ママチャリってドラゴンですか!? ~最強のミスリルドラゴンとして転生した愛車のママチャリの力を借りて異世界で無双冒険者に~ 

山程ある

文字の大きさ
22 / 106

苦労

しおりを挟む
「ごちそうさまでした!」

 トヨケと二人の冒険者たちが異口同音に言った。

「あのね、パンに肉汁が染み込んでてとってもジューシーで柔らかくって、お肉の塊も口に入れたらほろほろと柔らかいのにお肉ーって感じもあって、それと溶けたチーズの濃紺な味とピクルスの酸っぱさが相まって、今まで食べた事がない美味しい食べ物だったよ」

 トヨケがまくし立てた。ほのかに頬がピンクに染まっているのはワインも飲んでいるからだろう。

「あ、ああ、良かったな」

「それにね、まだ温かかったの」

 そういえばシルバーの異次元収納ポケットは保温も効くって言っていたな。

 オレが息も絶え絶えにダンジョンから出てきた時、シルバーに乗って先に上がっていた三人はすでにチーズバーガーを食べ終えていた。
 三日間飲まず食わずのうえ、血も抜かれていたのだから、食べる物を届けられて本当に良かったと思う。思うのだけれど、少し寂しさを覚えるのはオレの心が狭いせいだろうか。
 というかシルバーが往復すれば良かったんだ。
 こちとらあの後も丸腰で何度か大コウモリに遭遇して必死こいて逃げてきたんだ。

「大変だったな」

 門の衛兵が言った。

「いや、本当に」

 大変だったのはむしろオレだけ取り残されて、一人っきりでここまで戻って来た事かもしれないが。
 トヨケたちがいたのは石壁の門の脇にある小部屋だった。衛兵たちの休憩所だ。
 ダンジョンの底で起こった一部始終を報告した後、そこで休憩と食事をさせてもらう事になったらしい。

「ほとんど危険もなくなったダンジョンを、わざわざ危険な代物にしてくれるんだから、貴人さんたちにも困ったもんさな」

 衛兵は伸び放題のあごひげをしごきながら、渋い顔をした。

「危険つーか、超危険だ。専門装備してないヤツはどんなベテランでも行かせちゃダメだぜ」

「一体なんのために悪魔なんか召喚するんだろうな」

「貴人の考える事は良く分からんね。カルト趣味が高じたとかそんなじゃねーの?
 冒険者ギルドにも報告するから、そこから何らかの調査はするだろうけど」

 実際のところ、冒険者ギルドや貴人の捜査隊がまともに調査を行うとは思えなかった。貴人の不始末は無かった事にされるのが通例だからだ。だけどダンジョンが危険であることを周知してもらう必要はあるので、そのためにもギルドへ報告はしておかなければならない。

「だけどな、これはこれでまた命知らずのバカどもが挑戦しに来るんだぞ」

 衛兵はため息混じりだ。
 これまでにも似たような事が繰り返されてきたのだろう。

「そういうもんか」

「面白がった貴人なんかが高い報酬用意して討伐依頼でも出そうもんなら、わんさと冒険者が集まるんだ。
 本当に強いヤツらが挑戦するのはいいが、自分の力量も分かっていない駆け出しが死にに行くのを説得して止める、こっちの身にもなって欲しいもんだ」

「あんたも苦労してるんだな」

 これまではただ座っているだけと思っていた衛兵だが、オレが想像することも無かった苦労があるらしい。楽な仕事はないって事か。

「アンタみたいに竜殿が付いていれば話は別なんだが」

「その竜殿に置いていかれたからオレは苦労したんだがな」



 ■□


 休憩を終えてギルドに向かった。
 シルバーがまたオレ以外を乗せて先に行くと言い出すんじゃないかと心配だったが、帰りはぶらぶら行きたいらしく、ぞろぞろと歩いて行くことになった。
 シルバーはトヨケに懐いたらしく、キャッキャ言いながら二人で先を行っていた。

「カズさんだっけ、話すの初めてだね。
パンすっげぇ美味かったよ、ありがとう。あたしはハンガク。こっちがツル」

 背が高くよく日焼けした黒髪の女性冒険者が話し掛けてきた。
 ツルと紹介された小柄な冒険者も「ありがとうございました」と頭を下げる。
 二人ともトヨケのパーティメンバーだ。ギルドで何度か一緒にいるところを見掛けた事があった。

「ほぼ始めまして、だよな。オレはあんまりダンジョンとか討伐とかやってないから一緒になった事もないし」

 冒険者ギルド内でも浮いた存在だという自覚はある。

「知ってる。有名人だよ、あんた」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

処理中です...