夢見る頃を過ぎても

篠原皐月

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第56話 氷姫ご乱心事件 

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 気だるさを感じながら真澄が目を開けると、自分が服を来たままベッドにうつ伏せになった体勢で、頭から布団を被って寝入ってしまっていた事に気が付いた。

「……寝ちゃったのね」
 思わず呟いてから、真澄がのろのろと起き上がって掛け時計で時間を確認すると、いつもの起床時間を過ぎていた。

「寝過ごしてるし。会社に行く支度をしないと……」
 本音を言えば到底出勤する様な心境では無かったが、持ち前の生真面目さと、身体に染み付いた習性で会社を休むと言う選択肢は有り得なかった真澄は、着替えを済ませて洗面所へと向かった。
 ドアを出て斜め向かいの部屋に向かって廊下を横切り、ドアを開けて中に入ると、大きな鏡に映った自分の顔が目に入る。

「……酷い顔」
 皮肉げに顔を歪めて自分の顔を見詰めていた真澄は、少ししてから無言で洗面台に歩み寄った。
 その頃、食堂ではテーブルに着いた男達を眺めながら、玲子がいつも通りの朗らかな笑顔を見せていた。

「あらあら、どうしたのかしら皆、揃いも揃って。月曜の朝ですのよ? 寝ぼけた顔など見せないで、シャキッとなさったら?」
「…………」
 コロコロと笑ってスープを口に含んだ玲子に、夜半過ぎまで絞られた総一郎と雄一郎は疲れた様に溜め息を吐き、浩一も半ばうんざりしながら問い掛ける。

「母さん……、眠くは無いのか?」
「あら、病気でも無いのに、使用人の前でダラダラした姿を見せたりしたら、示しが付きませんよ? 何を言っているんです」
「……すみません」
 睡眠時間は同様である筈の母親にピシャリと言い切られ、浩一はすごすごと引き下がって食事に専念する事にした。するとここでドアを開けて、真澄が姿を現す。

「おはようございます。遅くなりました」
「あら、おはよう、真澄」
 無表情で挨拶をしてきた真澄に玲子も冷静に挨拶を返したが、てっきり部屋に閉じ籠もったままだと思っていた男達は、動揺しながら言葉を返した。

「……お、おう」
「起きて来たか……」
「あの、出勤する、とか?」
 恐る恐る尋ねた浩一に、すぐ隣の席に座った真澄の視線が突き刺さる。

「当然でしょう? ……何か文句でもあるの?」
「いや、そんな事は、別に何も……」
「だったら黙っていなさい」
「…………」
 母親に引き続き姉にもぶった切られた浩一は、大人しく口を閉ざした。
 そして住み込みの使用人である加瀬田が、常とは異なる真澄の様子に幾分怖じ気づきながらも彼女の前に手際良く皿を並べると、真澄は「いただきます」と感情の籠もらない声で挨拶して食べ始める。
 誰も口を開かず重苦しい沈黙の中、夕飯分をそのまま出した為、朝食としては持て余す量の料理を平らげていたが、沈黙に耐えられなかった浩一が、慎重に真澄に声をかけた。

「その……、姉さん?」
「何?」
「清人の事だけど」
 浩一がそう言った瞬間、真澄の手が素早く伸びて浩一が切り分けていたポークチョップに勢い良くフォークが突き刺さった。しかしそれ以上の進行を皿に阻まれ、ガンッと鈍い衝突音を発し、それが食堂内に響き渡る。そして唖然として固まった浩一の目の前で、ポークチョップが一切れ真澄の口の中に消え、真澄は律儀にそれを噛み切って咀嚼してから、ドスの効いた声で凄んだ。

「……朝から、不愉快な話題を出さないで貰えるかしら?」
「分かった」
 浩一が顔色を失って再度引き下がったが、その一部始終をテーブルの向こう側で見ていた玲子が、静かに口を開いた。
「そう言えば、真澄?」
「何でしょうか」
 如何にも不機嫌そうに応じた真澄だったが、玲子はそれには構わず穏やかに話し出した。

