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~ 死 ~
しおりを挟むビュウウウウ~~ ビュオオオオオ~~ッ
何だか、嫌な風が力強く吹き荒れている
何も起こらなきゃいいけど、文太は空を見上げた。
その頃、菊一は洞穴の入り口を見つけた大帝国の幹部の後をすぐさま追っていた。
即斬る、出なければこちらは皆殺しになるだろう。
奴らの仲間に知らされる前に斬らねば、絶対に伝えさせてはならぬ。
俺がいることに気づかれてない今が最大の好機。
少し離れた森の中、菊一は相手の隙を見逃さなかった
今だっ
スパアアンッ
ズバッアッ
相手の肩から血が噴き出す
「おおっと、危ねぇ」
ちっ
カワサレタ
ザッ
「ちっ、さすがにそんなに甘くねぇか」
再び刀を向ける菊一
「貴様は悪いが生かさねぇ」
「ああ、貴様 真堂丸の仲間かぁ」
ギロリ
全身を白で覆う幹部の殺気がたぎる。
「貴様は菊一だな、一山の仲間だった奴だろう?何の因果だ、今は真堂丸に手を貸すか?」
菊一は落ち着き呼吸を整えた、ふぅーっ
大丈夫だ。
大丈夫
落ち着け
まだ最悪の展開は免れてる
確かにあいつらの居場所はこいつに見つかったが、まだ他に誰も知らない。
俺がこいつをここで止めれば問題ない
ふぅー
この時、菊一が立つ状況は断崖絶壁、絶対に負ける事は許されない場所であった。
自身の敗北それは仲間が皆殺しにされると言う結末
愛する仲間達の死
ギリッ
絶対にしくじれない、他の奴らに伝われば最期。
「無駄な時間はねぇ、行くぜ」
相手は菊一を冷静に観察していた。
この焦り様、なるほどあそこに仲間が居るのは間違いなさそうだな。俺を即斬れば今ならまだ大丈夫と踏んだか。
「やれやれ菊一さん、せめて自己紹介くらいさせ」
ビュッ
敵は飛び跳ね菊一の刀を躱す。
「やれやれ、自己紹介すらさせてくれないかい。俺は新たな大帝国の幹部、火鼠(ひねずみ) 以後よろしく」
「以後はねえよっ」
スパアアアンッ
火鼠の額がうっすら斬れる
「こりゃあ強ぇぇなぁ」
なかなかすばしっこい野郎め
絶対にあいつらの居場所は伝えさせない。
最悪の展開は絶対に避ける。
心の中誓う菊一
「クッハッハッッハ クッハッハッッハ」火鼠は突如笑い出す。
「俺に負けたら全滅だな」
「あそこを見つけたのが俺で、お前達は本当に運がない」
敵はいきなり両手を広げた
菊一はその直後、開いた口が塞がらなかった。
「しっ、しまったああああっ」
「俺は火薬を使うのに長けてる男、火鼠以後よろしく」
空に突如舞う火花
ズガアアアアアアンッ 物凄い爆発音が辺りに響く
しっ
しまったあああっ
完全に俺の失態
こいつは、本当にやばい。
ギリッ
みんな逃げろ
逃げてくれ
同時刻
近くにいる全ての大帝国の幹部がこれを見逃すはずがなかった。
「これは火鼠の合図、なにかあったな、行こうあの辺りだ」
ザッ ザッ ザザッ
こちらに向かってくる
文太達もまた、この異変に気付いていた。
「これは、まさか この場所がばれた」洞海が慌てる
「これはなにかの合図、菊一さんじゃない」
ザッ
すぐに菊一の居る洞穴の入り口に走り出す、太一と一之助
「僕も見に行きます」文太も走り出す。
洞海も行こうとするが、しんべえが「お前はここを守ってくれ、もしここに敵が来たら俺たちじゃどうも出来ねぇ、真堂丸と道来はお前が守ってくれ」
「分かった」
しんべえがつぶやく
「今俺たちは全滅の瀬戸際だ、本当に嫌な予感がする、仲間が死んじまうような、そんな」しんべえもみんなを追い、走り出した。
洞海の頭の中こんな思いがかけめぐる。
まずい 奴らがここに来たら皆殺しにされる
俺は?
