17 / 108
6.謝罪 1
しおりを挟む
*
退院後三日は、処分保留のまま自宅待機が言い渡された。そして四日目にようやく学校に呼び出された。
室見の両親と、校長、教頭が揃うなか、堅い表情で郁も校長室に入った。室見の両親の向かいに来る形になり、あわせる顔もなく足が震える。それでも、せめて誠意を示すべきだと思った。校長が口を開く前に、室見の両親の前で床に手と頭をつく。
「この度は、大切なご子息に対して教師としてあるまじき行為をしてしまい、大変申し訳ありませんでした」
「……顔を上げてください」
落ち着いた低い男性の声に促されて、起き上がる。室見とはまた印象の違う、背の高いスーツ姿の紳士が、整った相貌を多少曇らせてこちらを見ていた。その隣には、タイトな濃紺のスーツを着こなした妙齢の美女が顔色を変えずにいた。一目でアルファの両親とわかる、美麗で明晰な人間という印象だった。改めて全員が席につくと、校長の謝罪の後に室見の父親が待ちかねたように口を開いた。
「すみませんが、時間もないので率直に申し上げます。今回の件については、一花の行動にも問題がありますので、穏便に済ませて頂きたいのが私たちの希望です」
「と、いいますと……?」
校長が要領を得ず聞き返す。
「私たちはアルファとオメガのこうした事故の過去の判例を確認しましたが、オメガが抑制剤を飲んでいたにも関わらずフェロモンでアルファを誘ってしまった場合、両者が過失に問われません。それが片方の相手が未成年者であっても同じです。以前から抑制剤が効きにくいなどの症状があったにも関わらず治療していなかった場合などは別ですが、明科先生は当てはまらないと聞いています。ですから、どちらも被害届などは出さずに、一花の将来のためにも今回のことは無かったことにしていただきたいのです。とはいえ一花も明科先生も今後は生徒と担任教諭として学校生活を送ることはできないでしょうから、一花は私立中学に転校させます。明科先生はこちらの学校で引き続き先生をされたらよいのではないでしょうか」
「え、転校……ですか? そ、それは……一花くんにそこまでさせる必要はないのでは?」
校長が慌てて室見の両親をなだめるが、彼らは顔色ひとつ変えずに続ける。
「一花にはこれから説明しますが、既に私の父親の伝手のある学校に手配していますし、たいした手間でもありませんので気になさらないでください。ただ……」
父親が母親に目配せをした後、眉を寄せて郁の方を見た。
「一花はかなり明科先生を意識しています。明科先生が自分の運命なのだと言って聞きません」
「運……命……」
退院後三日は、処分保留のまま自宅待機が言い渡された。そして四日目にようやく学校に呼び出された。
室見の両親と、校長、教頭が揃うなか、堅い表情で郁も校長室に入った。室見の両親の向かいに来る形になり、あわせる顔もなく足が震える。それでも、せめて誠意を示すべきだと思った。校長が口を開く前に、室見の両親の前で床に手と頭をつく。
「この度は、大切なご子息に対して教師としてあるまじき行為をしてしまい、大変申し訳ありませんでした」
「……顔を上げてください」
落ち着いた低い男性の声に促されて、起き上がる。室見とはまた印象の違う、背の高いスーツ姿の紳士が、整った相貌を多少曇らせてこちらを見ていた。その隣には、タイトな濃紺のスーツを着こなした妙齢の美女が顔色を変えずにいた。一目でアルファの両親とわかる、美麗で明晰な人間という印象だった。改めて全員が席につくと、校長の謝罪の後に室見の父親が待ちかねたように口を開いた。
「すみませんが、時間もないので率直に申し上げます。今回の件については、一花の行動にも問題がありますので、穏便に済ませて頂きたいのが私たちの希望です」
「と、いいますと……?」
校長が要領を得ず聞き返す。
「私たちはアルファとオメガのこうした事故の過去の判例を確認しましたが、オメガが抑制剤を飲んでいたにも関わらずフェロモンでアルファを誘ってしまった場合、両者が過失に問われません。それが片方の相手が未成年者であっても同じです。以前から抑制剤が効きにくいなどの症状があったにも関わらず治療していなかった場合などは別ですが、明科先生は当てはまらないと聞いています。ですから、どちらも被害届などは出さずに、一花の将来のためにも今回のことは無かったことにしていただきたいのです。とはいえ一花も明科先生も今後は生徒と担任教諭として学校生活を送ることはできないでしょうから、一花は私立中学に転校させます。明科先生はこちらの学校で引き続き先生をされたらよいのではないでしょうか」
