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コンビネーション
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アオオオオオオォォォン──
ヤムトが勇ましく雄叫びをあげた。声が洞窟内に反響し、オレの手足にも力が満ちた。
咆哮のスキルだ。
咆哮を終えたヤムトは身を低くして飛び出した。
弾丸のような速度と勢いでアンデッドナイトに迫る。
突進の勢いそのままに貫き手を放つ。
右手の強靭な爪がアンデッドナイトの喉元に打ち込まれる。
ぎゃりりっと耳障りな音がこだました。
敵の喉元を貫いたかに見えたがヤムトの攻撃は剣の腹によって阻まれていた。
錆びと埃にまみれてはいるが柄や鍔には凝った意匠が施されている。元は名のある鍛冶が打った名剣だったのかもしれない。
その元名剣は次の瞬間、下から弧を描いたヤムトの蹴りによって大きく弾かれた。
生まれた隙を逃さず、ヤムトは腰の後ろに提げていた戦鎚を抜き敵へと叩き込む。
打撃は鎧の右胸にクリーンヒットし、不快で盛大な金属音が鳴り響く。
右肩当を提げていた留め金が弾け飛んだ。錆びていたにしろ生半可な衝撃でそんな事にはならないだろう。
今のは一呼吸の間に連続する三発の攻撃──ヤムト自身が三連撃と呼ぶコンボ技だ。味方ながら恐ろしいほどの攻撃力だ。
あんな感じだったんだなと、自分が受けた時の事を思い出した。無我夢中で防いだので、それがどんな攻撃だったのか全く知らないままでいたのだ。
なんとか防御が間に合ったからいいようなものの、あれをまともにくらってたらオレ今生きてなかったよな?
ぶるると思わず震えたが、それでもヤムトの猛攻をただぼーっと見ていたわけではない。
獣人の大きな背中に隠れる位置へと動きつつ、戦鎚の一撃の直後にタイミングを合わせて、攻撃の狙いをつけていた。
「そこだ!」
ニュー○イプのような掛け声とともにオレは剣を突き出す。
留め金が破損してずれた肩当と胸当との隙間、そこが狙いだ。
刃の幅ギリギリほどしかない隙間だったが、吸い込まれるように剣先が入った。
手応えがあった。物理的なものではないが、何かを貫いた事を確信できる感覚だ。
と同時に鎧がビクリと身を震わせた。声にはならない悲鳴が聞こえたような気がした。持っていた剣を捨てると、両手で自分の胸に刺さったオレの剣を掴みに来る。
掴まれるより先に剣を引き抜き、オレはバックステップで距離を取る。
その直後ヤムトが振るった戦鎚が、両腕の上から胸元を打ち据え、鎧は後ろに倒れ込む。
両腕を覆う籠手や左の肩当も大きくずれていた。この機を逃す手はない。
跳びかかってマウントをとると、オレは逆手に持った剣を鎧の隙間に深々と突き刺した。
先ほどと同じ、いや、もっと大きな手応えがあった。
アンデッドナイトは無声の断末魔を上げた。
その苦痛とも怨嗟ともつかない精神的な波動も長くは続かなかった。
ガシャンガシャンと鎧を構成していた各部のパーツが地面に落ちたのがアンデッドナイトの最後だった。これらを着ていた本体が消滅したのだろう。
立ち上がったオレは、拳を握った前腕をヤムトに向かって掲げてみせた。獣人の太い腕がそこに打ち合わされた。力など込められていないはずだが、まるで攻撃を受けたかのような衝撃がきた。
「オレたち中々のコンビネーションじゃないか?」
よろめきながらオレはそう言った。
アンデッドナイトをスムーズに倒せたことで気分が高揚していた。ほとんどがヤムトの功績みたいなものだが、そこに合わせることができた自分を褒めてやりたい。
「ああ、悪くないな」
ヤムトも頷く。
「アンデッドナイトも噂ほどのもんじゃないよな」
「それは頼もしい」
言うとヤムトはついと目線を扉の方に向け、さらに言葉を続けた。
「ではあと二体、がんばるとしようか」