俺は?
一瞬頭によぎる、自身はどうする?
決断が揺らぐ
生きるか死ぬ、究極の現実に直面した時に、その人間の本性、心が浮き彫りになる 本当の心の奥底の気持ちが顔をだす。
何処まで行こうが、出てくる不安、疑い。
俺はこいつらを助けた後、もしかしたら真堂丸に斬られるのではないか?
こいつは人間の心など無い奴だと聞いたことがある。
もし、俺が今こいつらの首をとれば、大帝国でかなりの地位を貰えるかもしれない。
人間
それは次から次に直面する現実に自分が何者であるのかの選択肢を常に要求されているようだ。
無論、正解も間違いもない。
ただあるのは、その人間の主観。
俺は今何を選択する?
こいつらの首を貰うか?
それとも助けるか?
洞海が笑い出す
自分の答えはすぐに分かった、いや決まっていたと言うべきかも知れない。
この人達を信頼し全力で助ける。
これが俺の答え。
洞海は目の前をしっかりと見据えた。
ずっと疑いを信頼して来た俺には、信頼を信頼することが途方もなく恐ろしい。
もし、またその信頼が崩されたら?自分は立ち直れるか?
そんな疑問も頭によぎった。
だが、結果など今や どーでも良かった。
自分が信じた道を選択した。
そこに己の自由意志を見出し自身で選択出来た。
すべての責任は己が負えばいい、俺は俺の道を歩んでみせる。
一山さん、見てておくれ。
俺も、あんたみたいに仲間を信頼してみせる。
裏切られても構わない。
これが俺の決断だ!!
選び抜くどんな現実に直面しても。
洞穴を抜けた、太一と一之助
信じられない、信じたくない光景が目の前に広がっていた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴオオオー
目の前に見えたのは7つの白い影
大帝国の大幹部7名が揃っていた。
目の前に広がる絶望
「あららら、これはこれは真堂丸の仲間達と見て良いのかな?」
「この奥に真堂丸が居るんだね?」
「太一さん、あっしが時間を稼ぐ、逃げろ」
「馬鹿言うな、この人数しかも幹部。一人じゃ不可能だ」
ザッ
太一達の背後から出て来たのは文太としんべえ。
「そっ、そんな」
「うっ、嘘だろっ」
「おやおや、洞穴の中から沢山出て来る」
「てことは、この中に真堂丸が居るんだな」
最悪だ……
文太の頭に最悪の展開が浮かぶ
「おいっ、我々は運が良いぞ、探し物がまた一つ見つかったぞ」幹部の一人が言った。
海に倒れる、その姿を見て文太が声をあげる
「雷獣さんっ」
「どうやら、ぎりぎり まだ息があるな」
文太としんべえの肩を突如 一之助が叩く
「あっしと、太一殿でここは時間を稼ぐ 後は任せたでごんす、必ず逃げてください」
「今すぐ行って下さい、時間は必ずかせぎます」太一が言った。
「馬鹿な、出来るわけないですよ」躊躇する文太
太一は続けた
「道来さんの事よろしくお願いします、真の兄貴にも色々お礼を伝えて下さい」
ポタッ ポタッ
文太の頬に涙が伝う
「いやだ、出来ません」
その時だった
「馬鹿野郎が」しんべえが文太の胸ぐらを掴む
「てめぇ、大帝国の支配を終わらせるんだろ?そう決めたんだろ?今なぁ、今なぁこいつらに俺たちがみんな殺されたら、この国の人間達はどうなる?何百万って人間が殺されるんだぞ?」
「俺たちが敗北したら、一体誰がこの国を救うんだ」
ひっく ひっく
泣く文太。
「今さら俺たちの命惜しさに目的忘れんじゃねぇ、俺たちがみんな死んだら、ここで命をかけてくれる、一之助や太一にどんなツラ向けれる」
うううっ
文太は頷いた。
「太一さん、一之助さん 行きますよ」
二人は微笑む
「ありがとよ、しんべえ」太一が言った。
ずっと仲の悪かった二人、初めて太一に感謝の言葉など述べられた。
「馬鹿野郎」しんべえの頬に涙が流れていた。
「行けっ」
叫ぶ一之助
「どうする?あいつら逃げるよ」
