文太と真堂丸

だかずお

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~ 文太と太一 ~

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朝から道場では稽古が行われている
道場の隅に座り見ていた道来は立ち上がり、一山に告げる。

「一山さん、私にもよろしければ稽古をつけていただきたいのですが」

一山はジッと道来を見つめ口を開いた
「よかろう」
そして立ち上がり 槍を構え
「わしの稽古はキツイぞ さあ来なさい」

「ありがとうございます」
道来は対峙して驚く
何と言う威圧感、普段の喋ってる時とはまるで別人、そして全く隙が見当たらない

すごい

すごい

すごい

こんな世界で闘ってるのか

こんな領域があるのか

すごい

すごい
それに触れられ感じられた嬉しさに、道来は微笑み確信した。俺はまだ成長できる
「やぁぁぁぁぁぁぁあああっっっ」

僕、文太はこないだ稼いだお金を村に送ってくれる配達人たる人達がいるらしくそこに向かって近くの村まで歩いていた。
「ふーっ、これでおっかあ達の暮らしが少し楽になる 」
僕はなんだか嬉しかった。
ずっとめんどうを見て育ててくれた、おっかあ達の手助け出来ることが嬉しかった。
みんな元気でやってるかなぁ?
手紙を添えて歩く山路は嬉しい心持ちだった。


山の中
真堂丸は 手に刀傷のある男の事を思い出していた。
自身でも初めてに近いような感覚
数々の死闘を繰り返してきた身体と精神、魂が瞬間叫んだ

こいつは強い
真堂丸は前を見て 微笑んだ
刀を持ち ここまで昇って無数の山々を越え歩いて来た
山を越えたら更に高い山が見え
それを何度も何度も繰り返して来た
しかし、今回の山は遥か雲を越えそびえ立ち、てっぺんがまるで見えない。
それはまるで霧がかかり、先の道が全く見えないようなものでもあった
気がつけば、真堂丸は精神を研ぎ澄まし、刀を振るっていた。


布団の上
太一は目を覚まし、まだ痛む身体をいたわりながら道場に向かっている。
道場には傷だらけになりながら、ぶさまな姿を恥とせず、何度も倒れては立ち上がる道来の姿をみた 。

道来は狼泊に負けたあたりからだろうか、あまりの相手との実力差にどこかあきらめ、なにか力が抜けてしまってるように太一は感じていた。
だからこそ必死に稽古を繰り返すその姿に太一は嬉しくなり、自然と涙がこぼれた。

人は壁に塞がれ
打ちひしがれても
再び立ち上がる時がくる
何度でも自分も立ち上がろう、太一は誓った。
太一の瞳には、倒れても倒れてもあきらめず立ち上がる、道来の姿がしっかりと映っていた。


文太は山路を歩いてる途中で泣いてる子供達を見る

「どうしたの?」

「みんな死んじゃうよ」

「えっ?」

「食べる物が村にないんだ お金もないから買えないんだ」
文太はハッと自分の持つお金が役に立つんじゃないかと思った
でもこれは、おっかあ達に送る金

ごめん

ごめん

ごめん



ごめん
おっかあ
またすぐ送るからね

「これで、みんなに食べさせてあげるんだよ」
子供達はビックリした顔を浮かべている
夢を見ているような顔
「いいの?」

「さあ、はやく」

「ありがとう」
文太は歩いてきた道程を引き返し、戻り始めた。


道場では 刀と槍のぶつかり合う音が、力強く鳴り響いている
「あっ、文太の兄貴おかえんなせぇ、お金とどけに行きましたか?」

「えっあっ、はっ はい 一安心しました」
太一はちよっと違和感のある、文太の反応が少し気になったが

「俺もはやく稽古したい」とニッコリ笑う

「ちょっと 外の風辺りに行って来やす」
その時、太一は目にした。 文太の着物の裾からはみ出ている、昨夜書いていた親に送る手紙が入ってることを。
あえて理由は聞かなかった。
太一が外を歩き散歩していると子供達が目に入る

「あはは、あの馬鹿こんなにくれたよ」

「ああやって、騙すと簡単に金が入っていいねもう一回やろうよ」

「やろう、やろう」
太一はため息をついた
ふーっ まったく 文太の兄貴は
その頃、文太は部屋で手紙を書いていた。
せめて手紙だけでも書き直して送ろう、無事を知らせないと。
手紙を書き直し山路をまた歩いていると前から太一が「あっ、太一さん」

「聴きましたよ、村人助ける為にお金 全部渡したって」

「えっ?どうしてそれを?」

「さっき小僧が村人が助かったから礼を伝えてくれって、うるせえんですよ」

「それなら良かった」

「文太の兄貴水くせえですよ」
太一はこないだの報酬の自分達の分を文太に差し出した。

「えっ? そんなの受け取れませんよ」

「俺達は、本当に二人には礼をしてもしきれない程の恩がある せめてこれくらいさせてくだせぇ」
そういい お金を文太に渡し山路を歩いて行った。

「ありがとう太一さん」
文太は太一の背中に向かって深々と頭を下げた。

「先、道場帰ってますよ」

山路では子供達が話しながらに歩いている

「いやーさっきの奴に斬られるかと思ったな」

「俺も」

先ほどの場面
「そいっぁ どうやら俺の友達の金のようだな」

「ひぃぃっ」 「やばい」

「はやく金を持ってここをされ、あの人の優しさを踏みにじさせるな。だがな、忘れるな、その金はあの人の貧しい村に贈るつもりだったんだぞ、少しでも・・・まあいい ちゃんと飯くえよ」

「あんな人もいるんだね」

「この金なににつかおうか」

「おれ・・・」

「両親におくる」

「俺、こないだ餓死しそうになってた村人にあげる」

「おい、お前らどうしたんだよ?阿呆になったのか?」

「僕もそうする」

「おーい、みんなあ」

「・・・・・」

「待てってばあ」

「俺も行くよ」


夕焼けが赤々と輝く、美しい夕暮れ時だった。 



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