ママチャリってドラゴンですか!? ~最強のミスリルドラゴンとして転生した愛車のママチャリの力を借りて異世界で無双冒険者に~ 

山程ある

文字の大きさ
18 / 106

スライドブレーキ

しおりを挟む
「だからこぐ意味……」

 前と同じ問答を繰り返そうとしたところで、シルバーが急発進した。
 ガクンと上半身が仰け反り、そのままオレだけが置いていかれそうになる。とっさにハンドルを握ってなんとか堪える。
 体勢を立て直したところで車体が右に倒れた。曲がり角までがほんの一瞬だ。
 後輪を滑らせる。タイヤが回転を上げる。石材を敷き詰めた床にタイヤの溝がグリップし、倒れた車体が立て直されると同時に再び急加速。
 オレが覚えているのはそこまでだった。
 あとは、曲がり角や階段が幾度となく迫ってきたのをなんとなく覚えている。
 曲がりきれなかったのか、何度か石積みの壁に衝突して粉砕していた気がする。

 オレにはほとんど衝撃が伝わってこなかった。ただハンドルを必死で握り締めて、目だけは閉じないよう努力をした。

「到着!!」

 階段を駆け降りたシルバーが最後にそう叫んだ。
 勢いを殺すため、シルバーはブレーキをかけると同時に車体を横滑りさせた。
 バチバチと魔素マナを放電させながら車体は数メートルかけて止まった。

 心臓がバクバクしている。口から魂を嘔吐しそうだ。

「……いや、今のスライドブレーキ必要だったか?」

 絞り出すようになんとかそう言った。
 辺りにはシルバーのスライドブレーキが巻き上げた砂埃が舞っていた。

「絶対に必要だったよ」

 言い合いをする気力もない。
 言い合いをしている場合でもない。
 徐々に落ち着いていく砂埃の向こうに人影があったのだ。

「お、お前たちはなんだ」

 人影が鋭い声を上げた。
 シルバーが到着と言ったのだから、ここに誰かがいることは分かっていた。
 だけどそれは女性冒険者のグループではなさそうだった。

「こんにちは!ディーバーウーズです!」

 思わずそう口走ってしまった。
 目的地に到着した時の脊髄反射の発声は転生しても抜けなかったらしい。

魔法罠マジックトラップやゴーレムを配置してたはずだが、どうやってここまで来た?」

 砂埃が晴れた時、そこにいた二人の男の片側がそう訊いた。

 どちらも絹のような光沢のある濃紺の生地のシャツの上から、なめし革と鉄板の軽装な鎧を身にまとっていた。
 剣を構えて完全に警戒態勢だ。

「ね、あの二人って貴人?」

 シルバーが訊いた。

「ああ、そうだ」

 オレは答える。
 軽装鎧でありながら、美しく染められた革ややたらと多い装飾が、冒険者ではあり得ない事を示している。

「やっぱりね。服とか鎧とか剣とか、がカズだと一生買えなさそうなヤツ使ってるもんね、二人とも」

「衛兵のおっさん、貴人と識人が何人かずついるって言ってたよな」

「識人はたぶんあの奥だね」

 貴人の二人は一枚のドアの前に陣取っていた。

 周囲には多量の荷物が置かれ、宿営の準備がされている。荷物の量からして二人分には見えない。ここを拠点として、あの扉の奥でなにかをしているようだ。

「ていうか、ゴーレムなんていたか?」

「いたよ、三体ぐらい。進行方向を塞いだから弾き飛ばしたけど」

「あー、そういえば何回か壁をぶち壊してたけど、あれは壁じゃなくてゴーレムだったのか。
衛兵のおっさんにダンジョン壊すなって注意を受けてたから、バレたらどうしようかとひやひやしてたんだが、ゴーレムだったんなら安心だ」

 話しながらもシルバーは扉へと進む。
 剣を構える貴人二人に近付いていくことになるので気が気じゃないのだが、シルバーに跨ったままおとなしくハンドルを握っていることぐらいしかオレにはできない。

「ど、ドラゴンライダーだと」

 貴人の一人が言った。怯えた声だ。

「しかも話をしてやがる。亜竜レッサードラゴンじゃないぞ。こんなのおとぎ話でしか聞いたことがない!」

 答えるもう一人も声と剣先が震えている。

「我の行き先を阻む者は業火の息にて黒炭と化してくれようぞ」

 シルバーがノリノリだ。

「に、逃げ……」

「がおおっ」

 二人が揃って背を向けかけたところにシルバーが吠えた。
 その咆哮を背に受けた二人は、跳び上がってぱたりと倒れた。

「死んだのか?」

「いや、気絶しただけでしょ」

「ショックブレスとかそういう技?」

「なに言ってんの。ただがおーって吠えただけじゃん」

 どうやら貴人たちは、ミスリルドラゴンとドラゴンライダーにビビりすぎて気絶したらしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

処理中です...