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事故か事件か
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駐車場で待機中、明らかに疲労困憊な様子の助手席の恭太郎に缶コーヒーを差し出しながら日南子が溜め息を吐いた。
修也の両親が通報したあと到着した警察や消防の人々に恭太郎は状況説明と再びの道案内をし、あの岩の周辺の捜索にも加わり数時間ののちいったん駐車場に戻ると日南子が来てくれていた。
いてもたってもいられないから、と、やって来たとのことだった。
「とんでもないことになったよね・・・・」
「・・・・はい」
「私が彼を誘っちゃったから・・・・言わなきゃ良かった」
「いや、日南子先輩のせいじゃないですよ。こんなの想定出来ないし・・・・」
「まあ、あの修也がいなくなるなんて確かに想像もしてなかったけど。同じように迷った恭太郎君は戻って来れたのにね」
「そうなんですよね。あの時は見当つけて歩いてどうにか出られたんですけど──」
「あ、誰か来たわよ」
見ると駐車場の端に停めていた日南子の車に修也の父親が近付いて来ていた。
車から降りた恭太郎が会釈をする。
「今日の捜索は一旦ここまでだそうで明日また本格的に範囲を広げてもらうことになったから観月君はもう帰っていいよ。そちらはお迎えのご家族?」
運転席に座るの日南子に視線を移した父親が言った。
「あ、こんにちは。私は修也さんの友人で波並日南子と言います」
「あーそう、友人・・・・ま、気を付けて帰って」
二人ともその妙に含みのある口調に引っ掛かりは感じたが、取りあえず発車しその場をあとにした。
****
「何、これ・・・・」
「気持ち悪いです」
「二人で行った時にはこんなの無かったんでしょ?」
「そうです」
念のため撮っておいた岩に書かれた赤い塗料の『ありがとうございました』の画像を見せると日南子は顔をしかめた。
帰宅前に夕食を一緒に食べようと入ったファミレスのざわめきの中、二人の席にだけ沈んだ雰囲気が漂っている。
「ありがとうございました・・・・何の御礼? 誰に向けての? って思うし、ました、の過去形で締めくくってるのが気になるよね」
「それ、修也さんのお母さんも言ってました。気味が悪いって」
「だよね・・・・」
スマホの画面を凝視しながら日南子の表情はさらに険しさを増してくる。
色白で博多人形のようなさらっとした顔立ちの日南子のそんな顔つきを見るのは初めてだった。
「恭太郎君が駐車場に戻って私に連絡をしてきて、それから丹波酒店に電話で状況を伝えて来てもらってまたこの岩の場所に戻るまで時間的にだいたいどれくらいだったの?」
「あー・・・・五時間くらい?だったです」
「五時間・・・・とすると誰かがこの場所に来て文字を書いてリュックを持ち去る時間は十分にあったわけか。うーん」
「あの──」
「え?」
「これって・・・・神隠しってやつですか?」
恭太郎は謎解きに疲れたようにそう言った。
その言葉に日南子は苦笑する。
「あんなデカい男が神隠しって、笑うとこじゃないけど想像すると何かおかしい。でももしこのまま見つからなかったら世間的にはそういうことにされちゃうのかな・・・・」
「いや、見つかりますよ、きっと。てか見つけないと」
「うん、そうだよね。きっと明日には見つかるよね。そう信じよう・・・・でも──」
「?」
一瞬、言い淀んだ日南子。
そして──
「これって事故じゃなくて事件、なのかな」
「え、それは・・・・」
消えたリュック、赤い文字。
確かに客観的にみれば事件性はあるが、恭太郎にはまだどう判断すればいいのか分からなかった。
困惑のその表情を見つめながら日南子が一番想定したくない言葉を口にした。
「ねえ、彼・・・・生きてるよね?」
恭太郎の背中に寒気が走った。
修也の両親が通報したあと到着した警察や消防の人々に恭太郎は状況説明と再びの道案内をし、あの岩の周辺の捜索にも加わり数時間ののちいったん駐車場に戻ると日南子が来てくれていた。
いてもたってもいられないから、と、やって来たとのことだった。
「とんでもないことになったよね・・・・」
「・・・・はい」
「私が彼を誘っちゃったから・・・・言わなきゃ良かった」
「いや、日南子先輩のせいじゃないですよ。こんなの想定出来ないし・・・・」
「まあ、あの修也がいなくなるなんて確かに想像もしてなかったけど。同じように迷った恭太郎君は戻って来れたのにね」
「そうなんですよね。あの時は見当つけて歩いてどうにか出られたんですけど──」
「あ、誰か来たわよ」
見ると駐車場の端に停めていた日南子の車に修也の父親が近付いて来ていた。
車から降りた恭太郎が会釈をする。
「今日の捜索は一旦ここまでだそうで明日また本格的に範囲を広げてもらうことになったから観月君はもう帰っていいよ。そちらはお迎えのご家族?」
運転席に座るの日南子に視線を移した父親が言った。
「あ、こんにちは。私は修也さんの友人で波並日南子と言います」
「あーそう、友人・・・・ま、気を付けて帰って」
二人ともその妙に含みのある口調に引っ掛かりは感じたが、取りあえず発車しその場をあとにした。
****
「何、これ・・・・」
「気持ち悪いです」
「二人で行った時にはこんなの無かったんでしょ?」
「そうです」
念のため撮っておいた岩に書かれた赤い塗料の『ありがとうございました』の画像を見せると日南子は顔をしかめた。
帰宅前に夕食を一緒に食べようと入ったファミレスのざわめきの中、二人の席にだけ沈んだ雰囲気が漂っている。
「ありがとうございました・・・・何の御礼? 誰に向けての? って思うし、ました、の過去形で締めくくってるのが気になるよね」
「それ、修也さんのお母さんも言ってました。気味が悪いって」
「だよね・・・・」
スマホの画面を凝視しながら日南子の表情はさらに険しさを増してくる。
色白で博多人形のようなさらっとした顔立ちの日南子のそんな顔つきを見るのは初めてだった。
「恭太郎君が駐車場に戻って私に連絡をしてきて、それから丹波酒店に電話で状況を伝えて来てもらってまたこの岩の場所に戻るまで時間的にだいたいどれくらいだったの?」
「あー・・・・五時間くらい?だったです」
「五時間・・・・とすると誰かがこの場所に来て文字を書いてリュックを持ち去る時間は十分にあったわけか。うーん」
「あの──」
「え?」
「これって・・・・神隠しってやつですか?」
恭太郎は謎解きに疲れたようにそう言った。
その言葉に日南子は苦笑する。
「あんなデカい男が神隠しって、笑うとこじゃないけど想像すると何かおかしい。でももしこのまま見つからなかったら世間的にはそういうことにされちゃうのかな・・・・」
「いや、見つかりますよ、きっと。てか見つけないと」
「うん、そうだよね。きっと明日には見つかるよね。そう信じよう・・・・でも──」
「?」
一瞬、言い淀んだ日南子。
そして──
「これって事故じゃなくて事件、なのかな」
「え、それは・・・・」
消えたリュック、赤い文字。
確かに客観的にみれば事件性はあるが、恭太郎にはまだどう判断すればいいのか分からなかった。
困惑のその表情を見つめながら日南子が一番想定したくない言葉を口にした。
「ねえ、彼・・・・生きてるよね?」
恭太郎の背中に寒気が走った。
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