても自分より先にセスの神力が尽きる。だからどうでもいいのだ。セスの神力が尽きた時点でゲームオーバーなのだから。
「これくらい、大した消費じゃないよ。セスにはわかるでしょ?」
セスに言っている風に見せかけて、女に聞かせる。
普通のエルフであれば、あんな威力の高い術を使った後にこんな涼しい顔はしていられないだろう。何かが異常だ。それを女に分からせたかった。
まぁ正直、私だってこのレベルの術をバンバン使えるかと言ったらそうではない。事実今ので1割ほどHPとMPを消費したので、それなりに疲労は感じている。この状況下では痛い出費であったことに変わりはない。
ただ、私たちはこの女にこれ以上の用はない。今余計な時間は費やしたくないのだ。
「貴方、何なの…!」
女が初めて余裕のない表情を見せた。声にも焦りが含まれている。
「素直に引いてくれるなら見逃してあげるよ。そうしないのなら、あの獣と同じように消し炭にする」
ブラフだ。
でもさっきの術に驚いていたのだから、この言葉を真に受けて引いてほしい。
「…くっ…」
苦渋の表情を浮かべて、女は自分を中心とした魔法陣を展開した。淡い光に包まれて、女がフッと消える。先ほど獣を召喚した時といい、ルブラにいてもルブラへのゲートを開けるということなのだろうか。
まぁ、何でもいいか。逃げてくれたようだから、とりあえずよかった。
「セス、大丈夫?動ける?」
セスの側まで行き、手を差し出す。
しかし、セスはその手を取らなかった。
「…動けない。だから、ここからは君1人で行くんだ。俺がいたら足手まといになるし、おそらくあのリンクまで俺の神力も持たない」
その言葉に一気に熱が上がるのを感じた。
「……いい加減にしてよ!!」
「…ぐっ…!」
私はセスの胸ぐらを掴んで地面に強く押し倒した。
あえて避けなかったのか、それとも本当にそれすらできないくらい体が動かないのか、セスは受け身も取らずに強く背中を打ち付けて苦痛の声を上げた。
「セスを見捨てて行くつもりはないって言ってるでしょ!!何度も同じこと言わせないで!!」
様々な気持ちがどうしようもなく溢れて、私は強い口調でそう言った。
ここまで徹底して自己犠牲を貫かれると怒りを通り越して憎しみさえ感じる。
いっそこのまま殴ってしまおうか。マウントポジションを取っている今、それくらいなら簡単にできそうだ。そういう衝動に駆られて私は腕を振り上げた。
「……」
だがセスは身構えることもなく、ただ切なげな表情で私を見つめている。
甘んじて受けるつもりか。その態度も酷く苛立たしい。
「くそっ!」
私は腕を下ろし、セスの上からどいた。
そしてそのままセスから離れ、カデムたちの方へと向かう。
今セスの顔を見ていたら、怒りに任せて酷いことを言ってしまいそうだ。
私が2頭の側まで来ると、2頭とも私にすり寄ってきた。いきなり知らない場所に来て不安を感じているという様子ではない。何か気遣うような気持ちを感じられた。きっと私のごちゃごちゃな感情を感じ取って、慰めようとしてくれているのだろう。
「全員で、ミトスに帰ろう」
そう、自分に言い聞かすように2頭に告げて、ライムを馬車に繋いだ。
セスは、その間もずっと地面に横たわっていた。
本当に動けないのだろうかとセスの側まで行って覗き込むと、私を見てからすぐに視線を逸らし、上体をゆっくりと起こした。
「歩ける?無理?」
「…大丈夫」
私の質問にセスが苦しげに答えた。
ならばと差し出した手を、セスは今度こそ素直に握る。
グッとその手を引くと、よろめきながら立ち上がった。
痛みを耐えるような仕草で歩くその体を支えながら、馬車へと向かう。
「何がどう苦しい?もうすでに神力がすごい減ってる?それとも違う何か?」
荷台にセスを寝かせ、私は矢継ぎ早に聞いた。
同じ神属性のはずなのにあまりにも身体的状況が違って、セスの身に何が起きているのか全く分からない。
「体が痺れて…動くのが、きつい。俺は天族だから…魔力の適応力がないんだ。ここまで濃度が高いと、体が魔力を受け入れられない」
そういうことか。動けないほど体が痺れるなんて、かなり苦痛だろう。拷問を受けているようなものだ。しかもそれは、ミトスに帰るか、死ぬまで終わらない。
