11 / 11
第1章 村祭りの夜のできごと
11 疎外感
しおりを挟む
それからの雪子は夏祭りの準備で忙しく過ごした。
まずは、会場となる空き地の草むしりをお願いされた。だが、最初は皆で草むしりをやっていたはずだったのに、気づけばいつの間にか雪子一人で作業していた。
他の者は働いている雪子を尻目に、茶を飲みながらお喋りをしている。
それでも、雪子は数日かけて空き地の草をきれいに狩り、それと平行して買い出しや料理の準備、提灯作りも行った。
いよいよ祭りの日が近くなると、紙で作った花を櫓に飾り、提灯を取りつけたりと、充実した日々を過ごした。
そのせいか、ここへ来た当初に感じた嫌な気配も、それほど気にはならなくなった。けれど、一人っきりで考え事をしていると、再びおぞましい気配を感じることはあったが。
そして、祭りの日を迎えた。
その日は村中が朝から浮き足立っていた。
日が落ちる頃合いになると、早々に仕事を切り上げ、村人たちが会場に集まり始めた。
日がすっかり落ちると、皆、出された料理を食べ、酒を飲み思い思いに楽しんでいる。
酔った男たちは機嫌よく歌をうたい踊り、年頃の娘たちは、めいいっぱい着飾り、思いを寄せる男の元へ行き会話を弾ませていた。
いつもは夜になればしんと静まりかえる村も、この日ばかりは賑わいをみせた。
私も少しはこの村の役にたてたかしら。
ずっと、隆史とともに祭りの準備を手伝ってきたこともあり、皆が楽しそうに笑う顔を見るのが嬉しいと思った。
ふと、雪子は離れた場所、櫓の下にいる隆史に視線を向ける。
気づけばいつの間にか彼の回りには女たちが集まり、楽しそうに会話をしている。
中には頬を赤らめ、熱っぽい視線で彼を見つめる娘もいた。
やっぱり、隆史さんは女性に人気なのね。
そこへ、ちょっと待って、と言い隆史が女性たちの輪から外れていく。
なかなか戻ってこない隆史にしびれをきらしたのか、女たちは遠くにいる隆史に手を振り呼び戻す。
「利蔵さーん、何してるの? 一緒に踊りましょうよ」
「ああ、待ってすぐに行く」
戻ってきた隆史を、女性たちは再び取り囲む。
そんな彼の姿を、雪子はぼんやりと眺めていた。
ふと、誰一人として自分の元にやってくる者がいないことに気づく。
あれだけ祭りの準備に忙しく動き回った雪子に、ねぎらいの言葉をかけてくる者はいない。隆史でさえ、雪子の存在を忘れているのか、一度も声をかけてくることはなかった。
楽しみにしていた初めての村祭りを、こんな形で迎えることになるとは。
結局、祭りが終わる最後まで、雪子は会場の隅で一人立ち尽くしていた。
まずは、会場となる空き地の草むしりをお願いされた。だが、最初は皆で草むしりをやっていたはずだったのに、気づけばいつの間にか雪子一人で作業していた。
他の者は働いている雪子を尻目に、茶を飲みながらお喋りをしている。
それでも、雪子は数日かけて空き地の草をきれいに狩り、それと平行して買い出しや料理の準備、提灯作りも行った。
いよいよ祭りの日が近くなると、紙で作った花を櫓に飾り、提灯を取りつけたりと、充実した日々を過ごした。
そのせいか、ここへ来た当初に感じた嫌な気配も、それほど気にはならなくなった。けれど、一人っきりで考え事をしていると、再びおぞましい気配を感じることはあったが。
そして、祭りの日を迎えた。
その日は村中が朝から浮き足立っていた。
日が落ちる頃合いになると、早々に仕事を切り上げ、村人たちが会場に集まり始めた。
日がすっかり落ちると、皆、出された料理を食べ、酒を飲み思い思いに楽しんでいる。
酔った男たちは機嫌よく歌をうたい踊り、年頃の娘たちは、めいいっぱい着飾り、思いを寄せる男の元へ行き会話を弾ませていた。
いつもは夜になればしんと静まりかえる村も、この日ばかりは賑わいをみせた。
私も少しはこの村の役にたてたかしら。
ずっと、隆史とともに祭りの準備を手伝ってきたこともあり、皆が楽しそうに笑う顔を見るのが嬉しいと思った。
ふと、雪子は離れた場所、櫓の下にいる隆史に視線を向ける。
気づけばいつの間にか彼の回りには女たちが集まり、楽しそうに会話をしている。
中には頬を赤らめ、熱っぽい視線で彼を見つめる娘もいた。
やっぱり、隆史さんは女性に人気なのね。
そこへ、ちょっと待って、と言い隆史が女性たちの輪から外れていく。
なかなか戻ってこない隆史にしびれをきらしたのか、女たちは遠くにいる隆史に手を振り呼び戻す。
「利蔵さーん、何してるの? 一緒に踊りましょうよ」
「ああ、待ってすぐに行く」
戻ってきた隆史を、女性たちは再び取り囲む。
そんな彼の姿を、雪子はぼんやりと眺めていた。
ふと、誰一人として自分の元にやってくる者がいないことに気づく。
あれだけ祭りの準備に忙しく動き回った雪子に、ねぎらいの言葉をかけてくる者はいない。隆史でさえ、雪子の存在を忘れているのか、一度も声をかけてくることはなかった。
楽しみにしていた初めての村祭りを、こんな形で迎えることになるとは。
結局、祭りが終わる最後まで、雪子は会場の隅で一人立ち尽くしていた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
洒落にならない怖い話【短編集】
鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。
意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。
隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる