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第3話 この世界とは

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「はァ、はッ…」
魔王が荒い息を吐き、エイヴェリーに指を向ける。
「ヒュ―――……ッ!」
エイヴェリーがびくりと硬くなる。何かを警戒するように後ろに後退り―――
《骨まで炙れ!》
魔王が呪文を唱える。黒い炎がエイヴェリーに向かい、今にも燃やし尽くさんとばかりに目前で火力を上げる。届くかと思われたとき―――
《拒絶し阻めよ・指のひとつも・我に触れさすな!》
早口の呪文。
炎が霧散し、後ろの柱に当たる。一節詠唱も出来ないのかと、魔王が笑みを浮かべ目で問う。
「はァ、まだ障壁魔術ディスペルを一節詠唱することが出来ないのか?泣けるな。それでも…」
魔王が怒りを抑えるように爪を腕に食い込ませる。エイヴェリーが俯く。
「――それでも、お前は星付きか―――ッ―――!」
ビリビリと声が響く。
…もう………
「「一体、どうしてこんなことに…」」
「声に出てるのです兄者」
「お前もな我が妹」


…事は四時間前まで遡る。
この駄作を呼んでくださっている数少ないたちのために解説しよう!
第2話から、二人はまだ追いかけっ子をしていた。byいづみ
最初の方はなんか和むなぁと思いながら見ていたが―――
「にゃろ――ッ!こうなったらァ…」
《全てを形作る根源よ・―――
魔王が呪文を唱え始めてしまった。エイヴェリーが顔を真っ青にして叫ぶ。
「ひゃあぁぁぁあぁ!やめてよ魔王君!ボク霊鳥だけど!霊鳥だけど根源オリジンから分解されたら消えちゃうから!消えちゃうからやめて!」
なんかヤバい魔法らしい。が―――
《―――・我が手の下に在りしは・―――
魔王は変わらず呪文を続ける。エイヴェリーがだらだらと脂汗を流す。
「やめる気配ナシ⁉まって!―――そうだ、魔王君なら―――、―――模擬戦で決めよう!魔王君がルール決めていいからさ!(魔王君戦闘狂だし乗ってくれるっしょ!)」
――すると魔王はニヤリと笑い―――
「…言ったな?いいだろう。やってやんよ。ルールは一対一の総合戦なんでもアリで、一時間場外に出なかったらお前ぇの勝ちだ。…今回の件、お前が勝ったら不問にするし、それに――」
「…それに?」
「クローディアにはひみつにしてや」
「早く!早く行こう!ラディにバレる前に!」
そのままあれよあれよと闘技場の手配やら何やらが始められてしまい、
「魔術理解わかんなきゃァ模擬戦は楽しめねェ。オレが教えてやんよ、付いて来い」とか言い出したヤツ(名称不明)のせいで至急講義が組まれることになった。in魔王城大会議室だ。
壁一面に貼られた書類に、ナイフジャグリング白衣白髪ロリ―――うん、後半おかしいね?属性過多かな?そしてそのロリが口を開く。
「やァ―――こんにちはだな勇者様。オレぁロザ・バルバラってんだ。仲良くしてくれると嬉しいなァ」
緩やかな白髪に澄んだエメラルドの瞳。幼い姿に合わないハスキーボイス。この姿を見て俺が思うことはただ一つ―――
「「ロリショタ多くね(ないですか)」」
「おおっと、イキナリ過ぎだなァお二方。まーそれを知るにゃー、―――ちと早いかね。ま、オレの講義聞いてりゃわかんだろ」
いちおー幼い姿には理由があったらしい。ロザが俺たちを眺める。
「ふむ?…魔力保有量は妹ちゃんの方がやや多いな。まあ兄の方もオレらの平均を大きく凌駕してるが―――でもま、出力はとんとんってとこか?」
「「?」」
突然魔力保有量だの出力だのおよそ馴染みのない言葉の連続に、俺たちは首を傾げた。
「まさかそこからかァ?…あいつらになんか説明されたこととかは?」
「ない…な」
「ぜろなのです」
俺と妹が錯乱してたことも原因の一つだが、魔王は特に何も説明せずに本題に入っていた。……俺たちに何させる気なのかも結局わからんし……俺たちの言葉を聞き、ロザが瞠目する。
「うそん……じゃァ、この世界のことからだなァ。長くなりそうだって言っとくか」
《我が耳口となれ》
ロザが呪文で鳥を作り、窓から飛ばした。
「いーか?…誤魔化しとかはァ一切無しだ。オレぁそーゆー腹の読み合いってのが一番嫌いでよ。よくラディにも…―――話がそれたな」
やれやれ自分の悪いクセだ――そう言うようにロザが首を振る。そして、覚悟を決めるように前を向いた。
「―――正直に言うと、この世界は今だいぶヤベェ。他と融合・・しちまったからな」
「融合、ですか」
「融合ってのは、異なる世界がなんかの弾みでくっついちまうことだァ。大抵はそこで世界の管理人―――つまり準主神級同士が慌てて引き離すんだが―――」
ロザが一度そこで言葉を区切る。
「―――あっちの管理人は、そういうのを権能を与えた眷属たちに全部任せてたんだなァ。極度の面倒臭がりやらしい。が、それすらも今は問題じゃねェ。―――その眷属ってのがヤベェやつらでよ。あんま自分らに対する信仰が集まんねぇとこ、いい話が来たとばっかりにねェ、―――魔界から魔族が侵攻してくる、私達が力を貸すから、この危機を乗り越えてみせよ―――ってふれ回ってんのさ。奴らは亜神だァ…地上には降りれるが、神としての力は無いに等しい。―――まァ人間じゃぁ足元にも及ばねぇがな。だから通常じゃァ直接干渉できねェ管理人の伝令役になることが多いんだなァ。が―――」
「―――そこを神の権能で補っている、と」
ロザが目を見開く。
「―――流石だなァ。人間ってのは全員お前らみてぇなのか?―――妹ちゃんもよォ」
「貴女の観察眼には劣るのです。…続きを」
「おっと、すまねェ。―――神の権能を使ってるっつーのはおそらく当たりだ。まァそれ以外に考えられねェからだな。いくら亜神だろうと神は神。降りてくるときに当然、神としての力は奪われる。…おっと、お前らは何も知らねェんだったな。…ったく、あいつらめ………すまん、続けるな。―――しかし、だ。神はこの世界の管理人。その世界を自由―――とまでは行かねェが、ある程度は弄れるんだなァ。神の権能の中にはそういうものがある。通常、管理人が地上に降りると、主神にボッコボコにされてジ・エンドだが、亜神じゃ話が違うんだ。持ってる『神気』…つまり体を形成する神の部分がすくねぇんだなァ。これが管理人だと神気が多すぎて長く地上には降りれねぇ…が、亜神が持つ神気は精々史上最強の聖女レベル。地上に降り続けていても問題ねぇ。だからそれぞれの権能を使って地上に降りたんだな。こうなるともう主神や管理人は干渉できなくなる。」
ヤレヤレという風に首を振るロザ。
「…で、その問題の神の権能―――異世界召喚だ。この権能はこの世界と違う世界の極一部を無理矢理繋げるんだな。それを―――」
ロザが苦虫を噛み潰したような顔をする。
「―――亜神が使いやがった。喚ばれたのは勇者様のクラスメイトだ」
―――薄々、そんな予感はしていた。
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エイヴェリー&魔王「「今回俺(ボク)かなり空気だなぁ…」」
寧「後半で全部持ってかれましたね…」
エイヴェリー「ふふふふふ…しかし!なんと!今回作者の友達がボクを描いてくれたのだ!」
寧「可愛いです」
魔王「女子…⁉」

エイヴェリー「可愛くない⁉可愛いでしょ⁉」
魔王「ありがとう、らしゅまーる先生。次は俺をおねが―――」
寧<●><●>
魔王「…何でもないです」
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