ということは、神力による体力消費とはまた別に、じわじわと体力が減っていきそうだな。
「神力はどのくらい減ってる?」
「そんなでも、ない」
「具体的に教えて。そうだな、前みたいに数値で。全量を1000とすると今いくつ?」
全量を1000に設定したのは、残り残量を細かく把握するためだ。
設定を100にしてしまえば、きっと「今87」とか言わずに四捨五入してしまうだろう。だが、1000にすればもう少し細かい数値まで言ってくれるはずだ。
「まだ…ほとんど減っていない。数値で言うなら、995くらいだ」
「僕の放出速度と、セスの放出速度の差は?」
「放出速度に差はない。人によって差が出るのは、回復の速度だけだ」
そうだったのか。それは知らなかった。
セスの神力総量を1000とするなら私は7500。1時間に10ずつ減っていくと仮定すると、私は1ヶ月くらい持つが、セスは4日で尽きてしまう計算になる。
まぁ、さっきの消費があるので自分の残量は今6800くらいなのだが、自分の状態とセスの状態を見るに、1時間に10ずつ減るというのは案外リアルな数字なのかもしれない。
私は少しでも早くミトスに帰れるよう、リッキーとライムを走らせリンクへの道を急いだ。
さすがにずっとカデムたちを走らせるわけにもいかないので、こまめに休憩は取っている。
その度にセスの神力残量を確認しつつ、ルブラに来てから初めての夜が訪れた。
セスはずっと荷台に横になっている。水分を取るだけで食事は取っていない。呼吸も荒く、本当に苦しそうだ。
少しでも楽にしてあげたくて、前にデッドラインの横穴でやったみたいに神力を放出したら無理やりやめさせられた。これをやったくらいじゃ大した影響はないからと言ってもセスは納得しなかったので私は素直に諦めることにした。
「セス、ロッソってどこ?」
休憩の際に女が言っていたことを思い出して私はセスに聞いた。
あのリンクの先がロッソ付近なのだと、そう言っていた。
「ロッソは…ルーマス大陸にある、ドワーフの街だ…。ルワノフと同じだと思えばいい。エスタには…俺たちがいた場所からは近くなった」
「なるほど…」
なら逆に好都合だ。
アルセノには迷宮もあるしちょっと行ってみたかったが、それはまた別の機会にしよう。生きて帰れればいつだって行けるんだし。
ふと、ルブラの空を見上げる。
ルブラの夜は本当に暗く、2つの月が見えるだけだ。
どんよりとした赤紫色の空は、夕方だったわけでもなくあれが標準の空だったようだ。
ミトスでもルブラでも月は同じように見える。若干位置が高いような気もするか。アルディナでもそうなのかとセスに聞いたら、そうだという返事が返ってきた。
不思議だ。だとすると3界はどのような位置関係で存在しているのだろう。
「……!」
そう考えを巡らせてある道具の存在を思い出した。
「ねぇ、セス。アルディナへの転移石を使ってセスだけアルディナに送ることはできない?」
セスが持っている転移石を使っての転移なら、私の神力で余裕を持ってアルディナまで転移できる。
ただ分からないのが使う者と転移する者を別にできるのかということ。リッキーとライムは魔獣だ。アルディナには連れていけない。だが、2頭をここに残して私とセスだけルブラから出る気もない。だからセスだけでもアルディナに送れないかと、私はセスに問いかけた。
「…君でも、さすがに2界を跨ぐほどの転移術を使うのは厳しいだろう…」
セスは体を起こしながら言った。
どんな体勢だろうがそれで状況が変わるわけではないので、私はそれをただ横目で眺めていた。
「2界を跨ぐ?どういうこと?ルブラから直接アルディナには行けないってこと?」
「アルディナとルブラを結ぶリンクは存在しない。だから3界はミトスを間に挟んで、縦並びに存在しているとされている。実際、ミトスからルブラに来た時に落ちるような感覚がしただろう。ミトスからアルディナに行く時は、逆に上がるような感覚がする。縦並びというのは、正しい見解だと思う」
だからルブラからアルディナへの転移は厳しいということか。ミトスを飛び越さなければならないから。
