文太と真堂丸

だかずお

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~ 信頼と呼ぶ絆 ~

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ザーッ ザーッ ザザーッ
天から降り注ぐ雨は未だいっこうにやむ気配はない。
ハァハァ この手負い ニ対一でも勝つのは厳しいな。
誠は心の中思った。
目の前には身体中に血管を浮かべ、刀を片手に握り立つ暗妙坊主が立っている。
さっきの不意打ちで、攻撃することは出来たが果たして次は出来るか?一之助は自身に問う。
暗妙坊主の物凄い殺気が二人を襲っていた。

くるっ

キィン キィン
一之助と誠は互いに暗妙坊主の刀を捌き、それが始まりの合図かの様に敵の猛攻が始まる
「はっ、速えっ」
一瞬でも気を抜けば、身体の一部は吹っ飛ぶ
一之助は目の前に繰り広げられる、すさまじい速度の刀の動きに全身全霊で立ち向かった。
頭の中には自身の家族の顔が浮かび刀に力がこもる。

キィン キィン キィン キィン

これが一人だったら、確実にもう死んでいたな。
誠は闘いながら、一瞬そんな思いが頭をよぎる。
敵ながら見事な腕前

直後
一本の刀が宙に浮く
それは、誠の刀
しっ、しまった!!!

「誠」
姫の悲鳴が耳に残る

首もとに刀を感じた瞬間
誠の首が吹っ飛んだ。

そう思った だが、自身の意識があることに誠は驚き目をあける。
目の前には一之助の刀が

「お前」

「もう、こいつには誰にも殺させないでごんす」

暗妙坊主はすぐに一之助を力ずくではじき飛ばし、次の太刀を放った。
だが、一之助の稼いだ一瞬の時間は誠にとって刀を足で拾いあげ、その太刀を防ぐには充分な時間だった。
見事な判断力。
次の暗妙坊主の太刀を誠はなんとか防いだ。

「くっくっ 面白い」

「だが、そんなに時間を稼いだところで何も起きやしねえよ」

暗妙坊主が刀を次に振り下げだ直後、誠の右肩から血が噴き出し誠は倒れた。

「誠」叫ぶ納言

「さすがにその傷じゃこれは防ぎきれなかったか」

「これが実力の差だ」

「さて次はお前だ」
暗妙坊主の刀はゆっくりと一之助に向いた。


その頃、真堂丸はいまだに烏天狗の城の場所だった。
一人だったら、走ってこの烏天狗の兵達を置き去りにして逃げる事は充分に可能だったが、後ろには腰を抜かし立てない、しんべえがいる。

「しんべえ、立て 」

ようやく、立ち上がり
しんべえは一目散に走り逃げ出した。
「おっ、お先 」
だが、しんべえが逃げ出した その頃には真堂丸は大勢の烏天狗の部下達に囲まれてしまった。

