文太と真堂丸

だかずお

文字の大きさ
125 / 159

~ 嬉しき報せ ~

しおりを挟む



文太達を乗せた馬車は、文太の故郷に向かっている。

「なあ、ずっと走りっぱなしだし、ここいらでちょっと休憩しねえか」しんべえが言った。

「そうですね、もう暗くなってきましたし」

僕らは馬を止め、今日はこの辺りで野宿することに。
周りは何もない平野なのだが、目の前には海がある。
「あー何だか、この波の音落ちつきますね」文太は海に手を突っ込んだ。

太一は着ている、着物を脱ぎ捨て「ちょっと冷えるけど入っちまえ」海に飛び込む。

それを見てたしんべえも「俺も」と後を追う。

「あの二人は元気でごんすねぇ」一之助が二人を見ながら微笑んでいる。

「ところで、文太。地図の感じ、ここからお前の村まで後どれくらいだ?」道来が聞いた。

「そうですね、ここから後は、半日ってところですかね」

「そうか、直に着くな」

「しかし、後は三國人って奴と鬼道を討ち取れば、大帝国は崩壊するんでごんすかね?」

「そうだな、所詮大帝国は恐怖や力で人を押しつけ成り立つ組織、支配者がいなくなれば解体するのは自然の成り行きの様なもの、後は幹部達がどう動くか」道来が答える。

「今の幹部達じゃあ、鬼道の様に組織をまとめる器はいなそうでごんすね、やはり鬼神級の幹部達を先生がことごとく討ち取ったのは大きいでごんす」

「うむ。ところで真堂丸、一斎との決闘の傷は大丈夫なのか?」道来が真堂丸を見る。

「ああ、完治とはいかないが、動くのには支障はない」

「大した回復力だ」

文太はみんなの会話を聴き終えてから、再び海を眺めた。
大帝国の支配が終われば、人々はようやく怯えながら暮らす生活を終えられる、もう少し。
一番平和的に解決出来れば一番良い。
だけど、鬼道や三國人がどうでるか。
文太は仲間達をこれ以上戦わせたくなかった。
もちろん、大帝国の人間達にも。
争い。結局傷つくのは、同じ人間
どちらの人間にも、家族がいて、友がいる。
同じ人間同士、殺しあう。
結局力での解決、こちらが正しい、お前達は間違っていると。
人類はいつかは、殺しあいや武力で解決する方法から話し合いで解決出来る様にならなければいけない。
でなければ、この螺旋は終わらない。
人間そのものが、意識や精神を成長させなければ本当の解決はない。
文太はそう思った。
一番平和的な解決をしなければならない。
何故なら、思想、人種、性格、見た目、信条が違えど同じ人間なのだから。
お互いを分かり合え、赦しあい、違いを受け入れ、楽しめる様になれれば良い。
そんなことを切に思った。
願うのは人々の幸せ。
自分と他人、そこに繋がりがないなどとは全く思えなかった。

夜の海は月に照らされ、また、海面には綺麗に月が映りこみ、とても美しかった。

場面は変わり、大帝国の城の中、鬼道は笑っていた。

「鬼道様、本当ですか?何故?」

「今は真堂丸達に手を出すな、どうせ貴様らが束になっても勝てやせん」

「放っておけ、それから奴らを探すこともやめろ」

「どういう事で?」

「奴らは何処にいても逃げられないと言う事だ」

「はっ、仰る通りに」

ふっふっふ、お前達は哀れな人間だよ、一山、真堂丸それに、文太。
お前達は一緒だ。
必ず自らあらわれる。
そして、その時が最期となる。
一山、お前の意思を継ぐ奴らを消し、この俺が本当の勝利を得ようではないか。

その時だった。突如城の入り口が騒がしくなる。

「何ごとだ?」鬼道が叫ぶ

「あっ、あっあ」震えあがる兵士の声

鬼道が入り口の方を見る

ザッ

ヒョオオオオオオオオオーー

「三國人様」
城の入り口に立っていたのは、三國人の三人。

それと、背後から全身を白で包む七人の姿。

「鬼道、今の幹部は弱かったからな、少々鍛えてやった、最後に殺しあいをさせ、残ったのはこの七人」

「多少は使えるから、駒として使え」

「はっ」

「はやくまた、鬼神や白竜くらいの奴らを育てなきゃな」

それを見ていた、一人の兵がいた。
実は彼は、最近の大帝国の惨敗を喜んでいたのだ、もしかしたら真堂丸達なら、本当に大帝国の支配を終わらせられるかもと、心の中、小さな希望が生まれていたのだ。
だが、三國人の姿を初めて見た、その兵の希望は一瞬で木っ端微塵に消し飛んだ。
化け物だ、本当の。
なんて、威圧感。
近くに居るだけで、これほど恐ろしいとは。

