教科書通りの恋を教えて

山鳩由真

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後日談ーもう一度あの時をー 双子の義弟17

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「郁と発情セックスしたかった」

 店に入るなりカウンターでアンバーエールを一気に煽ってから出たノアの第一声を聞いて、ウィリーはブーッと口中の液体を全部吹き出した。
 甘みを感じるビールを頭から被せられた、冒頭の問題発言をしたノアはビショビショになった顔を拭きもせず、無表情でウィスキーを頼んでいる。
 車で家に帰ってから、ウィリーとノアは近所のバーに出かけた。最初のうちは、今日はとことん付き合ってやる! と兄貴風を吹かせたウィリーだったが、ノアはいつまでも飲み続け、愚痴も止まる気配が全くないので段々と辟易してきていた。今いる店は既に三件目だった。

「そんなこと、絶対に郁と一花の前で言うなよ」

 ウィリーの忠告が耳に入っているのかいないのか、ノアは黙々とグラスの中身を飲み干す。
 この国ではアルコールは二十一歳から合法だ。ノアは二ヶ月前に該当年齢になったばかりで、飲み慣れていないはずだった。
「そんなヤケな飲み方するなよ」
 ウィリーはやんわりとノアを止めるが、ノアは空になったウィスキーが入っていたグラスをタンッとカウンターに勢いよく打ち付けるとウィリーを睨んだ。

「一花って、かっこよかったか?」

「は?」

 既に目が据わっているノアがウィリーに詰め寄る。ウィリーは、やはり今夜ばかりは可哀想な弟に最後まで付き合ってやらねばならないかとため息を吐いた。

「ノア、お前も会っただろ?」

「お前、一花がかっこいいと思った?」

「ああ。ハンサムだったな。郁の動きにあわせてスマートにエスコートしてたし、王子さまって感じで、かわいい郁とお似合いだった。郁の一花を見る目もうっとりしてて、二人は相思相愛……」

「わーっ!!!」

 弟の奇声に遮られて、ウィリーは口をつぐむ。訊かれたことに答えただけだというのに、何て理不尽な酔っぱらいだろう。

「そこまで言わなくていい……」

 はあ、とノアは肩を落として項垂れる。

「俺の方が先に郁を好きだった」

「でも郁は弟としてしか見てなかったな」

「うぅ……ううえぇ……!」

「おい、ノア声でかい……」

 奇声をあげて泣きだしたノアを、周りの客が興味深そうにチラチラ見ていた。遠巻きに見ていたそのうちの一人の美女が近づいてきたのを、ウィリーは「ごめんね、そっとしてやって」と断る。美女は残念そうに離れて行った。
 無駄に見た目が良いので、ノアが店で泣くといろんな人間が慰めてやろうと寄ってくる。ウィリーはその度に丁寧にお断りをしていた。ノアにもう少し余裕があれば新しい恋のチャンスだと取り次いでやれたのだが、まだ頭上に暗雲がたちこめている状態ではとても無理だろう。
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