スキルマスター

とわ

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第一章 ムーン・ブル編

第15話 お預け

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「女神様アウラ様、ありがとう~!」

 感動な俺は、思わず目を閉じて感謝を女神に捧げると声をしみじみと強く上げていた。目を開ける。再び目を見張りながら、金、銀、銅色に煌びやかに輝く貨幣と思われる複数枚のコインを確認する。口元が飢えるオオカミのように緩み始める。

『ゴクン』

 オオカミのような俺は、口内に溢れ始める生唾を大量に飲み込みながら喉を腹ペコに鳴らした。口元に垂れる生唾をオオカミ化し始める右の二の腕で拭う。痙攣するオオカミ化の右手と震えるオオカミ化の左手をコインの左右に運ぶ。左右のオオカミの手を中央へと寄せると同時に全てのコインを掬い上げる。オオカミの体を慎重に起こす。

「多分、金貨と銀貨と銅貨だな!」

 腹ペコなオオカミは、賑わうコインを愛でながら空腹が満たされていくと声を強く上げた。

「ワォーーン! 数えてみるか!」

 歓喜なオオカミは、全身の毛を立てながら遠吠えを高らかに行い、しっぽを振り始めて空腹を更に満たしたいと声を強く張り上げた。全てのコインを震える左手に移す。痙攣する右手の親指と人差し指で一枚のコインを摘まみ、布上へと優しく戻す。残りのコインも同様にしながら布上に整えつつ枚数を確認する。コインは、金貨、銀貨、銅貨、それぞれ10枚。

「あ~金の価値を聞き忘れた~」

 失念なオオカミは、思わず両手を宝箱の左右に突くと同時に両腕を折り曲げながら顔をコインへと落しつつ一息で腹半分と呟いていた。

「まあ、ギルドがあるって言ってたし、そこまで我慢するか」

 お預けなオオカミは、渋面を左側に向けて女神の話を思い出しながらオオカミの鼻先を見つめつつ俺は人間だったと呟いた。幻想と思われるオオカミ化を解除する。視界の右端に麻色の布を捉える。表情がにんまりし始める。

「よし! 次だ!」

 人間に復活な俺は、顔を前向きに戻して両腕を勢い良く伸ばしながら体を起こすと同時に御馳走はまだまだ続くと声を強く張り上げた。全てのコインを宝箱の淵に移動する。布を両手で取り出して広げる。

「う~ん~、これが着替えか~…」

 憂鬱な俺は、思わず麻色の布をカレーライスに見立ててこれは御馳走なのかと呟いていた。

 麻色の布は、ポケットの付いた長袖の上着。生地が、多少傷付けたとしても破れないと推測される程度に分厚い。宝箱をテーブルの右側に移動する。上着をテーブル上に広げて置く。宝箱内に残る全ての麻色の布も同様にする。テーブル上に麻色を基調とする村人風のカレーライスセットのような服装一式が揃う。宝箱の底にブーツなども用意されている。

「やっぱり、着替えた方がいいよな?」

 不満な俺は、自分の身なりとカレーライスセットを比較しながら疑問に呟いた。

「スーツで行くのは場違いだろうし、こっちのほうがいいか」

 冷静な俺は、郷に入っては郷に従えと呟いた。着替えを鼻歌交じりで済ませる。スーツは不必要と宝箱内に仕舞う。身なりを全身を捻りながら確認する。

「う~ん…、アニメなら最強の鎧とか用意してあるんだけどな~…」

 再び不満な俺は、思わずカレーライスセットが毎日食べている白米とみそ汁に変化したと呟いた。

「今はいいか。次だ次!」

 美食な俺は、白米とみそ汁も御馳走と声を強く上げた。身長も確認しようと周囲を見回す。

「測る物がないな…。多分、170センチぐらいだと思うが…」

 困惑な俺は、不満を箸が無いかのようにぼやいて若返り時点の視線の変化からの推測を食事を妄想で取るかのように呟いた。視界の中の姿見鏡に気付く。

「そう言えば、鏡があったな」

 歓喜な俺は、体を姿見鏡に向けて箸の代替になると呟いた。頬を緩めて残りの腹半分が満たされると姿見鏡の前に移動し始める。

「これぐらいはある異世界なのか?」

 陽気な俺は、未来のおかずを妄想しながら疑問に呟いた。姿見鏡の前に移動し終える。

「しっかり、確認するぞ!」

 食通な俺は、身長のついでに身なりも改めて確認しようとするが、まずは器からと視線を足元に移して声を強く上げた。

「厚手のパンツにブーツなら、やっぱり似合うな」

 見目からな俺は、足元を角度を変えながら確認してまずは合格と箸を手に取るように呟いた。右手でパンツの裾を上げ、ブーツとの隙間のソックスを確認する。

「赤はいいな。明るい場所だと目立つが、暗い場所だと黒に見えるし汚れが目立たない」

 大満足な俺は、赤色は彗星のようにカッコ良くてカレーライスとみそ汁の中のニンジンのように安くて美味と呟いた。視線を胴体に移す。

「服は…、まあこんなもんか」

 謙虚な俺は、贅沢は程々にと呟いた。

「いよいよ身長だな」

 渇望な俺は、遂に残りの腹半分が満たされると白米を頬張るに呟いた。視線を頭頂部に移す。そして、

「あっ、これじゃあ身長は分からないや」

 うっかりした。

「はは、どうするか…」

 羞恥な俺は、思わず頭部を右手で掻きながら苦笑して料理は全てオオカミとは関係のない只の調子に乗った妄想と呟いていた。周囲を素知らぬ振りで見回しながら脳内に残る妄想を一つ一つ消去した。


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