「なるほど、それはわかった。じゃあ仕組みとして、術者と転移者を別にすることはできるの?」
「できるけど、君にはやらせないよ」
ピシャリと言われた。
「…やるなんて言ってないじゃん」
断定的な言い方に、ちょっとムッときて拗ねたような言い方をしてしまった。
「いいや。俺ができると言ったら…君はそれを試すつもりでいたんだろう」
「……」
そんな私の態度を気にも留めず、セスは何でもお見通しと言わんばかりに言った。
その通りだ。2界を跨ぐなら、1界分プラスして神力を消費すれば行けるのではないかと考えていた。
ミトスからアルディナに転移するのに必要な神力の消費量は、今の計算方式で言えば4750。その内の3750は転移石が負担してくれるので、実質負担は1000。それにルブラからミトスの分をプラスすると5750。
今の残量は大体6700くらい。5750消費したとしてもまだ950残る。かなり体はしんどくなるが、リミッターに引っかかるほどでもない。今ならやれる。裏を返せば、今しかやれない。
「やらせないよ。ルブラからアルディナまで転移したなんて話は聞いたことがない。仮に、ミトス-ルブラ間の神力を追加で支払えばできるのだとしても、君の神力をそんなに消費させてまで…俺1人だけ脱出するつもりはない」
私が何か言うよりも先に、セスは釘を刺すようにそう言った。
それでも、私には試してみる価値があると思っているが、セスはそうじゃない。まぁ、確かに逆の立場なら私もセスにそれをやらせはしないし、ここは大人しく引いておこう。
全く、こちらの考えを読んで先手を打ってくるやり方が本当に腹立たしい。
「…わかったよ」
そう言って私は馬車から外して休ませていたライムを再び繋いだ。
「…シエル、何かあったら俺が起こすから、もう少し休んだ方がいい」
私が野宿をせずに出発するつもりであることを察し、セスが言う。
「…リッキーたちは走らせずに歩かせるから…」
セスが言いたいのはそういうことではない。セスは"私に"休めと言っている。それはわかっている上で、私はあえてそう言葉を返した。
セスが何かを言う前に私は馬車から離れ、松明に火をつけてから焚き火を消し、リッキーに跨がった。
2日目の朝、草原を進んでいると、遠目に村のようなものが見えた。
シスタスやカルナのような、大きい街ではない。RPGとかでよくある、村や集落と言った感じの様相だ。
「あそこに近づくのは危ないかな…?」
リンクに行くための最短距離を考えると、かなりあの村に近づかなければならない。
魔族には人の血や肉、神力を餌とする種族が結構いると言うし、もしそういう種族があの村にいるんだとしたら、危ない気がする。
「…そうだね。なるべく離れた方がいいと思う」
私の言葉にセスが頷いてそう言った。
「ただ、時間が…」
時計がないので時間の経過が分からないのだが、おそらくルブラに来てから24時間は経過したのではないかと思う。
現時点でセスの神力残量は750とのことらしい。本当に1時間あたり10くらいずつ減っている感じがするので、それを考えるとリミットまであと3日しかない。1分1秒だって無駄にはしたくないのだ。
「迂回でいいよ。襲われる可能性だってあるんだ。君は人を、殺せないのだろう」
焦る様子も見せずに、セスが淡々と言う。
どうにもセスからは何としてでもここから出よう、という気概が見受けられない。
私の手を取ってくれたものの、今でもまだ生に執着していないのだとは思う。
今のセスにとって大事なことは、私がミトスに戻れるか否かということだけだ。だから焦っていない。
それと同じように私にはセスの命が大事なのだが、自分が必死に守りたいものをこうも簡単に諦められてしまっては、さすがに私も悲しくなる。
ただ、だからと言って迂回せずにあそこにいる人間に襲われてしまっては余計な神力を消費することになるし、最悪そこで死ぬ可能性もある。
「…迂回するしか、ないか…」
苦渋の決断だ。
昼過ぎ、リッキーたちを休ませるために休憩を取っていると、遠くの方に人が見えた。正確には、フサフサとした毛を持つ白い獣に人が乗っている。
