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第2章
光の示す場所へ
しおりを挟む雲一つない青空、凛と輝く太陽から厳しい熱線が演習場に居るアレン達の体を刺す。
キャスタルへ帰還してから数日が経とうとしているが、ケイム達の研究室には特に動きは無いみたいだ。それならもちろん、俺達もする事が無いので連日訓練を行っている。
剣術の訓練と言っても、短期間で劇的に強くなる訳では無い。その大半は地味な基礎技術の反復練習だ。しかしそのおかげか、双剣の動きは以前より少し滑らかになって来た様な気がする。
これだけの時間を訓練に当てられるのは、魔法学校の時でも無かっただろう。
「だいぶ双剣使いらしい、動きになって来たんじゃない?」
「そうかな?? 悪いなダートン。ずっと相手して貰って」
「気にしないでよ。良くなったと言えば、その相手の近くにまとわりついて戦う戦法は結構良く出来てると思うよ」
まとわりついてと言うのはナオの戦闘を真似した物で、近距離戦になれば相手を中心に左右へ回りつつ隙を突く感じだ。ナオの様な風魔法は使えないので、S・エンハンスで代用している。
「まだ全然イメージ通りに行かないけどな。戦闘の幅は広がりそうだよ」
「おーい! 調査部隊来てくれ!」
あれは、研究室の人だ。何か進展があったのか?
「みんな、研究室へ急ごう!」
研究室へ向かいながら、アレンは考える。
悪魔の門を感知したのだろうか? あの装置で感知できたとすれば喜 ばしい事だが、それはその場所でホーストンの様な悲惨な事が起きると言う事でもある。
研究室の扉を開ける。
「こっちに来てくれ!」
扉を開けると直ぐにケイムが声を掛けて来た。呼ばれた先に行くと、装置に置かれている地図の上に薄く白い光が灯っている。
「スノウが何かを感じて、装置と繋いでみるとこれが浮かび上がったんだよ。しかも時間と共にこの光は濃く、そして大きくなってきている」
「それはここに大きな魔力が集中している事を表している。つまり悪魔の門が出現する可能性が高い」
「それを確認するために、我々はすぐさまここへ向かう」
悪魔の門が出現すれば大きな被害が出るだろう。人が多ければ多いほど混乱も起こる。
アレンは地図上で 光る場所を確認する。
「これは何て言う場所なんだ? 人の多い所なのか?」
「この光が差している場所は、マレーシュと言う町だ。人口はホーストンと比べれば約3倍ほどの人々が暮らしている」
「3倍! じゃあホーストンの時より、もっと被害が大きくなるじゃねぇか!」
「筋肉馬鹿の言うとおりだ。だから早急にマレーシュへ向かう」
「スノウの転移魔法で移動するのか?」
装置に繋がれたままのスノウが首を横に振った。
「僕の魔法はまだ未完成。もしかすると違う所へ飛ばすかも」
確かにそれでは困るな。使えたら便利だがデメリットを考えると仕方ない事だ。
「移動は馬車だ。全員城門へ急ぎたまえ」
ケイムの言葉に反応して、研究室を飛び出し城門へ と急いだ。
城門では研究室の人たちが、慌ただしく馬車や荷物の準備に取り掛かっていた。
「馬車の準備をしている間に、忘れ物が無いか確認したまえ。向こうの状況次第ではしばらく帰ってこれないかも知れないからね」
そう言うケイムの荷物は何処から持って来たのか、かなりの大荷物だ。
「お前、荷物多すぎねぇか?」
「これは調査する為に、必要と思われる物を入れているのだよ。重量はかなりの物になってしまうが仕方がない」
「馬車に運びたまえ」
「えっ? 俺がか?」
「何を言っている。そのための筋肉だろうがね」
アンジは渋々ケイムの荷物を馬車へ運び入れた。
馬車は全部で三台ある。一つは荷物専用、残りの二つは人が乗り込む用 みたいだ。
あたりを見まわし、準備が出来た事を確認するとケイムが言った。
「それでは、調査部隊はこれよりマレーシュに向かう」
全員が馬車に乗り込むと、マレーシュを目指し車輪が動き出した。
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