「やれやれ、どうせ逃げられん、奴らの余興に付き合ってやろうか?あの二人殺してから追おうぜ」
「悪くない、少しは楽しもう」
幹部達は、誰一人文太達を追わず、その場に残る。
「すまない、太一殿。本当はあんたも逃してやりたかった、あんたには道来さんが待っていた」
「笑わせるな、道来さんなら俺が居なくなっても大丈夫、ここを一人で防ぐなんて無理だ、二人でやろう」
「恩にきる」
「なあに、後悔はない、必ず大帝国は真の兄貴達がなんとかしてくれる」
「さっきから何、馬鹿な事をくっちゃべってるんだい?」
前に出たのは女郎蜘蛛。
「お前達の首、食べるとするか、手出しするなよ」
ジロリ
「太一さん、相手は幹部 二人でやりましょう」
「ああ」
「二対一、構わないから はやく首をよこせっつうんだよ」
ザンッ、何かが上を通った?
「なっ、嘘だろ」太一は震え上がる、多少時間くらいかせげると思っていた。
とんでもなかった、格が違いすぎる。
これが、白い刃と呼ばれる大帝国の幹部達の実力。
自分も少しは強くなったと思っていた。
こんなっ、こんなのと一体どうやったらやり合えるんだよ?
こんな化け物達を真の兄貴や道来さんは倒していたんだ。
実際に自分が闘って見て、どれほどの怪物だったのかを直に知ってしまった。
だって、だってよ 今 一之助が俺の身体を押してくれなかったら、首が一瞬のうちに無くなっていたんだから。
ゾッ
「太一さん、大丈夫か?」
「あっ、ああ」
道来さん、情けねぇけど 俺 こぇぇよ。
「来るぞ、太一さん」
その頃
僕らは全力で真堂丸達の元へ走っている
ねぇ、誰かお願い お願いだから 太一さん、一之助さんを助けて下さい。
文太の心中、叫びは鳴り止まない。
真堂丸、道来さん 二人が殺されちゃう、死んじゃうよ。
「おいっ、文太 次、追っ手が来たら俺が残る、躊躇なく進め わかったな」
「と言っても、何の時間かせきにもならないけどな」
いやだ いやだ いやだ
仲間が死ぬなんて、友達が死ぬなんて 僕には見過ごし、我慢なんて出来ない。
文太は突如、太一達の方に向かう方向を変えようとする
「馬鹿野郎、てめぇまだわかんねぇのか」
「分かってますよ、でも時間かせぎなら僕にだって出来ます。しんべえさん、真堂丸達をよろしくお願いします、洞海さんとなら、二人を担げるはずです」
「僕も太一さん達と時間をかせぎます」
「てめぇ」
「後はよろしくお願いします」文太は走り、洞穴の入り口に戻って行った。
「くそぅ、くそぅ、くそがっ」みんな死んじまうよ、みんな殺される
おいっ、頼むよ 真堂丸、道来 助けてくれよ。
助けてくれよ。
しんべえは泣きながら走り、真堂丸達の元に向かった。
女郎蜘蛛は遊んでいた、太一、一之助の首元ぎりぎりをわざと攻撃し外し、反応を見て笑っていたのだ。
「うおおおっ」 ズドッ
「ぐわああああっ」 ズンッ
「あははははは、また無様に叫んでやがる」
他の幹部は笑う「悪趣味な野郎め」
ハアハア、完全に遊ばれている、くそっ。
全く相手にならないでごんす。
化け物めっ。
「ああ、飽きたから首跳ねるとするか」
先にお前のだ
女郎蜘蛛は太一を見つめる。
「死ね」
ビュッ
「太一さん、逃げてくれ」
キィンッ
太一の前に刀が飛んでくる
一之助が叫ぶ「菊一さんっ」
「すっ、すまねぇ 今のが最後の悪あがきだ」菊一は地面に倒れこんだ。
「おやまぁ、どうやら火鼠はやられたようだねぇ。まあ菊一、お前もかなりの負荷でをおったみたいだけど」
スパアアンッ
女郎蜘蛛は突然伏せる
「くそがっ」それは途中、意識を戻した瀕死の雷獣の一撃だった。
「てめぇは、寝てろ」女郎蜘蛛の一撃で、雷獣も再び地面に倒れ込む。
「おいっ、てめぇら何故、黙ってる?」他の幹部を睨み付ける女郎蜘蛛。
「手を出すなと言ったから」
チッ
「まあいい、こんな雑魚共」
くそっ、もう誰もあっしらの仲間で動ける者はいない、これまでか。
一之助が覚悟を決める、先生達は逃げたか?
