84 / 99
那須隼人9
ヤバいもんの気配に繋がってく感じ
「よお、待たせた……」
そこまで言いかけたところで、高梨の目が見開かれた。
隼人の同行者に気付いたからだ。
場所は東矢隈駅からほど近い居酒屋。前に高梨と行った店とは違い、こちらは個人店だ。
広い店ではない。入り口から見て手前側に、六、七人が座れるカウンター、その奥に四人掛けのテーブル席が四つ。急な階段があるところから見て、二階にも客席があるらしい。
スタッフは、カウンターの中に店の主らしき初老の男性と、二十歳そこそこほどの若い男性。さらにテーブル席に料理を運ぶ年配の女性が一人。
平日で、時間もまだ早いためか、客はカウンター席に座った二人連れだけだった。
落ち着いた雰囲気の店ではないが、それでもチェーン店の居酒屋に比べれば賑やか過ぎず、話はしやすそうである。
ここは高梨が予約をしてくれていた。彼の名前を告げて案内されたテーブル席に隼人たちが座ると、ほとんど間を置かずに高梨も到着した。
「いや、オレたちも今来たところだよ」
「いや、“たち”ってなんだよ。一体どちらさん?」
面食らった様子で、高梨はどちらへともなく訊く。
「サイトウユキっていいます。ハヤトにナンパされました。ゴハン食べさせてくれるっつーんで、付いてきちゃいました」
「……ああ、ナンパご飯」
高梨は一瞬だけ、刺すような視線を隼人に向けたあと、モゴモゴ言いながら椅子に腰を下ろした。
「ナンパご飯ってなんだ。オレはナンパなんてしたことないからな」
隼人が言うと、高梨は言葉を探すようにしながら隼人とユキを交互に見た。その視線には落ち着きがない。
おそらくは、ユキが美形であることが理由だろうと隼人は思った。
赤い髪や特徴的な化粧によりずいぶんと派手な見た目ではある。さらにその話し方も、あまり行儀が良いとはいえない。それでも下品にはならず、どことなく透明感まで感じられるのは、彼女自身の素の美しさがあるからだろう。
「そーだった。他所んちにカメラ向けてる不審者がいたから、あーしが職務質問したんすよ」
「本当にどういうことなんだ?」
高梨が困った顔を隼人に向ける。
「えっと、森があった場所だったんだよ。マルツカの森っていう。あ、で、このユキさんに助けられたんだ」
「マルツカの森?」
高梨の顔に、ほんの一瞬だけ奇妙な表情が浮かんだ。
一度ユキへ目を向け、それから隼人へ戻す。彼女に聞かせても良いのか問いかけているのだと、隼人は理解した。
大きく頷いてから口を開く。
「彼女はオレの友人の友人で、なんていうか、勘の鋭い人なんだよ」
「霊感少女っす」
ユキがピースサインを突き出す。
「ハヤトとは昨日、ツレの紹介で会ったんだけど、なんかヤバいもんに関わってるの感じてさ。
そんで今日は今日で、ハヤトがそのヤバいもんの気配に繋がってく感じがしたんよ。昨日の今日だから、あーしとハヤトの繋がりもまだ強かったんだろうね。
で、“あ、これ結構ヤバいな”って思って、わざわざ来てあげたってわけ」
「なるほど、さっぱり分からん。だが……」
眉間にしわを寄せてユキの話を聞いていた高梨が、隼人に顔を向けた。
強く真剣な目だ。
「まずは、葵さんのことを、もう一度きちんと話してもらえないか?」
そこまで言いかけたところで、高梨の目が見開かれた。
隼人の同行者に気付いたからだ。
場所は東矢隈駅からほど近い居酒屋。前に高梨と行った店とは違い、こちらは個人店だ。
広い店ではない。入り口から見て手前側に、六、七人が座れるカウンター、その奥に四人掛けのテーブル席が四つ。急な階段があるところから見て、二階にも客席があるらしい。
スタッフは、カウンターの中に店の主らしき初老の男性と、二十歳そこそこほどの若い男性。さらにテーブル席に料理を運ぶ年配の女性が一人。
平日で、時間もまだ早いためか、客はカウンター席に座った二人連れだけだった。
落ち着いた雰囲気の店ではないが、それでもチェーン店の居酒屋に比べれば賑やか過ぎず、話はしやすそうである。
ここは高梨が予約をしてくれていた。彼の名前を告げて案内されたテーブル席に隼人たちが座ると、ほとんど間を置かずに高梨も到着した。
「いや、オレたちも今来たところだよ」
「いや、“たち”ってなんだよ。一体どちらさん?」
面食らった様子で、高梨はどちらへともなく訊く。
「サイトウユキっていいます。ハヤトにナンパされました。ゴハン食べさせてくれるっつーんで、付いてきちゃいました」
「……ああ、ナンパご飯」
高梨は一瞬だけ、刺すような視線を隼人に向けたあと、モゴモゴ言いながら椅子に腰を下ろした。
「ナンパご飯ってなんだ。オレはナンパなんてしたことないからな」
隼人が言うと、高梨は言葉を探すようにしながら隼人とユキを交互に見た。その視線には落ち着きがない。
おそらくは、ユキが美形であることが理由だろうと隼人は思った。
赤い髪や特徴的な化粧によりずいぶんと派手な見た目ではある。さらにその話し方も、あまり行儀が良いとはいえない。それでも下品にはならず、どことなく透明感まで感じられるのは、彼女自身の素の美しさがあるからだろう。
「そーだった。他所んちにカメラ向けてる不審者がいたから、あーしが職務質問したんすよ」
「本当にどういうことなんだ?」
高梨が困った顔を隼人に向ける。
「えっと、森があった場所だったんだよ。マルツカの森っていう。あ、で、このユキさんに助けられたんだ」
「マルツカの森?」
高梨の顔に、ほんの一瞬だけ奇妙な表情が浮かんだ。
一度ユキへ目を向け、それから隼人へ戻す。彼女に聞かせても良いのか問いかけているのだと、隼人は理解した。
