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本編
第4話 知られざる確執
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祐司が仕切り直しを誓って、数日後。
表面的には問題なく過ごしていた彼だったが、詳細な理由を告げられないまま、仕事中に上司経由で社長から呼び出しを受けた。そして嫌な予感を覚えながらも、エレベーターで鉢合わせした弘樹と共に社長室へと向かう。
二人はノックをして、神妙な表情で社長室に足を踏み入れたが、室内には社長である遠藤の他に、もう一人の人物が存在していた。
「失礼します」
「榊先生? お久しぶりです」
面識があった人物に対し、すかさず頭を下げた弘樹に対し、星光文具の顧問弁護士でもある榊亮輔は鷹揚に笑ってみせた。
「やあ、弘樹君、久しぶりだね。今日は仕事中に呼びつけてしまって申し訳無い」
その言葉を聞いた弘樹は、僅かに驚いた表情になった。
「それでは俺達がここに呼ばれたのは、榊先生絡みのお話ですか?」
「ああ。私、それに君達二人の組合せで、何か思い当たる節は無いかな?」
「…………」
完全に面白がっているとしか思えない口調で榊がそう述べると、どう考えても最近お好み焼きを食べずに泣いて帰った彼女と、彼女の姉代わりを自称する、目の前の人物の娘に関する事しか有り得ないと判断した二人は、揃って表情を消して黙り込んだ。そこに怒りを孕んだ声が割り込む。
「お前達……、よりにもよって、綾乃さんを泣かせたらしいな? クビだ。即刻、星光文具から出ていけ」
「はぁ?」
「あの、社長!」
榊と向かい合って座り、据わった目つきで弘樹と祐司を睨み付けつついきなり解雇宣言をしてきた遠藤に、男二人は狼狽したが、榊は失笑しながら彼を宥めにかかった。
「おいおい遠藤。いきなり解雇は無かろう。そんな事をしたら訴えられるぞ? 少しはトップの立場を弁えろ」
「しかしだな! うちの社員が夢乃さんの娘さんを泣かせたなどと知られたら、夢乃さんに顔向けできん!」
「頻繁に会っているわけじゃないし、別に構わないだろう?」
「榊、お前冷たい男だな! 人間の汚い所ばかり見てきて、性格が歪んだか? 大学時代はあんなに男気のある奴だったのに!」
遠藤の抗議を余裕の表情で受け流してから、榊は話に付いて行けずに唖然としている弘樹達に向かって、ちょっとした事情を説明してきた。
「ワケが分からないと言う顔をしているな。実は私は遠藤と同様、君島とも大学時代の友人でね。ただし、遠藤と君島は友人同士ではないんだ」
「え?」
「普通、友人なんじゃないですか? 榊さんを介して知り合いとか」
祐司から尤もな疑問を呈された榊が、そこで苦笑混じりに端的に告げる。
「確かに今現在でも、二人とも私の友人だが、二人は昔から犬猿の仲なんだ。同級生だった荒川夢乃さんを挟んで、恋のライバルだったからね」
「ああ、なるほど……」
「良く分かりました」
微妙な表情で言葉を濁した弘樹と祐司だったが、ここで榊が意地悪く笑いながら遠藤に止めを刺した。
「いやぁ、卒業直前に彼女が君島のプロポーズを受け入れて、卒業と同時にあいつと結婚した時には、こいつすっかり燃え尽きて、暫く灰になっててな」
「…………」
思わず二人が遠藤に憐憫の視線を向けると、たまらず榊が手で口元を押さえながら、くぐもった笑いを漏らした。それに対して遠藤が、顔を紅潮させながら怒りの声を上げる。
「五月蝿いぞ!! あんなゲジ眉野郎に夢乃さんを盗られたなんて、今でも腹立たしいのに、つまらない事を蒸し返すな!」
「盗られたとは人聞きが悪いぞ。別に彼女がお前と付き合っていたわけじゃないし」