「ちっ、まだ時間がかかりそうだ」


ザーッ ザーッ ザーッ 降りしきる雨。

再び納言の城の中

キィン キィン キィン
一之助は徐々に壁側におしやられ、刀は、遂にはじかれた。
肩に暗妙坊主の刀が突き刺さる

「ぐはっ」

「貴様は俺に仇討ちしたかったんじゃねえのかよ?その割に殺気がたりねぇなぁ」

「貴様を殺したところで、あっしの家族は戻っては来ない」

「くははっ、次は勝てない いい訳か?残念だな、お前の家族もさぞ無念だろう、全てはこんなに弱い男だったお前が悪い」

「言っただろう、あっしはもう仇討ちに興味はない」

「じゃあ、何故俺に立ち向かってくる?それこそ俺に執着してる何者でもねぇ態度じゃねぇか」

「お前自身を止めるため、これ以上 苦しむ者を増やさぬ為」

「随分立派じゃねえか、じゃあその立派な意思を抱え死ぬこったなぁ」

「あばよ」
その時だった、襖は開いた

「まっ 待てっ、暗妙坊主 僕が相手だ」

ギロリ

「ぶっ、文太さん」

「文太」納言も驚いた。

「何だぁてめぇは?」

「一之助さんをはなせ」

「おい小僧、足が震えてるぜ」

「ただの雑魚が俺に刀を向けてどうなるか分からないか?」

「逃げるんだ、文太さん」

「逃げません」

「くっくっ 弱いのが集まって、俺を殺すことが出来るとでも思ったか」

「じゃあ、貴様から殺してやろぅ」

「文太さん 逃げろー」

「やあああっ」
文太の太刀を暗妙坊主は全く避けるつもりはない。
振りかざされた刀はすでに顔の前にまでたっしている
「よしっ、とった」
殿は叫んだ。

「あっ」
見ていた全員の驚き叫ぶ声が辺りに響く
なんと文太の太刀は暗妙坊主の顔の前で止まっていたのだ。

「小僧、はなっから俺を殺す度胸もないようだな、まあ全力で打ちこんでも歯でとめる事も容易いがな 恨むならお前の弱さを恨みな」

「死ねっ」

キィン

「うっとおしい野郎め」

守ったのは一之助だった。

その時
「どうやら、姫は無事だったか」

「隊長大丈夫で?」
後ろから突然声がした。
それは、清正と平角の姿。

「ああ、次々と雑魚がしゃらくせぇ まとめて皆殺しだ」
暗妙坊主の血管は更に浮かびあがる。

「五対一だ、なんとかなるんじゃないか?」殿は少し希望をうかべた様。

「こりゃあ、綺麗事を言ってられないな 全員でお前をたたき斬る」平門が言った。

「笑わせるな、こんな手負い連中が五匹集まって何が出来る?」
暗妙坊主は刀を構え不気味な笑みを浮かべている。

「行くぞ」
四人の男達も一斉に刀を構え
一瞬場は静寂に包まれた様に感じた
次の瞬間
始まった
四人は一斉に暗妙坊主を取り囲み猛攻をしかける
「うおおおおおおおっ」
キィン ガキッ キィン キィン

納言は心から祈っていた。
頼む、皆無事で終わってくれ。
しかし、驚くべきは暗妙坊主
手負いとは言え四人の一斉の猛攻を防いでいる。
だが、一瞬 皆の攻撃のおかげで一之助の刀に今勝負最大の機会が与えられた。

いっいける
「うおおおおおおおっ」

ズバッ
四人の足は止まった。
何故なら、その最初で最後であろう最大の好機を奴は躱したのだ。
皆は分かっていた、自分たちの身体がこれ以上言うことを聞かない事を。
とうに、限界を越えていた。

「ああっ、今のは惜しかったなぁだが」
暗妙坊主の顔は怒りで満ちていた。
「この代償は高くつくぞ」
暗妙坊主の頬は斬れ血が流れている。
身体中から更なる血管が浮かびあがり
暗妙坊主は恐ろしい目で一同を睨んだ。

「まっ、まずい」僕はとっさに声をあげた。


烏天狗の城の前
倒しても、倒しても兵は出てきている、らちがあかない。
だがその時だった。

「貴殿が真堂丸殿だな」
それは、光真組の隊員達
「ここは、我々に すぐさま城へ」

「ああ」
真堂丸は物凄い速度ですぐ様 駆け出した。

「頼みます、どうか間に合って下さい」

実は先程一人逃げたしんべえは森の中で休憩していた烏天狗の兵に見つかり追われていた。

「待て貴様ーっ」

「ひぃぃぃぃっ」
全力で走って逃げている。

「だっだれかぁー」


再び納言の城の中
四人の男達は地面に倒れ伏していた。

「勝負ありだなぁ、さて誰から息の根を止めようか」

「まっまて」震える文太が刀を握った。

「小僧、人も斬れない、弱い男が刀を握ってどうするつもりだ?」

「じっ、時間を稼ぐ」

「稼いでどうなるんだ?まあいいお前みたいな弱いのが俺は嫌いなんだ、先に消してやるよ」

「ハアハア 暗妙坊主」
それは、一之助の声

「お前より、文太さんのが強い」

暗妙坊主は足を止めた
「はぁ?」

「お前は強さをはき違えてる、人を殺す事しか出来ない、お前は一番弱いんだ」

頭から血管が浮かぶ
ブチッ
「俺が弱いだと」
足は一之助のほうに向かい始めた。

その時
「一之助さんは、敵討ちをやめた。そこから、何もうまれない事が分かったから、その一之助さんがお前の心がこれ以上、闇で蝕まれない様、お前の殺戮を止め様としているのを気づかないのか、力で人を殺す事しかしないお前は一番弱い」

