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第3章 思いがけない再会
2 父の行方を探して
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ほどなくして、出版社から出てきたクレイを、ファンローゼは不安な面持ちで見つめた。けれど、クレイがふわりと笑って手をあげる姿を見て、ほっと息を吐き、肩の力を緩めた。
「クルトさんの居場所が分かったよ」
ファンローゼは表情を明るくさせた。が、すぐに首を傾げる。
「どうやって聞き出したの?」
あれだけ父の居場所を教えて欲しいと頼み込んでも、口を開こうとしなかったのに。
「何度も頭をさげてお願いしたんだ。そうしたら向こうもようやく分かってくれて」
ファンローゼは申し訳なさそうにうなだれた。
頭を下げてお願いしなければいけなかったのは、自分のはずであったのに。
「クレイ……ごめんなさい」
頭の上でクレイの笑い声が落ちる。と、同時にクレイの指先があごにかけられた。
澄んだ碧い瞳に見つめられ、胸がどきりと鳴る。
頬がかっと熱くなっていくのを感じて、戸惑いに瞳を揺らす。
「ごめんなさいではなく、ありがとうと言って欲しいな」
かけられた指先で、顔を上向かせられる。
「ごめ……ううん、ありがとうクレイ」
「気にしないで。君のためなら僕はどんなことだって頑張るから」
クレイの言葉がつきりと胸に突き刺さると同時に、切ない気持ちで胸がいっぱいになった。
胸が痛い。
「ファンローゼ? そんな顔をしないで。僕は大丈夫だから。それに、君の役に立てて嬉しいんだ」
だから辛そうな顔をしないでと、あごにかけられたクレイの指先が頬へとすべる。
「もっと僕を頼って」
「どうして? どうしてクレイはそこまで私によくしてくれるの?」
「簡単なことだよ。僕は君のことが好きだから。君には笑っていて欲しいから」
「クレイ……」
クレイは腕時計に視線を落とす。
「クルトさんは今、ラスタットという町のアパートで暮らしているらしい」
ラスタットなら隣町だ。
急げば車で一時間はかからない。
もっとも、町を歩くエスツェリア軍の目を気にしなければいけないから、すんなり辿り着けるかどうか難しいが。
町のいたるところでエスツェリア軍を見かけた。
ファンローゼは軍に追われている。
彼らが自分の追跡をあきらめたとは思えない。
先ほども、黒い軍服を着た二人の男が、すぐ横を通り過ぎていった。
今、自分は敵国のまっただ中にいる。もし、敵に捕まるようなことになれば、協力するクレイにまで迷惑をかけることになる。
それだけは、絶対に避けなければならない。
「クルトさんは軍に追われている。もしかしたら教えられたアパートにも長くはいないのかもしれない。とにかく急ごう」
ファンローゼははい、と頷いた。
「クレイ、本当にありがとう。あなたがいてくれなかったら、私一人ではどうしていいか分からなかった」
クレイは口元に笑みを浮かべ、ファンローゼの頭をなでた。
「お礼を言うのは、君のお父さんと再会できてからだ。さあ、行こう」
クレイに手を引かれ、ファンローゼは隣町に向かうため、再びクレイの車に乗った。
「クルトさんの居場所が分かったよ」
ファンローゼは表情を明るくさせた。が、すぐに首を傾げる。
「どうやって聞き出したの?」
あれだけ父の居場所を教えて欲しいと頼み込んでも、口を開こうとしなかったのに。
「何度も頭をさげてお願いしたんだ。そうしたら向こうもようやく分かってくれて」
ファンローゼは申し訳なさそうにうなだれた。
頭を下げてお願いしなければいけなかったのは、自分のはずであったのに。
「クレイ……ごめんなさい」
頭の上でクレイの笑い声が落ちる。と、同時にクレイの指先があごにかけられた。
澄んだ碧い瞳に見つめられ、胸がどきりと鳴る。
頬がかっと熱くなっていくのを感じて、戸惑いに瞳を揺らす。
「ごめんなさいではなく、ありがとうと言って欲しいな」
かけられた指先で、顔を上向かせられる。
「ごめ……ううん、ありがとうクレイ」
「気にしないで。君のためなら僕はどんなことだって頑張るから」
クレイの言葉がつきりと胸に突き刺さると同時に、切ない気持ちで胸がいっぱいになった。
胸が痛い。
「ファンローゼ? そんな顔をしないで。僕は大丈夫だから。それに、君の役に立てて嬉しいんだ」
だから辛そうな顔をしないでと、あごにかけられたクレイの指先が頬へとすべる。
「もっと僕を頼って」
「どうして? どうしてクレイはそこまで私によくしてくれるの?」
「簡単なことだよ。僕は君のことが好きだから。君には笑っていて欲しいから」
「クレイ……」
クレイは腕時計に視線を落とす。
「クルトさんは今、ラスタットという町のアパートで暮らしているらしい」
ラスタットなら隣町だ。
急げば車で一時間はかからない。
もっとも、町を歩くエスツェリア軍の目を気にしなければいけないから、すんなり辿り着けるかどうか難しいが。
町のいたるところでエスツェリア軍を見かけた。
ファンローゼは軍に追われている。
彼らが自分の追跡をあきらめたとは思えない。
先ほども、黒い軍服を着た二人の男が、すぐ横を通り過ぎていった。
今、自分は敵国のまっただ中にいる。もし、敵に捕まるようなことになれば、協力するクレイにまで迷惑をかけることになる。
それだけは、絶対に避けなければならない。
「クルトさんは軍に追われている。もしかしたら教えられたアパートにも長くはいないのかもしれない。とにかく急ごう」
ファンローゼははい、と頷いた。
「クレイ、本当にありがとう。あなたがいてくれなかったら、私一人ではどうしていいか分からなかった」
クレイは口元に笑みを浮かべ、ファンローゼの頭をなでた。
「お礼を言うのは、君のお父さんと再会できてからだ。さあ、行こう」
クレイに手を引かれ、ファンローゼは隣町に向かうため、再びクレイの車に乗った。
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