「だが当時、俺が一番彼女と親しくしてたんだっ!!」
「ああ、確かに男性の友人としては、一番親しかったと思うな。でも君島との結婚を決めた後に、彼女にその理由を聞いたら『遠藤君みたいな人は誰にでも『好きだよ』とか言ってるから言葉が軽いけど、君島君みたいにちょっと愛想が欠けてて口数が少ない方が、一つ一つの言葉に信頼が持てるわね』って言ってたな」
「…………」
「……まるで誰かさんだな」
「頼むから黙っててくれ」
思わず黙り込んだ遠藤に、ボソッと横に立つ友人に囁いた祐司。そして自分の性格が父親譲りだと再確認した弘樹は、思わず片手で顔を覆った。
そんな三者三様の心境になどお構い無しに、榊の回想が続く。
「それで『君島に何て口説かれた?』と興味津々で尋ねてみたら、『彼が「君を幸せには出来ないかもしれないが、俺が幸せになるには君が必要だ。俺は幸せになりたいから、俺と結婚してくれ」って言われたの。だから「確かに幸せにはなれないかもしれないけど、一生同じ価値観でいるとは限らないわ。何十年後かには違った事に幸せを見い出しているかもしれないから大丈夫よ。私、そもそも幸せになるのに、他人を頼ったりしない主義だし。私が必要だなんて言う情けない人は、仕方が無いから面倒見てあげる」って言ったわ』って、それはそれは明るい笑顔で言われてね。いやぁ、惚れ直したねぇ」
「何だとぅっ!! 榊! 貴様も彼女狙いだったのか!?」
「喚くな、阿呆。当時の彼女は皆のアイドルだったろうが。宣言通り卒業と同時に見ず知らずの奴の地元に行って、舅姑小姑達と折り合い付けて、あいつが地盤引き継いで議員になってからは後援会をしっかり纏めて地元を守って、完璧な政治家の妻ぶりで感心したね。今じゃ県議選や市議選とかの応援演説には、滅多に地元に帰らない旦那より、美人で弁が立って気配り万全の彼女の方が引っ張りだこだと聞いているしな」
心の底からの賛辞と分かる榊の台詞に、思わず弘樹が小さく口笛を吹いた。
「うわぁ、すっげぇ男前な性格の女性。確かに親父みたいなタイプとは合わんな」
「しかし、父親同士がそんな犬猿の仲なら、やっぱり彼女がコネ入社って有り得ないよな?」
「だろうな。『入れてくれ』って先方が頭を下げても、親父が絶対拒否するぜ」
二人で勝手に納得していると、遠藤が地を這う様な声で呻いた。
「全く……、あんなど田舎に彼女を縛り付けやがって、両親の世話まで押し付けやがって……」
「遠藤……。今の発言は、広島県民に失礼だ。それに姑も『こんなにできた嫁が来てくれて望外の喜びだ』と周囲に言ってるのは有名な話だぞ?」
「世間体を取り繕ってるだけだ!! 結婚した後心配で、何回か電話してみたが、あいつは悉くブチ切りやがって!!」
「未練がましく、そんな事をしてたのか……」
心底うんざりとした表情で榊が溜め息を吐いたところで、遠藤は憤怒の形相でこの間ずっと佇んでいた二人を見上げた。
「ほぼ三十年ぶりだ……」
「はぁ?」
「何がですか?」
意味が分からず揃って問い返した二人に、遠藤は怒気を孕んだ表情のまま話を続けた。
「去年、偶然都内のホテルで夢乃さんと再会したんだ。党内の議員夫人の懇親会だったそうだが、あれから三十年経過しても、当時と変わらず美人だった……」
そこで何も無い中空を見上げ、その時の夢乃の姿を思い浮かべたのか一瞬にやけてから、遠藤は険しい顔付きで話を続けた。
「その時、時間が有るからとティーラウンジで一緒にお茶を飲んで、その時四方山話のついでに、娘さんの就職活動の話を聞いたんだ。何でも地元の企業ではあの野郎のせいで内定が出まくりで、コネ入社を気にして落ち込んでいると言われてな」
(何だか、話の筋書きが読めてきた)
(三十年経過しても変わらず美人って、ある意味人外魔境……)
