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真夜中の尋ね人1
しおりを挟むリコドから貰った森の中の三角屋根のお家で、ルナの慎ましい? 異世界生活が始まった。
お家の中には生活に必要なものが揃っていたし、森の中にはきのこや木の実、果物がたくさんあったので食べ物にあまり困ることはなかった。
お家は二階建てで、一階はリビングダイニングキッチンと食料庫、風呂トイレがあり、二階は寝室とクローゼットがあった。
クローゼットの中には、ハンガーに掛けられたエプロンが三枚あった。着てみると、おじさんにぴったりのサイズだった。ズボンやTシャツは無かったので、ほぼ裸エプロンで後ろから見ると背中とお尻は丸見えだった。
しかし、増量してもらったとはいえ葉っぱだけでは心許なかったので、布地があるのは大いにありがたかった。
用意してくれたのがなぜエプロンなのか、リコドには訊けなかった。
✳︎
おじさん生活にもちょっと慣れてきたある夜。
ルナはベッドの中でもぞもぞしていた。
トイレ……と思って起き上がろうかと思ったが、思い直した。
あっもう女の子じゃないから気にしなくていっか……?
プスー
ルナのお尻のあたりから、空気の抜けるような音がする。
すると、掛布団の上で丸くなっていた黒猫? のにゃーがぶるっと震えた。
「くっ……くにゃい……」
リコドが用意してくれた三叉の黒猫っぽい生き物は、人語が喋れた。名前は無いそうだったので、ルナがにゃーと名付け、一緒に暮らしている。
「あっごめんごめん。にゃーがいるの忘れてた」
ルナは申し訳なくなって窓を開けて、にゃーを抱きしめる。
おじさんになったとはいえ、礼節は弁えるべきだったと反省した。
その時、一階の玄関ドアを叩く音が聞こえた。
「お客さんかな?」
「こんな時間に来るのは盗賊かタチの悪いモンスターだから、無視するにゃ」
にゃーがそう言って布団の上でまた丸くなると、再びドアを叩く音がした。
「すみません、助けてくださいませんか」
そして、はっきりと女性の声も聞こえた。
「困っている人みたい」
ルナは一階に続く階段を降りた。
にゃーが心配して眠りながら空中を泳いでついて来た。
ドアを開けると、赤く長い髪を振り乱した女の人が困った顔をして立っていた。何故か服がビリビリに破れている。
「助けて!」
女の人は何かに怯えた顔で、ルナの分厚く柔らかい胸板に飛び込むとドアを閉めた。
「どうしたんですか?」
「盗賊に襲われて、逃げてきたんです。一晩だけでも匿ってくださいませんか」
女の人は泣きながらルナに訴えた。
「それは大変ですね。良かったら泊まって行ってください」
震えているボロボロの女の人が可哀想で、ルナはお風呂を勧めた。服が無いので、替えのシーツをワンピっぽく巻き付けるようにして貰った。
「お腹空いてませんか?」
「ええ、空いて……ませんわ」
リリーノと名乗った女の人のお腹から、グゥーッと音がしたので夕飯のシチューの残りを進めたが、要らないと言って食べなかった。
「では、このベッドで休んでください」
ルナは二階の自分のベッドにリリーノを案内して、自分は一階の床で眠ろうと部屋を出ようとした。
「あなたはどこで寝るのですか?」
「一階の床で寝ます」
「そんな、押し掛けたのに、家主のあなたに床に寝てもらうなんて出来ません。私が下をお借りしますわ」
「いや、お客さんを床に寝かせるわけにはいかないので」
「どうかそうさせてください」
「そういう訳にはいきません」
「では……では……せめてここで、このベッドで一緒に寝てくださいませんか」
「え……」
ぽぽっとリリーノの頬が赤く染まり、潤んだ瞳でルナを見上げていた。
「ルナは体が大きいので、二人は狭いかと思います」
「そんなこと言わないで。私は小柄なのでお邪魔にならないようにしますから。お願いです」
リリーノは本当に悲しそうに、涙を流してルナを見ていた。
「わかりました」
あまりにも必死に言うので、ルナはリリーノの提案通り、一緒にベッドで眠ることにした。
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