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第22話:休日
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俺とリアは街の裏路地にいます。
「おい嬢ちゃんと坊主。怪我したくなかったら持ち金全部置いてけやオラァ!」
「い、嫌よ!」
「……うっぷ……」
今、俺たちは絶賛街のゴロツキに絡まれ中です。
アイラから逃走するために、まだ街の構造も分からず適当に走ったせいでこの狭い路地に迷い込んでしまった結果が今の状況である。
目の前には大の大人が三人。対する俺は揺れに揺られてグロッキーで喋る気力もも湧かない。
リアは強気に言葉を返しているが、上から見下ろされて萎縮している。足が震えているしな。
「よぉし。後五秒以内に有り金全てを差し出せば無事にママのところへ帰してやる。従わなけりゃあ……どうなるだろうな?」
と、リーダー格らしきハゲ。
「兄貴っ、俺、この子みたいな歳の子が一番好みなんすよ!」
「ひっ!?」
よく喋る奴の子分みたいなデブがリアを舐め回すように見て、舌舐めずりをする。その動作にリアから小さな悲鳴が上がった。
「……誰でもいい。やらせろ」
薄汚れたバンダナを巻いた目つきの悪い大人はリアの一点を凝視している。
「よーし、五ー、よーん……」
「うっ……ぐっ……出そう……」
し、食道を逆流し始めている……昨日の夜の飯が……。
「へ、変な目で見ないでっ! 切り裂け、『風の刃』!」
リアは恐怖を振り払うように魔法を詠唱し、発動させる。しかし、動揺からか正確さはなく、あらぬ方向へと飛んでいった。
「おおっと! まさか、お前魔法学校生か? ……なるほどな、これはやるだけやった後あの商会に売却も……」
あの商会?
「気が変わった! お前ら、こいつらを生け捕りにしろ!」
「あい分かった」
「了解っす!」
まぁいい。このままじゃリアも勢いでやられかねない。加勢してさっさと終わらすか。
「アイスすとうっ……おぇぇぇ」
吐き気に力加減を間違えて、三人まるごと氷漬けになってしまった。しかも俺は嘔吐。考えうる限り最悪のコンビネーションだ。幸い、吐瀉物は口の中で燃やし尽くした、口の中に防火の魔法を張って。
だが、胃酸による痛さと嘔吐後の気持ち悪さでテンションは下降の一途を辿っている。
もう帰ろうよ……。
「あ、ありがとうシアン君っ。……私もお姉ちゃんなんだから頑張らないと」
リアはぐっと拳を握ってそう言う。
「次はあの服屋さんに行きましょ!」
「……了解しましたっ」
あんな笑顔を向けられたら断れるはずないじゃないか……。
るんるんと路地を出た先にあった結構大きな服屋に入っていくリアを見ていると、あることに気づいた。
俺たちには贅沢ができるほど金は余っていないっ。
この非情な現実を、あんなに楽しそうに服を見ている可愛い女の子に告げることができようか。いや、できまい。
「シアン君見てっ、この服似合うかしら?」
リアは花柄のワンピースを手に取り、肩の前に持っている。赤い髪と似合っていてとても可愛い。
「すごく似合ってるよ!」
すると、彼女の頬が髪と同じ色に染まり、その顔には服と同じ花が咲いた。
「ありがとうっ!」
よし、その買おう。
「じゃあ、それは俺が買うよ」
「えっ、でもお金が……」
「すごく似合ってたから。俺がプレゼントしたいんだ。ダメかな?」
くぅ、柄にもないイケメンなことを口走ってしまった。大丈夫か?
「……そう。じゃあ、一生大切にするわっ」
「うんっ、ありがと!」
ここからは俺の交渉次第だ。俺の手持ちは銀貨一枚と銅貨七枚。
「それじゃあ、お会計を済ますからリアは外にいて」
「えっ?」
「いいから、ね?」
「う、うん。わかった」
半ば強引に納得させた感は否めないが、これでリアに俺が値切ることはバレないはずだ。
リアが店外に行ったことを確認して、たまたま近くにいた『店長』と書かれたネームプレートを付けた茶髪の女性に声をかけた。
「あの、すみません。この服を買いたいんですが……」
「はあぁ……あんなちっちゃな男の子が女の子に服を買ってあげるだなんて……男の子の可愛いだけでないと感じさせる男気、女の子は満面の笑み。萌えるわぁ……」
店長はこんな感じで俺の声すら聞こえていない様子だ。
「……あの!」
「男の子の気持ちを考えても女の子の気持ちを考えても滾るわぁ……」
なに言ってんだこの人。
「ねえっ!」
「はっ!? す、すみません。なんでしょう……ってさっきの子っ! きゃー! 可愛いっ!」