大きく頷いてから口を開く。
「彼女はオレの友人の友人で、なんていうか、勘の鋭い人なんだよ」
「霊感少女っす」
ユキがピースサインを突き出す。
「ハヤトとは昨日、ツレの紹介で会ったんだけど、なんかヤバいもんに関わってるの感じてさ。
そんで今日は今日で、ハヤトがそのヤバいもんの気配に繋がってく感じがしたんよ。昨日の今日だから、あーしとハヤトの繋がりもまだ強かったんだろうね。
で、“あ、これ結構ヤバいな”って思って、わざわざ来てあげたってわけ」
「なるほど、さっぱり分からん。だが……」
眉間にしわを寄せてユキの話を聞いていた高梨が、隼人に顔を向けた。
強く真剣な目だ。
「まずは、葵さんのことを、もう一度きちんと話してもらえないか?」
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/4/14:『かえる』の章を追加。2026/4/21の朝頃より公開開始予定。
2026/4/13:『へび』の章を追加。2026/4/20の朝頃より公開開始予定。
2026/4/12:『ぱにっく』の章を追加。2026/4/19の朝頃より公開開始予定。
2026/4/11:『どろどろ』の章を追加。2026/4/18の朝頃より公開開始予定。
2026/4/10:『なきごえ』の章を追加。2026/4/17の朝頃より公開開始予定。
2026/4/9:『ぐつぐつぐつ』の章を追加。2026/4/16の朝頃より公開開始予定。
2026/4/8:『ねじれまわる』の章を追加。2026/4/15の朝頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
近づいてはならぬ、敬して去るべし
句ノ休(くのやすめ)
ホラー
山中、もしあなたがそれに出会ったら……
近づいてはいけない。
敬して去るべし。
山を降りろ。
六年勤めた会社を辞めた。お荷物だとはわかっていたし、むしろ清々しくもあった。
28歳のコウイチには、仕事より大切なものがあった。
田舎歩きだ。そこ大事なのが学生のときにかじった民俗学だ。廃集落、古い祠、忘れられた神々——それを訪ねることは、彼のたった一つの愉しみだった。
大学時代、民俗学の講義で准教授はこう言った。「神々は神ではない」。人が畏れ、従い、忖度したものがかみになる。その言葉がコウイチを変えた。
会社の営業で関東のあちこちを歩きまわった。コウイチは仕事よりも土地の古老の話に耳を傾けることに熱中したほどだった。
失業後、ふと見つけた資料にコウイチは目を奪われた。
「名付け得ぬ神」。
東京の西、檜原村の奥深く、コボレザワという場所にその祭祀を担った一族がいたという。山奥には祠があるらしい。だがもう六十年も前に無人になってしまっているようだ。
コウイチは訪ねてみることにする。
道中、奇妙な老人に出会う。一人目は気のいい古書店主。二人目は何かを知りながら口を閉ざす資料館の老人。そして三人目は——
深い山中でコウイチはついに祠を見つけた。巨大な岩を背にした祠は古び、壊れていたが、まだ人が来ている痕跡があった。
不穏な気配にコウイチは振り向くが、なにもない。
日本の中心地・東京。そこからわずかにはずれた山の中に潜む秘密をめぐる奇譚。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「お前のカメラ、ずっと映ってるよ」〜ホラースポット配信者が気づいた時には、もう遅かった〜
まさき
ホラー
ホラースポット専門のYouTuber・桐島悠は、霊も怪異も一切信じない合理主義者だ。
ある廃病院での配信中、今まで感じたことのない「違和感」を覚えた。しかし撮影は無事終了。その後も普通に配信を続け、あの夜のことなど忘れかけていた頃——深夜、金縛りにあう。
疲れてるだけだ。
しかし、それは始まりに過ぎなかった。
記憶の空白。知らない足跡。動画に毎回映り込む、同じ女の姿。そして——「やっと、見つけた」という声。
カメラが映し続けていたのは、心霊スポットではなかった。もっとずっと、近いところにいるものだった。
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
怪異の忘れ物
木全伸治
ホラー
千近くあったショートショートを下記の理由により、ツギクル、ノベルアップ+、カクヨムなどに分散させました。
さて、Webコンテンツより出版申請いただいた
「怪異の忘れ物」につきまして、
審議にお時間をいただいてしまい、申し訳ありませんでした。
ご返信が遅くなりましたことをお詫びいたします。
さて、御著につきまして編集部にて出版化を検討してまいりましたが、
出版化は難しいという結論に至りました。
私どもはこのような結論となりましたが、
当然、出版社により見解は異なります。
是非、他の出版社などに挑戦され、
「怪異の忘れ物」の出版化を
実現されることをお祈りしております。
以上ご連絡申し上げます。
アルファポリス編集部
というお返事をいただいたので、本作品は、一気に全削除はしませんが、ある程度別の投稿サイトに移行しました。
www.youtube.com/@sinzikimata
私、俺、どこかの誰かが体験する怪奇なお話。バットエンド多め。少し不思議な物語もあり。ショートショート集。
いつか、茶風林さんが、主催されていた「大人が楽しむ朗読会」の怪し会みたいに、自分の作品を声優さんに朗読してもらうのが夢。