ここに来て、初めてあの女以外の人間に遭遇した。
おそらく男性、そして1人のようだ。
私たちが避けている村の方角に向かっている。こちらに気づいた様子はない。
あの村に住む人間が私たちにとって敵なのか否か、今なら確かめられるかもしれない。
「セス、僕あの人とちょっと話をしてくる」
「ダメだ、やめろ」
そう言って立ち上がった私を、すぐさまセスが強い口調で制止した。
「何のために迂回を決めたんだ。魔族とむやみに接触をするな。相手がミトス語を話せるかもわからないんだぞ」
ごもっともだ。
だが何のためにと聞かれれば、全員でミトスに帰るためだ。
だからあの村が敵対関係にないのならば、最短距離でリンクに向かいたい。
あの男と話をすることでそれがはっきりするならば、多少のリスクは負ってもいい。
「うん、そうだね。それでも、そうする価値はあると僕は思ってる。ごめんね」
「シエル!」
言うだけ言ってセスの言葉は聞かずに、私はリッキーに跨って男の元へと走った。
「あらあら、せっかちね」
慌てた様子も見せずに女は私が放ったかまいたちをヒラリとかわし、黒い獣を召喚した時と同じ赤い魔法陣を3つ地面に描いた。
魔法陣からあの時と同じ黒い獣が3匹現れる。
「……!」
と同時に3匹がこちらへ向かってきた。
「炎よ、塵も残さず焼き尽くせ!!」
ドラゴンが火を吐くようなイメージで、突き出した両手から火炎を放射する。
今まで使ってきた術よりもかなり威力も放射スピードも上げた。範囲もできる限り広範囲にしてある。
詠唱したのは明確に口に出した方が威力を上げやすいからだ。たった1文だけでも無詠唱で行うのとは変わってくる。
事実、避けられなかった2匹が炎に飲まれて一瞬で消し炭になった。
1匹は器用にそれをかわし、私に向かって今まさに飛びかからんとしている。
「地よ、槍となりて彼のものを貫け!」
私は黒い獣をギリギリまで引き付けてから、渾身の力を込めて岩の槍を放った。
「ギャッ!!」
1本にすべてを込めた槍は大きく開いた獣の口から喉へと突き刺さり、私の元に来ることはなく地面に落ちて絶命した。
「シエル、やめろ…過剰な神力を使うな…!」
セスが絞り出すようにそう叫んだ。
その言葉は、理解できる。
先程の火炎放射も今の槍もかなりの威力を出した。それに伴う神力消費は当然高い。
昔、自分のMPを10000として術を使った場合の消費MPを計算したことがあるが、あれで言えば先程の火炎放射は800くらい消費した。槍も、普段は1本辺り10くらいで打てるものだが、今の渾身の槍は100くらい消費している。どちらも、今までセスに見せたことのないほど高威力だ。何せ獣2匹を一瞬で消し炭にしたのだ。完全にオーバーキルだった。
普段であればそれでも何の問題もないだろう。だがここはルブラだ。消費したMPは回復しない。
だがそんなことより、この場を何とかするのが優先だ。高威力の術を使っても私の神力残量がセスの神力残量を下回ることはおそらくない。どこまでいっても自分より先にセスの神力が尽きる。だからどうでもいいのだ。セスの神力が尽きた時点でゲームオーバーなのだから。
「これくらい、大した消費じゃないよ。セスにはわかるでしょ?」
セスに言っている風に見せかけて、女に聞かせる。
普通のエルフであれば、あんな威力の高い術を使った後にこんな涼しい顔はしていられないだろう。何かが異常だ。それを女に分からせたかった。
まぁ正直、私だってこのレベルの術をバンバン使えるかと言ったらそうではない。事実今ので1割ほどHPとMPを消費したので、それなりに疲労は感じている。この状況下では痛い出費であったことに変わりはない。
ただ、私たちはこの女にこれ以上の用はない。今余計な時間は費やしたくないのだ。
「貴方、何なの…!」
女が初めて余裕のない表情を見せた。声にも焦りが含まれている。
「素直に引いてくれるなら見逃してあげるよ。そうしないのなら、あの獣と同じように消し炭にする」
ブラフだ。
でもさっきの術に驚いていたのだから、この言葉を真に受けて引いてほしい。
「…くっ…」
