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第5章 すべては君を手に入れるための嘘
2 疑惑の中で
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「アニタ、今までどこに行っていたんだ」
「ちょっとね。それよりも、今回の作戦は失敗って、どういうこと?」
男たちは何度も繰り返されてきた話をアニタにも説明する。
「ふーん……つまり裏切り者がこの中にいたってわけね」
不意にアニタの視線がファンローゼへと向けられた。
「ねえ、あんた大佐と寝た? 抱かれた?」
あけすけな物言いにファンローゼは一瞬、言葉を失う。
「おい、アニタ何を言いだす」
「あら、あたしはこの子が敵に抱かれながら余計なことを喋ったりしなかったか? って聞いてみただけよ。あんたみたいな子は、うっかり相手の罠にはまってつい、ぺらぺらと喋りがちだもの」
「アニタ、よさないか」
咎めるクレイを振り切り、アニタはさらに言葉を継ぐ。
「これは大切なことだわ。仲間を失ったのも、もしかしたらこの子のせいかもしれない。だから確かめただけよ」
この場にいる全員の目がファンローゼに向けられる。
クレイに止められたが、それでもファンローゼの口から真実を聞きたいという眼差しであった。
「私は……私は大佐とは何もありません」
アニタはへえと眉をあげた。
「大佐とは寝ていない。でも部屋に入ったのでしょう? 部屋の鍵は?」
「それは……」
「あらあら、どういうことかしら。大佐とは接触していない。だとしたら、牢の鍵はどうやって手に入れたのかしら」
アニタはニヤリと口を歪めて嗤う。
「君! どういうことだ? 俺たちにもちゃんと聞かせてくれ」
「そうだ!」
「部屋の鍵は僕があらかじめ手に入れ彼女に手渡した」
すかさずクレイが言う。
「クレイが? 何だ、そうだったのか」
その鍵をどこで手に入れたのかと問いただす者はいなかった。それだけ皆クレイに信頼を寄せているのだ。だが、アニタは引かなかった。
「いいえ、鍵はクレイが用意したにしても、そこから先の行動はあなた一人でやったのよね?」
ファンローゼは口を噤み、アニタから視線をそらす。
「はっきり言いなさいよ!」
「手を……貸してくれる人がいました」
「へえ、いったい誰かしら?」
「エスツェリア軍の」
「エスツェリア軍の?」
「コンツェット」
辺りがざわめく。
「おい、ちょっと待てよ……コンツェットだって?」
「まさか!」
「コンツェットって、エティカリアを裏切った、売国奴の黒い悪魔!」
「ねえ! みんな聞いた?」
アニタはわざとらしく手を大きく広げ、再びファンローゼを見据える。
「コンツェットといえば、エティカリア人でありながら、エティカリアを裏切り、敵に魂を売り渡した黒い悪魔じゃない」
皆の厳しい目がファンローゼに向けられる。
「どうして、敵軍の将校があんたを手助けしたわけ?」
アニタはついっとファンローゼにつめよる。
「もしかして、あたしたちに近づいたのも、そのコンツェットって男の差し金だったんじゃない? 聞けば、コンツェットはかなりの切れ者だって聞くわ。それに、その手でエティカリア人を殺しまくった黒い悪魔って言われている。彼だってエティカリア人なのに! なぜ、目をそらすの? 何かやましいことでもあるから?」
「やましいことなんて何もありません!」
「ねえ、あんたはクルト・ウェンデルの娘だと言ってたわよね。そう、クルトの娘ファンローゼには将来を誓い合った相手がいたと聞いたわ。その人はコンツェット。つまり今はエスツェリア軍の特務部隊であり大佐の右腕たる男。エティカリアの裏切り者。それがあんたの許嫁!」
「何だって?」
「つまり、あんたはそのコンツェットにあたしたちのことをばらした。自分の身の安全と引き換えに仲間を売った。そうでなければ、あんただけこうして無事に生きて戻ってこれたことに説明がつかない」
「確かに、彼は私の幼なじみだけど、私、そんなことしない!」
「はん! どうだか?」
「待てアニタ。そんなことをしてもどうにもならないだろう。もし、そうだとしたら、ファンローゼがここへ戻ってくる理由がない。そのままその男と逃げればいい」
「確かに……」
「とにかくみんな落ち着いてくれ。ファンローゼは僕が連れてきた娘だ。それだけは分かって欲しい。彼女には僕が事情を聞く。皆もそれでどうだろうか」
