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第2章
召喚者
しおりを挟む地上の兵たちは魔物と応戦している。
マレーシュに現れた単眼の巨人の様な、巨大な魔物は見当たらないが数が多い。
どうする。ここで他の者たちと共に魔物を払い除けるか、それとも城に居る王を守りに向かうか。
アレンの二択にマナが答えを出す。
「もしかするとケイムは、王様の所に向かったのかも知れないよ」
確かにケイムの発明品の中に、守りに役立つものがあるのかも知れないし、スノウの転移魔法なら王を逃がすことも可能だ。
「よし、王の間に向かうぞ」
マナを守りながら行く手を阻む魔物を、双剣で斬り捨てて行く。
風を宿した双剣に刻印を宿した肉体は、思っていた以上に自分を強くさせていた。
城への 扉を開け中に入ると、外とは打って変わって中は静寂……その一言に尽きる。
城内部に魔物は見当たらないが、命を奪われた兵士が所々に横たわっていた。しかし傷跡の様子では魔物に殺されたようでは無く、人に殺されたみたいだった。
「これは魔物じゃないな」
マナも小さく頷いた。
王の間の扉を開く。
玉座に向かって一直線に広がる赤絨毯の先に、絶命した王の姿があった。
その手前にはグリーヴァ、ジャオシンジャ、キャンディ。そして床に伏せたアンジとダートンの姿が目に入る。
「早かったなお前たち」
こちらに気付いたグリーヴァが言った。
「潜入部隊はいつの間に戻ってたんだ? ここで何が起きた?」
ジャオシンジャが王、アンジたち の方に手をゆっくりと横に振りながら答える。
「見ての通りよ。王が死に、それに仕えた兵が倒れている」
「そうじゃない! 王やアンジ達を襲った奴らを見なかったのか?」
ジャオシンジャは首を振った。
マナはアンジ達の元へ駆け寄り、回復魔法を掛け始める。
「お前たちも外の魔物を倒すのに向かってくれないか? 数が多すぎてこのままだとみんな死んでしまう」
グリーヴァはジャオシンジャを見ると言った。
「そうだな、魔物は倒さなくてはならない」
ジャオシンジャは小さく頷くと、マナに向け三節棍を振り払う。
突然の事に反応が遅れたマナは、三節棍を側頭部にまともに受けてしまった。
「何やってるんだジャオシンジャ!」
「分からないのか? 王も、グレバー、グレイスも俺たちが処分したのだ」
「何を言ってるんだグリーヴァ?」
「アレ……ン、逃げろ」
意識を取り戻したアンジが言った。
「こいつ……らは裏切り者……だ」
「裏切り者とは失礼だな。俺たちは始めから仲間ではなかったのだ。俺はバルバロから送り込まれていた刺客で、任務を遂行したまで」
「バルバロの人間だと?」
「そうだ、身分を隠し幼少期よりキャスタルに送り込まれ国の情報を本国に送る。そして時が来れば悪魔の門を召喚し、この国を潰すと言う任務だ」
「お前らが悪魔の門を? そんな事出来るはずないだろ、あれを人間が召喚出来るはずがない」
突如アレンに三節棍が襲い掛か る。頭を下げそれを回避いた。
「お前がそれを知る必要はないわ」
自分より強い相手に二対一。
勝てはしないだろうが、キャスタルを滅茶苦茶にしやがった奴にただ殺されてたまるか。せめて一太刀でも負わせてやる。
「S・エンハンス」
敏捷性を上げ、迫り来る三節棍を回避する。空振りした棍は石で出来た床を砕いた。
棍を恐ろしいほど魔装で纏っているのだろう。そして三本の棍棒を繋ぐ鎖は魔装で作られており、ジャオシンジャの意思で伸縮自在だ。
攻撃を躱しても、するりと棍を回しすぐに次の攻撃が飛んでくる。それを双剣で防ごうとも衝撃で腕ごと持っていかれる。これでは剣の届く位置に近づけない。
「あなたが私に勝てる訳ないわ」
冷た い目をしたジャオシンジャが言い放つ。
勝ち目の無い中でも、なにか方法は無いものかと探る。
ジャオシンジャの武器はナオの魔装具とは違い、棍棒の部分は魔力では無く実在するものだ。
……捨て身でやれば、あれを破る手段があるのかもしれない。
再び迫り来る三節棍。それを見て魔装を全て双剣に移すと、棍棒の部分を斬りつける。
魔装により強化された双剣に宿る風魔法も相まって、棍棒の先端にあたる一本を切断した。
一瞬ではあったがジャオシンジャは、三節棍のコントロールを失う。その隙にアレンは一気に間合いを詰めた。
しかし、何かに右足を取られ転倒しそうになる。
左足で踏ん張り転倒は阻止したが、右足に植物の様なものが絡まって 外れない。
「しまった! 木属性の魔法か」そう思った時には、三節棍が顔面に直撃していた。
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