「鬼道、さっそくこいつらを使い、真堂丸達を消しに行け」

「三國人様、私に案があります、必ず奴らを消せる案が」

「なあ、鬼道や」
三國人の一人が鬼道の顔を覗き込む。

「何度失敗した?」

「次、しくじれば貴様を消す」

鬼道の額から汗が流れる

「はっ、次で必ず」

「良いだろう、信じよう」

三國人は歩き出す。

ギリッ  三國人めっ、貴様らも必ずこの鬼道が終わらせてやる。
真堂丸、決着をつけようじゃないか、この鬼道が貴様等を終わりにしてやる。
貴様等の最期は近い、せいぜい残りの人生を楽しむんだな。

鬼道は幹部を見て声をあげ叫ぶ
「すぐに貴様等に声をかける、それまで準備しておけ」

「ハッ」

待っていろ、すぐに全滅させてやる。

翌朝、文太達を乗せ馬車は再び、文太の故郷に向け走りだす。
「あー昨日はぐっすり寝れたぜ、それにあの海」上機嫌なしんべえ。
「確かに、海は最高だった」と太一
珍しく二人の意見が合ってる、そんなことを思い、文太は微笑んだ。

「しかし、三國人ってのは強いでごんすかね?」

「確か、鬼神や白竜を育てたって言ってましたよね」

「少なくとも、鬼神以上と言うことだな」道来が言う。

「でも真の兄貴は、骸や、一斎にまで勝ったんだ、三國人なんてわけないぜ」

「俺もそう思うぜ」太一の言葉にしんべえも同意する

「今日は二人、やけに意見があうでごんすな」一之助は笑った。

「後はどう、鬼道や三國人をおびき出すかってところか、なるべく大勢の兵を斬ることは避けたい」と道来

「傷つく人を最小限に抑えないといけないですね」

「文太の故郷で少々傷を癒し、その後、大帝国の城に乗り込むのはどうだ?」真堂丸が口を開く

「お前達が援護して兵を抑えてる間に、俺が鬼道の元に向かう、大帝国の戦力が落ちた今なら、前よりは浸入は容易いはずだ」

「ああ、それも手だな」道来が言う。

「前に真の兄貴が浸入した時なんて、今考えたらとんでもない状況だったですね、だってあの時奴等の城には、女狐、骸、雷獣、秀峰がいたんですから」

「ああ、自殺行為だな」道来が笑う

「先生が言う様に、確かにこちらから仕掛けるのは良策かと、敵にあれこれ動かれる前に、こちらから奇襲をかけた方が相手は間違いなく作戦を練れず困る、なんせ敵には数がいる、準備をされて、全兵と全て戦う様な状況になることだけは避けねばいけないでごんす」
皆は頷いた。

本当に

いよいよ、決着は近い。

一瞬、真堂丸と出会った頃が頭をよぎる。

旅に出て、数々の強敵と出会い、死闘を繰り返し、ここまで辿り着いたんだ。
ふぅー    後もう少し   そんなことを感じる。横に見える海の風景がしっかりと心に入り込んでくる。

その頃、菊一、洞海、夏目は山路を歩いていた。

「しっかし、今だに信じらんねえぜ、あの骸に勝てる奴がいたなんてな」夏目が言う。

「直に会った者として感じたのは、あいつは全盛期の一山より強かったんじゃねえか?」

「ああ、俺も奴に会ってる、骸、多分奴は一山より強かっただろうな」

「信じらんねぇ話だぜ、あの一山より強い奴なんて想像すら出来なかった」

「だが、今は問題はそれだけじゃねえんだ、一斎ってのがいるんだが、まぁ今はよそうこの話は」

「なんだよ、一斎?まさかもっと強いとか言うんじゃねえだろうな」

その時だった、全力で走っている三人の男
「信じらんねぇ話だ、信じらんねぇ話だ」

尋常ならぬ慌てぶりに、気になった洞海が言った。
「おいっ、どうしたんだ?」

「大変なんだよ、信じらんねぇ話があるんだ」

「あの一斎が負けたらしいんだ」

「何?」その言葉に驚きを隠せない菊一が叫び、男の胸ぐらに掴みかかる

「おいっ、詳しく教えろ やったのは何処の誰だ?」

菊一と洞海は息を呑む。

「真堂丸」

その瞬間、菊一と洞海は顔を見合わせ、笑みを浮かべ、叫んだ

「あの野郎、本当にやりやがった」

「真堂丸さん、勝ったんですね」

抱き合いながら、大喜びの二人を見てる夏目には何が何だか。
「おいっ、詳しく話やがれよ」

二人の喜びの歓声は、いつまでも、いつまでも山路に響きこだましていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

対米戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。 そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。 3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。 小説家になろうで、先行配信中!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

処理中です...