そんな事を考えて思わず遠い目をしてしまった弘樹と祐司に、遠藤が決定的な言葉を放った。
「『大阪辺りで就職先を探しているけど、見ず知らずの人の中に世間知らずの娘を一人で放り出すのは心配で』などと涙ぐまれたら、一肌脱がねば男が廃るだろうが! 『任せて下さい。うちに来て貰えるなら、万事問題無く監督してあげます』と言ったら『嬉しい、是非お願いしますね?』と嬉しそうに手を握ってくれたんだぞ? そこまで俺を信頼してくれて、大切な一人娘を俺に預けてくれたのに、その彼女を入社早々泣かせるとは何事だ!! 夢乃さんに顔向けできん、だからお前ら二人ともクビだ!!」
(そうか。父親のコネじゃなくて、母親のコネだったのか……)
(彼女が父親から『遠藤』の名前を聞いた事が無かったと言っていた、理由も分かったな)
勢い良く立ち上がりつつ、ビシッと自分達を指さして冒頭に叫んだ台詞を繰り返した遠藤を見て、弘樹と祐司は項垂れた。そこで呆れ果てたように、榊が口を挟んでくる。
「だからクビ云々は止めろ、遠藤。第一、息子の弘樹君をクビにしてどうする。それに弘樹君と綾乃ちゃんを結婚させて、夢乃さんと親戚付き合いをするって言ってたお前の野望はどうするんだ? 君島は流石に無職の男に娘を渡さんと思うぞ?」
「ちょっと待て親父! 何なんだそれは?」
「野望って……」
榊が呈した疑問に対して弘樹が血相を変えて問い質し、勤め先のトップのあまりにもささやか過ぎる野望とやらに、祐司が思わず遠い目をしていると、遠藤が逆上しながら叫んだ。
「去年から『女とは全員手を切れ』と何度も言っているのに、未だにとっかえひっかえしているお前が悪い! 身綺麗にしておかないと、すぐに愛想を尽かされるだろうが! フリーにしておいてから、社内で偶然を装って運命の出会いをさせて、サクサク結婚まで持ち込もうと色々なパターンを考えていたのに……。この大馬鹿者が!!」
(いや、もうある意味、運命的な出会いをしてるから)
(コレがうちの社のトップ……。本当に大丈夫なんだろうか?)
もう物を言う気力を失って黙り込んだ二人に、榊は苦笑いしてから手元の紙を広げつつ声をかけた。
「取り敢えず誰かさんのショボい野望計画は、この際ひとまず横に置いておく事にして」
「おい、榊!」
「昨日私の娘から聞いた話では、君達二人には『携帯を拾って届けようとした綾乃ちゃんを、不当な言いがかりをつけて罵倒して泣かせた』事に始まり、『居酒屋でいきなり現れて怯えさせた』と言うのは不可抗力にしても、『使用文具に難癖をつけて落ち込ませた』などとパワハラとも取れる行為を行った上に、『期待に反する物を食べさせようとして、却って彼女の望郷の念を煽って泣かせた』などと、下手をすれば人権を踏みにじりかねない行為があったと聞いているが、以上で間違いは無いかな?」
遠藤の抗議の声を綺麗に無視し、榊は淡々手元の用紙に列記していたらしい事柄を、冷静に告げてきた。しかし事実としては間違ってはいないものの、あまりにも事を荒立てるような物言いに対して、流石に二人は弁解しかけた。
「いえ、確かにそうかもしれませんが、それらに関しては俺とあまり関係は無くて」
「一番最初の出来事は、確かに全面的に私の落ち度ですが」
そこで榊が眼光を鋭くし、二人を恫喝する。
「『はい』もしくは『いいえ』で、明確に答えたまえ!」
「……はい」
「よろしい」
流石の迫力で弘樹と祐司を黙らせてから、榊は微妙に顔を顰めながら書き出されていた用紙を折り畳み、元通りポケットにしまった。そして幾分困惑気味に、未だに立ち続けている二人を見上げる。
