クラス転移したら俺だけ五年後の世界転生させられた件

第41話:魔王領へ

　知り合い各人に、学校を辞めると挨拶を告げた。
　それと、リアとアイラには言わないように頼んでおいた。
　あの二人は、俺がダメと言ってもついてきそうだからだ。

　思い返せば、約束を置いたまま別れることになる。
　ルージュとの決闘の約束や、ハナと遥に会いに行く約束、リアを守るという約束。
　けど、いつか、その約束を果たせるようにしよう。

　☆☆☆☆☆

「……え、サニャクルシアも来るの？」

　校門で、婆さんとなぜかサニャクルシアがいたのだが、どうやら彼女も一緒に来るらしい。

「なんだい。不満なのかい？」

「いや……けど、サニャクルシアもなにか目的があって入学したんだよね。俺についてきていいのかなって」

　危険を冒してまで入学したのだから、それだけ彼女を突き動かすなにかがあったということだ。
　けれど、黒色の髪の少女は覚悟を決めているようだった。

「い、いいの。それに、わ、私がここに入学したのは、魔族領で生きていけるための力をつけるためだからっ……そ、それなら、シアン君と一緒にいれば身につくかなって……」

　初めて聞いた、サニャクルシアがこの学校に来た動機。
　そもそもここに来なければならなかった理由も存在しているはずだ。
　わざわざ人間領に行くことを選ぶほどなのだから、その事態の重さがうかがえる。
　だがそれは彼女が話したいときに聞けばいい。

「そっか。俺も、一人じゃ不安だったから助かったよ」

「そ、そっか！」

　心なしか、サニャクルシアの顔が紅潮している気がする。

「あっちでも、魔族と一緒にいるってだけ多少は生きやすいはずさね。……すまないね、二人とも。大変なことに巻き込んで」

　婆さんはもう何度目かもわからない謝罪を口にする。

「婆さんらしくないなぁ。ここは、『ほら、つべこべ言わずにちゃっちゃと行く』とか言ってくれないと」

「シアン……そうだね。ほら、こんなところでだらだらしてないで、ちゃっちゃと行きなっ！」

　俺の言葉でも、多少は救われたようで、沈痛な面持ちだった顔が少し晴れた。

「りょーかいっ！」

「い、行ってきますっ！」

　俺とサニャクルシアは、現魔王体制を打ち崩さんとする連中を淘汰するべく、魔族領へと向かった。