冬馬君の秋と冬

だかずお

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『蛇鰐美登場』

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しゅこおおおおっ シュコオオッオッオッ~~

その日は唐突に訪れた。

季節は12月に入った頃になっていた。
週末だった事もあり冬馬家には大喜が遊びに来ている。
時刻は13時を過ぎた頃だった。

シュコオオオオッ シュコオオオオッ オッ オッ おっ。

突如チャイムの音がけたたましく空を斬り裂く

ズクシュ(なんちゅーチャイム音)

すると下の階から正子の声が「冬馬、多網ときみちゃん来てるわよ」

突然の訪問に驚き喜ぶ、冬馬君達。
さっき二人にも声をかけたのだが電話が繋がらず、今日は会えないねと言っていたからだ。
実はこの再開、スーのデートの時以来の合流であった。
冬馬君と大喜も先程まで「久しぶり~」とか言って喜んでいたのだ。

二人は階段を駆け下りる。

「二人とも久しぶり~」冬馬君達がニッコリ

「あっ」二人は叫ぶ

誰だ?きみ子の背後に居る奴は!!

「冬馬君と大喜は初めてだったね、紹介するよ」

「蛇鰐美(へびわにみ)ちゃんだよ」

バァッ きみ子の背後から突如びっくり箱の様に顔を覗き見せる蛇鰐美ちゃん。

「よっ、ごっつあん」

二人はギョッとした。

なんとドスの効いた低き声。
一応分かりやすくどんな顔をしているかを一旦説明しよう。

えー えっ、えーっと、蛇と鰐を足した顔である。
濃厚さをカケル2したらジャストミートである。

「あっ、どーもっこんにちは」冬馬君と大喜が遠慮気味に挨拶する。

「気遣わんでいいぞ」

ヌオッ何という貫禄、蛇鰐美。
こいつが話に聞いた蛇鰐美ちゃんかあっ。

正子が「新しい友達ね、どうぞあがって」

どことなく多網がいつもより縮こまって見えるのは気のせいか?

「お邪魔しまーす」

「カタジケナイ」奴はそう言った。
うん、蛇鰐美である。

正子は直感する、また濃厚なキャラの子ね・・・と。

二階にあがる子供達

「二人とも、いつも通りにやってくれ。この蛇鰐美が居ないと思ってよ」

無理である。

きみ子が言う「なに?二人ともいつもと違うじゃん、ハハァー蛇鰐美が可愛いからって照れてるんでしょ?」

二人は心の中、即答した。

ノンッ

「なんだきみ子、二人はいつもと違うんか?まっ、しょうもないのぅ こんなベッピンが三人も揃ったら、おやっ多網は男やったのぅ、今日は虎鮫代じゃなかったのぅ ガハハハハ」

冬馬君はオモフ

いつの時代、本当に中学一年生の方だろうかと。

低きほとばしるほど強き雄叫びの様な声。
しっかしまあ、なんと凄まじい威圧感。

二人は確実に分かったことがある。
コヤツは絶対に怒らしてはいけない お方だと。

「皆んなでトランプの神経衰弱やろうよ」ときみ子。

「やっ、やろうか」なんだか嫌な予感のする二人。

多網も微妙に頷く。

「ガハハハ 神経衰弱とはまた複雑なゲームを持ちだしたな」蛇鰐美が笑う。

至極シンプルである。

「じゃ、このメンバー新入りからのサービスで蛇鰐美から時計まわりでいこっか」きみ子の提案でゲームはスタートする。

だが、神経衰弱は最初の人が一番損なゲームである。
なんちゅー新入りサービス。

「気がきくのぅ、きみ子悪りぃな」
全く分かってなかった。

パッ パッ

見事に外れた。

「ぬおっ、分かるかい おんどりゃこりゃー」
本人はそんなつもりはないのだろうが、いちいち一言一言にドスが効き、びくついてしまう冬馬君と大喜。

ついで大喜

パッ パッ 外れる。

「ガハハハハ 主ぬしも間違ごうたの、気にするな複雑じゃからのぅ」

大喜は思う、とんでもない奴の隣に座ってしもうたと。

次いで冬馬君
パッ 「あっ、これ出た」パッ

「やった揃った」

「ほぉ、大したもんやのぅ、こない複雑なゲームを簡単に攻略しよる」

冬馬君は思った。
蛇鰐美ちゃんルール知ってんだろうか?と。
続けてカードをめくる。
パッ 「スペードの1か、これはまだ」 パッ 外れる。

突如目を見開き、多網がカードをめくる パッ

あっ、1だ!!

しかも冬馬君とは違う場所の「ラッキーだね多網」

パッ 奴は全く違うとこをめくり舌打ちした。

「ガハハハハ 複雑やのぅ」

何がだ!!

「こーゆうのには色んなトラップがあるからな」

いや、ないだろう。

きみ子が得意気に「多網さすがにあれ間違えるのはヤバイよ」

パッ パッ

間違えた

きみ子は突如ブッこき、こう言ったそうな。

「 わ ざ と 」

「蛇鰐美ちゃんにサービスだよ」きみ子が間違えてはいないワザとだと強調するように三回くらい言った。

「そんなサービスとかやめぇや、緊張しちまうじゃねえか」

うっ

異様に考えこむ蛇鰐美ちゃん。

「あーっ、難しいのぅ」
冬馬君と大喜はひっくり返りそうになる。

自分達がいなきゃ一生終わらないんじゃないか?このゲーム。

「8だよな確かな?」

ズコッ(冬馬君と大喜がひっくり返った音)
それすら分かっとらんのか。

バッ パッ

奴は 3と10をめくった。
「あーこざかしいのぅ」

パッ 大喜見事的中。

ゲームは続いた。

一番揃えたカード枚数を持つのは冬馬君
次いで大喜、ワンペアのきみ子。
何も揃えたカードを持ってないのは、多網と蛇鰐美。

パッ カードをめくり蛇鰐美が叫ぶ
「なんじゃこいつは?」

ジョーカーである。
「なんだ、こいつはぁ?ガンタレとんのぅ、こいつをめくったらヤバイんか?」

その発言に吹き出しかける冬馬君と大喜。

「あっ、ジョーカー抜くの忘れただけだから、もう一枚同じのめくったらワンペアゲットだよ」

「本当にそれだけか?こんなジョーカーとか言うどっかのチーム名みたいな不吉な顔したピエロを二枚も揃えて本当に落とし前とかないんじゃな?」
(どんなゲームじゃ)

