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ルシッドの技
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ヨールは、いや元ヨールであったゾンビは手に持ったナイフを振り下ろすことができなかった。
どこからともなく飛来した黄金の矢のようなものが、その肩口に命中して二の腕から下を切断したのだ。
衝撃で体ごと横転する。
ヤムトが駆け寄り、立ち上がろうとする小柄な体に爪を一閃させる。
胴から頭部がごろりと落ちた。ゾンビはそれっきり動かなくなった。
灼けつくようなような憤怒の目でヤムトはリッチを睨みつける。
「仲間の体を好きにはさせん」
しかしその言葉はヤムトから発せられたものではなかった。
声のした方へ目を向けると、ルシッドが黄金の輝きを纏ったブロードソードの切っ先をリッチに向けていた。
飛来した光の輝きは、先に見たルシッドの剣気のそれと同じものだった。
あの「気」は大きな塊で飛ばす以外にも使い方があったらしい。
隠れ中二病のルシッドのスキルなので、こうやって小さな矢のような形で飛ばす以外にも、剣に纏わせて攻撃力を上げたりもできるに違いない。
「ルシッド、油断するな!」
相手をしていた二体のアンデッドナイトがルシッドの背後にいる。その敵たちから目を逸らしているのだ。ヨールをゾンビ化されて怒りに我を忘れているのだろうが、いくらなんでも不用意すぎる。
アンデッドナイトはそれぞれが剣を振りかざしていた。ルシッドはその間合いにいる。
助けてやりたいが、オレにできることはない。ヤムトも距離が離れている。
次の瞬間にはルシッドの命は無くなるかに見えた。
だがそうはならなかった。
ガシャンと音がしてアンデッドナイトの鎧が崩れ落ちた。二体ともだ。
「もうやっつけてたのか。でも魔法の武器しか効かないって……あそうか」
ルシッドの剣気を纏わせた武器もまた魔法の武器と同じ扱いになるのか。
鎧の隙間を狙えとオレに言ったのはルシッドだった。オレに言うぐらいだから自身もそのようにして戦ったのだろう。しかしそれでも、こんなにあっさりと二体を倒してしまうなんて。
「ぼうっとするな。一気に叩くぞ」
そう言った次の瞬間にルシッドは神速の疾走をみせた。一気に距離を詰め、剣の間合いにリッチを捉える。
ヤムトにも勝る速度。まるで閃光のような動きだ。
あの剣気ならば貴人にもダメージを与えられるんじゃないだろうか。
期待、いや願望がオレの心を満たした。
だがそれはすぐに打ち砕かれた。
ルシッドの袈裟懸けの斬撃は美しい軌跡を描いてリッチに到達した。
だが剣が敵の肩に触れたかに見えた途端、黄金の輝きは弾けたように四散した。
刀身はヤムトの攻撃がそうであったのと同じく、敵まで寸の距離を残して止まってる。
それでもルシッドの攻撃は止まらない。
体を回転させつつリッチの脇をすり抜けて背後へ滑り込むと、再び強い輝きを宿らせた剣で逆袈裟に斬り上げる。
前の攻撃よりも光が派手に飛び散ったのは込められたエネルギーが大きかったからだろうか。
さらに動きを止めず、振り上げた剣に再び剣気を纏わせて唐竹に斬り下ろす。
しかし二撃目も三撃目もリッチには効いていない。
唐竹割りを防御もせずに頭部で止めたリッチは、掌をルシッドに向けて伸ばした。
緩やかな動きだった。だが掌がルシッドの右の二の腕に触れた途端、そこに闇を煮しめたような障気が膨れ上がった。
「腐レヨ」
言葉と同時に障気が爆ぜた。
ルシッドの腕も弾けた。
皮膚も肉も血も粉々になり飛び散る。
ルシッド自身も数メートル後方へと飛ばされた。
攻撃を受けた箇所には鮮烈に赤い身とやたら白い骨が覗く。
そこに線虫のような黒い物が蠢き、這いはじめた。始め数本の糸くずのように見えたそれは、瞬く間に増殖しておびただしい数になり肉や骨の表面を覆いつくす。あたりに腐臭が漂う。
ルシッドは立ち上がると、背を向けてリッチから離れる。
凄まじい痛みが襲っているはずだが、恐怖が勝って動けるのかもしれない。それともあの攻撃は痛みすら感じさせないのだろうか。
痛みがあろうがなかろうが、オレがあの攻撃を受けたなら動くこともできずに秒で気絶する自信がある。
敵から逃げるというだけの行動だが、それをできるルシッドはやはり凄いやつだ。
そこでふと違和感を覚えた。吐き気を催すような損傷部であるはずなのに、ルシッドの目はそこには向けられていなかった。
それはただリッチと、今まさにリッチを襲う火球に向けられていたのだ。
「レミック!」
思わず叫んだ。このパーティはこんな状況にあってすら勝つことだけを見ている。