ブチ ブチッ
「クソガキがぁ」

「文太さん逃げろ」

「文太にげろ」

「弱者はお前達だ、何故なら俺に勝てないそれが全てだ、結局殺され所詮お終いなんだよ、死ねっ」
文太は逃げなかった、ただ暗妙坊主を一心に見つめていた。

ガラッ
暗妙坊主に石が飛んできた。

「やめろー」

「お前は」一之助が叫ぶ

それは、あの姉を殺された、弟の姿。
そして、後ろには大勢の町人達が。
「大好きな、お兄ちゃんと姫様をお前なんかに殺されてたまるかぁ」

「我々の姫を命にかえても守れー」

「姫 今度は我々が助けるぞー」

「姫はいつも命をかけて我々を助けてくれた、今度はわしらの番じゃー」

納言はその光景を前に泣いた。
光真組は町人の言葉と姿勢に深く心をうたれ、嬉しかった。
姫を大切に思ってくれる町の民の声、姫が注ぎつづけた、町人への愛情はしっかりと町人に受けとめられ育まれていたのが分かった瞬間だった。
姫の愛情はしっかりと伝わっていた。
あれだけ、臆病だった町人達が自身の命すらかえりみず、姫の為に立ち上がったのだ。

「暗妙坊主、私も同感だ お前より、ここにいる人間のが強い」
誠は立ち上がった。

「どんな苦境や権力にも負けず 自身の真の心を貫き続ける行動をとり続けた姫やここにいる者達こそ最強だ」
清正も立つ。

「嬉しいなぁ、我が姫はこれだけの者に愛され信頼されている」
平門も立ち上がった。
「この者達の命、俺たちが守る」

ブチブチッ
「カス共が、良いだろう 弱いお前達に何一つ守れないのを見せてやる、町人もみんな殺してやるよ」


しんべえは全力で走っている
「たっ、助けてくれーっ」
突如後ろの追っ手が静かになった
「あれっ?」
一瞬視界に何かが入った
んっ?
風が自身に触れる。
自分の視界に入った様に感じたのは、確かに真堂丸の姿だった。

「あいつ……」
その必死な表情に真堂丸の心を見た様な気がした。


ザーッ ザーッ ザザーッ

「ああっ」
町人は叫んだ。
何故なら光真組、一之助は完全に倒されていた。
そして、遂に文太は首根っ子をつかまれ持ち上げられた。
刀が首元に突きつけられる。

「最後に言いたい事はあるか?」
にやり笑う暗妙坊主。

「恐怖しろ、弱者共よ。所詮、信頼などは何一つ生まない事を知り死ね」

文太は暗妙坊主を見つめた。
「大丈夫、僕の信頼は揺るがない」
その状況の中、文太の心は微塵も揺るがなかった。

「良いだろう、腐った希望とやらと死ね」

後ろから笑い声
「はははは」
それは一之助

「お前じゃあ、文太さんや先生には勝てない。先生はすぐにここにやって来てお前を打ち倒すだろう」

「先生? フハハッ 馬鹿か、どこの誰が俺を倒せる? 蝿王蛇でも来るのか?」

「俺の殺しが唯一失敗したのは、あいつを暗殺しろと頼まれた時だけだ」

「じゃあ、これで二度目だな」
誠が言った。

「必ずあいつは来る」と納言

ブチッ
「くだらねぇ希望でも信頼してるんだなぁ、小僧死ねや」

ドゴオオオーンッ
壁が突き破られた。
「ほうら、おいでなすった お前がひっくり返っても勝てない先生のおでましだ」

暗妙坊主は驚いた。
瞬時に目の前の自分の視界にうつるこの男が只者ではない事を察知したからだ。
「なんだっ、この男」

「悪い待たせた」

「大丈夫、必ず来るって分かってましたから」と文太

真堂丸は暗妙坊主を睨んだ。
「これ以上お前の好きにはさせん」

ブチブチッ ブチッ
そこには見た事もない怒りの目と血管を身体中に浮かべたこの日一番の怒りに満ちた暗妙坊主が立っていた。

ヒュオオオオオオオオオオーーッ


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