この場にいる者全員顔を見合わせ頷いた。
完全に納得したわけではないが、リーダーであるクレイがそういうのならという顔であった。
「ちょっとね。それよりも、今回の作戦は失敗って、どういうこと?」
男たちは何度も繰り返されてきた話をアニタにも説明する。
「ふーん……つまり裏切り者がこの中にいたってわけね」
不意にアニタの視線がファンローゼへと向けられた。
「ねえ、あんた大佐と寝た? 抱かれた?」
あけすけな物言いにファンローゼは一瞬、言葉を失う。
「おい、アニタ何を言いだす」
「あら、あたしはこの子が敵に抱かれながら余計なことを喋ったりしなかったか? って聞いてみただけよ。あんたみたいな子は、うっかり相手の罠にはまってつい、ぺらぺらと喋りがちだもの」
「アニタ、よさないか」
咎めるクレイを振り切り、アニタはさらに言葉を継ぐ。
「これは大切なことだわ。仲間を失ったのも、もしかしたらこの子のせいかもしれない。だから確かめただけよ」
この場にいる全員の目がファンローゼに向けられる。
クレイに止められたが、それでもファンローゼの口から真実を聞きたいという眼差しであった。
「私は……私は大佐とは何もありません」
アニタはへえと眉をあげた。
「大佐とは寝ていない。でも部屋に入ったのでしょう? 部屋の鍵は?」
「それは……」
「あらあら、どういうことかしら。大佐とは接触していない。だとしたら、牢の鍵はどうやって手に入れたのかしら」
アニタはニヤリと口を歪めて嗤う。
「君! どういうことだ? 俺たちにもちゃんと聞かせてくれ」
「そうだ!」
「部屋の鍵は僕があらかじめ手に入れ彼女に手渡した」
すかさずクレイが言う。
「クレイが? 何だ、そうだったのか」
その鍵をどこで手に入れたのかと問いただす者はいなかった。それだけ皆クレイに信頼を寄せているのだ。だが、アニタは引かなかった。
「いいえ、鍵はクレイが用意したにしても、そこから先の行動はあなた一人でやったのよね?」
ファンローゼは口を噤み、アニタから視線をそらす。
「はっきり言いなさいよ!」
「手を……貸してくれる人がいました」
「へえ、いったい誰かしら?」
「エスツェリア軍の」
「エスツェリア軍の?」
「コンツェット」
辺りがざわめく。
「おい、ちょっと待てよ……コンツェットだって?」
「まさか!」
「コンツェットって、エティカリアを裏切った、売国奴の黒い悪魔!」
「ねえ! みんな聞いた?」
アニタはわざとらしく手を大きく広げ、再びファンローゼを見据える。
「コンツェットといえば、エティカリア人でありながら、エティカリアを裏切り、敵に魂を売り渡した黒い悪魔じゃない」
皆の厳しい目がファンローゼに向けられる。
「どうして、敵軍の将校があんたを手助けしたわけ?」
アニタはついっとファンローゼにつめよる。
「もしかして、あたしたちに近づいたのも、そのコンツェットって男の差し金だったんじゃない? 聞けば、コンツェットはかなりの切れ者だって聞くわ。それに、その手でエティカリア人を殺しまくった黒い悪魔って言われている。彼だってエティカリア人なのに! なぜ、目をそらすの? 何かやましいことでもあるから?」
「やましいことなんて何もありません!」
「ねえ、あんたはクルト・ウェンデルの娘だと言ってたわよね。そう、クルトの娘ファンローゼには将来を誓い合った相手がいたと聞いたわ。その人はコンツェット。つまり今はエスツェリア軍の特務部隊であり大佐の右腕たる男。エティカリアの裏切り者。それがあんたの許嫁!」
「何だって?」
「つまり、あんたはそのコンツェットにあたしたちのことをばらした。自分の身の安全と引き換えに仲間を売った。そうでなければ、あんただけこうして無事に生きて戻ってこれたことに説明がつかない」
「確かに、彼は私の幼なじみだけど、私、そんなことしない!」
「はん! どうだか?」
「待てアニタ。そんなことをしてもどうにもならないだろう。もし、そうだとしたら、ファンローゼがここへ戻ってくる理由がない。そのままその男と逃げればいい」
「確かに……」
「とにかくみんな落ち着いてくれ。ファンローゼは僕が連れてきた娘だ。それだけは分かって欲しい。彼女には僕が事情を聞く。皆もそれでどうだろうか」
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