「うわっ」
わけのわからぬまま抱き上げられた。公共の場でこんなことされるとめちゃくちゃ恥ずかしいのだが。
「ねえ、やっぱり服を買いにきたの? やっぱりあの女の子のためだよね?」
「は、はい」
「やっぱり~!」
目をキラキラさせてぐるぐる回るので、また寄ってきた。
「き、気持ち悪い……」
「あ、ごめんね。それじゃ、お会計を……銀貨二枚です」
俺を降ろした店長は、服に付いているタグを見て値段を告げる。
やっぱり足りないな。
「……あのっ、俺、銀貨一枚と銅貨七枚しか持ってなくて……安くしてもらえませんか?」
店長はニヤリと笑った。
「そんなことだろうと思ってたわ。君みたいなちっちゃい子が、銀貨二枚なんて大金持ってるなんて思わないもん」
そう言ってうりうりーと俺の頭を撫で回す。
「でも、値引きはできないかなあ。私店長代理だし。今日だけの店長だし。アルバイトだし」
「あぁ~……じゃあ他の人に頼んでみますね」
「残念。今私しか店内にいないのよね」
「えっ!」
ど、どうすればいいんだ!? このまま手ぶらで帰るのはない。かといって値引きされないんじゃ買うこともできない……八方ふさがりだ。
「そんなに落ち込まないの。……私、実は冒険者やっててね。いろいろ依頼とか受けてたんだけど……そろそろダンジョンに挑戦してみようと思っててさ」
ちょっと嫌な予感がしてきたぞ……。
「けど、パーティに魔法士がいないんだよね。だから、いい魔法士を紹介してくれたらぁ、私が買ってあげてもいいかなぁ~?」
わざとらしく視線を送ってくるので、俺が誘われているような気がする。
しかし、俺は今私服なのにどうして魔法士と繋がりがあると思ったのだろうか。だめもとか? 俺が魔法学校に通っているということを知っている可能性もあるな。
嘘をつくと話も聞いてくれなくなるかもしれないため、嘘はつかないでおこう。
「俺も魔法学校の生徒なんですけど、強さが下から数えた方が早いくらいのクラスだから……ダンジョンに連れて行けるくらい強い人は友達にはいないかなあ……俺でもいいんだったら行きますけど」
「昨日の合宿じゃ二番目だったけどね」
やっぱり俺のことを知っていたようだ。もしかしたら、国のスカウトや、魔法学校に敵意を抱く集団の一人かもしれない。ゴロツキが言ってた商会の人かも……。
「なんでそれを?」
途端、店長の顔が歪んだ。
まさか危険人物なんじゃ……。
「今朝の新聞に載ってた」
「ま、まじか……」
新聞ってこの世界にもあったんだな。
新聞で俺たちの結果が公表されたということは、下克上を起こした俺たちには注目が集まるわけだ。
クラスを率いたのはラークだが、あいつが俺のことを変に喋ると、俺の静かなスクールライフが脅かされるかもしれない。
……当分は目立たずにいよう。
「そんな君ならきっとダンジョンでも大丈夫よ。それに、そんなに深くまでは潜らないしね」
ダンジョンは地下に広がっており、下に降りるほど敵も強くなるらしい。婆さんが言ってた。
「……なら、学校の授業がない日にお願いします」
「分かったわ。じゃ、これは私の奢りねっ」
店長から手渡されたワンピースは、初めてゲームを自分のお小遣いで買った気分だった。
「おい嬢ちゃんと坊主。怪我したくなかったら持ち金全部置いてけやオラァ!」
「い、嫌よ!」
「……うっぷ……」
今、俺たちは絶賛街のゴロツキに絡まれ中です。
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リアは強気に言葉を返しているが、上から見下ろされて萎縮している。足が震えているしな。
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と、リーダー格らしきハゲ。
「兄貴っ、俺、この子みたいな歳の子が一番好みなんすよ!」
「ひっ!?」
よく喋る奴の子分みたいなデブがリアを舐め回すように見て、舌舐めずりをする。その動作にリアから小さな悲鳴が上がった。
「……誰でもいい。やらせろ」
薄汚れたバンダナを巻いた目つきの悪い大人はリアの一点を凝視している。
「よーし、五ー、よーん……」
「うっ……ぐっ……出そう……」
し、食道を逆流し始めている……昨日の夜の飯が……。
「へ、変な目で見ないでっ! 切り裂け、『風の刃』!」
リアは恐怖を振り払うように魔法を詠唱し、発動させる。しかし、動揺からか正確さはなく、あらぬ方向へと飛んでいった。
「おおっと! まさか、お前魔法学校生か? ……なるほどな、これはやるだけやった後あの商会に売却も……」
あの商会?