「娘には『訴えてやる』と喚かれたが、こんな事で一々裁判沙汰などやっていられん。しかし綾乃ちゃんは小さい頃から付き合いのある家のお嬢さんだからね。ちょっと直に釘を刺しに来たわけだ。娘にもせっつかれたものでね。悪く思わないでくれたまえ」
「いえ、榊さんには俺の失態のせいでご足労をおかけして、誠に申し訳ありませんでした」
殊勝に頭を下げた祐司に、榊は穏やかな表情になって尋ねた。
「以後、気を付けてくれるなら良い。取り敢えず、現時点で彼女との関係改善の策はあるかね?」
「彼女が納得する広島風お好み焼きを奢るのが、一番の近道だとは思いますが、何が不満だったのかが未だにサッパリ分かりません。本人に社内メールで尋ねても『もう良いですから』の一点張りで話にならない上、チラリと顔を見ただけでも逃げられますので」
「なるほど……。取り敢えず広島出身者に尋ねるか、料理に詳しい人間に聞いてみた方が良いな」
「そうしてみます」
祐司が素直に榊の助言に頷いたところで、遠藤が立ち上がって息子に組み付きつつ、必死の形相で命令した。
「弘樹! お前もとっとと女を清算しろ! そして綾乃さんを口説いて、何としても結婚まで持ち込むんだ!」
「なっ! まだそんな世迷い言言ってんのか、親父! それにクビだとほざいた舌の根も乾かないうちに、何言ってんだ!」
父親を引き剥がそうとしながら弘樹が呆れ気味に叫び返すと、遠藤が息子に負けじと吠えた。
「世迷い言とは何だ! 綾乃さんは可愛いだろうが。何が不服だ!」
「それは確かに可愛いけど、俺の好みはもう少し大人の女系で……。出る所が出てる眞紀子さん辺りが、俺の好みストライクど真ん中だから、これからモーションかけようかと」
「綾乃さんを侮辱する気か、貴様っ!!」
「それはそれは。私の娘に目をかけてくれてありがとう。……いや、目を付けるなんてけしからんと言うべきかな?」
「う……、あ。いえ、そ、それは……」
(馬鹿。親の前で口説くとか言うなよ)
遠藤に引き続き、鋭い目つきで薄笑いを浮かべている榊にも詰め寄られ、弘樹は自分の失言を悟って顔を引き攣らせた。そんな友人を見放して、祐司がこの場から立ち去る旨を告げる。
「お話がお済みのようなので、仕事に戻らせて頂きます。失礼します」
そう言って一礼し、あっさりと踵を返した祐司の背中に、狼狽した弘樹の声がかけられた。
「あ、おい、祐司!? お前一人だけ逃げるつもりか! 狡いぞっ!!」
「弘樹! お前にはこの際徹底的に言い聞かせておく必要が有りそうだな。そこに座れ!!」
「ちょっと待て、親父! 俺にも仕事が!!」
「いやいや弘樹君。親の言う事は素直に聞くものだぞ? ましてや彼は君が所属している会社のトップだ。心して拝聴したまえ」
「あのですね!」
そんな背後の喧騒を無視して祐司は進み、社長室を出てそのフロアのエレベーターの前まで来て、漸く緊張を解いた。
「思い立ったが吉日って言うし、取り敢えず電話だけしてみるか」
そう呟いた祐司は、周囲の様子を窺ってから携帯電話を取り出し、ある番号に電話をかけ始めた。するとすぐに明るい声での応答がある。
「もしもし祐司? どうしたのよ。まだ仕事中の時間なのに、珍しいわね」
「ああ、ちょっと。それより姉貴、広島風のお好み焼きに詳しいかな?」
「いきなり何? しかも『広島風のお好み焼き』なんて」
「ちょっと事情があって。後から詳しく説明するから」
「ふぅん? それは良いけど。それに詳しいと言えるかどうかは分からないけど、以前ちょっとした理由で、何店が食べ歩きした事はあるわ」
その異父姉の台詞に、祐司は救われた思いで言葉を継いだ。
「それなら悪いけど、今日の夜、暇なら付き合って欲しい店があるんだ」
「取り敢えず予定は空いてるけど……、勿論、そっちの奢りよ?」
「分かってる」
