クラス転移したら俺だけ五年後の世界転生させられた件

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第33話:宣戦布告

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 ダンジョンの外に出てみると、空はオレンジ色に塗られていた。
 流石にこの時間だと学校の授業も終わっているはずなのだが、このまま先生に顔を出さずに日をまたぐのは後々面倒臭そうなため、魔物なことをギルドに報告しに行くと言っていたハナに別れを告げて、とりあえず校舎に向かうことにした。


 職員がいる場所といえばーーそう思い、職員室に来たのだが、不在だったため教室に向かうことにしたのだが……。

「遅い! いったい今までなにしてたの!?」

 戸を開けるや否やこれである。朝ならイラついていただろうが、俺も俺で疲れているので、憤りを感じたというよりかは、げんなりしたという気分だった。

「走ってました。……それで、これは?」

 意外なことに、教室にはほとんどのクラスメートが集まっており……なにやら話し合いをしていたらしい。黒板に大きな文字で『対第7クラス下剋上対策会議』と書かれており、その下に『戦争』の文字が。
 俺の視線に気づいたラークが説明のために口を開く。

「この前の合宿で五位に甘んじた第7クラスから今日、宣戦布告があってな。発表されたルールが『戦争』だったんだ。全滅した方が負け、それだけがルールらしい」

 第7クラスかあ……。

「すごいアバウトだね……」

「同感だ」

 だが、それゆえに戦いの幅も広がるというものだ。
 個々の力では到底勝てない俺たちでも、やりようによっては勝てる可能性が出てくるということだ。
 それに、この対戦形式では俺の戦いに注目されることは少ないだろうから、目立つ心配もない。
 すると、ラークが気になることを漏らした。

「フィールドが山野地帯だから、野戦になるな」

「ん? ってことはどこか別の場所でやるの?」

 少なくとも、この学校内では山野などなかったはずだが。

「知らないのか? この学校の闘技場は特殊な結界が張られていて、そのなかでは誰も死なないようにできているらしい。それに、闘技場内だけなら地形や気候、なかの広さも変えられるらしいぞ。流石は魔法学校だな」

 その結界もどうせ婆さんが作ったんだと思うが……効果もそうだが、ここまで大規模な結界を恒常的に作動させる魔法なんて規格外だ。凡百の才能では手の届かぬ所業だろう。
 俺もおそらくできない。
 師匠の存在がまだまだ遠いのだと感じて息を吐く。

「……作戦は決まってるの?」

「方針は決まったんだが、まだ詰めれていないんだ」

 ラークに促されるように黒板に目をやると、『戦争』と書かれた下に『分隊行動』の文字が書かれており、どうやらそこで俺が来たのか、話が止まっていたようだ。

「分隊行動、というと?」

「何人かの小隊をたくさん作って、一網打尽にされるリスクを減らす、らしい」

「らしい?」

「ああ。そこのシンの提案だ」

 ラークの指差す方向に顔を向けると、昨日暴力事件を起こしたシンが……包帯だらけの男の子と目が合い、ふん、とそっぽを向かれた。
 痛々しい包帯は、投げたあとも姉の琴線に触れることでも口にしたのだろう。
 ともあれ、悪くない案だと思う。全滅のリスク軽減だけでなく、攻撃の面でも有効に使える戦略だ。

「シン。詳しく説明してくれないか?」

 ラークの問いかけに、シンはチラチラとこちらを見て、少し悩んだあとに渋々といった様子で口を開いた。

「……まず、下克上システムはアピールの場であることを理解しているか?」

「そうなの?」

 初耳である。

「戦いが行われる日は王都に告知され、闘技場が一般開放されるんだ。もちろんそのなかには各国の貴族や軍の関係者も来ていたりするんだよ」

「自分の存在をアピールする格好の舞台ってことだね」

「これとない、な」

 なるほど。底辺のクラス同士の戦いならば、注目度はあまり高くなく、客入りも悪いだろう。
 元々のクラス序列なら、第20クラスもそこに位置していたはずだ。

「それに、この試合は注目度が高い。多くの客がいる場で目立てば、それだけ将来につながると考える人も多いはずだぜ」

 俺たちは先の合宿で正真正銘の下克上を果たして注目されているだろうし、それこそ第7クラスは学年上位クラスだ。それ相応の客は集まるに違いない。
 シンの言葉で全てを察したらしい、ラークがポロリと呟いた。

「そのために、単独行動したり、大技を後先考えず使ってくれる可能性もあるかもしれないということか……!」

「ああ。あとは油断した奴らをどうにかして倒す。……情けないが、相手のミスを待つくらいしか俺には勝ち筋が見えない。そのあとも神頼みみたいなところだしな」

 たしかに勝てるかどうかは相手次第だが、俺の思いつく限りでもシンの案が最善策だと思う。
 俺の戦うときに姿を見られにくいという点でも都合がいいしな。
 シンは口を閉じたが、この作戦に異論を持つ者はおらず、ラークの確認のあとに正式に採用された。
 もう少し詰めるところが残っていたが、もう日も暮れるということで、今日は解散となり明日、再び話し合いをすることに決まり、俺たちはそれぞれ教室を出ていった。
 俺は例のキメラについて婆さんに尋ねるために学園長室へと続く廊下を歩いていると、要警戒人物である少女と鉢合わせーー

「……ユーノさん?」

「ーー絶て、『風牙』」

 瞬間、赤焼け色の校舎の一部が爆散した。

 ☆☆☆

 太陽も地平線からわずかに顔を残す時間、シアンたちが去った教室で、黒色の髪をセミショートに拵えた、八歳くらいだろうか、少女が一人、右手に炎、左手に水の魔法を顕現させていた。

 大きく息を吐き出したあと、それを徐々に強く、巨大にしていく。
 炎はまるで人工物の如く寸分も揺らめかず、水はなにかに閉じ込められているように大きな球体の形を保っている。
 おそらく魔法感覚の確認のために行ったものだろうが、二つの魔法をここまで制御することはこの学園の生徒でさえもできる者は数少ないであろう。
 つまり、この少女はそれだけの魔法操作能力を持っているのである。

 そして、魔法のサイズがサッカーボールを超えたあたりで、少女に変化が訪れた。
 髪の色が黒から桃色へと変化していっているのだ。

 この世界において桃色の髪とはーー即ち魔族、サキュバスを象徴するものであり、それが意味することは、この少女はサキュバスという事実である。

 しかし、サキュバスに髪の色を変える力はないと一般には知られているため、彼女の存在が世間に知られたときにはその認識が変わることだろう。

 それよりも問題なのは、魔族がこの学校に在籍しているということだ。魔族が世界中から金の卵が集まるこの学校へ来たとなると、入学志望者が減るどころか他国との関係にすら影響をきたす可能性もある。

 だが、すでに在籍している以上なるようにしかならないだろう。

「……ふぅ」

 少女が集中を切ると、魔法は跡形もなく消え、残ったのはピンクの髪の少女ただ一人。
 おもむろに髪を撫でる少女だが、その顔色は憂いを帯びている。

「シアン、くん……」

 額に手をやり漏らした言葉。
 十歳に満たない少女が出す声ではないと思うのだが、それは種族柄か。
 頬の赤みとは対照的に、桃の髪はもはやほとんど黒色に戻っていた。

 そのことを確認した少女は教室から出ようと扉を開けーー

「おい」

 そこには数人の男子生徒が待っていた。
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