「今、社内であなたにアメリカ支社北米事業部への転勤の話が持ち上がっているそうね」
「……それがどうかしましたか?」
 夏からの懸案事項を口に出され、反射的に真澄が更に物騒な気配を醸し出すと、それを察した雄一郎と浩一は焦って玲子を止めようとした。

「玲子! お前一体どこからそんな話を!?」
「母さん! 何も今、そんな話を持ち出さなくても!」
 しかし狼狽しながらの夫と息子の叫びを無視し、玲子は朗らかに微笑んで話を続けた。

「最近、とある筋から、何やら懐かしい名前を聞いたものだから……。アメリカ支社長って、あなたが営業部に居た頃、部長さんだった方でしょう? あの笑い話にもならない、不倫疑惑が持ち上がった時の相手の」
「…………だとしたら、何だって言うんですか?」
(ちょっと待て、玲子さん!)
(いきなり、何を言い出すんだお前はっ!?)
(母さん! これ以上事態を悪化させるのは止めてくれっ!!)
 もはや歯軋りせんばかりの顔付きで真澄が玲子を睨み付け、それを見た男達は蒼白になったが、玲子はそんな娘を真っ正面から見据えたまま、とんでもない事を言い出した。

「ちょうど良いから向こうに行って、内藤さんの後妻に収まってみたら? 部長にもなれるんだから、悪い話では無いでしょう?」
「いきなり何を言い出すんですか……」
「あら、前々から考えていたのよ? 真澄位の跳ねっ返りは、落ち着いた年上の方に面倒を見て貰った方が良いでしょうし、何と言ってもあなたはもう三十四だし。いつまでも若いつもりでいても、初産では高齢出産の年齢に引っかかっているんだから」
「……お母様」
 真澄のフォークとナイフを掴む手が僅かに震えている事に気付き、男達は顔色を失ったが、玲子は不気味な笑顔で話を続けた。

「でもその方は、もう大きなお子さんが居るみたいだから、無理に子供を欲しがる事も無いでしょうし、そういう方の方があなただって気が楽でしょう?」
「……私は別に、誰とも結婚する気は有りませんが」
 絞り出すように告げた真澄の言葉にも、玲子は微塵も動揺せずに言ってのけた。

「そう言っていられるのも、あと何年かしら……。すぐに『結婚しない』じゃなくて『結婚出来なかった』と言われる様に」
「御馳走様でした!!」
 そこでガチャンと叩き付ける様にナイフとフォークを皿に置きながら、般若の形相で真澄が立ち上がったが、玲子はのほほんと言葉を返した。

「あら、昨夜も食べなかった割には少食ね。ダイエットは身体に悪いわよ?」
「失礼します!」
 吐き捨てる様に告げて食堂から走り出た真澄は、階段を駆け上がりながら悔し涙を流した。

(何よ! どうしてあんな事まで、言われなくちゃいけないのよ!! しかも私には年上が良いとか訳知り顔で、しかも清人君が言ったのと同じ事を!)
「悔しいぃぃっ……! こんな所、一分一秒だって居るものですかっ!!」
 自室に戻るなりそう叫んだ真澄は、昨日から放り出したままのスーツケースに手を伸ばして開き、中の物を取り出して周囲に撒き散らし始めた。

 その一方、真澄が食堂から姿を消した直後、流石に雄一郎が声を荒げて玲子を責めた。
「玲子! お前、真澄相手に何を当て擦っているんだ!?」
「別にそんな事は……。ただ余所様から見たらそうだろうなと思う事を口にしただけで。悪気はありませんのよ?」
(いや、今のは絶対、悪意の固まりだった……)
 飄々と答える玲子にその場全員が頭を抱えたが、全て食べ終えた玲子が優雅にお茶を一口啜ってから、僅かに顔をしかめて言い出した。