それから怪訝な声の姉と待ち合わせの時間と場所を確認した祐司は、短く礼を述べて携帯電話をポケットにしまい込んでから、自分の職場へと戻って行った。
表面的には問題なく過ごしていた彼だったが、詳細な理由を告げられないまま、仕事中に上司経由で社長から呼び出しを受けた。そして嫌な予感を覚えながらも、エレベーターで鉢合わせした弘樹と共に社長室へと向かう。
二人はノックをして、神妙な表情で社長室に足を踏み入れたが、室内には社長である遠藤の他に、もう一人の人物が存在していた。
「失礼します」
「榊先生? お久しぶりです」
面識があった人物に対し、すかさず頭を下げた弘樹に対し、星光文具の顧問弁護士でもある榊亮輔は鷹揚に笑ってみせた。
「やあ、弘樹君、久しぶりだね。今日は仕事中に呼びつけてしまって申し訳無い」
その言葉を聞いた弘樹は、僅かに驚いた表情になった。
「それでは俺達がここに呼ばれたのは、榊先生絡みのお話ですか?」
「ああ。私、それに君達二人の組合せで、何か思い当たる節は無いかな?」
「…………」
完全に面白がっているとしか思えない口調で榊がそう述べると、どう考えても最近お好み焼きを食べずに泣いて帰った彼女と、彼女の姉代わりを自称する、目の前の人物の娘に関する事しか有り得ないと判断した二人は、揃って表情を消して黙り込んだ。そこに怒りを孕んだ声が割り込む。
「お前達……、よりにもよって、綾乃さんを泣かせたらしいな? クビだ。即刻、星光文具から出ていけ」
「はぁ?」
「あの、社長!」
榊と向かい合って座り、据わった目つきで弘樹と祐司を睨み付けつついきなり解雇宣言をしてきた遠藤に、男二人は狼狽したが、榊は失笑しながら彼を宥めにかかった。
「おいおい遠藤。いきなり解雇は無かろう。そんな事をしたら訴えられるぞ? 少しはトップの立場を弁えろ」
「しかしだな! うちの社員が夢乃さんの娘さんを泣かせたなどと知られたら、夢乃さんに顔向けできん!」
「頻繁に会っているわけじゃないし、別に構わないだろう?」
「榊、お前冷たい男だな! 人間の汚い所ばかり見てきて、性格が歪んだか? 大学時代はあんなに男気のある奴だったのに!」
遠藤の抗議を余裕の表情で受け流してから、榊は話に付いて行けずに唖然としている弘樹達に向かって、ちょっとした事情を説明してきた。
「ワケが分からないと言う顔をしているな。実は私は遠藤と同様、君島とも大学時代の友人でね。ただし、遠藤と君島は友人同士ではないんだ」
「え?」
「普通、友人なんじゃないですか? 榊さんを介して知り合いとか」
祐司から尤もな疑問を呈された榊が、そこで苦笑混じりに端的に告げる。
「確かに今現在でも、二人とも私の友人だが、二人は昔から犬猿の仲なんだ。同級生だった荒川夢乃さんを挟んで、恋のライバルだったからね」
「ああ、なるほど……」
「良く分かりました」
微妙な表情で言葉を濁した弘樹と祐司だったが、ここで榊が意地悪く笑いながら遠藤に止めを刺した。
「いやぁ、卒業直前に彼女が君島のプロポーズを受け入れて、卒業と同時にあいつと結婚した時には、こいつすっかり燃え尽きて、暫く灰になっててな」
「…………」
思わず二人が遠藤に憐憫の視線を向けると、たまらず榊が手で口元を押さえながら、くぐもった笑いを漏らした。それに対して遠藤が、顔を紅潮させながら怒りの声を上げる。
「五月蝿いぞ!! あんなゲジ眉野郎に夢乃さんを盗られたなんて、今でも腹立たしいのに、つまらない事を蒸し返すな!」
「盗られたとは人聞きが悪いぞ。別に彼女がお前と付き合っていたわけじゃないし」
「だが当時、俺が一番彼女と親しくしてたんだっ!!」
