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12.嫉妬 1
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静かな朝だった。
カーテンの隙間から光が差し込んで、数センチ先のベッドシーツの色を白く変えていた。
寝過ごした……?
枕元の時計を見て郁は慌てて身支度をしようと起き上がるが、酷く頭が重い。随分長い時間眠ったのだろうか。
「おはよう」
室見が開いていた寝室のドアから入ってきた。軽い目眩がする頭に手をあててベッドに座ったままの郁の隣に身体を寄せて、室見は唇にキスをした。
「おはよう。昨日話しながら寝てしまったみたいで……ごめん」
「ベッドに運んだ時、郁軽かった。もうちょっとご飯食べた方がいいよ。朝ごはん、スープとサンドイッチあるから一緒に食べよう」
時計をもう一度確認すると、朝食を食べる時間はある。郁は室見のあとを追ってダイニングテーブルの席についた。テーブルの上には浅葱色のプレイスマットが敷かれ、数種類の手作りのサンドイッチとクリーム色のスープが用意してあった。ハウスキーパーが前日に用意してくれたものらしい。
「サンドイッチは卵とコンビーフとサラダと……焼きサバなんてのもあるよ。スープはかぶのスープだって。温めといたよ。コーヒーも淹れた」
「ありがとう」
室見からマグカップを受けとり一口飲んで、サンドイッチに手をつけた。
「昨夜は相談にのってくれていたのに途中で眠ってしまってすまなかった」
改めて謝ると、向かいに座った室見は優しく微笑んで首を振る。
「最近ずっと残業で遅かったし、疲れてただろ。昨夜はよく眠れたみたいで良かった」
「ああ。ちょっとすっきりしたよ。今の校長に事故のことを話して……今後どうなるかわからないけれど、やれるだけやってみようと思う……」
少し目が覚めてきて、室見が寝間着でもスーツでもなく普段着なのに気づいた郁は首を傾げた。
「今日休みだったか?」
「うん。休みにしたんだ」
「そうか。どこかに行くのか?」
サンドイッチを食べながら室見は首を振る。
「家にいるよ」
「室見も最近仕事がたて込んでるといってたな。休めるときに休んだほうがいい。俺は今日も少し遅くなるかもしれない。夕方から教科研究会議があるから……」
「郁も仕事休んで?」
スープとサンドイッチを平らげて、口元を拭いながら室見は郁をじっと見つめて言った。ばちりと視線があって、一瞬だけ心臓がつかまれたように大きく跳ねる。朝からこんな視線を交わすのは珍しく、すぐに目をそらしたが鼓動の高鳴りはすぐにはおさまらない。
室見によってもたらされた身体の変化を悟られないようにと、慌てて郁は立ち上がった。食事を終えた食器を流しに下げると、今は避妊効果のみに頼っている状態の発情抑制剤を水で流し込む。
「……平日は難しいけど、土日は休めると思う」
郁を追って使用済みの食器を持ってきて流しに置いた室見は、ちがうよ、と笑って郁を後ろから抱き締めた。
「今日から休んでほしい。学校には休みの連絡を入れておいたから」
「え……?」
静かな朝だった。
カーテンの隙間から光が差し込んで、数センチ先のベッドシーツの色を白く変えていた。
寝過ごした……?
枕元の時計を見て郁は慌てて身支度をしようと起き上がるが、酷く頭が重い。随分長い時間眠ったのだろうか。
「おはよう」
室見が開いていた寝室のドアから入ってきた。軽い目眩がする頭に手をあててベッドに座ったままの郁の隣に身体を寄せて、室見は唇にキスをした。
「おはよう。昨日話しながら寝てしまったみたいで……ごめん」
「ベッドに運んだ時、郁軽かった。もうちょっとご飯食べた方がいいよ。朝ごはん、スープとサンドイッチあるから一緒に食べよう」
時計をもう一度確認すると、朝食を食べる時間はある。郁は室見のあとを追ってダイニングテーブルの席についた。テーブルの上には浅葱色のプレイスマットが敷かれ、数種類の手作りのサンドイッチとクリーム色のスープが用意してあった。ハウスキーパーが前日に用意してくれたものらしい。
「サンドイッチは卵とコンビーフとサラダと……焼きサバなんてのもあるよ。スープはかぶのスープだって。温めといたよ。コーヒーも淹れた」
「ありがとう」
室見からマグカップを受けとり一口飲んで、サンドイッチに手をつけた。
「昨夜は相談にのってくれていたのに途中で眠ってしまってすまなかった」
改めて謝ると、向かいに座った室見は優しく微笑んで首を振る。
「最近ずっと残業で遅かったし、疲れてただろ。昨夜はよく眠れたみたいで良かった」
「ああ。ちょっとすっきりしたよ。今の校長に事故のことを話して……今後どうなるかわからないけれど、やれるだけやってみようと思う……」
少し目が覚めてきて、室見が寝間着でもスーツでもなく普段着なのに気づいた郁は首を傾げた。
「今日休みだったか?」
「うん。休みにしたんだ」
「そうか。どこかに行くのか?」
サンドイッチを食べながら室見は首を振る。
「家にいるよ」
「室見も最近仕事がたて込んでるといってたな。休めるときに休んだほうがいい。俺は今日も少し遅くなるかもしれない。夕方から教科研究会議があるから……」
「郁も仕事休んで?」
スープとサンドイッチを平らげて、口元を拭いながら室見は郁をじっと見つめて言った。ばちりと視線があって、一瞬だけ心臓がつかまれたように大きく跳ねる。朝からこんな視線を交わすのは珍しく、すぐに目をそらしたが鼓動の高鳴りはすぐにはおさまらない。
室見によってもたらされた身体の変化を悟られないようにと、慌てて郁は立ち上がった。食事を終えた食器を流しに下げると、今は避妊効果のみに頼っている状態の発情抑制剤を水で流し込む。
「……平日は難しいけど、土日は休めると思う」
郁を追って使用済みの食器を持ってきて流しに置いた室見は、ちがうよ、と笑って郁を後ろから抱き締めた。
「今日から休んでほしい。学校には休みの連絡を入れておいたから」
「え……?」
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