25年の時を超えた異世界帰りの勇者、奇跡の【具現化】で夢現の境界で再び立ち上がる ⛔帰還勇者の夢現境界侵食戦線⛔

阿澄飛鳥

文字の大きさ
12 / 43

第12話 常識の範囲外

しおりを挟む
『アリエスリーダー。こちらCPコマンドポスト。【パッケージ】は確保しましたか? どうぞ』
「CP! アタシのカメラが見えてないのか!? 【パッケージ】が小型境獣に突っ込んでいった! 発砲許可を求む! 長渕、武田! 見えているなら援護しろ!」
 
 槇原はバイクのサイドバックから折りたたみ式の小銃を取り出しながら、インカムに叫ぶ。
 
 ここに来たのは松里アキパッケージを連れ戻すという目的のためだ。当然、境獣との戦闘など想定していない。
 
 アキは施設内でも数秒のカメラの異常や、警備員のシフト交代の隙をついて、高さ4メートルの壁を乗り越えて脱走した。
 そして、あの少年はスマフォも小銭も持たず、なぜか電車に乗って、しかも買い物までしてここまで来た。
 
 全て予想の……いや、常識の範囲外だ。
 
 それが余計に槇原を苛立たせる。
 慣れない装備に手間取りつつ、なんとか射撃体勢に入ると、アイアンサイト越しに白刃の駆け巡る様が見えた。
 
「何なのよあの子……!」
 
 それは筆で達筆な文字を描くようになめらかで、そして恐ろしいほどに速い。
 
 アキは白い剣1本を片手に、化け物の間を縫うように走り、すれ違いざまに切り刻んでいく。
 相手はミノタウロスやゴブリンといった小型境獣といえど、生身の人間など紙切れのように引き千切ることができる相手だ。
 
 だというのに、アキはその場に押し寄せる敵を次々と骸に変えていった。
 
『こちらCP。射撃許可が出ました。ですが120秒後にハンマー、セイバーが到着、攻撃を開始します。至急、撤退してください』
「CP、了解! アキくん! 逃げるわよ! アキくん!」

 槇原は叫ぶ。だが、アキにはその声が聞こえていないかのように、その動きは止まらない。
 ならば先に小型境獣の殲滅を、と発砲しようとしたが、人間とは思えない速度で動くアキが射線に入ってしまい、狙いが定まらないでいる。
 
「くっ……!」
 
 槇原は歯噛みして道路の反対側へ移動した。
 この位置ならば向かってくる敵の後方集団を狙うことができるだろう。
 
 うつぶせの射撃体勢を取った槇原は引き金を引くと、5.56ミリの小銃弾が立て続けにミノタウロスの胸に吸い込まれる。
 
 しかし、敵は倒れない。
 
 対人用のこの銃では威力が不足している。
 あの子は本当に何者なのだろう。なぜ自分は子供の援護をしているんだろう。この状況はなんなのだろう。

 そう自分の状況を俯瞰しながら、槇原は射撃を続けるのだった。

 
 ◇   ◇   ◇
 
 
「やっべぇーですよ。あれ」
「本当に人間か? ゴブリンの頭蓋骨をハムみたいにスライスしてるぞ」
 
 観測手の長渕が漏らした言葉に、狙撃手の武田は同調する。
 
 武田の構えている25式狙撃銃のスコープの先では、剣1本で次々と小型境獣を斬り伏せていく少年の姿があった。
 上官の槇原からは「援護しろ」との命令を頂戴したが、肝心の少年があれでは命令の意味が変わってくる。
 
 その証拠に、槇原がバイクから離れた場所で射撃を開始した。
 武田たちは槇原の撤退の援護をするつもりだったが、ここで小型境獣の一団を殲滅するしかない。
 でなければあの少年は止まらないだろう。
 
「ミノ、最前列、ゴブリンのせいで足止め食らってるやつ。距離およそ150メートル」
「確認した」
「エイム――いえ、待って二尉!」
 
 そのとき、射線上に少年の背中が映る。
 いったん引き金から指を離した武田だが、少年は何かを察したようにこちらを見ながら横にステップした。
 
 それを見て、武田は目標のミノタウロスの眼球を狙って引き金を引く。
 強い衝撃。スコープを覗く視界が大きく揺れるが、武田は感触から狙い通りに直撃したことを確信した。
 
「……ひ、ヒット。ヘッドショット。武田さん、パッケージに当たりますよ!」
「いや、あの子供、俺が狙ったことに気づいていた。だから撃った」
 
 次弾を装填しながら武田が言うと、長渕は顔を引きつらせる。
 
「本気で言ってます?」
「ああ、今の1発は譲って頂いた、というやつだ。邪魔にならんよう最後列からやっていこう」
 
 再びスコープを覗く武田の横で、長渕は「ありえねぇ……」とぶつぶつ言い始めた。
 彼のいつもの癖だ。状況が急変すると長渕は独り言が止まらない。だから無線のマイクもオフにしている。
 
 それでもしっかりと観測手を務めるのなら構わない。
 
 武田は338ラプア・マグナム弾をゴブリンの喉に直撃させながら、そんな今の状況をふっと鼻で笑い飛ばした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや

静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。 朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。 「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。 この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか? 甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!

追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─

石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」 貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。 「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」 かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。 ときどき舞い込んでくるトラブル。 慌ててミーナを探しているルカ。 果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。 甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。 *サイトより転載になります。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

処理中です...