ママチャリってドラゴンですか!? ~最強のミスリルドラゴンとして転生した愛車のママチャリの力を借りて異世界で無双冒険者に~ 

山程ある

文字の大きさ
90 / 106

パーティ・パーティ

しおりを挟む
「いや、入りたくはない、かな」

 前回の依頼は、ルシッドの無理やりの勧誘で同行しただけなのだ。その事はここにいる皆にも説明している。というよりもあの時はここにいる面々に背中を押されて、あのパーティーに同行することにしたのだ。

「あの時は私が無理に勧めちゃったからね」

 トヨケが少ししゅんとした面持ちで言った。
 オレがリッチに遭遇したことを気に病んでいるのだろう。

「そりゃあ仕方ないさ。女としちゃ、旦那になる男の出世を望むのは普通ってもんだろ」

 ハンガクが言い放った途端に、うつむき加減だったトヨケの顔が赤く染まる。

「やめとけよ、ハンガク」

 オレは思わず言った。
 ハンガクなりに場を和ませようとしているのだろうけど、これじゃ逆効果だ。
 まるでお詫びにオレと結婚しろと要求しているように感じられて、いたたまれない気持ちになる。これに乗っかれるほど図太くも悪どくもないのだ。

 保存食を多く扱うトヨケの店に来る客の大半は冒険者だ。そして誰にでも分け隔てなく親切に接するトヨケに惚れている野郎は多い。笑顔で糧食の相談に乗ってくれて、依頼や冒険の心配までしてくれるトヨケに、みんな良妻や賢母を見るのだろう。中には自分にだけ優しくしてくれると勘違いしているヤツもいるだろうし。
 かく言うオレ自身がそういうやつらの一人なのだ。だからこそ勘違いしないようにと、日々自制を重ねているのだ。

「たしかにトヨケは、オレのことを思ってルシッドのとこに入るのを勧めてくれたんだろう。でもトヨケが親切なのはみんなに対してだ。いくらオレだってそんなことで勘違いしたりしないぜ」

 あれ、なんだろう。言っていて涙が流れそうになってきた。

「そうですよハンガクさん。その言い方はトヨケさんが否定しづらいですよ。
 そうするとまるで、怖い目にあったカズさんが、アドバイスしたトヨケさんの引け目に付け込んで卑劣に結婚を迫っているような卑劣な状況みたいに見えてしまいます。いくらカズさんだってそんなことはしませんよ」

 おっとりとした口調で紡がれるツルの言葉がなかなかひどい。そのまるで雪の妖精のような清楚な見た目とは裏腹に、傷口に塩を塗るというか水に落ちた犬を打つというか死体を蹴るというかそういうことを無自覚でやるところがあるらしい。一番たちの悪いやつだ。

「そ、そうだ。いくらオレでもそんなことはしないぜ」

 しぼり出すように何とか言った。
 複雑そうな顔をしたが、ハンガクは何も言わなかった。
 肝心のトヨケがどんな顔をしているのか、怖くてオレは見ることができなかった。

「でも疾風の剣ゲイルアームズに入る気がないのでしたら、私たちと一緒にくればいいんじゃありませんか?」

 ツルがにっこりと笑った。

「私たちとってどういうことだ?」

「だから、私たちのパーティーと一緒にシージニアに行きませんか?」

「ん? ツルもシージニアに行くのか?」

「もちろんです」

「シージニアに行くのはハンガクだけじゃないのか?」

「そりゃパーティーリーダーのあたしが行くんだから、みんな行くに決まってるだろ」

「って、ことはトヨケも?」

 オレが訊くとトヨケはコクリと頷いた。
 それぞれがソロで依頼をこなすことも多いが、ハンガクのパーティーといえば、ハンガク、トヨケ、ツルの三人だ。
 考えてみれば当たり前の話だ。他州まで行く隊商の護衛なんて任務は、信頼できるパーティーで引き受けるものだろう。

「カノミは連れていってもらえないけどね」

 拗ねたような口調でカノミが言った。
 小さな胃袋にはすでにギョウザを詰め込むキャパが残っていないらしく、ずいぶんと前から彼女はハチミツ漬けにしたナッツをポリポリと齧っていた。

「もう少し大きくなったらね。今はカノミにはお店をお願いするね」

 トヨケが言うと、カノミは渋々といった感じではあるが頷いた。

「モリも自分とこのパーティーで参加だぜ」

 ハンガクが言う。
 そういえば倉庫整理をしていた時には依頼の詳細までは聞いていなかったが、モリも自分がリーダーを務めるパーティーで依頼を受けているのだ。樹海の魔獣フォレストベアーズという名前の、城壁修理の依頼にも来ていたベテラン勢で構成された実力派パーティーだ。

「モリさんもいらっしゃるんですから、ぜひカズさんも来てください」

 ツルが言った。
 オレはハンガクの顔を見た。
 意見を求めているわけじゃない。
 パーティーで請け負った仕事なのだから、参加人数が増えれば一人当たりの報酬が減る。必須でない人員は増やすべきじゃない。的なことを、リーダーなら言うだろうなと思って水を向けたつもりだった。ようするに「お前はダメだっていうだろ?」という感じだ。

 そもそもオレはこの依頼をやりたいわけじゃない。そりゃあ、トヨケが行くんならオレだって同行したい気持ちはなくはない。だけど隊商の護衛なんて依頼でオレが何の役にも立てないことは自明なのだ。何をしたらいいのかも分からないし。
 ところが何をどう受け取ったのか、ハンガクはまるでパス回しをするかのように、そのままトヨケの顔を見た。

「わたしは、その、カズさんが一緒に来てくれたら……嬉しい、かも」

 さらに深々と俯いて、途切れ途切れの言葉でトヨケは言った。それから消え入るような声で言葉を付け足す。

「ごめんね、カズさん。シルバーさんがいつ戻ってくるか分からないから街は離れたくないよね」

「いや、全然まったく」

 反射的にオレはそう答えていた。

「よし、じゃあカズも参加決定だなっ!」

 勢いよくそう言い、ハンガクは指を鳴らした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

処理中です...