しずめ

山程ある

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那須隼人9

ヤバいもんの気配に繋がってく感じ

「よお、待たせた……」

 そこまで言いかけたところで、高梨の目が見開かれた。
 隼人の同行者に気付いたからだ。

 場所は東矢隈駅からほど近い居酒屋。前に高梨と行った店とは違い、こちらは個人店だ。
 広い店ではない。入り口から見て手前側に、六、七人が座れるカウンター、その奥に四人掛けのテーブル席が四つ。急な階段があるところから見て、二階にも客席があるらしい。
 スタッフは、カウンターの中に店の主らしき初老の男性と、二十歳そこそこほどの若い男性。さらにテーブル席に料理を運ぶ年配の女性が一人。
 平日で、時間もまだ早いためか、客はカウンター席に座った二人連れだけだった。

 落ち着いた雰囲気の店ではないが、それでもチェーン店の居酒屋に比べれば賑やか過ぎず、話はしやすそうである。

 ここは高梨が予約をしてくれていた。彼の名前を告げて案内されたテーブル席に隼人たちが座ると、ほとんど間を置かずに高梨も到着した。

「いや、オレたちも今来たところだよ」

「いや、“たち”ってなんだよ。一体どちらさん?」

 面食らった様子で、高梨はどちらへともなく訊く。

「サイトウユキっていいます。ハヤトにナンパされました。ゴハン食べさせてくれるっつーんで、付いてきちゃいました」

「……ああ、ナンパご飯」

 高梨は一瞬だけ、刺すような視線を隼人に向けたあと、モゴモゴ言いながら椅子に腰を下ろした。

「ナンパご飯ってなんだ。オレはナンパなんてしたことないからな」

 隼人が言うと、高梨は言葉を探すようにしながら隼人とユキを交互に見た。その視線には落ち着きがない。

 おそらくは、ユキが美形であることが理由だろうと隼人は思った。
 赤い髪や特徴的な化粧によりずいぶんと派手な見た目ではある。さらにその話し方も、あまり行儀が良いとはいえない。それでも下品にはならず、どことなく透明感まで感じられるのは、彼女自身の素の美しさがあるからだろう。

「そーだった。他所んちにカメラ向けてる不審者がいたから、あーしが職務質問ショクシツしたんすよ」

「本当にどういうことなんだ?」

 高梨が困った顔を隼人に向ける。

「えっと、森があった場所だったんだよ。マルツカの森っていう。あ、で、このユキさんに助けられたんだ」

「マルツカの森?」

 高梨の顔に、ほんの一瞬だけ奇妙な表情が浮かんだ。

 一度ユキへ目を向け、それから隼人へ戻す。彼女に聞かせても良いのか問いかけているのだと、隼人は理解した。

 大きく頷いてから口を開く。

「彼女はオレの友人の友人で、なんていうか、勘の鋭い人なんだよ」

「霊感少女っす」

 ユキがピースサインを突き出す。

「ハヤトとは昨日、ツレの紹介で会ったんだけど、なんかヤバいもんに関わってるの感じてさ。
 そんで今日は今日で、ハヤトがそのヤバいもんの気配に繋がってく感じがしたんよ。昨日の今日だから、あーしとハヤトの繋がりもまだ強かったんだろうね。
 で、“あ、これ結構ヤバいな”って思って、わざわざ来てあげたってわけ」

「なるほど、さっぱり分からん。だが……」

 眉間にしわを寄せてユキの話を聞いていた高梨が、隼人に顔を向けた。
 強く真剣な目だ。

「まずは、葵さんのことを、もう一度きちんと話してもらえないか?」
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