苦渋の表情を浮かべて、女は自分を中心とした魔法陣を展開した。淡い光に包まれて、女がフッと消える。先ほど獣を召喚した時といい、ルブラにいてもルブラへのゲートを開けるということなのだろうか。
まぁ、何でもいいか。逃げてくれたようだから、とりあえずよかった。
「セス、大丈夫?動ける?」
セスの側まで行き、手を差し出す。
しかし、セスはその手を取らなかった。
「…動けない。だから、ここからは君1人で行くんだ。俺がいたら足手まといになるし、おそらくあのリンクまで俺の神力も持たない」
その言葉に一気に熱が上がるのを感じた。
「……いい加減にしてよ!!」
「…ぐっ…!」
私はセスの胸ぐらを掴んで地面に強く押し倒した。
あえて避けなかったのか、それとも本当にそれすらできないくらい体が動かないのか、セスは受け身も取らずに強く背中を打ち付けて苦痛の声を上げた。
「セスを見捨てて行くつもりはないって言ってるでしょ!!何度も同じこと言わせないで!!」
様々な気持ちがどうしようもなく溢れて、私は強い口調でそう言った。
ここまで徹底して自己犠牲を貫かれると怒りを通り越して憎しみさえ感じる。
いっそこのまま殴ってしまおうか。マウントポジションを取っている今、それくらいなら簡単にできそうだ。そういう衝動に駆られて私は腕を振り上げた。
「……」
だがセスは身構えることもなく、ただ切なげな表情で私を見つめている。
甘んじて受けるつもりか。その態度も酷く苛立たしい。
「くそっ!」
私は腕を下ろし、セスの上からどいた。
そしてそのままセスから離れ、カデムたちの方へと向かう。
今セスの顔を見ていたら、怒りに任せて酷いことを言ってしまいそうだ。
私が2頭の側まで来ると、2頭とも私にすり寄ってきた。いきなり知らない場所に来て不安を感じているという様子ではない。何か気遣うような気持ちを感じられた。きっと私のごちゃごちゃな感情を感じ取って、慰めようとしてくれているのだろう。
「全員で、ミトスに帰ろう」
そう、自分に言い聞かすように2頭に告げて、ライムを馬車に繋いだ。
セスは、その間もずっと地面に横たわっていた。
本当に動けないのだろうかとセスの側まで行って覗き込むと、私を見てからすぐに視線を逸らし、上体をゆっくりと起こした。
「歩ける?無理?」
「…大丈夫」
私の質問にセスが苦しげに答えた。
ならばと差し出した手を、セスは今度こそ素直に握る。
グッとその手を引くと、よろめきながら立ち上がった。
痛みを耐えるような仕草で歩くその体を支えながら、馬車へと向かう。
「何がどう苦しい?もうすでに神力がすごい減ってる?それとも違う何か?」
荷台にセスを寝かせ、私は矢継ぎ早に聞いた。
同じ神属性のはずなのにあまりにも身体的状況が違って、セスの身に何が起きているのか全く分からない。
「体が痺れて…動くのが、きつい。俺は天族だから…魔力の適応力がないんだ。ここまで濃度が高いと、体が魔力を受け入れられない」
そういうことか。動けないほど体が痺れるなんて、かなり苦痛だろう。拷問を受けているようなものだ。しかもそれは、ミトスに帰るか、死ぬまで終わらない。
ということは、神力による体力消費とはまた別に、じわじわと体力が減っていきそうだな。
「神力はどのくらい減ってる?」
「そんなでも、ない」
「具体的に教えて。そうだな、前みたいに数値で。全量を1000とすると今いくつ?」
全量を1000に設定したのは、残り残量を細かく把握するためだ。
設定を100にしてしまえば、きっと「今87」とか言わずに四捨五入してしまうだろう。だが、1000にすればもう少し細かい数値まで言ってくれるはずだ。
「まだ…ほとんど減っていない。数値で言うなら、995くらいだ」
「僕の放出速度と、セスの放出速度の差は?」
「放出速度に差はない。人によって差が出るのは、回復の速度だけだ」
そうだったのか。それは知らなかった。
セスの神力総量を1000とするなら私は7500。1時間に10ずつ減っていくと仮定すると、私は1ヶ月くらい持つが、セスは4日で尽きてしまう計算になる。
まぁ、さっきの消費があるので自分の残量は今6800くらいなのだが、自分の状態とセスの状態を見るに、1時間に10ずつ減るというのは案外リアルな数字なのかもしれない。