「まあ、確かにちょっと、真澄の行動で気に入らない所はありましたが……」
「何が気に入らんと言うんだ」
「若いだけが取り柄の様な子に負けて、すごすご帰って来るなんて。そんなのは断じて私の娘とは認めません」
 不機嫌そうな顔で玲子が断言すると、思わず浩一が口を挟んだ。

「母さん……。それ絶対、何かの誤解だから」
「そうだとしても、そんな与太話を頭から信じて、黙って引き下がってウジウジしているのが、一番情け無いと言っているんです。本当だとして、小娘を蹴散らして奪い取る位の気概が無くてどうしますか。それ位分からないの? 浩一」
 玲子に軽く睨まれた浩一は、本気でうなだれた。

「……頼むから、あまり姉さんを刺激しないでくれ」
「皆で腫れ物に触れる様な扱いをしていないで、誰かがきちんと言わないと駄目でしょう」
「それは分かるが……」
「……強烈過ぎるぞ」
「絶対、話がずれてるし」
 玲子に聞こえない様に男達が呻いていると、給仕の為姿を消していた加瀬田が食堂に駆け込んで来た。

「旦那様、奥様! 真澄様がっ!」
「あら、真澄がどうかしたの?」
 のんびりと玲子が尋ねると、加瀬田が狼狽しながら雄一郎と玲子に交互に視線を向けつつ報告した。

「そ、それが……、真澄様が『こんな不愉快な所にいられないわ。当面戻らないから』と仰いながら、スーツケース持参で出勤なさいました!」
「はぁ?」
「……じゃあ、電車で出掛けたのか?」
 真澄はプライベートでの送迎にはあまり良い顔をしないものの、出勤退勤の時に雄一郎を送迎している車に関して「こんな大きい車に一人しか乗らないなんて不経済だわ」と主張して同乗していた。その為、その車に乗らずに普段の自分と同じ様に電車で出勤したのかと浩一は思ったのだが、加瀬田は言いにくそうに雄一郎に告げる。

「それが……、真澄様が柴崎さんを脅して、旦那様を残してそのまま車で出勤なさいまして……」
「…………」
 取り残された形になった雄一郎は思わず無言になったが、その横で玲子が小さく笑った。

「あらあら、三十過ぎで家出なんて。分別のある大人がする事じゃ無いわね。あなた、タクシーを手配しても良いでしょうが、偶には通勤電車に揺られるのも、新鮮かもしれませんわよ?」
「父さん……、今日は一緒に行こうか」
「そうだな……」
 気の毒そうに息子に声をかけられた雄一郎は、久しぶりの電車通勤を体感する事になった。

 真澄はいつもの出勤時間よりは早く家を出たものの、社屋ビル近くのビジネスホテルに部屋を取り、フロントにスーツケースを預けてそこの中に入っている店でモーニングセットを食べてから出社した為、始業時間ギリギリに職場に入った。

「……おはよう」
「おはよう、ござい、ます……」
 謹慎明けの課長を明るく出迎えようと、真澄の部下達は揃って密かに気合いを入れていたが、あまりにも不機嫌、かつ物騒なオーラを背負いつつ出勤してきた真澄に、直感的に下手な事は言えないと判断し、静かに真澄の様子を見守りながら業務に入った。

「あの……、今日の課長、何か雰囲気が怖くありません?」
 その年の新入社員の藤宮が、隣の先輩の高須に囁くと、高須も眉をしかめながら応じる。
「……怖いっつうより、もはや凶器だな。近寄ったら切れるんじゃないか?」
「どうしたんでしょう……。土曜日にハッピーバースデーコールをした時は、機嫌は良かったんですが……」
「お前そんな事してたのかよ。その時何か余計な事でも言ったんじゃないのか?」
「ちょっと高須さん。人聞き悪い事言わないで下さい!」
「高須さん、藤宮さん!」
「はいっ!!」
 いきなり室内に響き渡った真澄の呼び掛けに、二人は反射的に立ち上がって真澄に向き直った。その二人を半眼で見やった真澄が、静かに冷たく告げる。