「大丈夫だよ、蛇鰐美ちゃんもシャイなんだから」
(まるっきり言葉の使い方違うような)

大喜はこの得体の知れないセリフに噴火しかけていた。必死に笑いを堪え腹をつねっている。
チラッ 見ると冬馬君もである、白めの顔の皮膚が真っ赤になっていた。

「ちっ、どっちにしてもコヤツは引かん方がいいのう、なんか危険な香りがするで」

パッ

違うカードであった。
「フゥ~心臓に悪いぜ、揃っちまうところだった」
(揃えたら勝つんやぁー)

いよいよ残りわずか。

その時だった。きみ子が禁断の果実に触れる。

「でも、これワンペアもつくれないの結構馬鹿だよ」
(無論悪気はない)

ピクッ

蛇鰐美と多網の身体がピクリと動く。

とっさに聴いてなかったふりをする冬馬君と大喜。
まずいっ。

「ちゅーことは、あたいか多網どちらかが本当の馬鹿になりよる可能性があるっちゅう事やのぅ」
ギロリ

「あたいはのぅ、負けるのは嫌じゃ」

「絶対に嫌なんじゃーーーーーーーーっ」
そう叫び終え、とんでもない表情を浮かべ奴は硬直する。

その表情の凄さと言ったらなかった。
眉間にシワを寄せ、蛇と鰐が同時にブチ切れた様な顔だった(どんな説明じゃい)

冬馬君と大喜の顔は真っ赤で、今にも笑い吹き出してしまいそう。
ヤバイよ、噴火しちゃうよ。
ここで噴火したら、噛み付かれるでは済まされないのではないか?
絶対に今は笑ってはいけない。

しっかし、その顔から硬直し一向に表情を変えずピクリとも動かない蛇鰐美ちゃん。

まさかこのまま最後まで続けるのかっ?
ヤバイっ ヤバしすぎるぞ蛇鰐美。
これじゃ、すぐに噴火していまうっっ。

きみ子が言う「これは蛇鰐美ちゃんの本気モード、1枚でも良い、当てさせなきゃ」

その言葉に震えあがる二人

あっ!!

この男も本気だった、細い目を限界までカッ開きカードを見つめる多網。

コヤツも本気モード。

冬馬君達はわざと外すことにする、きみ子も揃えさせてあげようと気を遣って外していた。(多分)

残り12枚

パッ パッ パッ パッ

パッ パッ パッ パッ

10分経過。
たったのむよ、たった12枚こんだけハズす方が奇跡的である。

パッ パッ
だが、気を遣ってるはずのきみ子がどんどん揃えていくではないか?
気など遣ってなかったんではなかろうか?

残り4枚

蛇鰐美は思う「ちっ、まずいなあのジョーカーとか言う魔神(すでにトランプのジョーカーは魔神の位置付けを手に入れていた)まだ残ってやがる、あたしに挑むつもりか?良い根性じゃけん、絶対に揃えねーからな貴様だけはよ、ジョーカー」
(一体何をしとんじゃコヤツは?)
顔は先程の表情のまま、蛇鰐美はこのセリフを吐いた。

冬馬君と大喜の身体はピクピク痙攣しはじめ、顔中血管が浮き出していた。
もはや動くことすらままならない、喋ることすらもままならない、絶対に同じ状況の大喜を見た瞬間に自分も大喜も一気に吹き出すだろう。

「ぶっ 」口からオナラの様な音を発してしまう。
まっ、まずい、もう駄目だ、蛇鰐美ちゃんその顔やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~。

蛇鰐美ちゃんの番

パッ

「じゃあああああああああああ」奴は吠えた

その反応に今にも噴火寸前の冬馬山、大喜山。
下を向き、身体は不気味に痙攣している。

奴が吠えた理由、顔を出したのが天敵ジョーカーだからだった。

「くぬおおおおおおおおおおおっー負けんぞ、絶対に貴様にかーあーーーーーーーーーーーーーーつうっ」

「蛇鰐美は人生負け知らずじゃー」


パッ

負けた

彼女は再び硬直した。
大喜の顔の真横で。

この沈黙の間

冬馬君と大喜から何度、謎のしゃっくり音の様な音が発せられ沈黙の中響き渡ったか。

「ジョーーーーーカァアーーーーーッーー」
蛇鰐美はあの表情のままカードを睨みつけ硬直していた。

結果ワンペア出来たにもかかわらず敗北した蛇鰐美ちゃん。

結局一枚も揃えられず、きみ子の阿保称号獲得多網君。

噴火寸前の冬馬山、大喜山。

恐ろしい神経衰弱は幕を閉じた。
文字通りに神経衰弱となって。
このゲームはこんな理由から、こんな名前になったのだろうか?まさかね。

大喜の真横にはまだ、あの表情を浮かべ硬直している、蛇鰐美ちゃんが居た。


ギラリ


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