冬馬君の夏

だかずお

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『キャンプ キャンプ キャンプー』

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「やあ、久しぶり、元気だった?」
と、ながらく会っていなかった、清香の弟に冬馬君は声をかけた。

「うん元気だった」

そして冬馬君と大喜、多網 そして清香の弟は水着に着替え終え
テントを飛び出した。

「僕ちょっとママのとこにいく」

「分かった」
弟はお母さんのところに向かう。

冬馬君達は川に入る前
きみ子にブリブリ、あの二人の前でこかれてはまずいと思い
「あの二人オナラにがてみたいだよ」と言っておいた。

キョトンとしたきみ子、そんな人間がこの世にいるの?と言う様な
表情を浮かべている。

「分かった」
その返事を聞き、少しホッとし川に入った。

川の水は透き通っていて、水に入っても足の指先までハッキリ見える。
「綺麗な水」とご機嫌の冬馬君

身体の芯から冷たくなる様な水の冷たさ、でも心地が良い。
自然と触れ合ってる感じがした。

川の外では。

「私、きみ子よろしく」

「私、清香です 初めまして」

「私アミですよろしく」

川の中、きみ子がこかないか心配な二人

「頼むからいきなり、ブっとかやめてくれよ」と大喜

女の子三人は笑っていた。
なんだか、うち解けてるみたい
「良かった」と冬馬君。

三人はそのまま、川に入らず
料理を手伝いに行った。

早く色々話がしたい、二人

「僕らもあがろうか?」と冬馬君が。

「そうだね」
まだ入って二分もたっていない。

「多網は?」

首を横に振った


三人は野菜を切っている
「ありゃー清香ちゃんとアミちゃん上手」きみ子は感心していた。

サラダの野菜を千切りにしていたらしいのだが。
きみ子のは 千切りじゃないとしたら、三切りとでも命名しようか。極太なり。

そこに冬馬君と大喜はやって来た。
「僕らも、手伝う」

「じゃあ、これ切って」

五人は野菜を真剣に切っている。
もちろん冬馬君が料理などしたことはない。

その姿を見た正子。
清香ちゃんの前で張り切っちゃってと微笑んでいた。


暫く静かに切っていた子供達


突然けたたましいサイレンが沈黙を破った。


ブリブリブリーッ
うんきみちゃんの屁である。

ハッとしたきみ子
あっ、普段の癖でやっちゃった。

突然大きな声をあげる
冬馬君と大喜

「メリークリスマス」

「ああ暑い、暑い」

全く訳の分からない発言に清香達は驚いた。

良かった、まあおかげで、どうやらうまくごまかせた様。

テヘヘと舌を出し反省するきみちゃん。

またみんな、一生懸命野菜を切り始める。

川のせせらぎの音

セミの鳴き声

あー自然の中にいる

この水の流れる音に蝉
うんうんと一人頷く冬馬君

ブォーん ブリッ

うんうん、この音

これこれこの自然に流れる屁の音

って えーっ

「何か今凄い、音しなかった?」とアミ。

「熊かな?」と焦る大喜

みんなはキョロキョロ辺りを見回す。

チラッと二人を見て
舌を出し反省する、可愛いきみちゃん

てへっ。

ミーン ミン ミーン

そう言えば多網は何してんだろう?