「……仕事中は、私語を慎むように」
「申し訳ありません」
 口答えなどする気もなく、二人は声を揃えて深々と頭を下げてから椅子に座り直した。それを見た周囲の者達は、真澄の機嫌の悪さを目の当たりにして、黙って各自の業務に勤しむ。しかしそこで企画推進部二課に、招かれざる客がやって来た。

「やあ、柏木課長、頑張っているようだね」
「……どうも」
 企画推進部の部屋は入り口から一番奥の窓際のスペースに、透明な壁で仕切られた部長室があり、そこから順に一・二・三課の順に簡単な仕切りで隔てただけで、所属する全員の机が並べられていた。当然出入り口から入って来て部長室に向かった清川の姿は、課員全員が視界の隅に捉えていたが、話を終えたらすぐに出て行くと思っていたところ、真澄の机に真っ直ぐに歩み寄り、絡んできたのである。

(げっ……、清川総務部長)
(また課長に絡むつもりかよ……)
(よりによって、何でこんな時に顔を出すかな)
(とっととてめぇのシマに帰れ!)
 二課に所属する全員、仕事の手を止めないまま、常日頃真澄を目の敵にしている清川に心の中で毒吐いたが、彼らの目の前で清川は上機嫌に真澄に話し掛けた。

「何やら社長に諭されて、謹慎していたらしいが、きちんと気持ちは切り替えられたかね?」
「……お陰様で」
 椅子に座ったまま、PCの画面を見つつ手を動かし続ける真澄に、横に立っている清川は一瞬ムッとした顔をしてから、嫌味っぽく続けた。

「ほう? それは良かった。この前は君の失態で、年間二千万の契約をフイにするところだったからねぇ」
「……ご心配おかけして、申し訳ありません」
「いやいや、偶々先方の部長が、私の大学の同期で助かったよ。彼が穏便に事を収めてくれたから、柏木の名前にも傷が付かなかったからねぇ」
 清川がしたり顔でそう告げた時、二課の中で何人かが顔を強張らせて腰を浮かせたが、係長の城崎が無言で該当者を睨み付けて制した。それをチラリと見やってから、真澄が声を絞り出す。

「…………その際には、清川部長にはお骨折り頂き、ありがとうございました」
「これ位の気遣いなど、大した事は無いさ。それよりも柏木課長の今後の事が心配でねぇ」
「……心配とは、何がでしょうか?」
 わざとらしく嘆息した清川に、真澄が精一杯忍耐力を発揮しながら静かに尋ねると、清川は半ば嘲笑しながら告げた。

「女だてらに仕事をこなしていたのは、流石に社長の娘だと感心していたんだがねぇ……。この前の事で分かったんじゃないのかな? 所詮女に管理職は無理だって」
「…………」
 そこで真澄が手を止めて黙ってPCのディスプレイを見つめると、真澄のすぐ前の席の城崎がゆっくりと立ち上がり、清川に向かって冷え冷えとした視線を向けた。

「清川部長……、少しお言葉が過ぎると思いますが。仮にも管理職の立場にある方が、性別で能力の有無を判断した上それを公言するなど、柏木産業全体の見識も問われかねません。仮にも人の上に立つお立場なら、それを自覚されて口を慎んで下さい」
 口調こそ丁寧なものの、二課はもとより企画推進部所属の全員が城崎が激怒しているのが分かり、とても口を挟む事など出来ずにおののいた。清川もその気迫に一瞬気圧されたものの、自分の優位を信じて気を取り直し、吐き捨てる。