「気が変わった! お前ら、こいつらを生け捕りにしろ!」
「あい分かった」
「了解っす!」
まぁいい。このままじゃリアも勢いでやられかねない。加勢してさっさと終わらすか。
「アイスすとうっ……おぇぇぇ」
吐き気に力加減を間違えて、三人まるごと氷漬けになってしまった。しかも俺は嘔吐。考えうる限り最悪のコンビネーションだ。幸い、吐瀉物は口の中で燃やし尽くした、口の中に防火の魔法を張って。
だが、胃酸による痛さと嘔吐後の気持ち悪さでテンションは下降の一途を辿っている。
もう帰ろうよ……。
「あ、ありがとうシアン君っ。……私もお姉ちゃんなんだから頑張らないと」
リアはぐっと拳を握ってそう言う。
「次はあの服屋さんに行きましょ!」
「……了解しましたっ」
あんな笑顔を向けられたら断れるはずないじゃないか……。
るんるんと路地を出た先にあった結構大きな服屋に入っていくリアを見ていると、あることに気づいた。
俺たちには贅沢ができるほど金は余っていないっ。
この非情な現実を、あんなに楽しそうに服を見ている可愛い女の子に告げることができようか。いや、できまい。
「シアン君見てっ、この服似合うかしら?」
リアは花柄のワンピースを手に取り、肩の前に持っている。赤い髪と似合っていてとても可愛い。
「すごく似合ってるよ!」
すると、彼女の頬が髪と同じ色に染まり、その顔には服と同じ花が咲いた。
「ありがとうっ!」
よし、その買おう。
「じゃあ、それは俺が買うよ」
「えっ、でもお金が……」
「すごく似合ってたから。俺がプレゼントしたいんだ。ダメかな?」
くぅ、柄にもないイケメンなことを口走ってしまった。大丈夫か?
「……そう。じゃあ、一生大切にするわっ」
「うんっ、ありがと!」
ここからは俺の交渉次第だ。俺の手持ちは銀貨一枚と銅貨七枚。
「それじゃあ、お会計を済ますからリアは外にいて」
「えっ?」
「いいから、ね?」
「う、うん。わかった」
半ば強引に納得させた感は否めないが、これでリアに俺が値切ることはバレないはずだ。
リアが店外に行ったことを確認して、たまたま近くにいた『店長』と書かれたネームプレートを付けた茶髪の女性に声をかけた。
「あの、すみません。この服を買いたいんですが……」
「はあぁ……あんなちっちゃな男の子が女の子に服を買ってあげるだなんて……男の子の可愛いだけでないと感じさせる男気、女の子は満面の笑み。萌えるわぁ……」
店長はこんな感じで俺の声すら聞こえていない様子だ。
「……あの!」
「男の子の気持ちを考えても女の子の気持ちを考えても滾るわぁ……」
なに言ってんだこの人。
「ねえっ!」
「はっ!? す、すみません。なんでしょう……ってさっきの子っ! きゃー! 可愛いっ!」
「うわっ」
わけのわからぬまま抱き上げられた。公共の場でこんなことされるとめちゃくちゃ恥ずかしいのだが。
「ねえ、やっぱり服を買いにきたの? やっぱりあの女の子のためだよね?」
「は、はい」
「やっぱり~!」
目をキラキラさせてぐるぐる回るので、また寄ってきた。
「き、気持ち悪い……」
「あ、ごめんね。それじゃ、お会計を……銀貨二枚です」
俺を降ろした店長は、服に付いているタグを見て値段を告げる。
やっぱり足りないな。
「……あのっ、俺、銀貨一枚と銅貨七枚しか持ってなくて……安くしてもらえませんか?」
店長はニヤリと笑った。
「そんなことだろうと思ってたわ。君みたいなちっちゃい子が、銀貨二枚なんて大金持ってるなんて思わないもん」
そう言ってうりうりーと俺の頭を撫で回す。
「でも、値引きはできないかなあ。私店長代理だし。今日だけの店長だし。アルバイトだし」
「あぁ~……じゃあ他の人に頼んでみますね」
「残念。今私しか店内にいないのよね」
「えっ!」
ど、どうすればいいんだ!? このまま手ぶらで帰るのはない。かといって値引きされないんじゃ買うこともできない……八方ふさがりだ。
「そんなに落ち込まないの。……私、実は冒険者やっててね。いろいろ依頼とか受けてたんだけど……そろそろダンジョンに挑戦してみようと思っててさ」
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しかし、俺は今私服なのにどうして魔法士と繋がりがあると思ったのだろうか。だめもとか? 俺が魔法学校に通っているということを知っている可能性もあるな。
嘘をつくと話も聞いてくれなくなるかもしれないため、嘘はつかないでおこう。
「俺も魔法学校の生徒なんですけど、強さが下から数えた方が早いくらいのクラスだから……ダンジョンに連れて行けるくらい強い人は友達にはいないかなあ……俺でもいいんだったら行きますけど」
「昨日の合宿じゃ二番目だったけどね」
やっぱり俺のことを知っていたようだ。もしかしたら、国のスカウトや、魔法学校に敵意を抱く集団の一人かもしれない。ゴロツキが言ってた商会の人かも……。
「なんでそれを?」
途端、店長の顔が歪んだ。
まさか危険人物なんじゃ……。
「今朝の新聞に載ってた」
「ま、まじか……」
新聞ってこの世界にもあったんだな。
新聞で俺たちの結果が公表されたということは、下克上を起こした俺たちには注目が集まるわけだ。
クラスを率いたのはラークだが、あいつが俺のことを変に喋ると、俺の静かなスクールライフが脅かされるかもしれない。
……当分は目立たずにいよう。
「そんな君ならきっとダンジョンでも大丈夫よ。それに、そんなに深くまでは潜らないしね」
ダンジョンは地下に広がっており、下に降りるほど敵も強くなるらしい。婆さんが言ってた。
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