「ああ、確かに男性の友人としては、一番親しかったと思うな。でも君島との結婚を決めた後に、彼女にその理由を聞いたら『遠藤君みたいな人は誰にでも『好きだよ』とか言ってるから言葉が軽いけど、君島君みたいにちょっと愛想が欠けてて口数が少ない方が、一つ一つの言葉に信頼が持てるわね』って言ってたな」
「…………」
「……まるで誰かさんだな」
「頼むから黙っててくれ」
思わず黙り込んだ遠藤に、ボソッと横に立つ友人に囁いた祐司。そして自分の性格が父親譲りだと再確認した弘樹は、思わず片手で顔を覆った。
そんな三者三様の心境になどお構い無しに、榊の回想が続く。
「それで『君島に何て口説かれた?』と興味津々で尋ねてみたら、『彼が「君を幸せには出来ないかもしれないが、俺が幸せになるには君が必要だ。俺は幸せになりたいから、俺と結婚してくれ」って言われたの。だから「確かに幸せにはなれないかもしれないけど、一生同じ価値観でいるとは限らないわ。何十年後かには違った事に幸せを見い出しているかもしれないから大丈夫よ。私、そもそも幸せになるのに、他人を頼ったりしない主義だし。私が必要だなんて言う情けない人は、仕方が無いから面倒見てあげる」って言ったわ』って、それはそれは明るい笑顔で言われてね。いやぁ、惚れ直したねぇ」
「何だとぅっ!! 榊! 貴様も彼女狙いだったのか!?」
「喚くな、阿呆。当時の彼女は皆のアイドルだったろうが。宣言通り卒業と同時に見ず知らずの奴の地元に行って、舅姑小姑達と折り合い付けて、あいつが地盤引き継いで議員になってからは後援会をしっかり纏めて地元を守って、完璧な政治家の妻ぶりで感心したね。今じゃ県議選や市議選とかの応援演説には、滅多に地元に帰らない旦那より、美人で弁が立って気配り万全の彼女の方が引っ張りだこだと聞いているしな」
心の底からの賛辞と分かる榊の台詞に、思わず弘樹が小さく口笛を吹いた。
「うわぁ、すっげぇ男前な性格の女性。確かに親父みたいなタイプとは合わんな」
「しかし、父親同士がそんな犬猿の仲なら、やっぱり彼女がコネ入社って有り得ないよな?」
「だろうな。『入れてくれ』って先方が頭を下げても、親父が絶対拒否するぜ」
二人で勝手に納得していると、遠藤が地を這う様な声で呻いた。
「全く……、あんなど田舎に彼女を縛り付けやがって、両親の世話まで押し付けやがって……」
「遠藤……。今の発言は、広島県民に失礼だ。それに姑も『こんなにできた嫁が来てくれて望外の喜びだ』と周囲に言ってるのは有名な話だぞ?」
「世間体を取り繕ってるだけだ!! 結婚した後心配で、何回か電話してみたが、あいつは悉くブチ切りやがって!!」
「未練がましく、そんな事をしてたのか……」
心底うんざりとした表情で榊が溜め息を吐いたところで、遠藤は憤怒の形相でこの間ずっと佇んでいた二人を見上げた。
「ほぼ三十年ぶりだ……」
「はぁ?」
「何がですか?」
意味が分からず揃って問い返した二人に、遠藤は怒気を孕んだ表情のまま話を続けた。
「去年、偶然都内のホテルで夢乃さんと再会したんだ。党内の議員夫人の懇親会だったそうだが、あれから三十年経過しても、当時と変わらず美人だった……」
そこで何も無い中空を見上げ、その時の夢乃の姿を思い浮かべたのか一瞬にやけてから、遠藤は険しい顔付きで話を続けた。
「その時、時間が有るからとティーラウンジで一緒にお茶を飲んで、その時四方山話のついでに、娘さんの就職活動の話を聞いたんだ。何でも地元の企業ではあの野郎のせいで内定が出まくりで、コネ入社を気にして落ち込んでいると言われてな」
(何だか、話の筋書きが読めてきた)
(三十年経過しても変わらず美人って、ある意味人外魔境……)
そんな事を考えて思わず遠い目をしてしまった弘樹と祐司に、遠藤が決定的な言葉を放った。
