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第2章
迷子のリーダー
しおりを挟む昼間にも関わらず、周りはやけに薄暗い。
生い茂る草木が行く手を阻み、立ち止まれば虫に刺される。さらに、まとわりつく湿気が不快感に拍車を掛けた。
先頭を歩きながら木の枝で草木を切り払い、膝ぐらいまでの雑草は靴で踏みしめ道を作る。森に入って2時間は経ち、疲れも出始めるが「調査部隊」のリーダーに任命されたのだから、愚痴を言うわけにもいかないだろう。
しかし、心の中であれば愚痴も不満も言って構わないだろう。
俺は正直な話、いま迷子だ。
ここは何処なんだ? 帰る道も分からなくなったんだが? こんな事を口にするべきではない。けして恥ずかしいとかミスを認めるのが怖いとかでは断じて無い。
他の者が不安になるといけないから、敢えて口には出さず水面下で打開策を考える。リーダーとは恐らく、そう言うものだろう。
「おい! アレン。」
突然の呼びかけに、声にならない声を上げる。心拍数が上昇し額から嫌な汗が滲むのが分かる。
勝負の駆け引きに置いては、いかなる時でも無表情を貫く技術があるらしい。俺には一生を掛けても、取得出来ないだろう。
「何だよアンジ?」
少ない言葉数で探りを入れてみる。
「何処なんだよここは? 方向あってんのか?」
普段は馬鹿のクセに、ずいぶんと核心を付いてくるじゃないか。
なんだ? 実は俺が迷子になっていると気付いていて、わざとそんな事を言い反応を見て楽しもうと言うのか? 中々、悪趣味じゃないかアンジ君。
アレンはアンジの言葉の意図を、探り考えてから答える。
「何処って言われても、情報ではこの辺の山に居るって事しか分からないんだから、しらみつぶしに探すしかないだろ」
「まぁ、それもそうだけどよ」
アンジが汗を拭う。川辺や山道など、人が通りやすい所はもう捜索して来た。となると、どこに居るのか見当も付かない。
スノウはケイムと同じで、魔法石学校を飛び級で卒業した人物だが、普通の人とは変わった奴だった。
今回だってそうだ。「木属性の魔法を理解するには、まずは木になる事だ」と言い残しこの森に消えたらしい。
そのおかげでこんな深い森の中を、男二人で彷徨う羽目になった。
調査部隊は俺を含め、アンジ、ダートン、ケイム、マナの5人の少数部隊だ。ケイムは森に行かなければならないと分かると、研究部で仕事があるからと来なかった。
マナとダートンは、山を流れる川沿いに上流へと捜索している。
いまこの場にいるのがアンジでは無く、マナかダートンなら迷う事なく下山も出来るだろう。俺の完全な人選ミスだ。
帰るにも帰れないので、捜索しながら前に進むしかない。強く大地を踏みしめ前へと進むだけだ。
「おい! 一旦、戻るぞ」
アレンの心拍数がまた上がる。
非常に効果的なタイミングで、カードを切ってくるじゃないか。心理戦も得意とは知らなかったぞ。
アレンは心の中で舌打ちした。
「なんでここまで来て戻るんだよ?」
アンジは何かを警戒している様に見える。
「モンスターの気配がする。それもやばそうな感じのだ」
周辺を見回すが、特にモンスターらしきものは目に入らないが、魔装を展開しゆっくりと鞘から双剣を抜く。静まり返った森の中に金属音だけが響いた。
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