扉からは新しく二体のアンデッドナイトが姿を現していた。
「まじか」
ヤムトが勇ましく雄叫びをあげた。声が洞窟内に反響し、オレの手足にも力が満ちた。
咆哮のスキルだ。
咆哮を終えたヤムトは身を低くして飛び出した。
弾丸のような速度と勢いでアンデッドナイトに迫る。
突進の勢いそのままに貫き手を放つ。
右手の強靭な爪がアンデッドナイトの喉元に打ち込まれる。
ぎゃりりっと耳障りな音がこだました。
敵の喉元を貫いたかに見えたがヤムトの攻撃は剣の腹によって阻まれていた。
錆びと埃にまみれてはいるが柄や鍔には凝った意匠が施されている。元は名のある鍛冶が打った名剣だったのかもしれない。
その元名剣は次の瞬間、下から弧を描いたヤムトの蹴りによって大きく弾かれた。
生まれた隙を逃さず、ヤムトは腰の後ろに提げていた戦鎚を抜き敵へと叩き込む。
打撃は鎧の右胸にクリーンヒットし、不快で盛大な金属音が鳴り響く。
右肩当を提げていた留め金が弾け飛んだ。錆びていたにしろ生半可な衝撃でそんな事にはならないだろう。
今のは一呼吸の間に連続する三発の攻撃──ヤムト自身が三連撃と呼ぶコンボ技だ。味方ながら恐ろしいほどの攻撃力だ。
あんな感じだったんだなと、自分が受けた時の事を思い出した。無我夢中で防いだので、それがどんな攻撃だったのか全く知らないままでいたのだ。
なんとか防御が間に合ったからいいようなものの、あれをまともにくらってたらオレ今生きてなかったよな?
ぶるると思わず震えたが、それでもヤムトの猛攻をただぼーっと見ていたわけではない。
獣人の大きな背中に隠れる位置へと動きつつ、戦鎚の一撃の直後にタイミングを合わせて、攻撃の狙いをつけていた。
「そこだ!」
ニュー○イプのような掛け声とともにオレは剣を突き出す。
留め金が破損してずれた肩当と胸当との隙間、そこが狙いだ。
刃の幅ギリギリほどしかない隙間だったが、吸い込まれるように剣先が入った。
手応えがあった。物理的なものではないが、何かを貫いた事を確信できる感覚だ。
と同時に鎧がビクリと身を震わせた。声にはならない悲鳴が聞こえたような気がした。持っていた剣を捨てると、両手で自分の胸に刺さったオレの剣を掴みに来る。
掴まれるより先に剣を引き抜き、オレはバックステップで距離を取る。
その直後ヤムトが振るった戦鎚が、両腕の上から胸元を打ち据え、鎧は後ろに倒れ込む。
両腕を覆う籠手や左の肩当も大きくずれていた。この機を逃す手はない。
跳びかかってマウントをとると、オレは逆手に持った剣を鎧の隙間に深々と突き刺した。
先ほどと同じ、いや、もっと大きな手応えがあった。
アンデッドナイトは無声の断末魔を上げた。
その苦痛とも怨嗟ともつかない精神的な波動も長くは続かなかった。
ガシャンガシャンと鎧を構成していた各部のパーツが地面に落ちたのがアンデッドナイトの最後だった。これらを着ていた本体が消滅したのだろう。
立ち上がったオレは、拳を握った前腕をヤムトに向かって掲げてみせた。獣人の太い腕がそこに打ち合わされた。力など込められていないはずだが、まるで攻撃を受けたかのような衝撃がきた。
「オレたち中々のコンビネーションじゃないか?」
よろめきながらオレはそう言った。
アンデッドナイトをスムーズに倒せたことで気分が高揚していた。ほとんどがヤムトの功績みたいなものだが、そこに合わせることができた自分を褒めてやりたい。
「ああ、悪くないな」
ヤムトも頷く。
「アンデッドナイトも噂ほどのもんじゃないよな」
「それは頼もしい」
言うとヤムトはついと目線を扉の方に向け、さらに言葉を続けた。
「ではあと二体、がんばるとしようか」
扉からは新しく二体のアンデッドナイトが姿を現していた。
「まじか」
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