「『大阪辺りで就職先を探しているけど、見ず知らずの人の中に世間知らずの娘を一人で放り出すのは心配で』などと涙ぐまれたら、一肌脱がねば男が廃るだろうが! 『任せて下さい。うちに来て貰えるなら、万事問題無く監督してあげます』と言ったら『嬉しい、是非お願いしますね?』と嬉しそうに手を握ってくれたんだぞ? そこまで俺を信頼してくれて、大切な一人娘を俺に預けてくれたのに、その彼女を入社早々泣かせるとは何事だ!! 夢乃さんに顔向けできん、だからお前ら二人ともクビだ!!」
(そうか。父親のコネじゃなくて、母親のコネだったのか……)
(彼女が父親から『遠藤』の名前を聞いた事が無かったと言っていた、理由も分かったな)
勢い良く立ち上がりつつ、ビシッと自分達を指さして冒頭に叫んだ台詞を繰り返した遠藤を見て、弘樹と祐司は項垂れた。そこで呆れ果てたように、榊が口を挟んでくる。
「だからクビ云々は止めろ、遠藤。第一、息子の弘樹君をクビにしてどうする。それに弘樹君と綾乃ちゃんを結婚させて、夢乃さんと親戚付き合いをするって言ってたお前の野望はどうするんだ? 君島は流石に無職の男に娘を渡さんと思うぞ?」
「ちょっと待て親父! 何なんだそれは?」
「野望って……」
榊が呈した疑問に対して弘樹が血相を変えて問い質し、勤め先のトップのあまりにもささやか過ぎる野望とやらに、祐司が思わず遠い目をしていると、遠藤が逆上しながら叫んだ。
「去年から『女とは全員手を切れ』と何度も言っているのに、未だにとっかえひっかえしているお前が悪い! 身綺麗にしておかないと、すぐに愛想を尽かされるだろうが! フリーにしておいてから、社内で偶然を装って運命の出会いをさせて、サクサク結婚まで持ち込もうと色々なパターンを考えていたのに……。この大馬鹿者が!!」
(いや、もうある意味、運命的な出会いをしてるから)
(コレがうちの社のトップ……。本当に大丈夫なんだろうか?)
もう物を言う気力を失って黙り込んだ二人に、榊は苦笑いしてから手元の紙を広げつつ声をかけた。
「取り敢えず誰かさんのショボい野望計画は、この際ひとまず横に置いておく事にして」
「おい、榊!」
「昨日私の娘から聞いた話では、君達二人には『携帯を拾って届けようとした綾乃ちゃんを、不当な言いがかりをつけて罵倒して泣かせた』事に始まり、『居酒屋でいきなり現れて怯えさせた』と言うのは不可抗力にしても、『使用文具に難癖をつけて落ち込ませた』などとパワハラとも取れる行為を行った上に、『期待に反する物を食べさせようとして、却って彼女の望郷の念を煽って泣かせた』などと、下手をすれば人権を踏みにじりかねない行為があったと聞いているが、以上で間違いは無いかな?」
遠藤の抗議の声を綺麗に無視し、榊は淡々手元の用紙に列記していたらしい事柄を、冷静に告げてきた。しかし事実としては間違ってはいないものの、あまりにも事を荒立てるような物言いに対して、流石に二人は弁解しかけた。
「いえ、確かにそうかもしれませんが、それらに関しては俺とあまり関係は無くて」
「一番最初の出来事は、確かに全面的に私の落ち度ですが」
そこで榊が眼光を鋭くし、二人を恫喝する。
「『はい』もしくは『いいえ』で、明確に答えたまえ!」
「……はい」
「よろしい」
流石の迫力で弘樹と祐司を黙らせてから、榊は微妙に顔を顰めながら書き出されていた用紙を折り畳み、元通りポケットにしまった。そして幾分困惑気味に、未だに立ち続けている二人を見上げる。
「娘には『訴えてやる』と喚かれたが、こんな事で一々裁判沙汰などやっていられん。しかし綾乃ちゃんは小さい頃から付き合いのある家のお嬢さんだからね。ちょっと直に釘を刺しに来たわけだ。娘にもせっつかれたものでね。悪く思わないでくれたまえ」
「いえ、榊さんには俺の失態のせいでご足労をおかけして、誠に申し訳ありませんでした」