「はっ! 女の下で嬉々として働く様なプライドの無い人間に、どうこう言われる筋合いは無いな! そっちこそ黙りたまえ!」
「……仰いましたね?」
「ああ、言ったとも。本当の事だ、何が悪い。第一、貰い手が無くて嫁に行けないからって、いつまでも会社にふんぞり返っている女の尻拭いを、毎回させられるなど真っ平御免だな。身の程を弁えて、高望みしないで適当な所に収まれば良いものを」
「うっせぇぞ、このうすらハゲ」
「は? 何か言ったかね、柏木課長」
 横に座っていた真澄が唐突に何やら呟いた言葉を聞き取り損ね、清川が横柄な態度で真澄に尋ねると、真澄は勢い良くその場に立ち上がり、清川に向かって暴言を吐いた。

「聞こえなかったのか? うすらハゲっつったんだ! このボケチビゴマスリ野郎がっ!!」
「……なっ!?」
「…………」
 常には有り得ない真澄の口調と暴言に加え、睨み殺しそうな視線を受けて流石に清川がたじろぎ、真澄の豹変ぶりを目の当たりにした部員全員が固まった。そして真澄は両腕を伸ばし、問答無用で一歩後退した清川の喉を掴み上げて絞め上げる。

「し、失礼だろう柏木課、うぐぁぁっ!」
「女は仕事が出来なくて、尻拭いが面倒で困るだぁ? はっ! 誰がてめぇみたいな腰巾着に、『面倒見て下さい』って頭下げた。あぁ!?」
「ぐぇぇっ! は、はなっ……」
「おい! ちょっと待て柏木!」
「柏木、落ち着け! お前達も黙って見てないで止めろっ!!」
 ヒラ社員はあまりの事態に完璧に固まってしまったが、一課長の広瀬と三課長の上原、部長の谷山は、流石に肝の据わり方が違うらしく、血相を変えてそれぞれの席から真澄と清川の元に走り寄って叫んだ。しかし真澄の手を清川の首から引き剥がそうとした所で、広瀬と上原は城崎に腕を掴まれ、有無を言わせず真澄達から遠ざけられる。

「お騒がせして申し訳ありません、広瀬課長、上原課長。ですがこれは二課の問題ですので、お気遣い無く。すぐに解決しますし、ご自分の業務に専念して下さい」
「ちょっと待て城崎、取り敢えずこの手を離せ!」
「すぐ解決って、一体どうするつもりだ?」
 自分の腕をしっかり掴んでいる城崎の手を引き剥がそうとしながら、広瀬と上原が焦りつつ尋ねると、城崎が事も無げに答えた。

「簡単ですよ。あの小うるさいボケ中年が、息をしなくなったら静かになります」
 淡々とそう告げて壮絶な笑みを浮かべた城崎に、広瀬と上原は普段真澄と同程度に沈着冷静な城崎が、真澄以上に怒り狂っている事が分かって心底肝を冷やした。
 城崎が広瀬と上原をガッチリ捕獲してしまった為、清川から真澄を引き剥がす人員は谷山だけになってしまい、狼狽しながらも大して上背に違いがない真澄が渾身の力で絞め上げている手に自分の手をかけて引き剥がしにかかる。しかし真澄は清川に毒吐きながら、ギリギリとその喉を絞め上げた。

「例の二千万の契約だって継続出来たのは、何もてめぇの手柄じゃねえだろうが! したり顔でほざいてんじゃねぇよ!」
「柏木止めろっ! それ以上は拙い! 職場で死人を出す気かっ!?」
「上にはへいこらしまくって、陰で人の上前ばっかりはねてやがる、このコバンザメ野郎がぁぁっ!」
「ぐふぇっ……」
「皆、ボケッと見てないで、誰か内線で浩一課長か社長を呼び出せ! 柏木課長を止めろっ!!」
 谷山が顔色を変えて絶叫した所で、周りの者達が慌てて動き出し、その場に居た所属部員総出で二人を引き剥がして、清川はほうほうの体で総務部に逃げ帰った。

 そして、普段冷静沈着な真澄の姿とは一線を画したその恐怖の出来事は、柏木産業内で《氷姫御乱心事件》として暫くの間、密やかに語られる事となった。
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