私は少しでも早くミトスに帰れるよう、リッキーとライムを走らせリンクへの道を急いだ。
さすがにずっとカデムたちを走らせるわけにもいかないので、こまめに休憩は取っている。
その度にセスの神力残量を確認しつつ、ルブラに来てから初めての夜が訪れた。
セスはずっと荷台に横になっている。水分を取るだけで食事は取っていない。呼吸も荒く、本当に苦しそうだ。
少しでも楽にしてあげたくて、前にデッドラインの横穴でやったみたいに神力を放出したら無理やりやめさせられた。これをやったくらいじゃ大した影響はないからと言ってもセスは納得しなかったので私は素直に諦めることにした。
「セス、ロッソってどこ?」
休憩の際に女が言っていたことを思い出して私はセスに聞いた。
あのリンクの先がロッソ付近なのだと、そう言っていた。
「ロッソは…ルーマス大陸にある、ドワーフの街だ…。ルワノフと同じだと思えばいい。エスタには…俺たちがいた場所からは近くなった」
「なるほど…」
なら逆に好都合だ。
アルセノには迷宮もあるしちょっと行ってみたかったが、それはまた別の機会にしよう。生きて帰れればいつだって行けるんだし。
ふと、ルブラの空を見上げる。
ルブラの夜は本当に暗く、2つの月が見えるだけだ。
どんよりとした赤紫色の空は、夕方だったわけでもなくあれが標準の空だったようだ。
ミトスでもルブラでも月は同じように見える。若干位置が高いような気もするか。アルディナでもそうなのかとセスに聞いたら、そうだという返事が返ってきた。
不思議だ。だとすると3界はどのような位置関係で存在しているのだろう。
「……!」
そう考えを巡らせてある道具の存在を思い出した。
「ねぇ、セス。アルディナへの転移石を使ってセスだけアルディナに送ることはできない?」
セスが持っている転移石を使っての転移なら、私の神力で余裕を持ってアルディナまで転移できる。
ただ分からないのが使う者と転移する者を別にできるのかということ。リッキーとライムは魔獣だ。アルディナには連れていけない。だが、2頭をここに残して私とセスだけルブラから出る気もない。だからセスだけでもアルディナに送れないかと、私はセスに問いかけた。
「…君でも、さすがに2界を跨ぐほどの転移術を使うのは厳しいだろう…」
セスは体を起こしながら言った。
どんな体勢だろうがそれで状況が変わるわけではないので、私はそれをただ横目で眺めていた。
「2界を跨ぐ?どういうこと?ルブラから直接アルディナには行けないってこと?」
「アルディナとルブラを結ぶリンクは存在しない。だから3界はミトスを間に挟んで、縦並びに存在しているとされている。実際、ミトスからルブラに来た時に落ちるような感覚がしただろう。ミトスからアルディナに行く時は、逆に上がるような感覚がする。縦並びというのは、正しい見解だと思う」
だからルブラからアルディナへの転移は厳しいということか。ミトスを飛び越さなければならないから。
「なるほど、それはわかった。じゃあ仕組みとして、術者と転移者を別にすることはできるの?」
「できるけど、君にはやらせないよ」
ピシャリと言われた。
「…やるなんて言ってないじゃん」
断定的な言い方に、ちょっとムッときて拗ねたような言い方をしてしまった。
「いいや。俺ができると言ったら…君はそれを試すつもりでいたんだろう」
「……」
そんな私の態度を気にも留めず、セスは何でもお見通しと言わんばかりに言った。
その通りだ。2界を跨ぐなら、1界分プラスして神力を消費すれば行けるのではないかと考えていた。
ミトスからアルディナに転移するのに必要な神力の消費量は、今の計算方式で言えば4750。その内の3750は転移石が負担してくれるので、実質負担は1000。それにルブラからミトスの分をプラスすると5750。
今の残量は大体6700くらい。5750消費したとしてもまだ950残る。かなり体はしんどくなるが、リミッターに引っかかるほどでもない。今ならやれる。裏を返せば、今しかやれない。