チラリとみると川で一人きゃっきゃはしゃいでいた。
幸せな多網。

突然きみ子は私が向こうに行けば
四人が話す機会が増えるかもとまさかの気を遣い多網のほうに向かった。

「なんだか、あの映画観に行った以来だね」と清香

「えっ、あっ 確かに」
緊張冬馬君

「でも、前にみんなでキャンプに行きたいって言ってた夢が実現して良かったね」と清香の微笑みに

ドキューン

またハートを射抜かれた。
ああ、天使だ。
パタパタ
意識はお空に向かってパタパタ

冬馬君の想像の中、腰を低く下げ 両肩を交互に少し前に出し。

「やぁー やぁー 冬馬」

「ヤァー ヤァー 飛び出せー」

「ヤァー ヤァー 冬馬 」

と訳の分からない歌が始まっていた。

「冬馬君、冬馬君」
清香の声に我にかえる。

「あっ、大喜顔に何かくっついてるよ」とアミ

顔にくっついてた、小ちゃなゴミをとってくれた。

ズキューン
裸のキューピットちゃん
見事に大喜の心臓を射抜く。

かんッウ~

トゥトゥトゥー 大当たり フィーバー

だだだだだ

だいきー

だだだだだー だいきー

大喜も腰を低く下げ
両肩を交互に前に出し

だだだだだだだぁだぁぁだ

だいきーー

と訳の分からない歌をきいた。

「ねえ、大喜大丈夫?」

大喜は戻ってきた。
「うっ、うん」

ああ、幸せ
二人の至福の時が流れる。


男と女 

ロマンチック

と川辺でポツリ多網がつぶやく。


「青春」とニヤつくきみ子

二人はニタニタ笑っている。
うん、はたから見ると結構不気味である。

「ねぇ、冬馬あの二人こっちみてニタニタしすぎだよ」
小声で大喜が言った。

チラッ
「ぎゃーなんちゅーあからさまな顔してこっち見てるんだ」
冬馬君はおったまげた。

清香のお父さんと隆は
「では、そろそろ」と言い

「カンパーイ」
ゴクゴク、ビールを飲み始める

「いゃー自然の中でのビールは格別に美味しい気がしますね」

「まったく」

「ああ、幸せ」と嬉しそう。

正子と清香母がお肉を焼き始める

ニタニタ笑っていた、多網ときみ子の鼻はクンクンクンクン。
もう、肉の匂いを嗅ぎつけヨダレを垂らしている。

「良かった、大喜あの二人の気持ちあっちに向かったよ」

「ホッ」

「どうしたの?」

「あっ、いやなんでも」
はぁー。
冬馬君と大喜はこっちにメロメロであった。

ああ、自然の中で清香を見ながら、野菜を切る 僕は宇宙一幸せな男、冬馬だ と一人思っていた冬馬君。

しっかし、可愛い。

大喜も似た様なことを考えている。

「ねぇ、きみ子さんに多網君面白い」と指さし笑う清香

ドキッ、なにかしたか?と焦る二人。

見ると
両手に焼いた肉を掴み

「肉 肉 肉 肉 にくーっ」
二人は肉を持ち行進していた。

さすがにその姿には笑った。
四人は大笑い。

清香の弟は母親の腕のすそを掴み言った。

「ママ、あの二人 こわい ママ」

苦笑いする清香ママ

そんな弟の近くに向かう、肉を両手に一切れずつ持ち歩く二匹の猿達

「肉 肉 肉 肉 にくー」

「ほらっ、お兄ちゃんとお姉ちゃん来てくれたよ」

多網は手に持つ肉を清香の弟に差し出し、きみ子は手招きで弟を呼ぶ。

弟も輪に加わった。
いや、加わらなきゃ喰われると思ったんじゃないか?