もう、大丈夫か?
暗妙坊主に殺された自身の家族に語りかけ始める。
あっしも、これからお前達の元に向かうよ。
行くぞ、女郎蜘蛛
「待って下さい」
背後からする声に驚いた。
文太さんっ?どうして?
「小僧が戻って来ちゃったよ」
「文太の兄貴どうして?」叫ぶ太一
「すみません」
「お願いします、どうか僕の命だけで勘弁してくれないでしょうか?」
あっはっはっは あっはっはっは
辺りに笑い声が響き渡る
「笑わせるなガキが、皆殺しだよ」
菊一が地面の土を握りしめる
くそっ、ここまでか。
現状、この幹部達全員を追い返せる者などいない。
じきに真堂丸達も捕まる。
全滅
くそっ、くそがっ
「じゃあ、最初に殺すのは誰からにしようかねぇ、そうだねぇ」
女郎蜘蛛は辺りをゆっくり、ゆっくりと見回し一人一人の顔をじっくり見つめている
一之助の顔をジッと見つめる
ギョロリ
うーん
オマエハアト
しんべえは全力で真堂丸達の元に向かっている
瞳に溜まる涙で前が見えなかった。
ううっ、お願いだ お願いだ 助けてくれ
誰か助けてくれよ
バッ
真堂丸達の元に辿り着き
しんべえは泣いた
「助けてくれ、あっちだ みんな死んじまうよ」
必死に泣きすがり即座に叫んだ
しんべえは必死に泣き叫びながら安堵していた。
何故なら、しっかりと聞こえたから
「大丈夫」
しんべえの目の前には
立ち上がっている真堂丸と道来の姿がハッキリ映っていた。
しかし、それは皮肉にも、同時刻の出来事だったのだ……
真堂丸、道来が向かい始める同時刻の出来事、それは起こってしまった………
女郎蜘蛛は太一の顔を覗き込んでいる
「オマエノクビ もーらった」
二人が間に合わぬこと、仕方なし。
残念ながら時すでにオソシ
「やめろーーーっ」 叫ぶ文太
「くそっ、身体が動かねぇ」菊一は立ち上がれない
一之助も周りを押さえられていた
「逃げてくれーー」
雷獣も動けなかった「ちきしょお、ぐっ」
ああああああああっ
太一さんが死ぬ
太一さんが
太一さん
だめだ
太一さんっ
助けられなかった…………………
スパアアンッ
ブシュウウウーー
ああああああ太一さん
「あっ、あっあっあっ うえっ あっあっああああ」
僕は目を開き泣き叫んだ
そこにいる誰もが叫んだ
仲間も
大帝国の幹部達も
何故なら太一の首
ギリギリ手前、防ぐ刀
そう
刀を手にし、不気味にほくそ笑むその姿は
骸の姿だった。
0
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