エルフの魔法使いの放った魔法は敵に直撃すると炎を撒き散らしながら爆ぜた。
どこからともなく飛来した黄金の矢のようなものが、その肩口に命中して二の腕から下を切断したのだ。
衝撃で体ごと横転する。
ヤムトが駆け寄り、立ち上がろうとする小柄な体に爪を一閃させる。
胴から頭部がごろりと落ちた。ゾンビはそれっきり動かなくなった。
灼けつくようなような憤怒の目でヤムトはリッチを睨みつける。
「仲間の体を好きにはさせん」
しかしその言葉はヤムトから発せられたものではなかった。
声のした方へ目を向けると、ルシッドが黄金の輝きを纏ったブロードソードの切っ先をリッチに向けていた。
飛来した光の輝きは、先に見たルシッドの剣気のそれと同じものだった。
あの「気」は大きな塊で飛ばす以外にも使い方があったらしい。
隠れ中二病のルシッドのスキルなので、こうやって小さな矢のような形で飛ばす以外にも、剣に纏わせて攻撃力を上げたりもできるに違いない。
「ルシッド、油断するな!」
相手をしていた二体のアンデッドナイトがルシッドの背後にいる。その敵たちから目を逸らしているのだ。ヨールをゾンビ化されて怒りに我を忘れているのだろうが、いくらなんでも不用意すぎる。
アンデッドナイトはそれぞれが剣を振りかざしていた。ルシッドはその間合いにいる。
助けてやりたいが、オレにできることはない。ヤムトも距離が離れている。
次の瞬間にはルシッドの命は無くなるかに見えた。
だがそうはならなかった。
ガシャンと音がしてアンデッドナイトの鎧が崩れ落ちた。二体ともだ。
「もうやっつけてたのか。でも魔法の武器しか効かないって……あそうか」
ルシッドの剣気を纏わせた武器もまた魔法の武器と同じ扱いになるのか。
鎧の隙間を狙えとオレに言ったのはルシッドだった。オレに言うぐらいだから自身もそのようにして戦ったのだろう。しかしそれでも、こんなにあっさりと二体を倒してしまうなんて。
「ぼうっとするな。一気に叩くぞ」
そう言った次の瞬間にルシッドは神速の疾走をみせた。一気に距離を詰め、剣の間合いにリッチを捉える。
ヤムトにも勝る速度。まるで閃光のような動きだ。
あの剣気ならば貴人にもダメージを与えられるんじゃないだろうか。
期待、いや願望がオレの心を満たした。
だがそれはすぐに打ち砕かれた。
ルシッドの袈裟懸けの斬撃は美しい軌跡を描いてリッチに到達した。
だが剣が敵の肩に触れたかに見えた途端、黄金の輝きは弾けたように四散した。
刀身はヤムトの攻撃がそうであったのと同じく、敵まで寸の距離を残して止まってる。
それでもルシッドの攻撃は止まらない。
体を回転させつつリッチの脇をすり抜けて背後へ滑り込むと、再び強い輝きを宿らせた剣で逆袈裟に斬り上げる。
前の攻撃よりも光が派手に飛び散ったのは込められたエネルギーが大きかったからだろうか。
さらに動きを止めず、振り上げた剣に再び剣気を纏わせて唐竹に斬り下ろす。
しかし二撃目も三撃目もリッチには効いていない。
唐竹割りを防御もせずに頭部で止めたリッチは、掌をルシッドに向けて伸ばした。
緩やかな動きだった。だが掌がルシッドの右の二の腕に触れた途端、そこに闇を煮しめたような障気が膨れ上がった。
「腐レヨ」
言葉と同時に障気が爆ぜた。
ルシッドの腕も弾けた。
皮膚も肉も血も粉々になり飛び散る。
ルシッド自身も数メートル後方へと飛ばされた。
攻撃を受けた箇所には鮮烈に赤い身とやたら白い骨が覗く。
そこに線虫のような黒い物が蠢き、這いはじめた。始め数本の糸くずのように見えたそれは、瞬く間に増殖しておびただしい数になり肉や骨の表面を覆いつくす。あたりに腐臭が漂う。
ルシッドは立ち上がると、背を向けてリッチから離れる。
凄まじい痛みが襲っているはずだが、恐怖が勝って動けるのかもしれない。それともあの攻撃は痛みすら感じさせないのだろうか。
痛みがあろうがなかろうが、オレがあの攻撃を受けたなら動くこともできずに秒で気絶する自信がある。
敵から逃げるというだけの行動だが、それをできるルシッドはやはり凄いやつだ。
そこでふと違和感を覚えた。吐き気を催すような損傷部であるはずなのに、ルシッドの目はそこには向けられていなかった。
それはただリッチと、今まさにリッチを襲う火球に向けられていたのだ。
「レミック!」
思わず叫んだ。このパーティはこんな状況にあってすら勝つことだけを見ている。
エルフの魔法使いの放った魔法は敵に直撃すると炎を撒き散らしながら爆ぜた。
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