「やらせないよ。ルブラからアルディナまで転移したなんて話は聞いたことがない。仮に、ミトス-ルブラ間の神力を追加で支払えばできるのだとしても、君の神力をそんなに消費させてまで…俺1人だけ脱出するつもりはない」
私が何か言うよりも先に、セスは釘を刺すようにそう言った。
それでも、私には試してみる価値があると思っているが、セスはそうじゃない。まぁ、確かに逆の立場なら私もセスにそれをやらせはしないし、ここは大人しく引いておこう。
全く、こちらの考えを読んで先手を打ってくるやり方が本当に腹立たしい。
「…わかったよ」
そう言って私は馬車から外して休ませていたライムを再び繋いだ。
「…シエル、何かあったら俺が起こすから、もう少し休んだ方がいい」
私が野宿をせずに出発するつもりであることを察し、セスが言う。
「…リッキーたちは走らせずに歩かせるから…」
セスが言いたいのはそういうことではない。セスは"私に"休めと言っている。それはわかっている上で、私はあえてそう言葉を返した。
セスが何かを言う前に私は馬車から離れ、松明に火をつけてから焚き火を消し、リッキーに跨がった。
2日目の朝、草原を進んでいると、遠目に村のようなものが見えた。
シスタスやカルナのような、大きい街ではない。RPGとかでよくある、村や集落と言った感じの様相だ。
「あそこに近づくのは危ないかな…?」
リンクに行くための最短距離を考えると、かなりあの村に近づかなければならない。
魔族には人の血や肉、神力を餌とする種族が結構いると言うし、もしそういう種族があの村にいるんだとしたら、危ない気がする。
「…そうだね。なるべく離れた方がいいと思う」
私の言葉にセスが頷いてそう言った。
「ただ、時間が…」
時計がないので時間の経過が分からないのだが、おそらくルブラに来てから24時間は経過したのではないかと思う。
現時点でセスの神力残量は750とのことらしい。本当に1時間あたり10くらいずつ減っている感じがするので、それを考えるとリミットまであと3日しかない。1分1秒だって無駄にはしたくないのだ。
「迂回でいいよ。襲われる可能性だってあるんだ。君は人を、殺せないのだろう」
焦る様子も見せずに、セスが淡々と言う。
どうにもセスからは何としてでもここから出よう、という気概が見受けられない。
私の手を取ってくれたものの、今でもまだ生に執着していないのだとは思う。
今のセスにとって大事なことは、私がミトスに戻れるか否かということだけだ。だから焦っていない。
それと同じように私にはセスの命が大事なのだが、自分が必死に守りたいものをこうも簡単に諦められてしまっては、さすがに私も悲しくなる。
ただ、だからと言って迂回せずにあそこにいる人間に襲われてしまっては余計な神力を消費することになるし、最悪そこで死ぬ可能性もある。
「…迂回するしか、ないか…」
苦渋の決断だ。
昼過ぎ、リッキーたちを休ませるために休憩を取っていると、遠くの方に人が見えた。正確には、フサフサとした毛を持つ白い獣に人が乗っている。
ここに来て、初めてあの女以外の人間に遭遇した。
おそらく男性、そして1人のようだ。
私たちが避けている村の方角に向かっている。こちらに気づいた様子はない。
あの村に住む人間が私たちにとって敵なのか否か、今なら確かめられるかもしれない。
「セス、僕あの人とちょっと話をしてくる」
「ダメだ、やめろ」
そう言って立ち上がった私を、すぐさまセスが強い口調で制止した。
「何のために迂回を決めたんだ。魔族とむやみに接触をするな。相手がミトス語を話せるかもわからないんだぞ」
ごもっともだ。
だが何のためにと聞かれれば、全員でミトスに帰るためだ。
だからあの村が敵対関係にないのならば、最短距離でリンクに向かいたい。
あの男と話をすることでそれがはっきりするならば、多少のリスクは負ってもいい。
「うん、そうだね。それでも、そうする価値はあると僕は思ってる。ごめんね」
「シエル!」
言うだけ言ってセスの言葉は聞かずに、私はリッキーに跨って男の元へと走った。
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