文太と真堂丸

だかずお

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~ 待ち望んだ試合 ~

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あれから、一週間以上たった今も、僕らはまだ一山さんの道場に住まわせてもらっている。
その間、ずっと稽古に励んでいる道来さんは確実に強くなっていた。

ふと、目にした光景
「腕をあげたようだな」

それは、珍しくも自分から、道来さんに話かける真堂丸の姿だった。
彼も変わりはじめていた。
仲間意識が芽生えはじめていたのだ。

「ああ、一山先生のおかげだ、あの人は本当にすごいぞ、いっぺんお前達の試合でもみてみたいものだ」
道来は嬉しそうに微笑んだ。

その晩、 一山の弟子
空、海、陸を交えた賑やかな晩食になった。

「道来、お前も一山先生の弟子としてここで一緒にやろう」空と道来はすっかり仲良くなっている。

「それも、いいが 私には私の道がある」

「そうかよ」残念そうに空は沢庵を口にほうばる。

「それにしても、お主があの真堂丸だったとは、驚いた」海はいまだに信じられないようだ。

「しかし、お主ほどの男がよく大帝国からの誘いがこなかったのう」と一山が

「きたさ」

一同は驚く
「えっ?なんだって?」

「それで、どうしたんですか?」陸は立ち上がって叫ぶように言った

「斬った」

「こりゃあ、驚きじゃ」

「まさか、我々のほかにもそんな人間が」と陸

「先生、彼が味方についてくれるなら、もしかしたら いくら数が大いと言えども、所詮恐怖で支配してるような組織、上を崩せば勝手に解体するはずです」
その言葉になんだか、僕文太は希望と可能性に満ちあふれていた。
なんとかなるかもしれない
みんなで力を合わせれば もしかしたら
あれだけ、大帝国には手をだすなと言っていた太一ですら
「もしかしたら」と希望を口にするようになっていた。
「いけます、きっと いけますよ」
皆は希望と可能性を口に出しはじめたのだ。
そんな中 静かに口を開いたのは一山

「鬼道、奴がワシのかつての親友であり、大帝国の頭であることは以前話したな」

「はい」

「その下に十の幹部がいる」

「そいつらは強いのですか?」海は言った

「鬼道が国中からよりすぐって集めた連中じゃ、半端者ではない」
一瞬目をつむりひらいた一山は、静かに語りはじめた

「女狐と呼ばれた女をご存知か?」

太一は驚いた、そりゃあこの商売やってて知らねえものはいねえ、あの女一人に一体何百という、商売仲間が殺されたか、いくつの城が落とされたか、情けねぇ話、名前をきくだけで震えがとまらねぇ」

「奴は幹部の一人だ」

「なんだって!!!」

「それに、骸と言う男」

今度は道来が驚く
「名は知ってる、一昔前奴の噂をきかないことはなかった」

「強いんですか?」文太が聞いた

「こないだ、闘った妖魔師が、奴にかかれば赤子ほどのものだときいたことがある、それ程の男だ」道来の額には汗が流れていた

「そっそんな」

「だが、一山の旦那、冗談言っちゃいけねえ、奴らはとうの昔に死んでるはずだ」

「もし、死んだように見せかけ幹部をやっていたとしたら」

その場は静まりかえった
まるで先ほどまでの希望に満ちた空気が跡形もなく消し飛んでしまったようだった。

「そんな奴らが十も・・・」

その時だった
「関係ない、立ちはだかるのなら 何者だろうと」

それは真堂丸の声だった
この時、この場にいるどれほどの人が救われたような、安心感につつまれたか分からない。
彼が横にいるだけで、僕の中に絶対に大丈夫というなにか絶大な力に守られ包まれてるそんな感覚があった。

「ほっほ、そりゃあ頼もしい」

「真堂丸君ほどの男に悪いかもしれんが、私に稽古をつけさせてくれんかのう一度で充分じゃ」
そこにいるみんなが驚く
「なに、稽古と言っても試合じゃよ」
まさか、ここで二人の試合が見れるのか
空、陸、海、道来、太一それに文太
誰もが見てみたい試合であるのは間違いなかった。
皆は息をのみ返事をまった。

するとすぐに、真堂丸は立ち上がり
「いいだろう、受けてたつ」

「ほっほっほ、こりゃあ血がさわぐな」
そうつぶやいた一山さんは普段とはまったく違うまるで凶暴な獣のように見えた
その雰囲気を誰もが一瞬で感じとる

「驚いた、いつも見てきた先生とまるで違う、これが槍使い一山の本当の姿か」空は震えていた
そう、力のある剣客はすぐに分かる、強いからこそ、分かってしまうのだ。
今、己の目の前に立っている存在がどれほどヤバイ存在なのかを

「こうなった、わしは手加減はしないぞ 死ぬ気でくるんだな」

「けっ、爺さん なにが十やって十負けるだ、そりゃあヤンワリ座ってる時のあんたの話だろ、今のあんたは別人だぜ」

「これが槍を持つ一山と言っておくか」

道来の足は震えていた
「こいつが先生か、とんでもない人に稽古をつけてもらってたみたいだな」

「来な 若者 よ」

そこには見たこともない目つきで立つ真堂丸がいた
二人の勝負は今まさに始まろうとしている
僕は息をのみ 目の前を見つめていた。


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