殊勝に頭を下げた祐司に、榊は穏やかな表情になって尋ねた。
「以後、気を付けてくれるなら良い。取り敢えず、現時点で彼女との関係改善の策はあるかね?」
「彼女が納得する広島風お好み焼きを奢るのが、一番の近道だとは思いますが、何が不満だったのかが未だにサッパリ分かりません。本人に社内メールで尋ねても『もう良いですから』の一点張りで話にならない上、チラリと顔を見ただけでも逃げられますので」
「なるほど……。取り敢えず広島出身者に尋ねるか、料理に詳しい人間に聞いてみた方が良いな」
「そうしてみます」
祐司が素直に榊の助言に頷いたところで、遠藤が立ち上がって息子に組み付きつつ、必死の形相で命令した。
「弘樹! お前もとっとと女を清算しろ! そして綾乃さんを口説いて、何としても結婚まで持ち込むんだ!」
「なっ! まだそんな世迷い言言ってんのか、親父! それにクビだとほざいた舌の根も乾かないうちに、何言ってんだ!」
父親を引き剥がそうとしながら弘樹が呆れ気味に叫び返すと、遠藤が息子に負けじと吠えた。
「世迷い言とは何だ! 綾乃さんは可愛いだろうが。何が不服だ!」
「それは確かに可愛いけど、俺の好みはもう少し大人の女系で……。出る所が出てる眞紀子さん辺りが、俺の好みストライクど真ん中だから、これからモーションかけようかと」
「綾乃さんを侮辱する気か、貴様っ!!」
「それはそれは。私の娘に目をかけてくれてありがとう。……いや、目を付けるなんてけしからんと言うべきかな?」
「う……、あ。いえ、そ、それは……」
(馬鹿。親の前で口説くとか言うなよ)
遠藤に引き続き、鋭い目つきで薄笑いを浮かべている榊にも詰め寄られ、弘樹は自分の失言を悟って顔を引き攣らせた。そんな友人を見放して、祐司がこの場から立ち去る旨を告げる。
「お話がお済みのようなので、仕事に戻らせて頂きます。失礼します」
そう言って一礼し、あっさりと踵を返した祐司の背中に、狼狽した弘樹の声がかけられた。
「あ、おい、祐司!? お前一人だけ逃げるつもりか! 狡いぞっ!!」
「弘樹! お前にはこの際徹底的に言い聞かせておく必要が有りそうだな。そこに座れ!!」
「ちょっと待て、親父! 俺にも仕事が!!」
「いやいや弘樹君。親の言う事は素直に聞くものだぞ? ましてや彼は君が所属している会社のトップだ。心して拝聴したまえ」
「あのですね!」
そんな背後の喧騒を無視して祐司は進み、社長室を出てそのフロアのエレベーターの前まで来て、漸く緊張を解いた。
「思い立ったが吉日って言うし、取り敢えず電話だけしてみるか」
そう呟いた祐司は、周囲の様子を窺ってから携帯電話を取り出し、ある番号に電話をかけ始めた。するとすぐに明るい声での応答がある。
「もしもし祐司? どうしたのよ。まだ仕事中の時間なのに、珍しいわね」
「ああ、ちょっと。それより姉貴、広島風のお好み焼きに詳しいかな?」
「いきなり何? しかも『広島風のお好み焼き』なんて」
「ちょっと事情があって。後から詳しく説明するから」
「ふぅん? それは良いけど。それに詳しいと言えるかどうかは分からないけど、以前ちょっとした理由で、何店が食べ歩きした事はあるわ」
その異父姉の台詞に、祐司は救われた思いで言葉を継いだ。
「それなら悪いけど、今日の夜、暇なら付き合って欲しい店があるんだ」
「取り敢えず予定は空いてるけど……、勿論、そっちの奢りよ?」
「分かってる」
それから怪訝な声の姉と待ち合わせの時間と場所を確認した祐司は、短く礼を述べて携帯電話をポケットにしまい込んでから、自分の職場へと戻って行った。
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