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煽る男
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丹波修也は完全に消えた。
捜索は無駄足になった。
リュックは見つからずスマホは破損したのか電源が切れているのか位置情報も取れず、修也の足取りはまったく掴めなかった。
「Xでの情報募集も駄目だったか・・・・」
学食のテーブルの向かいに座る樺山興二がそう言いながら横に首を振る。
「コメントは来ても中身のある有力な情報がぜんぜんないしね。もう三週間経っちゃったしこれから何か具体的な手掛かりが出てくるかどうか分からないしネットニュースも続報はないし。あんな人がほとんど行かない地味な山だから仕方ないと言えばそうなんだけど、ほんと一体どこに消えちゃったんだろう」
興二の隣で丘嶋柚菜が言い、恭太郎も溜め息を吐く。
三人同時の沈黙。
それから恭太郎が重い口を開く。
「丹波家からも何も連絡は来ないし日南子先輩の方も同じだし。気が滅入って仕方ないよ」
「まあ、一緒に行った身としてはそうなるよなぁ。俺だって恭太郎の立場なら落ち込むよ」
気持ちは分かる、と、興二が頷いた。
「ん? あれ?」
ふいに柚菜がスマホ画面を見ながら何かを見つけたらしい声を上げた。
「ねえ、これ──」
差し出す画面を興二と恭太郎が、どうした? と覗き込む。
そこにはXのサイトが表示されており、修也の情報を求める投稿へのコメントが並んでいるのが見えた。
「恭太郎、もしかしてこれ──」
「ん?・・・・あっ」
(あいつだ!)
即座にピン!ときた恭太郎。
丹波修也の情報募集の投稿に対して並ぶ幾つかのコメントの中に"あの言葉"があった。
ありがとうございました。
さらにその下、行間を空けたところに一言、恭太郎の感情を逆撫でする文言が──
言った通りだろ?
「何よ、これ」
「何だよ、これ」
柚菜と興二の声が重なった。
恭太郎がそれに被せるように憎悪の声を出す。
「これ、たぶんあいつ・・・・あの男だよ。絶対そうだ。くそっ、わざわざこんな──」
「え、駐車場の変なオヤジ? マジで?」
目を丸くした柚菜が恭太郎を見る。
「絶対そうだよ。何なんだよ、一体あいつ誰なんだ」
ありがとうございました──岩の赤い文字。
言った通りだろ?──『もう帰って来ない』に繋がる言葉。
丹波修也があの山で行方不明になり道の分岐の岩に謎の『ありがとうございました』が赤文字で書かれていたことは情報公開されている。
が、そのあとの『言った通りだろ?』。
その言葉は間違いなく"含めた意味の分かる者"に向けてのものだ。
あえて挑発的に。
(あいつしかいない)
あの軽トラの薄汚れた年配男。
恭太郎は脳裏に浮かぶ男の姿に怒りが沸き上がるのを感じた。
「このアカウント・・・・何もないね、DMも閉じてる」
柚菜が画面を見ながら溜め息を吐いた。
辿れそうな情報の何ひとつ無い無味乾燥としたアカウント。
すると興二が唐突に言った。
「なあ・・・・行ってみないか?」
「え?」
「!?」
それが何のことを言っているのか、恭太郎と柚菜はすぐに察した。
「私はいいよ、行く」
「俺も行く」
あの山へ、あの場所へ──
二人の即答に興二は深く頷き、「よし、決まった。出来るだけ早く行こう」と、少し活気の戻った表情で言った。
三人で再び足を踏み入れる。
話はまとまった。
捜索は無駄足になった。
リュックは見つからずスマホは破損したのか電源が切れているのか位置情報も取れず、修也の足取りはまったく掴めなかった。
「Xでの情報募集も駄目だったか・・・・」
学食のテーブルの向かいに座る樺山興二がそう言いながら横に首を振る。
「コメントは来ても中身のある有力な情報がぜんぜんないしね。もう三週間経っちゃったしこれから何か具体的な手掛かりが出てくるかどうか分からないしネットニュースも続報はないし。あんな人がほとんど行かない地味な山だから仕方ないと言えばそうなんだけど、ほんと一体どこに消えちゃったんだろう」
興二の隣で丘嶋柚菜が言い、恭太郎も溜め息を吐く。
三人同時の沈黙。
それから恭太郎が重い口を開く。
「丹波家からも何も連絡は来ないし日南子先輩の方も同じだし。気が滅入って仕方ないよ」
「まあ、一緒に行った身としてはそうなるよなぁ。俺だって恭太郎の立場なら落ち込むよ」
気持ちは分かる、と、興二が頷いた。
「ん? あれ?」
ふいに柚菜がスマホ画面を見ながら何かを見つけたらしい声を上げた。
「ねえ、これ──」
差し出す画面を興二と恭太郎が、どうした? と覗き込む。
そこにはXのサイトが表示されており、修也の情報を求める投稿へのコメントが並んでいるのが見えた。
「恭太郎、もしかしてこれ──」
「ん?・・・・あっ」
(あいつだ!)
即座にピン!ときた恭太郎。
丹波修也の情報募集の投稿に対して並ぶ幾つかのコメントの中に"あの言葉"があった。
ありがとうございました。
さらにその下、行間を空けたところに一言、恭太郎の感情を逆撫でする文言が──
言った通りだろ?
「何よ、これ」
「何だよ、これ」
柚菜と興二の声が重なった。
恭太郎がそれに被せるように憎悪の声を出す。
「これ、たぶんあいつ・・・・あの男だよ。絶対そうだ。くそっ、わざわざこんな──」
「え、駐車場の変なオヤジ? マジで?」
目を丸くした柚菜が恭太郎を見る。
「絶対そうだよ。何なんだよ、一体あいつ誰なんだ」
ありがとうございました──岩の赤い文字。
言った通りだろ?──『もう帰って来ない』に繋がる言葉。
丹波修也があの山で行方不明になり道の分岐の岩に謎の『ありがとうございました』が赤文字で書かれていたことは情報公開されている。
が、そのあとの『言った通りだろ?』。
その言葉は間違いなく"含めた意味の分かる者"に向けてのものだ。
あえて挑発的に。
(あいつしかいない)
あの軽トラの薄汚れた年配男。
恭太郎は脳裏に浮かぶ男の姿に怒りが沸き上がるのを感じた。
「このアカウント・・・・何もないね、DMも閉じてる」
柚菜が画面を見ながら溜め息を吐いた。
辿れそうな情報の何ひとつ無い無味乾燥としたアカウント。
すると興二が唐突に言った。
「なあ・・・・行ってみないか?」
「え?」
「!?」
それが何のことを言っているのか、恭太郎と柚菜はすぐに察した。
「私はいいよ、行く」
「俺も行く」
あの山へ、あの場所へ──
二人の即答に興二は深く頷き、「よし、決まった。出来るだけ早く行こう」と、少し活気の戻った表情で言った。
三人で再び足を踏み入れる。
話はまとまった。
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