スキルマスター

とわ

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第一章 ムーン・ブル編

第8話 願い

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「行くのはいいが、元の世界の俺の身の回りのことはどうするんだ? それと、あんたの世界にはスキルとかはあるのか? 異世界ものの物語の感じって言うなら、ギルドに魔法、それとダンジョンもあって、向こうに行く時に強力なスキルとかが貰えたりするのか?」

 前向きな俺は、手振りを交えて疑問に尋ねた。祈りを捧げている女神は、ピクリと反応する。俯いている顔を左側に向け、口元を嫌らしく緩める。

(してやったりとでも思ってるのか? 横を向いたって口元は見えるんだが…)

 唖然な俺は、女神の嫌らしい口元を見つめて思考した。嫌らしい女神は、顔を左側に向けたままで体を小刻みに震わせながらその場に立つ。

(不器用なんだろうな。素直に喜べばいいのに…)

 大人な俺は、これも受け止めてやろうと思考した。不器用な女神は、顔をそのままにして人差し指を立てる左手を俺に伸ばす。

「もっ、元の世界のことは任せておいて。私が、責任をもってそれなりの対処をしておくわ」

「それなりかよ! まあ、記憶を操作するとか、そんなところだと思うが…。絶ーーー対!!! 猫を忘れるなよ! 俺は何より、猫が一番大事だからな!」

 言葉を詰まらせる女神は、胸元を右拳で叩くと同時に胸を鮮やかに弾ませて得意に話した。不満な俺は、思わず語気を強めたあとに全身を震わせながら絶対という言葉を凄まじく強調し、猫は俺の命よりも尊いと願いを強く話した。ビクリと反応する女神は、顔を俺にぎこちなく向ける。真剣な俺は、女神を鋭く見つめる。

「わっ、分かったわ」

 ぎこちない女神は、言葉を詰まらせながらも頷きつつ返事を戻した。安堵な俺は、言質を確実に取ったと静かに目を閉じる。

(異世界に行くんだ。生きてさえいれば、きっと、いつかまた会える! どうか、今は幸せに暮らしていてくれ…)

 複雑な俺は、今は只々静かに思考した。目を開けて女神を見つめる。

「そっ、それと…、私の世界はゲームとか物語の感じって考えてもいいんだけど…。たっ、ただ、強力なスキルを授けるとか…、そういうことはできないんだけど……」

「そうなのか?!」

 俺を見つめる女神は、声を上擦らせると同時に顔を左上側に向けて話し始め、俺を横目で確認したあとに言葉を詰まらせて声のトーンを下げながら眉尻と顎と頭と肩までも下げつつ話し終えた。動揺な俺は、思わず目を丸く開きながら消沈していく女神を見つめて前のめりで声を疑問に強く上げていた。

「異世界の人を送り込むってことは、例外扱いになるの。例えば、今ここであなたに何かのスキルを授けたとしても、それは私の世界に送る時に例外扱いにされて消えちゃうの…」

「それは少し…」

(いや、かなり残念だ。小説みたいに旨い話にはならないのか…)

 物憂げな顔を俺に向ける女神は、体裁の悪いようにして返事を戻した。困惑な俺は、思わず真顔で呟き、顔を左側に逸らして表情をしかめて思考していた。儚い瞳を女神に向ける。体裁の悪い様子の女神は、只々静かに首を左右に振る。真っ白な俺は、思わず儚い瞳を真っ白な地面に挫折するかのよう静かに落す。慌てる様子の女神は、直ちに俺に駆け出す。

「でもでも、私の世界に異世界の人を送ると、その人に合った適正なスキルが何か一つは身に付くようになってるの。だからお願い! 安心してほしいの!」

 俺の両手を猫撫で声を上げた時と似たようにして握り合わせる女神は、今回は非常に儚くも脆くもあるキラキラと濡れる二つの瞳を俺の顔に必死に近付けながらすがるような声を切実に上げた。

(こいつ、そこまで困ってるのか?!)

 困惑な俺は、思わず女神の濡れる二つの瞳を見つめて疑問に強く思考していた。必死な様子の女神は、体の動きを止めて俺を切実に見つめる。

「どうか…、お願い…、します…」

 非常に儚くも脆くもある女神は、雫を二つ溢して弱々しく話した。顔を俺の胸に静かにうずめてすすり泣く。男な俺は、思わず女神を愛おしく守りたいと見つめていた。両手を優しく解き、女神を抱きしめようとする。

「くっ」

 大人な俺は、女神を抱きしめようとする体を力で強引に止めて思わず声を漏らしていた。顔を上側にぎこちなく向けて真っ白な空を眺める。

(はあ~。何があったのかは分からないが、情に流されるのは止めよう。それに行くと決めたんだし、スキルは何か一つ身に付くなら、それで妥協しよう)

 複雑な俺は、脱力すると同時に息を漏らし、感情を整えながら先程の覚悟とスキルの件を思い出して思考した。顔を戻してすすり泣く女神を見つめる。

「それでいいから。とりあえず、落ち着いてくれるか?」

 冷静な俺は、女神を安堵させようと優しく尋ねた。泣き止む女神は、呼吸を整えて落ち着きを取り戻す。

「手…、貸して」

 俯く女神は、弱々しく話した。名残惜しそうに俺から離れて少し距離を作る。不可解な俺は、左手を甲を上側にして差し出す。伏し目な女神は、手の平を上側にする左手を俺の左手の下側に運ぶと同時に手の平を下側にする右手を俺の左手の上側に運ぶ。両手は薄っすらと光を放つ。呆然な俺は、左手に温かさと優しさを覚える。

「これは?」

 不思議な俺は、女神の行為を見守りながら疑問に尋ねた。伏し目な女神は、返事を戻さない。光と温かさは、数秒で消失する。伏し目な女神は、俺の左手の甲を右手でポンポンと軽く叩く。

「これでよし! ふふ~ん」

 伏し目な女神は、語気を強めて話したあと、顔を上げて得意な表情を俺に見せて鼻を鳴らした。両手を背後に回す。体を前後に揺らしながら後ろ歩きする。突如、クルリと背後に振り向く。輝いて見える長く純白な髪が宙を優雅に舞い、シルクかのような純白なドレスの背中側が姿を現す。背中側は大胆に開いている。宙を優雅に舞う純白な髪が体の前側に纏まる。楽し気な様子の女神は、潤しく純白かのような背中の肌を大胆に露わにした。


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