ママチャリってドラゴンですか!? ~最強のミスリルドラゴンとして転生した愛車のママチャリの力を借りて異世界で無双冒険者に~ 

山程ある

文字の大きさ
91 / 106

バナナはおやつに入りますか

しおりを挟む
「そもそもオレはその依頼の事なんにも知らないんだが」

 トヨケが行くのなら参加するのも悪くない……もとい、諸手を上げて参加表明をしたいところだが、オレはグッと踏み止まった。
 身の丈に合わない依頼を受けて大恥をかくなんて事になれば目も当てられない。いや恥で住めばいい。オレの力不足が理由でトヨケにケガでもさせたらと考えると膝が萎えそうなほどにビビってしまう。

「シージニアに行く隊商の護衛だよ」

 ハンガクが答える。

「それは聞いてる」

「他にどんな情報が必要なんだ?」

「そりゃ色々とあるだろ。いつからいつまでとか、どんなルートを行くのかとか、報酬はいくらなのかとか、バナナはおやつに入るのかとか、袋入りのスナック菓子を小分けにして持ってく場合は幾らでカウントされるのかとか」

「出発は三日後。目的地はシージニアのミトノだ。期間は往復と向こうでの滞在込みで二ヶ月から長くても三ヶ月ほどらしい」

「ミトノがどんな街でどこにあるかも分からないんだが」

「あたしも知らん。途中、砂海船さかいせんで行くというのだけは聞いてるが」

砂海船さかいせんだって? じゃあだいぶ奥地まで行くんじゃないか?」

 砂海船さかいせんは文字通り砂海さかいを渡るための船だ。
 砂海は砂漠のうちでも、砂の粒子が細かく地形に極端な凹凸がない場所の事で、つまりは砂海船さかいせんで行き来できるルートのことを指す。

 砂漠はゲルニア大陸の中央にでんと居座っていて、州をまたいでの移動する場合にはほとんど避けて通れない。ラクダ車やリュウガメ車での移動も可能だが、砂海を行くなら砂海船を利用するのが一般的だ。大量の荷物を積むことができるうえに、速度も出る。何よりも快適だ。

 オレもまだ砂海船さかいせんの実物は見たことがないが、見た目は海を渡る帆船と同じような形をしていて、違いは船底の形らしい。
 海中に沈めてバランスをとる帆船のそれに対して、砂海船さかいせんは砂の上を滑ることができるように真ったいらで、さらにまるで鏡のようにつるつるに磨き上げられていると聞いたことがある。

「いや、途中だけだ。砂海の端っこを掠めるような航路で南に向ったら後はすぐに陸路だと依頼主が言ってたから、たぶんシージニアでも西の端っこなんじゃないか、そのミトノって街は」

「それだったら海路の方が断然早いだろうに」

 シージニア州はゲルニア大陸から南に突き出した半島状の亜大陸だ。ハンガクの推測の通りならば、フィニス州の中でも南よりに位置するこのペンディエンテからだと直線的に海を渡った方が断然早いはずだ。

「海はなかなか貴人サマの許可が下りないらしいからな」

「ああ、そうだったな」

 ペンディエンテは港街でないが、鳥車で行けば海岸線まで2日もかからない。
 だが船を使って海を渡ることは貴人が厳しく規制している。

 個人で魚をとる程度の漁船で海に出るのならば特に許可はいらないが、帆船で交易などを行う場合、全くの禁止ではないが申請してもいつ許可されるか分からず、審査基準すら分からないような許可証が必要なのだ。

 国の防備のためには必要な規制なのだろうが、そのおかげで遠方との交易には大変な手間と時間とコストがかかる。そしてその結果、他州からの輸入品は値段が高くなるのだ。

「あとは何だ、バナナだったか? おやつに干しバナナなら持っていってもいいが、カズは異次元収納ポケットのスキルがあるワケじゃないんだろ? あたしに食べられても文句は言うなよ」

「いや、異次元収納ポケットがなくても普通に自分の荷物に入れとくんだが、ハンガクは人の荷物を漁るのか? 何にしてもバナナはやめておくよ」

 話せば話すほどハンガクのイメージが崩れていく気がする。もはやガサツを通り越してジャイアニズムの体現者じゃないか。

「干しバナナが食べたいなら、旅のお供にトメリア食糧品店から提供するよ」

 トヨケがくすくす笑いながら言った。エールのせいでその頬がほんの少しピンクに染まっている。天使だ。ミューズだ。結婚したい。

「大好きです」

 思わずそう口走っていたのはオレも少しエールの酔いが回っていたからだろうか。

 トヨケが小首をかしげてオレの目をのぞき込んだ。やはりエールの影響か、やや釣り気味の猫目が少しうるんでいるように見える。オレはくだらないことを口走った自分をこの一呼吸の間に大いに呪う。

「なんで敬語なのカズさん。そんなに好きならたくさんバナナ干しておくね」

 トヨケはすぐにまたくすくす笑いだした。少し笑い上戸の気があるのかもしれない。

「あ、ああ、ありがとう」

 オレは一抹の寂しさを感じながらも、勘違いしてくれたことに安堵の息を漏らした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

処理中です...