「肉 肉 肉 にくー」

「あの二人はいつもあんななの?」とアミが大笑い。

「まっ、まあね」と苦笑いの二人。

「みんなも焼けたから食べなさい」正子が冬馬君達を呼んだ。

「いっただきまーす」


賑やかなキャンプ場

「ああ、自然の中みんなで食べるご飯最高だね」清香がニッコリ

「うん、最高」
この頃には二人の緊張も、ほぐれていた。


ミーン ミン ミン。
セミも嬉しそうに歌っている。

「今日はこの場所で一泊出来る、最高」きみ子と多網、清香弟は飛び跳ねた。
もう、すっかり打ち解けている様。

時刻はまだお昼を過ぎたばかり、まだまだ、みんなで一緒に過ごせる。
あーこの瞬間がたまらない。

「何だか楽しくなってきたね」と大喜

「うん」
みんなニッコリ微笑んだ。

「夜は肝試しやろう」さっそくきみ子が提案する。

「やろう、やろう」
冬馬君もテンション上がり、飛び跳ねた。

「肝試しやる前はこれ」何やらカバンから怪談の本。

好きだねぇ~あんたも。

「怖そう」とアミ

すかさずカッコつけようと大喜が
「僕 幽霊より強いよ」

その発言に笑いより先に屁が出てしまったきみ子

プゥー ププぷっ。
屁が笑ってる。

でも、消音だったので誰も気づかなかった。
そう、後ろの弟以外は。

清香弟はママのもとに去って行った。

「みんなでキャンプ楽しいね」
清香もアミも嬉しそう。

そんな時、きみ子がテントに走り
清香とアミを手招いた。

「女子会~」
どこからそんな言葉が出るんだか。
きみ子は二人を招きいれ
テントをしめた。

「何だか、余計な事言いそうでこわいね」と冬馬君。

「確かに」

「きみ子 そんな、バカじゃない」何故か腕を組み頷く多網。

まったく安心は出来なかったが。


テントの中では

きみ子が言った。


「ねえ、あの中の肉でどれが一番美味しかった ねえ? カルビ? ロース?」

とりあえず、きみ子はテレビで観た女子会と言うのをやってみたかったらしい。

二人は苦笑い。

外で何話してるんだと気が気じゃない二人。

中からは笑い声が。

「だっ、大丈夫そうだね」

暫くして、テントから出てきた三人。
どうやら、女子会に満足したらしい。
テントから出てきた、きみ子の呼び名は姉さんに変わっていた。

「きみ姉さん、最高面白い」とアミ

きみ子もそれを聞き上機嫌なのか、鼻をモゴモゴ動かしてる。

「姉さんなんて、きみちゃんでいいわよ」

多網はテントに小走りで入って行った。
そして、顔をヒョコッと出して

「男会」

うわぁー絶対行きたくないと遠くで見ていた弟は思った。
母の袖を強く握っている。

二人はテントに入るが話題はなく、
ただ三人は不気味に顔を合わせ笑った。

「ははははっ」

「ははっ」

「ふっ」

「ふふふふ」
不気味な笑い声だけがこだまする。

弟はママから決して離れなかった。

隆が「みんなースイカ割りやる?」

「はーいっ」子供達はテントから飛び出した。

川で冷やしていた、スイカを持って来て、開始。

「去年もやったね」と清香

「うん、懐かしい」

「じゃ、私から行くわ」
きみ子が立ち上がる。

「姉さん、姉さん」
みんなで応援

テンションの上がるきみ子
突然
「ファイ ファイ」と両手を突き出した。

「出たーっ」
みんな大喜び

きみ子は木の棒を持ち
そのまま、目隠しもせずスイカに向かい突進した。

「やぁぁぁあぁぁぁぁっ」

わたくし冬馬は、ある日みた映画のキャラクター トロールを生で見ている気がした。

「きみちゃん待って、目隠ししてやるのよ」と正子の声

「あっ、そうなの」
目隠しをし再び挑戦

ゆーっくり前に 前に そして

「しゃーしゃーきしゃー」
バコバコ叩いている。
目隠しをとり。

「っあーっ」
外れ~でした。

続いて大喜。
よしっ、ここで良いとこ見せる

「だいき、だいき、だいきー」

集中するんだ、大喜。
大喜は自分に語りかけた、ゆっくり、ゆっくり 前に。
この辺りか?
みんな、悪いな 一番かっこいいとこは持っていく 絶対やれる ゆっくり、ゆっくり

ボシャン

川に落ちた。

「しーっぱい 」と両手を天に突き上げるきみ子

続いて多網。

すごかった、目隠しをしてると言うのに走り出しそしてすぐさま目一杯の力を込めゴルフの様に棒を振りかざしたではないか。

バゴオオォン 

「っぎゃああああああっ」

目隠しとってビックリ、ケツを押さまえ、前倒れするきみ子。

「きっさまー」

鉄砲玉より速く多網は逃げ去った。

続いて、アミ

「アミちゃん ファイト」
みんなの応援が響く。

「まっすぐ、まっすぐ、もうちょい右」この時、初めてマトモなアドバイスが飛び交った気がする。

あっ!!!

バゴンッ

「どう?」目隠しをとる
スイカには確かに当たった、
だが力が足りなかった。

しかし、拍手喝采

続いて清香

「よおしっ」

「まっすぐ、 まっすぐ まだまだ そう、そこ そこ 」

「よしっ、えいっ」

バゴオォン

目隠しをとると。

目の前に血まみれのきみ子が立っていたら笑える。

外れだった。

「僕だ」
気合いの入る冬馬君

「冬馬 冬馬 冬馬」

清香見ていてね、心にあのスイカを叩きわる事を誓った。

「まっすぐ、まっすぐ」

「右 右 右」

「そこ辺り いけーっ」

「えイヤーッ」

手応えあり
目隠しをとると
スイカは見事にわれてる。

「みんな、やったよー」

が、この時、全てをかっさらった女がいた。

そう She is きみ子

興奮した、きみ子は凄まじい爆音を解放させてしまったのだ。

ブリブリブリブリー

「ママーすごいよ あのオナラ」
弟はあまりに凄まじい屁に興奮し叫んだ。

静まりかえる場。

きみ子は言った
「セミかな?」

それ以上誰も突っこむことはなかった。


盛り上がるキャンプは続く。

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