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那須隼人7
トンネル
隼人の住むアパートからすれば、六守谷町は隣県になる。
しかし、六守谷町のある矢隈市はほとんど県境に位置しているため、地下鉄とJRを乗り継いでも、一時間もかからない。
電車に揺られている間中、隼人は高梨にどう話せばいいだろうかと、そのことばかりを考えていた。
昨夜の電話では、前に高梨と一緒になったランチの日以来、葵には会っていないと、ぼそぼそとした声で伝えていた。
それは嘘ではないが、泥の庭で危険な体験をし、そこを葵に助けられたことまでは伝えていなかった。
葵の失踪の理由は分からない。
しかし、自分がKUUKIによくないものを呼び込んでしまったのではないかという不安が、頭から離れなかった。
ユキは訊いた。何かを六守谷に置いてきてはいないかと。
そんな物に心当たりはないと、あの時は考えた。
だが今になってみると、泥にまみれた衣服や靴を、葵の家に置いてきていた。
処分してくれるようにお願いはしていたが、「悪いものは、置いてきた物にまでは手を伸ばせる」といった彼女の言葉が、今になって重く胸に圧し掛かっていた。
電車が矢隈山を抜ける長いトンネルに入ったところで、隼人は高梨にLINEを送っていた。
『今晩、時間を取れないか。話したいことがあるんだ』
テキストで説明しようとは思えなかった。
会って直接話をして伝えたかった。
率直な意見を聞きたかった。
なじられるなら、それも仕方がないと思った。
窓の外が暗闇になると、ガラスが鏡のようになる。
そこに映る青白い自分の顔を見て、酷い顔をしているなと思った。
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