「え、転校……ですか? そ、それは……一花くんにそこまでさせる必要はないのでは?」
校長が慌てて室見の両親をなだめるが、彼らは顔色ひとつ変えずに続ける。
「一花にはこれから説明しますが、既に私の父親の伝手のある学校に手配していますし、たいした手間でもありませんので気になさらないでください。ただ……」
父親が母親に目配せをした後、眉を寄せて郁の方を見た。
「一花はかなり明科先生を意識しています。明科先生が自分の運命なのだと言って聞きません」
「運……命……」
0
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
恭介&圭吾シリーズ
芹澤柚衣
BL
高校二年の土屋恭介は、お祓い屋を生業として生活をたてていた。相棒の物の怪犬神と、二歳年下で有能アルバイトの圭吾にフォローしてもらい、どうにか依頼をこなす毎日を送っている。こっそり圭吾に片想いしながら平穏な毎日を過ごしていた恭介だったが、彼には誰にも話せない秘密があった。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
【完結】陰キャなΩは義弟αに嫌われるほど好きになる
grotta
BL
蓉平は父親が金持ちでひきこもりの一見平凡なアラサーオメガ。
幼い頃から特殊なフェロモン体質で、誰彼構わず惹き付けてしまうのが悩みだった。
そんな蓉平の父が突然再婚することになり、大学生の義弟ができた。
それがなんと蓉平が推しているSNSのインフルエンサーAoこと蒼司だった。
【俺様インフルエンサーα×引きこもり無自覚フェロモン垂れ流しΩ】
フェロモンアレルギーの蒼司は蓉平のフェロモンに誘惑されたくない。それであえて「変態」などと言って冷たく接してくるが、フェロモン体質で人に好かれるのに嫌気がさしていた蓉平は逆に「嫌われるのって気楽〜♡」と喜んでしまう。しかも喜べば喜ぶほどフェロモンがダダ漏れになり……?
・なぜか義弟と二人暮らしするはめに
・親の陰謀(?)
・50代男性と付き合おうとしたら怒られました
※オメガバースですが、コメディですので気楽にどうぞ。
※本編に入らなかったいちゃラブ(?)番外編は全4話。
※6/20 本作がエブリスタの「正反対の二人のBL」コンテストにて佳作に選んで頂けました!
愛のない婚約者は愛のある番になれますか?
水無瀬 蒼
BL
Ωの天谷千景には親の決めた宮村陸というαの婚約者がいる。
千景は子供の頃から憧れているが、陸にはその気持ちはない。
それどころか陸には千景以外に心の決めたβの恋人がいる。
しかし、恋人と約束をしていた日に交通事故で恋人を失ってしまう。
そんな絶望の中、千景と陸は結婚するがーー
2025.3.19〜6.30
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
【完結済】キズモノオメガの幸せの見つけ方~番のいる俺がアイツを愛することなんて許されない~
つきよの
BL
●ハッピーエンド●
「勇利先輩……?」
俺、勇利渉は、真冬に照明と暖房も消されたオフィスで、コートを着たままノートパソコンに向かっていた。
だが、突然背後から名前を呼ばれて後ろを振り向くと、声の主である人物の存在に思わず驚き、心臓が跳ね上がった。
(どうして……)
声が出ないほど驚いたのは、今日はまだ、そこにいるはずのない人物が立っていたからだった。
「東谷……」
俺の目に映し出されたのは、俺が初めて新人研修を担当した後輩、東谷晧だった。
背が高く、ネイビーより少し明るい色の細身スーツ。
落ち着いたブラウンカラーの髪色は、目鼻立ちの整った顔を引き立たせる。
誰もが目を惹くルックスは、最後に会った三年前となんら変わっていなかった。
そう、最後に過ごしたあの夜から、空白の三年間なんてなかったかのように。
番になればラット化を抑えられる
そんな一方的な理由で番にさせられたオメガ
しかし、アルファだと偽って生きていくには
関係を続けることが必要で……
そんな中、心から愛する人と出会うも
自分には噛み痕が……
愛したいのに愛することは許されない
社会人オメガバース
あの日から三年ぶりに会うアイツは…
敬語後輩α × 首元に噛み痕が残るΩ
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる