文太と真堂丸

だかずお

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~ 信念 ~

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つっつっつええ

こいつが一斎

想像をはるかに超えた一斎の強さに皆は驚き、ただ呆然と立ち尽くしている。
道来も取り乱し、なっ、なんだっ一体何をしたんだ?
全く見えなかった。

「今のが白竜を斬った時の速度」

「でも、さすが真堂丸と言ったところか」

真堂丸は吹っ飛ばされながらも、しっかりと防いでいた。
だけど悟ることとなる。
信じられない、いや信じてはいけない事実を。
真堂丸は知ってしまった
一斎と自分の実力の差を

勝てない

勝てないのだ

勝てる術が分からない

なんとかなる?

気合いを入れたら?

運なら?

笑わせる、どんな運?

運で例えるならばさしずめ、一粒の米粒に記しをつけ、それを世界に流れる、どこかの海に放り投げる。
それを今日中に見つけて来いと言われる様なもの。
勝てる可能性は・・・・皆無

全く参ったぜ   真堂丸はほくそ笑む。

「じゃあ、次は更に速くするよ」

真堂丸が立ち上がる



すぐ目の前に死がいた。
いつだっていたのだが、今はもうすぐ真横に手を添えられてるかの様。
異界の地に既に身体半分は入ってしまったのかも知れない。
真堂丸には自身の首が斬り落とされ死ぬ光景が何度も見えていた。はっきりと明確に。

ゴロン

しかし、足を止めることなく、何一つ躊躇なく一斎の前に再び立つ。

いつからだろう?

怖いと分かっていても刀を捨てなくなっていたのは。

不可能

ずっと向き合い越えてきた。

いつからだろう?

あきらめることをしなくなったのは

自分の命などはどうでもよかった

生きることに何の未練もなく、戦いの最中いつ死しても良かった。

でも

今は怖い

何故?

大切な仲間がいる

自分の敗北

それは仲間の死を意味する

大帝国はどうなる、この国はどうなる

真堂丸が再び一斎の前に立つ

誰が何と言おうと、どんなに絶望的な状況であろうとも

己が己自身を信じることはやめない

俺はあきらめない

「来いっ一斎」

「行くよ」

ザッ   スゥ

ヒュオオンッ

ズガガガガガガガガガガアアアン

気づけば真堂丸の姿は目の前になく、吹き飛ばされ、崩れた岩に埋もれていた。

「うっ、うわああああああっ」叫ぶ しんべえ。

はっきりと見えていた。岩の間から血まみれの真堂丸の手が、まるで生け花の花が咲き誇るかのよう美しく咲きんでていたのを。

「はやく助けないと死んでしまうでごんす」一之助が走りだす。

太一の足は震え、ただその場に立ち尽くしていた。
駄目だ勝てるわけがねぇ、こんなの無理だよ。
もう、やめてくれ。真の兄貴を殺さないでくれ。

その時、次の言葉に太一は救われることとなる。

「決着はついた、僕はこれ以上はやらないことにする」

「真堂丸。君は生かすよ、まだ強くなる可能性があるからね」

良かった、良かった 太一は安心のあまり両膝をつけた。これで真の兄貴は大丈夫だ。生きれるんだ。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオー

「一斎、何してるんだい 決着はついてない」

戦慄

ゾクッとした、その言葉に。
まだ戦いを続けさせようとするその言葉を発していたのは、なんと雪だったのだ。

「てっ、てめええっ どういうつもりだあ」


場面場面変わり

三國人を取り囲む六人の猛者達

「米や、俺たちが憎いだろう、知っていたか?俺たちがおまえの村を襲った時、貴様だけが生き延びたことを」

「キヒャハハハ 我々はなぁ、そう言う遊びが好きでなぁ」

「わざと一人、生かしたのだよ。この三國人を怨み、憎しみ、人生を絶望と孤独に蝕まれ 生きる人間を見たくてな」

「さぞかし苦しかったろう、強くなったのは我々を殺す為だろう?」

「ようやく今日、機会が巡って来たな」

米の脳裏に過去がよぎる。
自分は強くなろうと必死だった。自分の家族を、友達を村を全てを奪った三國人に復讐する為。
米の修行は苛酷さを極め、毎日生と死をさまようこととなる。
だがそれすらも耐えられた、復讐と言う唯一の目的を糧に。
それから十年以上の月日が経ち、ようやく自身が納得する程強くなった頃、国中に名が知れ渡るほどの達人に会いに行くことを決める。
それが米と一山の出会いだった。

「頼む私に稽古をつけてくれ、もっと強くなりたいんだ」

「断る」

「俺は面倒なことはごめんだ」

「それに」

「お前の心は黒く、怒りに満ちてる気がする、力を得ても本当に生かすことはできねえよ」

あれからどれほどに月日が流れただろう、仇の三國人は死んだと知った。

米は再び目の前の三國人を見つめていた。
「復讐か」静かに口にする

「米婆、俺たちが援護する、行くぞ」

「さあ、殺し合いをしよう米や、我々の力に再びひれ伏しな」

ザッ。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオー

その言葉に反応して、すぐさま叫んだのた太一
「てめえ、女 最初から真の兄貴を殺すことを目的にしてたんだな」

「あの夜の言葉は全部嘘だったのかよ」

「姉ちゃん、決着はもう着いてる。それとも息の根を止めた方が良いのかな?」

「でもね、悪いが姉ちゃん 真堂丸はまだ殺さないよ」

「一斎、しっかりと決着をつけるんだ」
なんとその声は文太の声だった。

「てっめぇ、まだやらせる気か  えっ・・・・」

どうして?

どうして?

文太の兄貴

どうしてそんなこと、言うんだい?

ポタッ ポタッ 太一の瞳から涙がこぼれる。
あの岩の隙間から、あんなに傷だらけになってピクリともしない真の兄貴の腕が出てるじゃねえか
どうしてまだ戦わせるんだい

「君も残酷だねぇ、友達を殺して欲しいのかい」

ギロリ
「真堂丸は絶対に負けない」
太一は、ハッとした。違う、この二人は信じているんだ真の兄貴を。
太一はこの時本当に驚いていた。文太の兄貴だけじゃなく、あの女もそれ程に信じていたのか?

真の兄貴

本当にまだ戦えるのかい?

「しょうがない、真堂丸 君も運がない」一斎が真堂丸の元に歩み寄って行く。

「文太さん、先生はもう」叫ぶ一之助

道来の頬を汗が伝う。

一斎が真堂丸の腕を引っ張り岩から引きずり出した。

ギロリ
「決着はまだだぜ、一斎」
血まみれの真堂丸の瞳はまだ生きていた。

「驚いた、まだやるのか?」ニヤリ

「無事には終われなくなるよ」

「ああ、問題ない」

「はっはっはっはっ、最高だよ 真堂丸」
一斎は笑う。

「また、全力が出せるんだ、骸の時みたいに。嬉しい生涯で二度目、これだけ極めてたったの二度だけ、二度だけだったんだよ」きっとこの先も、もうないだろ。
一斎は天を見つめ

神様、僕また全力で戦えるんだね

真堂丸が言う「一切手抜きは不要、全力で来い」

頷く一斎

「次の一撃で、骸は死んだ。それを放たせてもらう」

ヒョオオオオオオー

文太、本当に良かったのかよ、あそこで止めないで。
あいつは本当に大丈夫なんだよな。
しんべえは心の内に叫んでいた、もう引き返せねぇんだぞ。

ここは、正念場だ。
どんな結果になろうと受け入れる。
ゴクリ 
真堂丸  真堂丸  真堂丸
頼む
生きてくれ。
まだ、共に人生を歩もう。
友とし、尊敬する存在として。
道来が拳を強く握りしめる、拳からは血が流れ出ていた。

先生あっしには、信じるくらいしかできねぇでごんす。 
先生絶対に勝つんだ。手を必死に合わせ祈っていたのは一之助。

「雪さんすまねぇ、俺が信じてなかったんだ真の兄貴の言葉を」太一も前を見つめた。

雪は食い入るかの様にジッと二人を見つめている。

真堂丸  みんなで生きて帰るんだ 僕は絶対に君を信じることをやめない。
文太が真っ直ぐに真堂丸を見つめる。
息を吸った。溢れんばかりの涙を飲み込むかのように。
真堂丸が血を流せば、文太の身体は無傷でも、心がえぐられるかの様に痛かった。
今まで、何度目を背けようと思ったか。だけど、僕は信じて見届ける 真堂丸。

「真堂丸、僕からも願おう、頼むから 生き延びてくれ」一斎が構えた。

ザッ

「行くよ」

ダッ

ズギギギギギギギャアアアアンッ

どうしてだろう

とてつもなく速かったはずなのに、どうしてこんなにゆっくりに感じる

自分の身体が全く反応出来てないことが分かった。

刀はすぐそこ、もう間に合わない

ああ、俺は死ぬんだ

敗北

骸すまない、勝てなかった。

一斎は本当に強い

そして、何よりも 皆に悪かった。
約束を果たせなかった。
俺はもう、じきに死ぬ
そう感じた時、既に一斎の刀は真堂丸の身体に到達し始めていた。
瞳の色は灰色と化す
俺はお前達と出会い過ごせたことを本当に感謝している

ありがとう    友よ。

グシュ

刀は真堂丸の身体に突き刺さり始める




唐突に

それは、心に響いたのだ

僕は信じている

真堂丸

僕は君を信じている

自身すらもあきらめた瞬間。
だがその時でさえもその声はあきらめていなかった。
己を信じてくれていた。

それは、文太の声

そして、仲間達の声だったのだ。

お前達は俺を、あきらめた俺すらも信じてくれているのだな。

真堂丸の瞳に涙が溢れたと同時に、再び瞳に力が蘇る

あきらめねぇ

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーっ」

ズザンッ

一斎は信じられなかった。
今自分の目の前に広がる壮大とも感じるこの神々しい光景を到底信じることが出来なかった。

ポタッ

男は自分の太刀をかわし、生きて立っていたのだ。

仲間達は叫び、涙した。
「真堂丸ーーーーっ」

「うおおおおおおーっ」

一斎は自然と泣き叫んでいた
「まだ、僕 全力で戦えるんだね?」

「ああ、こいっ」

ザンッ

ああ、神よ  僕は今日 全力で戦えるんだ。


ドクンッ


一斎は天を仰ぎ涙していた。

それは双方確実に無事ではすまない、戻れない領域の戦の開始合図となる。


 
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